弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人薬師寺志光、同松本重敏、同河村貢の上告理由第一点について。
 本件において、被上告会社(原告)は、先ず、上告会社(被告)は、昭和二五年
七月二五日訴外Dに宛てて、金額を金一、〇〇七、〇〇〇円、満期を同年一〇月一
五日とする本件約束手形一通を振出し、被上告会社は同年八月一五日右Dから右手
形の裏書譲渡を受け、さらにこれを訴外E信託銀行に白地裏書により譲渡し、同銀
行は所持人として満期の翌日これを支払場所に呈示して支払を求めたところ支払を
拒絶されたので、被上告会社はこれを買い戻して再び所持人となつた、よつて被上
告会社は上告会社に対し右手形金額の内金一、〇〇〇、〇〇〇円及びこれに対する
満期の翌日以降完済にいたるまで年六分の割合による金員の支払を求めると主張し、
次で予備的に、上告会社の経理課長Fは、右記Dと共謀の上、本件手形を偽造して
Dに交付し、被上告会社はDからこれを裏書によつて取得し、ついで前記の如く一
旦訴外E信託銀行に裏書譲渡したが、同訴外銀行により呈示のなされた日(昭和二
五年一〇月一六日)に、被上告会社は同銀行に対する償還義務を免れるために当時
の本件手形の所持人G銀行H支店に金一、〇〇〇、〇〇〇円を支払つて本件手形を
買い戻した、その結果、被上告会社は、右Fの故意または過失による不法行為によ
つて、本件手形の買い戻のために支出した金額に相当する損害を被つたものであり、
同人の本件偽造手形の作成行為は、同人の使用者である上告会社の事業の執行に付
きなされたものであるから、被上告会社は民法七一五条により上告会社に対し損害
賠償として右買い戻のために支出した金額及びこれに対する不法行為成立の日の後
である昭和二六年七月二九日以降完済に至るまでの損害金の支払を求める旨主張し
たものであることは、原判決並びに同判決の引用する第一審判決に徴して明らかで
ある。しからば、被上告会社の請求は、旧訴新訴ともに本件手形の取得という事実
関係に基いて、同一の経済的利益を追求するものであるから、旧訴と新訴は、とも
に請求の基礎を同じくするものというべきである(昭和三〇年(オ)第七〇号、同
三一年七月二〇日第三小法廷判決、民集一〇巻八号一〇八九頁参照)。しかも新訴
は、本件手形はFの偽造にかかるものであるとの上告会社の答弁に誘発されてなさ
れたものであること、記録に徴し明らかであつて、新訴請求の附加により著しく訴
訟手続を遅滞せしめるものではないと認むべきである。論旨引用の大審院判例は本
件に適切ではない。されば、原審が本件において新訴の追加的変更を請求の基礎に
変更がないものと認めて許容したのは、適法であつて、所論は採用しがたい。
 同第三、第四点について。
 論旨は、手形振出の権限を有しないFが代表取締役の印鑑を盗用して、擅に上告
会社名義の本件手形を偽造したのであるから、本件手形作成行為は、右Fが上告会
社の事業の執行に付きなしたものということはできないと主張する。しかし、本件
において、Fは上告会社の経理課長として、上告会社の手形振出しに関し、上告会
社の社印及び記名印その他のゴム印を使用して、代表取締役がその名下にその印章
を押捺しさえすれば、該手形が完成するばかりに手形を作成し、かつ手形をその受
取人に交付する職務権限を有し、なお、手形取得者からの問合に対し、その真否を
回答する事務を担当していたところ、同人はその権限を濫用し、約束手形用紙に擅
に上告会社名及び同会社代表者J名の各ゴム印並びに会社印を押捺し、J名下に同
人の印鑑を、同人の不在中同人の机の抽斗から盗み出して押捺し、本件手形を偽造
した上、これをDに交付し、被上告会社は、本件手形は上告会社が取引代金支払の
ために振出したもので期日には相違なく支払われる旨のFの回答を信じ、Dに割引
金を交付して本件手形をDから取得したものであることは、いずれも、原審の適法
に確定した事実である。そして、本件手形の振出行為が、外形上、上告会社の事業
の範囲に属することはいうまでもなく、しかも、Fが上告会社の経理課長として、
上告会社の手形振出に関し、前記の如き職務権限を有する以上、Fのなした本件手
形偽造の行為は、同人が上告会社の被用者として、上告会社の事業の執行に付きな
したものと認めるのが大審院判例(大正一三年(オ)第三七二号、同一五年一〇月
一三日、民刑聯合部判決、集五巻一二号、七八五頁、昭和七年(オ)第三二七一号、
同八年四月一八日第五民事部判決、集一二巻九号八〇七頁、昭和一九年(オ)二三
六号、同年六月一七日第四民事部判決、集二三巻一六号四七三頁参照)の趣旨に徴
しても相当であり、これと同旨に出でた原判決は正当である。引用の大審院判例に
関する所論に、独自の見解に基くものという外はなく、所論はすべて採用しがたい。
 その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の特例に関する法律」(昭和
二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわ
ゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    高   橋       潔
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    垂   水   克   己

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