弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
一 本件訴えのうち、次の1及び2の決定部分の取消しを求める部分を却下する。
1 被告が原告に対して別紙一の公文書目録記載1の各文書について平成九年九月
二六日付け財用確第一二一号の通知をもってした公文書一部公開決定のうち、「所
在地」欄の記載を非公開とした部分
2 被告が原告に対して別紙一の公文書目録記載2の文書について平成九年一〇月
一五日付け財用確第一三五号の通知をもってした公文書一部公開決定のうち、「資
産名」欄の地番部分及び「所在地」欄の記載を非公開とした部分
二 被告が原告に対してした次の1及び2の決定部分を取り消す。
1 主文第一項の1の公文書一部公開決定のうち、「単価」欄の記載を非公開とし
た部分
2 主文第一項の2の公文書一部公開決定のうち、個別資産の「帳簿価格」並びに
その内訳である「用地費」、「補償費」、「工事費」、「測量試験費」、「諸経
費」及び「支払利息」の各欄の記載を非公開とした部分
三 訴訟費用は、被告の負担とする。
       事実及び理由
第一 請求
 被告が原告に対してした次の各公文書一部公開決定(以下「本件各決定」という
ことがある。)のうちの非公開に係る部分を取り消す。
1 別紙一の公文書目録記載1の各公文書(以下「代替地一覧表」という。)につ
いて平成九年九月二六日付け財用確第一二一号の通知をもってした公文書一部公開
決定のうち、「所在地」及び「単価」の各欄の記載を非公開とした部分
2 別紙一の公文書目録記載2の公文書(以下「資産明細表」という。また、代替
地一覧表と併せて、「本件各公文書」ということがある。)について平成九年一〇
月一五日付け財用確第一三五号の通知をもってした公文書一部公開決定のうち、
「資産名」の地番部分、「所在地」及び個別資産の「帳簿価格」(内訳の「用地
費」、「補償費」、「工事費」、「測量試験費」、「諸経費」及び「支払利息」を
含む。)の各欄の記載を非公開とした部分
第二 事案の内容
一 概要
1 原告は、横浜市(以下「市」という。)が所有する普通財産等のうち将来の公
共事業用地取得に伴い地権者に提供する代替地として利用する土地の一覧表である
「代替地一覧表」及び横浜市土地開発公社(以下「公社」という。)が市の依頼等
により先行取得し、将来市又はその指定に係る第三者に譲渡することが予定されて
いる土地の一覧表である資産明細表について、被告に対し、横浜市公文書の公開等
に関する条例(以下「公開条例」という。)に基づき公開請求をした。
2 これに対し、被告は、代替地一覧表の「所在地」及び「単価」欄の各記載につ
いて、公開することにより、市が代替地を取得した個人又は法人の財産状況、経理
状況が明らかになり、また、将来の用地取得にも支障を来すなどとして、非公開と
する一部公開決定をし、資産明細表の「資産名」欄の地番部分、「所在地」及び個
別資産の「帳簿価格」(内訳を含む。)欄の記載について、公開することにより、
特定の個人が識別され、法人の経理状況等が明らかになり、また、近隣土地所有者
との用地交渉に支障を生ずるなどとして、非公開とする一部公開決定をした。
3 そこで、原告が右の決定(本件各決定)の非公開部分の取消しを求めた。
二 前提となる事実(末尾に証拠等の記載のないものは、当事者間に争いがない。
証拠の記載のあるものは、主に当該証拠により認定した事実である。)
1 当事者
 原告は、公開条例五条一号の「市の区域内に住所を有する者」であり、公開条例
二条一号の「実施機関」に対し公文書の公開を請求することができる。
 被告は、公開条例二条一号の「市長」であり、公文書の公開等の実施機関であ
る。
2 条例九条一項一号、二号及び六号の内容
 「第九条 実施機関は、請求に係る公文書に次のいずれかに該当する情報が記録
されているときは、当該公文書の公開をしないことができる。
(1) 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で
あって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの(法令又は条例(以下「法
令等」という。)の規定により行われた許可、免許、届出その他これらに相当する
行為に際して作成し、又は取得した情報であって、公開することが公益上特に必要
と認められるものを除く。)
(2) 法人(国及び地方公共団体を除く。)その他の団体(以下「法人等」とい
う。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開す
ることにより、当該法人等又は当該個人に明らかに不利益を与えると認められるも
の。ただし、次に掲げる情報を除く。
ア 事業活動によって生ずる危害から人の生命、身体又は健康を保護するため、公
開することが必要と認められる情報
イ 法人等又は事業を営む個人の違法又は著しく不当な事業活動によって生ずる支
障から市民の生活を保護するため、公開することが公益上必要と認められる情報
(3)から(5) 略
(6) 市又は国等が行う監査、検査、契約、交渉、争訟、試験、職員の身分取扱
いその他の事務事業に関する情報であって、公開することにより、当該事務事業の
目的が損なわれると認められるもの、特定のものに明らかに利益若しくは不利益を
与えると認められるもの、関係当事者間の信頼関係が損なわれると認められるもの
又は当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に著し
い支障が生ずると認められるもの
(7) 略」
3 本件各公文書の内容
(一) 代替地一覧表
 代替地一覧表は、市が所有する普通財産又は普通財産の例により管理されている
土地開発基金保有の土地のうち、代替地(公共事業用地取得に伴い移転を余儀なく
される地権者に対して提供する土地)として利用する土地の一覧表で、「代替地一
覧」及び「代替地一覧(保留)」からなり、別紙一の目録記載1の(1)が平成八
年度分、同(2)が平成九年度分である。別紙二は、その最初の頁の写し(乙六の
一の1頁)である。
 その記載事項は、「口座番号」(横浜市公有財産規則八五条による公有財産台帳
の口座整理番号)、「所在地」(行政区、町名及び地番)、「面積」、「地域地
区」(都市計画法による用途地域の種別)、「建ぺい率」、「容積率」、「完了公
告」、「建築協定等」、「取得年月日、事由」、「保有会計」、「単価」、「(提
示・処分)年月日」、「(提示・処分)相手方」、「備考」及び「台帳番号」の各
項目からなる。なお、「単価」は、一平方メートル当たりの帳簿価格であるが、そ
のほとんどのものが当該土地の取得原価である。市が自ら造成した場合には、当該
土地の取得原価に工事費、測量試験費、諸経費等を加算したものが帳簿価格となっ
ている。(以上全体につき、甲二・三の各一ないし四、乙六の一ないし四、弁論の
全趣旨)
(二) 資産明細表
 資産明細表は、公社が市の依頼等により先行取得し、将来的には市又は市の指定
する第三者に譲渡することが予定されている土地の平成九年三月三一日現在の一覧
表であり、公社が作成し、被告に提出したものである。別紙三は、その最初の頁の
写し(乙七の1・2頁)である。
 その記載事項は、土地を公有用地、代行用地、未成土地の三種に区分し、それぞ
れが、「区分」、「NO」(番号を意味する。)、「資産名」、「所在地」、「地
目」、「面積」、「取得年月日」(契約年月日を意味する。)、「取得目的」及び
「帳簿価格」の各項目からなる。さらに右の「帳簿価格」については、内訳とし
て、「用地費」(取得原価(売買金額)を意味する。)、「補償費」、「工事
費」、「測量試験費」、「諸経費」及び「支払利息」の各項目が示されている。ま
た、前記保有地の種別ごとに帳簿価格及びその内訳の総額が記載されている。(以
上全体につき、甲四ないし六、乙七、弁論の全趣旨)
4 本件公開請求
 原告は、公開条例に基づき、平成九年八月二〇日に代替地一覧表の、また、同年
一〇月一日に資産明細表の公開を請求した。(甲一・四)
5 本件各一部公開決定
(一) 代替地一覧表について
 被告は、代替地一覧表については、平成九年九月二六日付けで「所在地」及び
「単価」に関する記載部分を非公開とし、その余の記載部分を公開する一般公開決
定をし、そのころ、その旨を原告に通知した。
 その非公開理由は、
「公開条例九条一項一号、二号及び六号に該当
(1) 代替地一覧に記載されている土地の「所在地」を公開した場合、何人でも
閲覧等のできる土地登記簿に記録されている情報とを照合することにより、特定の
個人が判別されるおそれがあると認められるため。
(2) 「所在地」及び「単価」は、私法上の契約に係る重要な要素であって所在
地から法人が特定され、単価と面積を組み合わせることによって売買金額が想定さ
れて当該法人の経理・財産状況の一部が明らかになるので、これを公開することに
より当該法人の事業運営が損なわれるおそれがあると認められるため。
(3) 土地売買契約によって取得した代替地の「所在地」及び「単価」は、契約
当事者間が信頼関係で結ばれた私法上の契約行為における重要な要素に係る情報で
あり、これを公開することにより当該個人の財産状況の一部、又は当該法人の経理
状況の一部が明らかになるおそれがある。
 したがって、このような情報を本市が公開することは、本市と売買契約の相手方
である個人又は法人との間における信頼関係を損なうおそれがあると認められるた
め。
(4) 土地の価格は、当該土地の形状、地積等画地の土地価格形成上の諸要素を
個別的、総合的に比較考慮して算定される。
 したがって、これらを公開すれば近隣の土地の所有者等が、代替地一覧に記載さ
れている土地価格が当然自己所有の土地にもあてはまるものなどと誤解し、無用の
混乱を招来し、今後の用地取得の円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれがあると
認められるため。」というものであった。(甲二)
(二) 資産明細表について
 被告は、資産明細表については、平成九年一〇月一五日付けで、「資産名」のう
ちの地番部分及び「所在地」並びに個別資産の「帳簿価格」及びその内訳である
「用地費」、「補償費」、「工事費」、「測量試験費」、「諸経費」、「支払利
息」の各記載部分(以下右各記載部分を併せて「帳簿価格」ということがある。)
を非公開とし(保有地の種別ごとに右帳簿価格及びその内訳の総額は公開されてい
る。)、その余の記載部分を公開する公文書一部公開決定をし、そのころ、その旨
を原告に通知した。
 その非公開理由は、
「公開条例九条一項一号、二号及び六号に該当
資産名のうちの地番及び所在地を公開すると、土地登記簿の情報と組み合わせるこ
とにより特定の個人が識別されるおそれがあると認められるため。
 資産名のうちの地番、所在地及び個別資産の金額を公開することにより、法人の
経理・財産情報の一部が明らかになり事業運営が損なわれるおそれがあると認めら
れるため。
 資産名のうち地番、所在地及び個別資産の金額を公開することにより、近隣の土
地所有者との用地交渉が難航し、当該事業若しくは将来の同種の事業の円滑な執行
に支障が生ずると認められるため。
 資産名のうちの地番、所在地及び個別資産の金額を公開することにより、前所有
者と公社及び市との間の信頼関係が損なわれるおそれがあると認められるため。」
というものであった。(甲五)
6 所在地、地番の公開
 被告は、平成一〇年六月一日の本訴第三回口頭弁論期日において、代替地一覧表
の「所在地」並びに資産明細表の「資産名」のうちの地番及び「所在地」の各欄の
記載が開示された代替地一覧表及び資産明細表の写しを書証(乙六の一ないし四、
乙七)として提出した。原告は、そのころ、原告代理人を通じて、その交付を受け
た(弁論の全趣旨)。
三 主な争点
1 本案前の争点
 本訴口頭弁論期日において書証として提出された代替地一覧表の「所在地」並び
に資産明細表の「資産名」のうちの地番及び「所在地」に係る非公開決定部分の取
消しを求める訴えの利益が失われたか。
2 本案の争点
 本件各一部公開決定に係る非公開部分が公開条例九条一項の非公開情報に該当す
るか。
四 争点に関する当事者の主張
1 訴えの利益
(一) 被告の主張
 被告は、本訴口頭弁論期日において、代替地一覧表の「所在地」並びに資産明細
表の「資産名」のうちの地番及び「所在地」の各欄の記載を公開した文書を書証と
して提出したので、本件各一部公開決定のうち右の各記載部分を非公開とした部分
の取消しを求める訴えの利益は失われた。したがって、本件訴えのうち右非公開部
分の取消しを求める部分は不適法である。
(二) 原告の主張
 前記非公開部分が事実上公開されたとしても、これを非公開とした決定それ自体
が取り消されない限り、その取消しを求める訴えの利益はなお存続するというべき
である。
2 公開条例九条一項一号該当性の有無
(一) 被告の主張
(1) 代替地一覧表の「所在地」が公開されると、何人でも閲覧できる登記簿謄
本と照合するなどして売買の相手方である特定の個人が識別される。
また、「単価」は、その大部分が土地の取得原価(売買価格)であるから、その公
開により個人の収入が明らかとなり、個人の財産状況が判明する。これらは、通常
公表されたくない個人のプライバシーに関するものであるから、公開条例九条一項
一号の非公開情報に当たる。
 なお、代替地一覧表は、行政体内部において作成されたものであるから、非公開
の例外である同号かっこ書の「法令等の規定により行われた許可…その他これらに
相当する行為に際して作成し…た」情報にも当たらない。
(2) 資産明細表の「資産名」のうちの地番及び「所在地」並びに「帳簿価格」
及びその内訳の各欄の記載が公開されると、登記簿の記載とを照合することによ
り、契約の相手方である個人とその売買価格そのものが容易に判明する。また、資
産明細表が公開条例九条一項一号かっこ書に該当する情報ではないことについて
は、代替地一覧表について前述したことがそのまま当てはまる。
(二) 原告の主張
 不動産登記制度を利用する個人及び法人は、これにより権利変動の内容が一般に
知られることを当然受忍すべきであり、このことは、権利の移転先が自治体であっ
ても、例外ではない。しかも、本件各公文書それ自体には前所有者の名義は記載さ
れておらず、また、それが性質上公開に親しまないものともいえないから、(一)
の各情報は、そもそも、「個人に関する情報」には当たらない。仮にこれに当たる
としても、公有地の所在、取得価格は公開の必要の大きいものであるから、同号か
っこ書の「公開することが公益上特に必要と認められるもの」に該当する。
3 公開条例九条一項二号該当性の有無
(一) 被告の主張
 代替地一覧表の「単価」の欄の記載の公開により法人の土地取引に関する個別の
契約内容が明らかとなると、当該法人の事業活動における地位に不利益が及ぶなど
の支障が生ずる。資産明細表の「帳簿価格」及びその内訳についても同様である。
よって、これらは標記の二号の非公開情報に当たる。また、文言上、同号ただし書
の非公開の例外となる情報に当たらないことは明らかである。
(二) 原告の主張
 本件各公文書それ自体には、土地売買の相手方である法人の名義は記載されてい
ない。したがって、本件各公文書は、公開条例九条一項二号の「法人等に関する情
報」には当たらない。仮にこれに当たるとしても、公開することにより「当該法人
等に明らかに不利益を与える」とはいえない。
 さらに、地方公共団体又は土地開発公社(以下「地方公共団体等」という。)が
土地を買い取る場合、地価公示法の公示価格を規準とする価格によるべきものとさ
れており(公有地の拡大の推進に関する法律ー以下「公有地拡大法」という。ー七
条)、右公示価格は、毎年公開されていることからすれば、これは、公知の情報と
変わりがない。したがって、右取得価格に関する情報を公開しても売主に殊更不利
益を与えるものではなく、右情報は、公開条例九条一項二号の非公開情報には当た
らない。
4 公開条例九条一項六号該当性の有無
(一) 被告の主張
(1) 信頼関係の破壊
 代替地一覧表の「所在地」及び「単価」の各欄の記載は、「市…が行う…契約…
に関する情報」であって、相手方との信頼関係に基づき協議、了解の上締結する私
法上の契約行為に関わるものであり、一般的に明らかにする性格のものではない。
また、右情報は、契約の相手方である個人の財産又は法人の経理に関するものであ
る。したがって、契約の一方当事者が市であるとの理由だけでこれらの情報が常に
公にされることとなると、市と当該法人又は個人との間の信頼関係が損なわれる。
(2) 用地買収の支障
 公有地とするための土地の取得であっても、個別の価格形成要因を考慮し、当事
者間の交渉の要素が入り込むことは否定することができない。殊に、代替地につい
ては、あくまで任意の買収であって、強制収用の余地はないから、交渉の要素は否
定することができない。そして、公共事業を進めるに当たっては、用地買収に関す
る複雑困難な交渉が不可欠であるところ、代替地一覧表の「単価」のような売買価
格に関する情報を公開することは、公共事業用地としての買収地と近接した位置に
存する場合が多い代替地の買収に先立ち市が自らの手の内を見せるに等しく、代替
地の候補地の所有者は、右価格が当然に自己所有地についても当てはまるものと誤
解するなど、買収交渉を著しく困難にする。また、市との売買価格が常に公にされ
るとなると、そもそも土地所有者が市との契約自体を躊躇するようになるなど、用
地買収に支障を来すおそれがある。
(3) 「保有資産明細表」の「資産名」の地番、「所在地」及び「帳簿価格」に
ついても、土地取得の主体が市ではなく、公社である点が異なるのみで、右(1)
(2)に述べたことがそのまま当てはまる。
(4) 他の自治体の動向
 なお、公有地の取得価格に関する情報については、他の自治体においても非公開
としているところが相当数あり、公開について未だコンセンサスが得られていない
状況にある。しかも、川崎市や鎌倉市等の公開事例も未だ僅少であり、また、これ
らの自治体においても取得価格の内訳までは公開していない。
(5) 以上のことから、右各情報は、公開条例九条一項六号の非公開情報に当た
る。
(二) 原告の主張
 買収継続中の土地であればともかく、市や公社が過去に取得した土地の価格を公
開した場合に、直ちに将来の土地買収に支障を来すとはいえない。また、地方公共
団体等が土地を取得する場合、「公示価格」を規準とした価格によるべきところ、
公示価格は、一般に公開されている情報であるから、当該土地につき、基準地の公
示価格から右取得価格を近似的に把握することは容易である。そして、市や公社が
買収済みの土地の買取価格は、買収予定地の価格の参考になりうるに過ぎず、これ
を公開したとしても、さしたる弊害があるわけではない。
 ちなみに「横浜市の公共用地取得に伴う損失補償基準規定」九条は、「正常な取
引価格」とは近傍類地の取引価格を基準とし、土地価格形成上の諸要素を総合的に
比較考慮して算定されるものとしている。したがって、買収継続中の土地を念頭に
おいたとしても、その買受の申出をした自治体側が当該買収地の所有者に対し既買
収地との条件の差異を説明の上、価格の交渉をすれば、用地買収に支障を来すとは
考えられない。
 なお、川崎市、鎌倉市等相当数の自治体が公有地の所在地、取得価格に関する情
報を公開し、公開により用地買収等に格別の支障が生じたことも認められない。こ
のような自治体の動向に照らしても、市や公社の保有する土地の所在地、取得価格
に関する情報を殊更秘匿すべき理由はない。
 よって、係争の情報は、公開条例九条一項六号の非公開情報には当たらない。
第三 争点に対する判断(証拠により認定した事実は、当該事実の前後に適宜、主
な証拠を略記する。争いのない事実及び一度認定した事実はその旨を断らない。)
一 訴えの利益の有無
1 原告が本件訴えにおいて本件各公文書の非公開部分に係る本件各決定の取消し
を求める利益は、当該非公開部分に係る決定が取り消されることにより、右非公開
部分の公開を受けること、すなわち、右非公開部分の閲覧又はその写しの交付(公
開条例二条三項)を受けることにあると解される。ところが、前記のとおり、被告
は、本訴第三回口頭弁論期日において、代替地一覧表の「所在地」並びに資産明細
表の「資産名」の地番及び「所在地」の各欄の記載を公開した文書の写しを書証と
して提出し、原告がこれを受領している。したがって、特段の事情がない限り、本
件各決定のうちの右各記載部分を非公開とした部分の取消しを求める訴えの利益
は、失われたものというべきである。
 そして、証拠(甲一五、一六)によれば、公社等の保有地は公共事業用地や代替
地としてあらかじめ確保したもので、事業化の段階でいずれその所在地が明らかと
なること、右土地については、事業化されるまでの間一時貸付や市民開放等有効利
用を進める必要があること、そこで、被告は、これらの点を考慮し、それまでの方
針を改め平成一〇年五月一八日から所在地情報を公開することとし、これに伴い、
同年六月一日の本訴第三回口頭弁論期日において、前記各情報を書証として提出す
るに至ったものと認められる。右経緯からすれば、右非公開部分に係る本件各決定
が事後的に被告により取り消されたに等しいものということができるから、原告に
なお右非公開部分の取消しを求める訴えの利益を認めるべき特段の事情があるとい
うことはできない。
 よって、本件訴えのうち右非公開部分に係る本件各決定の取消しを求める部分は
不適法といわざるを得ない。
2 原告は、前記各記載部分を非公開とした決定それ自体が被告により取り消され
ない限り、右非公開部分の取消しを求める訴えの利益は失われない旨主張する。
 しかし、本件訴えにおいて、右非公開部分の取消しが認められたとしても、原告
は、右非公開部分の開示を受けられるに過ぎず、これは、原告が右非公開部分を開
示した文書を書証として受領している状態に変わるものではない。よって、原告に
取消しを求める法的利益があるとはいえず、原告の右主張は採用することができな
い。
二 単価及び帳簿価格に関する非公開決定の適否
 被告は、本件各公文書の前記「単価」及び「帳簿価格」欄の記載が、公開条例九
条一項一号、二号及び六号の非公開情報に当たると主張するので、以下、その当否
について検討する。
1 公開条例九条一項一号該当性の有無
(一) 公開条例九条一項一号の趣旨とその適用範囲
 公開条例九条一項一号は、「個人に関する情報…であって、特定の個人が識別さ
れ、又は識別され得るもの」を非公開とし得る旨規定している。これは、公開条例
が「公文書の公開等を求める市民の権利を明らかにするとともに…、市政に対する
市民の理解を深め、…もって地方自治の本旨に即した市政の発展に資することを目
的とした」ものである(一条)ことに加え、「実施機関は、個人に関する情報がみ
だりに公にされることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」(三条)
としていることの現れであり、公文書に個人情報が記録されているときは、その部
分又はその公文書(分離できない場合)を非公開とすることにより、個人情報が公
開されて当該個人が不利益を受けないようにする趣旨のものである。したがって、
「個人に関する情報」とは、個人のプライバシー保護の見地から個人の利害にかか
わる情報一切をいい、「特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」とは、当
該情報それ自体から、あるいは当該情報と容易に入手し得る他の情報とを組み合せ
ることによって特定の個人に関するものであることが識別され、又は識別され得る
ものをいうと解される。
 ただし、個人に関する情報ならいかなるものでも非公開とされると、今度は市政
に対する市民の理解を深めることができない場合が頻繁に生じる。公開条例九条一
項一号がかっこ書で、個人に関する情報であっても法令に基づき行われた許可等に
際し作成又は取得された情報を非公開情報から除いているのは、個人に関する情報
であると同時に公的な性質を有する情報について、プライバシー保護と市政の理解
に資することの二つの目的達成のために、両者のバランスを考慮したものと解され
る。そして、個人的情報にもプライバシーとしての要保護性の強いものから弱いも
のまで種々あるが、それが同号かっこ書に該当するものであれば非公開情報から除
外されるべきものと規定されており、また公知の事実のようなプライバシーとして
の要保護性が全くないものは、同号かっこ書該当性を問題とせずに、公開情報に区
分してよいと解される。そうすると、少なくともプライバシーとしての要保護性の
弱さと公的行為に際して作成されたということが公開性を促す要素であるというこ
とができるので、その両要素を多く有する情報、例えばそれ自体は個人的情報では
ないものの他の情報と照合することにより個人を識別させるという意味で個人的情
報に該当するというようなもので、プライバシーとしての要保護性が弱く、一号か
っこ書に定めるのに準じる公的機会に作成されたというような情報は、一号本文に
いう非公開情報には該当しないものとして、公開すべきものとなると解するのが相
当である。そうしないと、一号かっこ書に準じるような公的行為に際して作成又は
取得される情報でプライバシー保護の要請が強くないものが、形式的に個人的情報
に該当する一事で非公開とされ、その結果としてその情報と一体又は不可分的な関
係にある公的情報までが連動して非公開とされてしまい、プライバシー保護と市政
理解に資することをバランスよく満足させようとする同条一項一号の趣旨を損なう
ことになるからである。
(二) 係争の情報の特徴
(1) 端緒性
 本件では、代替地一覧表及び資産明細表の「所在地」欄の記載が本訴継続中に開
示されたので、代替地一覧表及び資産明細表の「単価」及び「帳簿価格」の欄の各
記載が本案の係争となっている。この残る係争の情報(以下「係争情報」というこ
とがある。)は、それ自体としては市又は公社の保有資産に関する情報ではある
が、これに所在地と登記簿の記載とを照合すると、譲渡人と譲渡価格とを判明させ
る可能性が高いので、広い意味では個人的情報に含めることが相当と解されるもの
である。いわば、個人的情報の端緒となる情報である。
(2) 公的関連性(発生状況)
 次に、係争情報がどういう行為に際して作成又は取得された情報であるかを検討
する。本件においては市が公共事業用地を取得するに際し必要に応じて地権者に提
供するための「代替地」の取得及び市によって設立された特殊法人である公社が市
の委託により市に譲渡するための土地を先行取得する場合の土地の取得価格が問題
となっているものである。都市計画施設の区域内又は都市計画区域内に所在する土
地を有する者が、右の土地を譲渡しようとする場合には当該土地の所在及び面積、
譲渡予定価額、譲渡しようとする相手方等の事項を都道府県知事に届け出なければ
ならない(公有地拡大法四条一項)し、市や公社からの当該土地の買取りを希望す
る場合には当該土地の所在及び面積、譲渡予定価額等及び買取希望の旨を都道府県
知事に申し出ることができ(同法五条一項)、県知事から買取協議を行うものと指
定された地方公共団体等は、右の譲渡予定者と買取りの協議を行う(同法六条一
項)。右届出等に係る土地を買い取る場合、地価公示法六条による公示価格を規準
として算定した価格をもってその価格としなければならない(同法七条)。このよ
うな買取協議が整うと売買契約が成立することになる(なお、地方自治法九六条参
照)。
 また、この譲渡については、租税特別措置法により譲渡所得の特別控除が認めら
れる(同法三四条の二第二項四号)。
 したがって、この譲渡は、譲渡人たる私人が名実ともに私人である者に譲渡する
売買とは異なり、公的な性質をある程度帯びその限度で特殊性の加わった売買とい
うことができるわけである。そして、代替地一覧表及び資産明細表は、そのように
して成立し、市又は公社が買い受けて取得した資産の一覧表である。なお、本件で
は右の公有地拡大法に基づく以外の方法で取得した資産があるとの特段の事情を窺
わせる証拠はない。係争情報は、このような法律関係における譲渡価格を判別させ
る情報である。そして、単価や帳簿価格を公開すると、譲渡価格の反面としての市
や公社が代替地取得のためにいくらを要したかということが明らかになる。反対に
これが非公開とされると、この価格を明らかにする他の入手可能な手段が皆無に等
しいため、この価格は全く分からなくなる。したがって、係争情報は、公開するこ
とが公益上特に必要と認められる情報ということになる。
(3) プライバシーとしての要保護性の程度
 次に係争情報のプライバシーとしての要保護性の強弱の度合いを検討する。ま
ず、情報の種別から見て、いわば客観的に見て、プライバシーとしての要保護性の
強いものかそうでないかを見るに、土地の譲渡価格は、個別取引による資産の価格
であり、プライバシー性はある。しかし、その保護の強さは、個人の全保有資産が
公開されることと比べると、それほど高くはない。また、その者が土地を有してい
たことを知っていた者からすると、それが売却されて現金に変わったということ
は、資産の保有態様が変わったというに過ぎず、驚くほどのことではないから、当
該相手方との関係では、保護の必要の高い情報というものではない。
 次に、市や公社による公有地の取得価格は、公示価格を規準に一律に決められる
性格の強いものであり、私人間の自由な交渉のように当事者間の個別事情に基づく
交渉結果が売買価格に反映される要素は比較的少ない。このようにある程度譲渡価
格は見当がつくといえるので、公開されても、プライバシーの侵害の程度はそれだ
け低いということができる。さらに、前記のとおり、ここでの土地の譲渡は、私的
な取引とは言い切れない公的面を有する取引であるから、登記簿を調査して調べよ
うとするような他人に対しても誰がいくらで譲渡したかがおよそ判明しないはずで
あると期待することは正当化されない。
(三) まとめ
 以上のとおり、前記「単価」及び「帳簿価格」の各欄に記載の係争情報は、それ
自体としては個人的情報ではないものの他の情報と照合することにより個人を識別
させるという意味で広い意味での個人的情報に該当する。そして、それは、個人の
資産全部の情報ではなく一取引のものであって、地価公示法による公示価格を規準
として定められた価格についての情報であり、また当該取引について租税特別措置
の適用もあるため非公開とされるはずであると誰しもが期待するようなものではな
いこと等から、プライバシーとしての要保護性の弱い情報であるということができ
る。さらに、係争情報は、公有地拡大法に基づく譲渡予定の届出(同法四条一項)
又は買取希望の申出(同法五条一項)及び買取協議(同法六条一項)の場で合意の
整った価格となるのであり、公開条例九条一項一号かっこ書に準じる機会に得られ
た情報ということができ、市又は公社の取得価格を明らかにするという意味で公開
することの必要性が特に高いというものである。そうすると、係争情報は、公開条
例九条一項一号本文の「個人に関する情報」には該当しないものと解するのが相当
である。そして、このように解釈しても公開条例九条一項一号の趣旨に反すること
にはならないのであり、反対に係争情報が同号本文の非公開情報に該当し、かつ同
号かっこ書の除外情報に該当しないという解釈は、あまりに形式的でかえって同号
の趣旨に反するというべきである。
 なお、被告は、代替地一覧表又は資産明細表が内部文書であるから公開条例九条
一項一号かっこ書にいう「法令に基づく免許等の行為に際して作成された情報」に
当たらない旨を主張する。しかし、前記のとおり、一号本文の非公開個人情報に該
当しないと解するので、右被告の主張は、的を得ないことになる。
2 公開条例九条一項二号該当性の有無
(一) 公開条例九条一項二号の趣旨
 公開条例九条一項二号本文は、「法人(国及び地方公共団体を除く。)その他の
団体(以下「法人等」という。)等に関する情報…であって、公開することによ
り、当該法人等…に明らかに不利益を与えると認められるもの」は非公開とし得る
旨を規定する。同号の右の引用部分は、法人の事業等に関する情報で、その公開に
より当該法人の営業上の地位その他に著しい不利益を及ぼすものについて非公開と
し得るものとした趣旨と解される。
 そして、公開条例一条、三条、五条等が公文書の公開を求める市民の権利を十分
に尊重する旨を規定していること等からみて、例外的に九条一項二号の非公開事由
に当たるといえるためには、右非公開事由に該当する事実が客観的に認められる場
合でなければならないと解される。
(二) 係争情報と二号非公開情報
 代替地一覧表及び資産明細表の「所在地」欄の各記載と登記簿謄本とを照合する
ことにより、法人等が当該土地を市や公社に売却した際の譲渡法人等の名称が判明
する可能性が高い。次に、前記「単価」及び「帳簿価格」の各欄の記載が公開され
ると、譲渡法人等が市や公社に土地を譲渡した際の価格が判明する可能性が高い。
そうすると、「単価」及び「帳簿価格」の各欄の記載は、譲渡した当該法人等がい
くらで譲渡したかを判明させる情報であり、法人等に関する情報に該当する。
 しかし、右の譲渡価格は、法人等の資産全部ではなく、一取引についてのもので
ある。また、公有地拡大法に規定された公示価格を規準とするのがここでの譲渡で
あり、当該法人の財産の運用状況や経営状況等の特殊性が推測されるおそれは少な
い。したがって、係争情報は、その公開により当該法人の営業上の地位等に著しい
不利益が生ずるおそれがあるとは認められず、公開条例九条一項二号本文の非公開
情報には当たるとは認められない。
3 公開条例九条一項六号該当性
(一) 公開条例九条一項六号の趣旨
 標記の規定は、公開請求に係る公文書に、「市…が行う…契約…その他の事務事
業に関する情報であって、公開することにより、…関係当事者間の信頼関係が損な
われるものと認められるもの又は当該事務事業若しくは将来の同種事務事業の公正
若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずると認められるもの」に該当する情報が記
載されているときは、当該公文書の公開をしないことができると規定する。
 右引用部分は、信頼関係の保護及び市等の行う事務事業の公正又は円滑な執行を
確保することを目的とした非公開事由である。
 そして、同号の非公開情報に当たるといえるためには、前同様、右のような支障
が客観的に認められることを要する。
(二) 係争情報と六号非公開情報
(1) 前記のとおり、代替地一覧表は、市が将来の公共事業に伴い転出者に対し
代替地として提供することを目的として取得・保有している土地の一覧表であり、
資産明細表は、市等への譲渡を予定して公社が先行取得した土地の一覧表であるか
ら、前者の「単価」及び後者の「帳簿価格」の各欄の記載は、市又は公社(公開条
例九条一項六号の「国等」に該当する。ー同項四号)の「事務事業に関する情報」
に当たる。
(2) 取得の相手方との信頼関係について
 前記のとおり、公有地の取得価格は、相手方が何人であるとにかかわらず、当該
土地の客観的価値に主眼をおいて一律に決定され、相手方との交渉の余地の少ない
ものである。また、通常の私人間の売買と異なり、公示価格を規準とする価格をも
って譲渡価格とする旨が法定され、租税特別措置の優遇が受けられることとされて
おり、特殊性があるので、それにもかかわらず、譲渡価格が全く非公開にされると
期待するのは社会通念に反する。むしろ、登記簿等の情報とを照合するような者に
対しては、譲渡者及び譲渡単価等は知られることがあるかもしれない程度に捉える
のが市民感情であると思われる。
 そうすると、譲渡価格が公開されても、当該相手方の意に反してその私的事項を
公にする結果となるとはいえない。
 以上により、係争情報は、公開することにより関係当事者との信頼関係を損なう
ものとは認められない。
(3) 用地買収上の支障の有無
 市や公社による土地の取得価格は、公示価格を規準とするものである。公示価格
は、性質上は定まったものではあるが、具体的な金額が機械的にはじき出されるも
のではない。したがって、ある譲渡土地についての価格が判明しても、近隣地の譲
渡価格が当然に同じ額になるものではないし、機械的に価額が算出されるものでも
ない。のみならず、元来、形状、地形、公共施設との位置関係等の個別要因によっ
て、取得価格に差異が生じることはもとより当然である。
 してみれば、前記「単価」や「帳簿価格」を公開したからといって、近隣地の所
有者が、将来の土地買収に際し、そのような個別要因の差異を無視して、右取得価
格と同一の価格条件に固執するとは考え難いし、仮に固執する者がいても、実効性
のある行動ではないから、このような情報の開示が、将来の事務にとって有意な支
障になるということはできない。悪用のおそれは、取るに足りない。同様に、譲渡
価格が判明するようだと、手の内を見せてしまうので、将来の同種事業を進めるこ
との支障となるという主張も、公示価格の算定において個別要因の違いによる価格
の違いがもたらされることを無視した杞憂であり、現実的な事務支障とは認められ
ない。
 なお、被告は、譲渡価格が判明するような取引であると土地所有者が取引をしな
くなる旨を主張するが、誰しも常にそのような行動に出るとは考えられない。特に
租税特別措置が施され、譲渡に伴う税負担が低いという譲渡の動機付けがある以
上、完全非公開でないと譲渡に応じないのではないかとの懸念は、必ずしも現実的
ではない。
(4) まとめ
 以上のことから、係争情報は、その公開により、将来の同種事業の執行に著しい
支障が生ずるものとは認められず、公開条例九条一項六号の非公開情報には当たら
ない。
4 他の自治体の動向
(一) 公開状況
(1) 川崎市長は、同市の公文書閲覧請求に対し平成九年一〇月二二日付けで同
年九月三一日現在の川崎市土地開発公社の保有に係る公有用地の原価(用地、補
償、工事、測量及び諸経費の合計額)、支払利息及び価格(原価と支払利息の合計
額)の閲覧を認めている(もっとも、原価については、前記各費目の総額が公開さ
れているに過ぎないので、保有地の取得価格が直ちに判明するわけではない。)。
また、同市は、同年一一月一四日付けで、同市の特別会計現有地の原価(諸費用を
含む)の閲覧を認めている。(甲七、八の各一、二)
(2) また、大和市土地開発公社は平成七年度において、綾瀬市土地開発公社は
平成八年度において、それぞれ決算書の附属書類である「公有用地明細表」におい
て、その取得に係る公有用地について、個別に用地費、補償費、工事費、委託料等
及び支払利息の各金額を公表している。(甲一二、一四)
(3) 鎌倉市長は、同市の公文書公開請求に対し平成一〇年三月一九日付けで同
年一月末日現在の同市土地開発公社の所有地の取得価格等を個別に記載した「鎌倉
市土地開発公社所有財産一覧表」、同年三月一〇日現在の同市土地開発基金の所有
に係る公有地の取得価格等を個別に記載した「土地開発基金 不動産現在高」及び
「土地開発基金(狭あい道路用地)現在高」を公開している。また、同市土地開発
基金は公文書公開とは別にその保有に係る土地の所在地・取得価格を任意の閲覧に
供している。(甲一七の一・二・五・六、甲二三の一)
(二) 公開による支障の有無
 情報公開その他の機会に公有地の取得価格を公開した鎌倉市、川崎市、綾瀬市に
おいて、これまでの公開実績には限りがあるものの、公開により以後の用地買収に
支障を来すなどの弊害は生じていないとの調査嘱託結果がある。(甲二三の一、
三、五)
 もっとも、証拠(乙九)によれば、政令指定都市の中には、土地開発公社保有の
土地の取得価格の公開についてプライバシー侵害のおそれがあるなどの理由で未だ
消極の立場をとるものが見られることが認められる。
5 以上のとおり、前記「単価」及び「帳簿価格」は、公開条例九条一項一号本文
にいう非公開個人情報に該当しないし、また同項二号及び六号の非公開情報には該
当しない。なお、前記のとおり、同種情報の扱いについての他の自治体の動向も、
結論を左右するほどのものではない。したがって、本件各決定のうち係争情報を非
公開とした部分は違法といわざるを得ない。
三 結論
 以上によれば、本件訴えのうち、本件各決定に係る代替地一覧表の「所在地」欄
並びに資産明細表の「資産名」欄の地番部分及び「所在地」欄の各記載を非公開と
した部分の取消しを求める部分は不適法であるから却下し、その余の請求に係る部
分は理由があるので認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七
条、民事訴訟法六四条を適用して、主文のとおり判決する。
横浜地方裁判所第一民事部
裁判長裁判官 岡光民雄
裁判官 近藤壽邦
裁判官 近藤裕之

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛