弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
  本件控訴を棄却する。
  控訴費用は控訴人の負担とする。
          事実及び理由
 第1 控訴の趣旨
 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
 2 被控訴人の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
 第2 事案の概要
 原判決の当該欄に記載のとおりである。ただし,3ページ24行目の「1億9484万4
964円」を「1億9498万4964円」と改める。
 第3 当裁判所の判断
 1 元金に対する遅延損害金のように基本債権に附帯する債権は,強制執行申立
て時以降基本債権の支払済みまでの間のもののように申立て時においては未発生
のものであっても,基本債権とともに強制執行を申し立てる場合には,配当等により
請求債権が満足される時点において,それが発生していることを明白に確認し得る
から,このような債権を請求債権とする強制執行申立ても許容されるものと解され
る。ところで,金銭債権に対する差押えの申立てにあっては,請求債権額が第三債務
者の支払額に影響を及ぼすことがあり,そのような場合,附帯債権の額を計算しなけ
ればならないこととなると第三債務者に対し過大な負担を負わせることとなることか
ら,附帯債権額については申立て時までのものに限定して差押えの申立てをするの
が実務慣行となっている。このような慣行の成立の背景には,金銭債権の差押えの
場合は,第三債務者に差押命令が送達されてから1週間を経過したときには債権者
に取立権が生ずるために早期に取り立てることが可能であることや,差押えが競合し
ても第三債務者が速やかに供託した場合には比較的早期に配当が可能であるた
め,申立て後の附帯債権の額も少額にとどまることが多いことがあるものと考えられ
る。しかし,配当に至るまでが短期間にとどまらない場合もあることは本件を見ても明
らかであり,法がそのような場合まで一律に申立ての時点までの附帯債権のみを基
礎として,債権執行の申立てや配当手続の実施を予定していると解することは,不動
産執行手続の場合や,債権執行であっても執行裁判所による換価が予定されている
場合には基本債権の支払済みまでの附帯債権を請求債権とすることを容認している
現行実務とも整合しないことに照らしても,到底採り得ないところである。また,一般
的に,強制執行の申立てにおいて特定された請求債権につき,それを配当等の時点
までに拡張し,申立て時における請求債権以外の債権につき配当等を求めること
は,それが申立ての際の行為に反し,他の債権者の利益を害することとなることか
ら,禁反言により許されないと解されるが,これに対し,上記のように【要旨】金銭債
権差押えの申立てにおいて附帯債権が請求債権とされ,ただ,その額を申立て時ま
でに限定して確定金額として表示されているという場合には,第三債務者の負担軽
減のための実務慣行に従ったものと見られ,債権者は当該附帯債権を確定的に限
定する意思とは必ずしも解されないというべきであるから,債務名義に係る請求権の
一部に限定した執行の申立てと見ることはできず,しかも,附帯債権については申立
て時までに限定した差押命令を得たが,差押えの競合により配当手続が実施される
に至ったような場合には,後に附帯債権を拡張するについて合理的な理由があると
いうべきであるから,配当手続において債権者が債権計算書を提出し,そこにおいて
配当等の時点までの附帯債権をも含めたときには,申立て後の附帯債権についても
補充があったものと認め,これを配当計算の基礎に加えるべきものと解される。これ
に対し,附帯債権を申立て時までに限定した場合であって,配当等の時点までの附
帯債権を含めた債権計算書が提出されていないときには,申立て時以降の附帯債権
を請求する債権者の意思が確認し得ない以上,必ずしもこれを配当の基礎に加える
必要はないというべきである(執行裁判所としては,債権計算書を提出した債権者に
ついて配当等の時点までの附帯債権を配当の基礎とする場合には,公平の見地か
ら,債権計算書を提出しない債権者についても同様の取扱いをすることは必ずしも許
されないものではないと解される。)。
 控訴人は,上記のように解すると,高率の遅延損害金の約定をする債権者に多額
の配当を得させることとなり,経済取引においてより高率の遅延損害金を定めること
となって取引界を混乱させることとなると主張するが,そのような問題があるとすれ
ば,金利の規制の一環として解決されるべきものであり,不動産に対する強制執行に
おいては認められているにもかかわらず,ひとり金銭債権に対する執行手続におい
てのみ遅延損害金の配当を制限することにより解決を図るべき問題ではないから,
失当というほかはない。
 2 そうすると,本件においては,被控訴人は配当に先立って執行裁判所に対し主
たる債権1億9498万4964円,附帯債権3億5076万3865円,合計5億4574万
8829円とする債権計算書を提出しているからこの合計金額を配当の基礎としなけ
ればならないのに対し,控訴人においては,債権計算書を提出していないから,当初
の請求債権額を配当の基礎とすれば足りる。したがって,配当の基礎となる債権額
は,被控訴人が5億4574万8829円,控訴人が,その申立てに係る債権差押命令
に表示された請求債権額である1億8067万6134円から前回配当額である1876
万6484円を控除した1億6190万9650円となり,これを基礎として控訴人及び被
控訴人に対し今回の配当可能額である6510万9438円を配分すると,被控訴人に
は5021万2639円,控訴人には1489万6799円となる。
 なお,債権計算書を提出して当初の請求債権を補充すれば,差押命令申立て時以
降の附帯債権を配当の基礎とすることができるが,控訴人は,実務慣行ことに本件
における執行裁判所である東京地方裁判所民事第21部の取扱いを前提に債権計
算書を提出しなかったものであることが窺われるものの,被控訴人と控訴人との間に
は前回配当に当たっても配当異議訴訟が係属し,1審判決が本判決とほぼ同様の解
釈を示し,申立て後の附帯債権の補充には債権計算書の提出が必要である趣旨を
判示した上,同事件に限っては慣行に従って計算書を提出していない控訴人も同様
に扱うこととするとして控訴人についても配当日までの附帯債権が算入され,同判決
は確定したのであり(甲6の1,2),したがって,今回の配当においても同様の事態が
生ずることは十分に予想されたにもかかわらず,控訴人は債権計算書を提出してい
ないのであるから,上記のように慣行に従ったとの事情があったとしても,これを特別
に考慮する必要はないというべきである。
 また,本件においては,控訴人は,控訴人への配当の基礎に配当日までの附帯債
権が算入されるべきであるとする主張をなんらしていないのであるから,弁論主義の
見地からしても,被控訴人及び控訴人への配当額は上記のとおりとなるべきもので
ある。
 3 以上によれば,本件配当表につき,被控訴人へ配当すべき額よりも少ない額へ
の変更を求める被控訴人の本訴請求は,全部認容すべきこととなる。
 第4 結論
 よって,原判決は以上判示したところと異なる限度で不当であるが,被控訴人から
の不服申立てがないので,控訴人の本件控訴については,これを棄却することとし
て,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 矢崎秀一 裁判官 高橋勝男 裁判官 佐村浩之)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛