弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 本件上告理由は添付別紙記載のとおりであつて、これに対する判断は次のとおり
である。
 第一点について。
 昭和二二年五月三日地方自治法は施行せられ、同時に、町村制は廃止せられたの
であるから、特別の規定のない限りは町村会議員の選挙に関する争訟についても、
同日以後は、地方自治法第四章第八節の規定が適用せられるのは当然である。本件
のごとく、同日前に町村制によつて、選挙が行われ、その選挙または当選の効力に
関する異議申立期間の進行中において、地方自治法が施行せられた場合であつても
同様であつて、特に別段の規定はないのであるから、上告論旨のように、異議申立
期間に関してのみ、既に廃止せられた町村制第三三条第一項の規定が廃止後におい
ても効力を有するものと解すべき根拠はない。この場合は町村制による異議申立期
間が未経過の状態において、すなわち、右選挙に関して、選挙又は当選の効力を争
い得る状況下において、地方自治法が施行されたのであるから、既に町村制の規定
にもとづいて、進行していた異議申立期間が地方自治法の施行により、同法の規定
に従つて、当然に伸張せられたものと解するのが相当である。かく解することは、
同法施行後に行われる争訟について、同法を適用するに過ぎないのであつて、論旨
のいうがごとく、法律を遡及して適用するものではないのである。論旨は理由がな
い。
 第二点
 本件選挙のように代理による投票又は無資格者による投票があつて、これ等の無
効投票が他の有効投票に混入された場合は右無効投票が、果して何人に対して投票
されたかは全然不明である。これを本件について言えば一一票の無効投票は何人の
得票中に混入されているか不明である。その混入の状態については、色々の場合を
想像することができるけれども、若し最高点者二〇五票のD乃至一二八票のEのい
づれかの一人に集中して混入しているものと仮定して、その得票中から差引いて見
ても、その得票数は最高位落選者Fの得票一一四より多いから以上の当選者は確実
な当選者ということができる。若し落選者の得票中に混入していると仮定しても、
もともと落選者であるから問題はない。しかるに一二四票のA1乃至一一四票のA
2、A3、A4のうち一人の得票中に、右一一票が集中して混入している場合を仮
定して、これを各人の得票から差引いて見れば、いずれも前記最高位落選者Fの得
票より少くなり、当選者となることはできない、勿論右に仮定したように一一票の
無効投票が多くの候補者のうちの、唯一人に集中して混入しているようなことは、
上告論旨のいうように確率の極めて少い場合であるに達いないけれども、かゝる場
合も可能性としては考え得られるのである。右のように考えて最高位落選者より下
位になる可能性のある者はこれを町村制第二七条にいう「有効投票ノ最多数ヲ得タ
ル者」とは断定できないのであつて、同条によつてこれを当選者とすることはでき
ない。これを要するに本件のように無資格者その他による帰属不明の無効投票が他
の有効投票中に混入されたときは、それ等無効投票を各当選者の得票から差引いて
見て、最高位落選者より下位となる者は、これを当選者と決定することはできない
のである。被上告人(宮城県選挙管理委員会)が本件訴願に対する裁決において示
した計算方法は以上の理由によつて是認し得るのであつて、原判決のこの点に関す
る説示はやゝ適当でないものがあるけれども、右裁決を是認した点において、結局
正当に帰するものといわなければならない。上告人の主張する計算方法は、上告人
独自の方法であつて正当なものと認め難く、採用することはできない、従つて論旨
は理由がない。
 第三点について。
 町村制第六条は町村内に住所を有する者を町村の住民とし、町村の住民でなけれ
ば原則として町村会議員の選挙権を有しないことは、同法第一二条の規定するとこ
ろである。上告人は右の住所に関し今日のような複雑な社会においては住所が二ヶ
所以上あつても差支えない旨主張するけれども、若し論旨のように一人で二ヶ所に
住所を有することができるものと解すれば同一人が二ヶ町村で選挙権を行使し或は
同一町村で二つの選挙権を行使し得る結果となり、かゝる結果は町村制の認めない
ところであつて、(町村制第一二条第三項参照)選挙に関しては住所は一人につき
一ケ所に限定されるものと解すべきである。従つて本件選挙に関し原審が選挙権の
ないものとしたG外七名はいづれも、選挙当日他の市町村内におけるその勤務先或
は嫁入先に住所があると判断される以上は、本町に住所がない者と認定されるのは
当然であつて、上告論旨のように郷里若しくは実家にも住所があるものとすること
はできない、更に上告人は選挙人名簿に登載された者はその名簿によつてその他に
住所を認め、選挙権を行使せしむべしと論ずるのであるが、かゝる解釈は本末転倒
の解釈であつて、住所を有するが故に住民となり、住民たるが故に、その属する公
共団体の選挙に参与する権利を有するものである(町村制第二二条ノ二第二項参照)
論旨は到底採用することができない。
 第四点について。
 原判決挙示の証拠によれば、H、G、Iは、原判示のごとく、本件選挙当日本町
内に住所をもつていなかつたことを認定することができる。論旨は畢竟原審の専権
に属する事実の認定を非難するものであつて、上告適法の理由とはならない。第五
点について。
 原審のJがKの代理投票をしたとの認定について上告人は経験則に反するものと
主張するけれども、原審のとつた証拠によれば、原判決のように認定できるのであ
つて、その認定は経験則に反するものと言うことはできない。上告人の主張するよ
うにJはLの代理投票をしたものと受け取れる証拠もないではないが、いづれを措
信するかは結局原審の権限に属することであり、上告の理由とすることはできない。
 よつて本件上告は理由がないから民事訴訟法第四〇一条第九五条第八九条を適用
して主文のとおり判決する。
 右は裁判官全員一致の意見である。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    藤   田   八   郎

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