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神戸地方裁判所 平成14年10月16日判決 平成14年わ第731号 常習累
犯窃盗被告事件
         主    文
被告人を懲役1年10か月に処する。
         理    由
(犯罪事実)
 被告人は,平成6年6月14日名古屋簡易裁判所において窃盗罪により懲役1年
(3年間執行猶予,同年12月27日同取消)に,同年11月28日茨木簡易裁判
所において窃盗罪により懲役10月に,平成10年10月12日岡山簡易裁判所に
おいて窃盗罪等により懲役10月にそれぞれ処せられ,いずれもそのころ前記各刑
の執行を受け終わったものであるが,さらに常習として,平成13年5月13日午
後1時55分ころ,神戸市A区Ba丁目b番地所在のパチンコ店「C」において,
遊技中のDのすきに乗じて,同人が管理するパチンコ玉2445個(景品交換56
86円相当)を窃取した。
(証拠)
(括弧内の検で始まる番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示
す。)
 省略
(補足説明)
 弁護人は,本件犯行は窃盗の常習性の発現として行われたものではないとして単
純窃盗罪にあたるとする。
 そこで検討すると,常習累犯窃盗罪における常習性とは反復して窃盗行為を行う
性癖であり,言い換えれば,機会があれば抑制力を働かせることなく安易に窃盗を
反復累行するという習癖があることと言える。そこで被告人にその習癖があるとい
えるかをみると,被告人の判示前科は平成6年以降のものであるところ,いずれも
本件同様周囲に人がいないとか対象物の所有管理者が目を離しているすきに財物を
盗んだものであり,その罪質が本件と極めて類似している。また,被告人は判示最
終前科の終了後約4か月(仮出獄後約5か月),本件の約1年4か月前の時期に占
有離脱物横領罪を犯して検挙されているが,これも前記各前科と同様の罪質を有す
る犯行である。
 確かに,被告人は前刑終了後等において働いていた時期も長く,被告人が前記各
前科前歴以外の盗犯を一定期間継続して反復累行していたことを認めるべき証拠は
ないが,先に検討したような前科等の時期,内容からは,本件犯行は,被告人の周
囲に対象物の所有管理者がいないすきがあれば抑制力を働かせることなく安易に財
物を盗むなどする習癖の発現としてなされたといわざるを得ない。弁護人は前記各
犯行がいずれも1回限りの犯行にとどまるとし,また本件は出来心による衝動的行
為であるとしてこれを強調し,常習性を争うが,被告人にはまさにそのような衝動
的にみえる窃盗行為の常習性が認められる。
 したがって,弁護人の主張は採用できない。
(累犯前科)
1 事実
 (1) 平成6年6月14日名古屋簡易裁判所宣告
   窃盗罪により懲役1年(3年間執行猶予,同年12月27日同取消)
   平成8年8月28日刑執行終了
(2) 平成10年10月12日岡山簡易裁判所宣告
 建造物侵入,窃盗罪((1)の刑執行終了後の犯行)により懲役10月
   平成11年7月2日刑執行終了
2 前科調書,1(2)の前科にかかる判決書謄本により認定
(法令の適用)
1 罰条           盗犯等の防止及び処分に関する法律3条,2条,
刑法235条
2 3犯加重         刑法59条,56条1項,57条,14条
3 酌量減軽刑法66条,71条,68条3号
4 訴訟費用の不負担     刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 被告人は,所持金をパチンコで使い果たして生活費に不足を感じるまま金品の窃
盗をしようと考えてほとんどためらいなく本件窃取行為を行ったもので,その動機
や態様にはしん酌すべき点が乏しい。また,被害感情も厳しい。
 しかし,被害金品が返還されていると認められること,被告人が前刑終了後働い
てもいること,したがってまた前述のとおり被告人には窃盗行為についての常習性
が認められるもののこれが極めて強いものとは認められないこと,被告人が自己に
不利なことを含めた供述をし,法廷でも反省の弁を述べていること,被告人が本件
後事故にあい,現在ハンディを有すること等の事情も認められるので,これらの諸
事情を総合考慮し,酌量減軽の上主文のとおり量刑した。
(求刑,懲役3年)
(出席した検察官苅谷昌子,国選弁護人坂詰幸次郎)
  平成14年10月16日
    神戸地方裁判所第11刑事係乙
            裁判官   橋本 一

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