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平成17年(ワ)号特許権侵害差止等請求事件第785
平成18年3月23日口頭弁論終結
判決
原告株式会社クレハ
原告訴訟代理人弁護士鈴木修
同弓削田博
同磯田直也
原告補佐人弁理士野矢宏彰
被告メルク・ホエイ株式会社
被告扶桑薬品工業株式会社
被告両名訴訟代理人弁護士岩坪哲
同緒方雅子
同田上洋平
同井上義隆
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の請求
1被告メルク・ホエイ株式会社(以下「被告メルク」という)は,別紙被告。
製品目録1()記載の製品(以下「被告製品1()」という)を製造し,被告11。
製品1()及び別紙被告製品目録1()記載の製品(以下「被告製品1()」と122
いい,被告製品1()と同()を併せて「被告製品1」という)を販売し又は12。
販売のために展示してはならない。
,(「」,2被告メルクは別紙被告製品目録2記載の製品以下被告製品2といい
被告製品1と同2を併せて「被告各製品」という)を販売し又は販売のため。
に展示してはならない。
3被告メルクは,その占有する被告各製品を廃棄せよ。
4被告メルクは,原告に対し,1億4728万6560円及びこれに対する平
成17年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5被告扶桑薬品工業株式会社(以下「被告扶桑薬品」という)は,被告各製品。
を販売し又は販売のために展示してはならない。
6被告扶桑薬品は,その占有する被告各製品を廃棄せよ。
7仮執行宣言
第2事案の概要
,,1本件は内服用吸着剤の分包包装体及びその製造方法について特許権を有し
別紙原告製品目録1記載の製品(以下「原告製品1」という)及び別紙原告。
製品目録2記載の製品(以下「原告製品2」といい,原告製品1及び同2を
併せて「原告各製品」という)を製造,販売している原告が,被告製品1を。
製造,販売し,被告製品2を販売している被告メルク及び被告各製品を販売
している被告扶桑薬品に対し,被告製品1には原告が特許権を有する特許発
明の技術的範囲に属するもの(被告製品1())とそうでないもの(被告製品1
),,,,1()があるとして被告製品1()について特許法100条1項2項21
102条2項に基づき製造,販売等の差止め,廃棄及び損害賠償金の支払を
求めると共に,原告製品1の包装及び原告製品2の形態・包装がいずれも不
正競争防止法2条1項1号の周知商品等表示に当たり,被告製品1の包装が
原告製品1の包装に類似し,被告製品2の包装・形態が原告製品2の形態・
包装に類似し,混同を生じさせるとして,同法3条1項,2項,4条,5条
2項に基づき被告各製品の販売等の差止め,廃棄及び損害賠償金の支払を求
めた事案である。
()2前提となる事実争いのない事実及び末尾掲記の証拠により認められる事実
()原告は,化学工業薬品,化学工業品,農薬,医薬品,医薬部外品,動物用1
医薬品及び食品添加物の製造及び販売等を業とする株式会社である。
被告メルクは,医薬品,動物用医薬品,医薬部外品,医療用機械器具,動
物医療用機械器具の製造販売及び輸出等を業とする株式会社である。
被告扶桑薬品は,医薬品,医薬部外品,動物用薬品,農薬,工業用薬品,
各種化学製品,衛生材料,医療用機械器具,化粧品の製造,販売,貿易等を
業とする株式会社である。
()原告の特許権2
ア原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特
許」という)を有している(甲1,2。以下,本件特許出願の願書に添。
「」,「」。)。付した明細書を本件明細書といいその出願を本件出願という
特許番号第2607422号
出願日平成5年9月8日
登録日平成9年2月13日
発明の名称内服用吸着剤の分包包装体及びその製造方法
イ本件明細書の特許請求の範囲請求項1の記載は次のとおりである(以下
「本件特許発明」という。。)
「10℃から30℃までの昇温で1g当たり1.3~10mlの空気を
放出する内服用吸着剤が包装されている分包包装体であって,分包包装体
の10℃から30℃までの体積膨張率が0~0.064ml/℃・g(内
服用吸着剤)であり,分包包装袋の25℃における内部圧力が40~74
0mmHgであることを特徴とする内服用吸着剤の分包包装体」。
ウ本件特許発明を構成要件に分説すると次のとおりである(以下「構成要
件A」などという。。)
A10℃から30℃までの昇温で1g当たり1.3~10mlの空気を
放出する内服用吸着剤が包装されている分包包装体であって,
B分包包装体の10℃から30℃までの体積膨張率が0~0.064m
l/℃・g(内服用吸着剤)であり,
C分包包装袋の25℃における内部圧力が40~740mmHgである
ことを特徴とする
D内服用吸着剤の分包包装体
(以下,本件特許発明の内服用吸着剤を「本件内服用吸着剤」という)。
()原告製品23
ア原告は,平成3年12月ころから,原告製品2(商品名「クレメジンカ
プセル200)を製造,販売している。原告製品2の販売開始当時の包」
装・形態は,別紙原告製品目録2(販売開始当時)のとおりであり(以下
「原告製品2従前の形態・包装」という,現在の包装・形態は別紙原。)
告製品目録2(現在)のとおりである(以下「原告製品2の形態・包装」
という。なお,原告製品2従前の形態・包装と原告製品2の形態・包装の
共通部分を「原告製品2の形態・包装」ということもある。。)
イ原告製品2の形態・包装を分説すると概ね次のとおりである以下原,(「
告製品2の形態・包装A」などという。。)
APTPシート一つに10個のカプセルが2列5段で包装されている。
BPTPシートの地の色は銀色である。
,,Cカプセルは白色半透明でありカプセル内の球形吸着炭が黒色であり
外観上は,カプセルの半分が白色,残り半分が灰色に見える。
DPTPシートの地に記載された文字の内容は,表面においては,シー
ト最上段に商品名の英語表記「Kremezin」が行方向に等間隔で
繰り返されて1行記載され,その下のカプセルの行間に等間隔で1行ず
つ識別コード「KRH102」が記載されている。
裏面においては,シート最上段に商品名の日本語表記「クレメジン」
が行方向に等間隔で繰り返されて1行記載され,その下に,株式会社三
共(以下「三共」という)の図案化されたロゴマーク(以下「本件三。
」。),「」共ロゴマークというを上段に商品名の日本語表記クレメジン
を中段に,容量表示「200mg」を下段に配した1セットの表示と,
カプセルの押し出し方法を図示した表示を上段に配しリサイクルプラス
チックであることを示す表示を下段に配した1セットの表示とが交互に
等間隔で繰り返し記載されている列が5列表示されている。
Eカプセルに赤色の識別コード「KRH102」が横書きされている。
ウ原告製品2従前の形態・包装は,上記原告製品の外観Dのうち「リサイ
クルプラスチックであることを示す表示が円の中心を横切るようにS」「「
」,『』ANKYOの文字を配し同文字によって区切られた円の上半分に三
下半分に『共』の文字を配した表示(以下「本件円形三共マーク」とい」
う)である点を除いて同一である。。
()原告製品14
,,(「」)ア原告は平成12年7月から原告製品1商品名クレメジン細粒
を製造,販売している。原告製品1の包装は別紙原告製品目録1のとおり
である(以下「原告製品1の包装」という。。)
イ原告製品1の包装を分説すると,概ね次のとおりである(以下「原告製
品1の包装A」などという。。)
A正面方向から見て細長い長方形(縦1対横3)の分包包装体である。
B上記包装体の地の色は金色調であり,地に記載された文字の色は青色
調である。
C包装体の地に記載された文字の内容は,表側の上半分に,商品名の日
本語表記「クレメジン細粒」を上段に配し,商品名の英語表記「Kre
」。mezinを下段に配した1セットの表示が横書きで記載されている
表側の下半分に,容量表示「2g」が横書きで表示されている。
D上記包装体の両端は熱融着されている。
E分包包装体が3連1セットになっている。
F包装体右端に点線が施され,表側の点線上に「キリトリ線」と記載さ
れている。
G包装体表側右側に縦長の四角い罫線が記載され,同四角の中に「服用
の際,キリトリ線から開封して下さい」との表示がある。
H包装体表側左下に本件三共ロゴマーク及び「SANKYO」の文字が
セットになった表示が施されている。
()被告各製品5
ア被告メルクは,平成16年7月から,被告製品2(商品名「メルクメジ
ンカプセル200mg)及び被告製品1(商品名「メルクメジン細粒)」
を業として製造,販売している。被告扶桑薬品は,平成16年12月ころ
から,被告各製品を業として販売している(甲8。)
イ被告製品2の包装・形態は,概ね次のとおりである(以下「被告製品2
の形態・包装a」などという。。)
aPTPシート一つに10個のカプセルが2列5段で包装されている。
bPTPシートの地の色は銀色である。
,,cカプセルは白色半透明でありカプセル内の球形吸着炭が黒色であり
外観上は,カプセルの半分が白色,残り半分が灰色に見える。
dPTPシートの地に記載された文字の内容は,表面においては,シー
ト最上段に商品名の英語表記「MerckmezinCap」を上.
段に「200mg」を下段に配した1セットの表示が行方向に等間隔,
で繰り返されて1行記載され,その下のカプセルの行間に等間隔で1行
ずつ識別コード「MH839」の行と「200mg」の行が交互に記載
されている。
裏面においては,シート最上段に商品名の日本語表記「メルクメジン
カプセル」を上段に,容量表示「200mg」を下段に配した1セット
の表示が行方向に等間隔で繰り返されて1行記載され,その下に,カプ
セルの押し出し方法を図示した表示と,リサイクルプラスチックである
ことを示す表示が等間隔で交互に記載されている行と,上記最上段の行
(ただし,商品名の表記は「メルクメジン)とが各5列ずつ交互に表」
示されている。
eカプセルに赤色の識別コード「MH839」が横書きされている。
ウ被告製品1の包装は,概ね次のとおりである(以下「被告製品1の包装
a」などという)。
a正面方向から見て細長い長方形(縦1対横3.6)の分包包装体であ
る。
b上記包装体の地の色は金色調であり,地に記載された文字の色は青色
調である。
c包装体の地に記載された文字の内容は,表側の上半分に,商品名の日
本語表記「メルクメジン細粒」を上段に配し,商品名の英語表記「Me
rckmezinFineGranules」を下段に配した1セ
ットの表示が横書きで記載されている。表側の下半分に,容量表示「2
g」が横書きで表示されている。
d上記包装袋の両端は熱融着されている。
e分包包装体が3連1セットになっている。
f包装体左側下角に三角形に熱融着部分が施され,当該三角形部分を指
すように「切り口」の表示がされている。
3争点
()特許権侵害の成否1
ア被告製品1()が本件特許発明の技術的範囲に属するか。1
)被告製品1()が10℃から30℃までの昇温で1g当たり1.3~a1
10mlの空気を放出する内服用吸着剤が包装されている分包包装体と
いえるか(争点1。)
)被告製品1()の25℃における内部圧力が740mmHg以下か争b1(
点2。)
)被告製品1()が本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点3。c1)
イ本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものといえるか。
)本件特許発明は,特許法29条2項に違反するか(争点4。a)
)本件明細書の特許請求の範囲の記載は,平成6年法律第116号によb
る改正前の特許法(以下「改正前特許法」という)36条5項2号に。
違反するか(争点5。)
)本件明細書の発明の詳細な説明は,改正前特許法36条4項に違反c
するか(争点6。)
()被告製品1の販売等が不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当た2
るか。
ア原告製品1の包装が不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」とし
て周知性を有するといえるか(争点7。)
イ原告製品1の包装と被告製品1の包装の類似性(争点8)
ウ被告らが被告製品1を販売等することによって原告の商品と混同を生じ
させるといえるか(争点9。)
エ故意・過失の有無(争点10)
()被告製品2の販売等が不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当た3
るか。
「」ア原告製品2の形態・包装が不正競争防止法2条1項1号の商品等表示
として周知性を有するか(争点11。)
()イ原告製品2の形態・包装と被告製品2の形態・包装の類似性争点12
ウ被告らが被告製品2を販売等することによって原告の商品と混同を生じ
させるといえるか(争点13。)
エ故意・過失の有無(争点14)
()損害の額(争点15)4
第3当事者の主張
【被告製品1()が本件特許発明の技術的範囲に属するか】1。
1争点1(被告製品1()が10℃から30℃までの昇温で1g当たり1.31
~10mlの空気を放出する内服用吸着剤が包装されている分包包装体といえ
るか)。
()原告1
ア被告製品1()の内容物である内服用吸着剤が10℃から30℃までの1
昇温で1g当たりに放出する空気の量は,2.6~3.4mlである(甲
9,10,71,76。)
被告らは,被告製品1()の内容物である内服用吸着剤が10℃から31
0℃までの昇温で1g当たりに放出する空気の量は,被告製品1()の内1
容物である内服用吸着剤を包装袋に充填してヒートシールするときの温度
次第で異なるから,ヒートシールするときの温度を特定していない甲9,
10の実験結果によって,被告製品1()の内容物である内服用吸着剤の1
空気放出量が1.3ないし10mlの範囲に含まれるとはいえない旨主張
する。
しかし「10℃から30℃までの昇温の空気放出量を測定する」とい,
う場合には大気圧下10℃の平衡状態から大気圧下30℃の平衡状態まで
の昇温での空気放出量を測定するのが常識である。被告らは75℃で管理
保管した後に測定する場合を例として主張するが,そのような測定は通常
しない。甲9,10,71における実験においても試験体の10℃ないし
30℃での保持時間は技術常識に照らして各温度で平衡に達した状態を基
準として測定している具体的には本件明細書の4欄4ないし5行にこ。,「
の体積膨脹,体積収縮は速く,数秒から数分で均衡に達する」と記載され
ていることから,当業者であれば10℃と30℃の各温度においてそれぞ
れ数分以上保持して適切に測定する。
イ被告ら提出の試験結果(乙10)について
被告らは,被告製品1の9袋中の被告製品1()の内容物である内服用1
..吸着剤の10℃から30℃の昇温における空気放出量が066ないし1
13ml/gであった旨の財団法人化学物質評価研究機構作成の実験結果
報告書(乙10)を提出する。
,,,。しかし上記報告書は次のような多くの不備があり証拠価値がない
すなわち,乙10の試験において用いられた試料は「メルクメジンL
ot.044ONN」とされているが,原告の調査によれば,被告メルク
・ホエイが市場に流通させた被告製品1のロットは005から014まで
,。であり044というロットの被告製品1は市場に存在しないはずである
乙10の試験に供された試料は被告製品1の市販品ではなかった可能性が
ある。
乙10の試験方法について,30℃への昇温については「30℃に昇温
し,30℃に一定になった時点で15分間放置し」と記載されているが,
「」10℃への降温についてはこれらを恒温水槽により10℃まで降温させ
としか記載されておらず,温度を一定にして試験をしなかったことが窺わ
れる。
乙10の試験結果は,1g当たりの空気放出量のみを記載してる。しか
し,これを算出するにあたっては1gに換算する前の被告製品1の1包の
30℃での液面目盛りの数値,同10℃での液面目盛りの数値という生の
データが存在するはずである乙10にはかかるデータの記載がない液。(「
面の目盛りmL「ブランクとの差mL」との記載があるが,このよう」,
な記載ではそれぞれの数値が何を指すものか不明である。さらに,正。)
確な空気放出量を算出するためには,10℃から30℃における増加量だ
けでなく,内容物由来の増加量も算出する必要があるところ,乙10では
そのような作業がなされていない。
乙10の試験報告書においては,備考欄に「室温:25℃」と記載され
ている。しかし,原告作成の甲75の実験報告書のように実際の室温等の
データが開示されておらず,室温の管理が適切になされていたか否か疑問
がある。
乙10の試験結果についても,空気放出量は0.66から1.13mL
の範囲で分布している。しかし,同一ロットを試料としながら,上記のよ
うに約2倍の測定誤差が生じるような試験は適正なものということはでき
ない。
試験結果の提出経緯についても疑問がある。すなわち,被告らは,平成
17年4月25日の第1回弁論準備手続期日において「現在構成要件非充
。」足を証明するための試験を行なっている同試験の試験場所は川越にある
と述べていた。しかし,乙10によれば,同号証に係る試験の受付日は上
記弁論準備手続期日から1か月以上経過した同年6月3日であり,同試験
の作成名義人である財団法人化学物質評価研究機構の事業所は川越にはな
い。以上から,被告らは,第1回弁論準備手続期日において実施している
と述べた試験の結果報告を提出していないようであり,自らに有利な結果
を記載した乙10のみを書証として提出している可能性がある。
上記のほか,乙10の試験報告書には次のような形式上の不備があり,
試験結果の真正・正確性を担保するために必要な次の事項の記載がない
()。,,,甲78すなわち乙10には表題と試験目的試験の開始・終了日
試験責任者その他の試験に従事した者の氏名,予見することができなかっ
た試験の信頼性に影響を及ぼす疑いのある事態及び試験計画書に従わなか
ったこと,生のデータの解析に使用された統計学的方法に関する事項,生
データ及び標本の保存場所,試験責任者の署名又は記名なつ印及び日付の
記載がない。特に,表題と試験の目的は不可欠の要素であるというべきで
あって,この点の記載がなされていないことから,試験実施者は本試験の
目的が「被告製品1が本件特許発明の技術的範囲に属するか否かを判定す
るため」であることすら認識せずに乙10に係る試験を実施したことが窺
われる。
また,試験の実施方法に関する事項(被験物質または対象物質の投与経
路,投与量,投与回数,投与期間及び投与量設定の理由並びに実施された
観察,測定,検査及び分析の種類及び頻度並びにこれらの実施方法,試)
験成績及びその考察並びにこれらの要約に関しては,記載はあるものの不
十分である。
ウ被告ら提出の試験結果(乙15)について
被告らは,さらに,被告製品1()の内服用吸着剤の空気放出量を測定1
した試験結果として乙15を提出する。しかし,同試験においては内服用
吸着剤をペットニウム材質の包装体に入れた際の温度条件が記載されてい
ない。被告らがこれまで主張してきた内容によれば,吸着剤を75℃で保
管した上で包装体に入れるという異常な試験方法を採用した可能性があ
り,信用できない。
()被告ら2
ア被告製品1()の内服用吸着剤が10℃から30℃までの昇温で1g当1
たり2.6~3.4mlの空気を放出するものであるとの主張は争う。
被告らが第三者機関に委託して本件明細書に記載されたのと同様の測定
方法で実験を行なったところ,被告製品1の9袋に内包されている内服用
吸着剤の10℃から30℃の昇温における空気放出量は,0.66ないし
.(。。113ml/gであった乙10被告製品1ロット番号014ONN
乙11には当初ロット番号044ONNと記載したが,014ONNの誤
りであった。乙16。。)
また,原告が上記空気放出量は内服用吸着剤の物質としての性質に関す
る構成であって包装時の条件によって左右されるものではない旨主張する
ことから,内服用吸着剤を分包包装体から取り出して本件明細書に記載さ
れた方法で空気放出量を測定したところ,0.05ml/gないし0.9
8ml/gであった(乙15。)
イ原告提出の試験結果(甲9,10)について
原告の上記主張の根拠は,甲9,10の実験結果である。しかし,上記
各実験結果は,吸着剤の初期温度が特定されていないから,当該吸着剤の
10℃から30℃までの昇温における空気放出量を一義的に証明するもの
ではない。すなわち,被告製品1()の内容物である内服用吸着剤は,温1
湿度の変化によって空気を放出したり吸収したりする性質を有しているも
のであり,その内服用吸着剤を包装袋に充填してヒートシールするときの
温度次第で10℃から30℃までの昇温で1g当たりに放出する空気の量
は異なる。例えば,吸着剤を75℃(高温)で保管した状態(空気を放出
しきった状態)で包装袋に充填してヒートシールし,これを10℃まで降
温した後に30℃まで昇温したとしても,空気は放出しない。逆に,被告
製品1()の内容物である内服用吸着剤を5℃低温で保管した状態空1()(
気を吸収した状態)で包装袋に充填してヒートシールし,これを10℃ま
で昇温した後に30℃まで昇温すれば,当然空気を放出する。
ウ原告提出の試験結果(甲71)について
原告が追加で提出した甲71の実験は,空気放出量の測定において本件
明細書に記載された方法とは異なる,ナシ型フラスコに被告製品1を収納
して恒温層で昇温させるとの方法を採用しているものである。
エ原告提出の試験結果と被告ら提出の試験結果は相反するものである。こ
のように,同様の方法によって空気放出量の測定を行なっているにもかか
わらず,試験結果が異なるということは,本件明細書に記載された以外の
何らかの要因により同一の製剤であっても構成要件充足性の結論が相反す
ることを示し,結局,当業者が,ある製剤が構成要件Aを充足するか否か
(本件技術的範囲の外延)を明確に把握することができないことを示すも
のである。
(。)2争点2被告製品1()の25℃における内部圧力が740mmHg以下か1
()原告1
ア被告製品1のうち,外観上しぼんでいるもの(指で押したとき内容物が
ほとんど動かないもの。被告製品1())の25℃における内部圧力は,1
680~730mmHgである(甲9,10,71。)
被告製品1には,外観上しぼんでいない分包体(被告製品1())も存2
在し,当該分包体の内部圧力は,構成要件Cを充足しない。かかる分包体
が混在しているのは,被告における包装技術の巧拙によって包装に失敗し
て気密性が保たれていないものが混在することによると考えられる。甲7
1の実験結果(表1)によれば,被告製品1ロット番号007OTO1箱
(84包)中,外観上しぼんでいない包装体は10包であり,うち8袋に
は同実験により流動パラフィンが浸入したことから気密性が保たれていな
いことが明らかである。
イ被告ら提出の試験結果(乙11)について
被告らは,被告製品1の分包体内部圧力の測定結果について乙11の試
験結果を提出する。
しかし,乙11の試験結果についても,乙10と同様の形式上の問題が
ある。また,被告製品1には外観上しぼんでいるもの(内部圧力が740
mmHgを下回るもの)とそうでないもの(内部圧力が740mmHg以
上のもの)が存在するところ,試験方法の欄には「メルクメジン細粒(貴
社提供品」との記載があり,被告らにおいて外観上しぼんでいないもの)
(内部圧力が740mmHg以上のもの)のみを試料として選択した可能
性もある。また,被告メルクは,被告製品1の製造者であるから,本件特
許発明の構成要件Cを充足しない被告製品1を製造することができる。原
告は,被告らが測定試験のために市場流通品と異なる分包体を作成したと
まで主張するものではないが,この点の真偽は不明である。
乙11の2頁中央右側には分包内圧測定の写真として減圧乾燥機内に試
料バイアルが一つだけ置かれた状態の写真が掲載されている。かかる写真
によれば,乙11の試験では,試料バイアルとブランクバイアルの測定が
個別になされており,同一条件でなされておらず,正しい測定結果を得ら
れていない可能性がある。本件明細書には,分包袋の内部圧力の測定は,
同一の試料を3回測定して平均をとる方法によっている。ところが,乙1
1の試験においては,1回の測定結果しか記載されていないから,3回の
測定が行なわれておらず,外的要因や偶然の事情による影響を受けている
可能性がある。乙11の試験結果は信用できない。
()被告ら2
ア被告製品1の25℃における内部圧力は760mmHg(大気圧)を下
回ることはない。
被告製品1は,明治薬品株式会社において秤量充填作業が行なわれてお
り,上記作業は冬季においては9ないし24℃前後に温度管理され,エア
ーコンディショナーからの風圧により通常は陽圧となっている充填室内に
て当該室温以下で保管された吸着剤を充填するものであるため,設計値に
おいて25℃換算で陰圧(740mmHg以下)となることは予定されて
いない(乙1。)
被告メルク従業員が実施した試験において,本件明細書【0038】に
記載された方法に依拠して被告製品1(ロット番号014ONN)84包
の内部圧力を測定したところ,1包については740mmHgを下回った
,()。,がその余の83包は740mmHgを上回った乙15したがって
少なくとも平成17年6月以降に製造されたロットについては大半が内部
圧力740mmHgを超えているといえるまた被告らが被告製品1ロ。,(
ット番号044ONN。後に014ONNに訂正)の各箱から任意に抽。
出した9包を甲71の3ないし5丁に記載された内部圧力の測定方法と同
一の測定方法(液体パラフィンを充填したメスピペット付きバイアルに被
告製品1の分包体を収め,当該バイアルを25℃に設定された乾燥減圧機
,,の減圧室内に収納し大気圧から徐々に減圧室内の圧力を降下させて行き
メスピペットの液面の目盛りが動いた瞬間(即ちバイアル内の分包体が膨
脹を開始した瞬間)の減圧室内の圧力をもって,分包体内圧として同定す
る方法)により測定したところ,9包とも分包体内圧は750ないし75
4mmHgで,760mmHg以下であった(乙11。)
イ原告提出の試験結果(甲9,10)について
原告は,被告製品1の25℃における内部圧力が740mmHg以下で
ある旨の試験結果(甲9,10)を提出する。
しかし,当該試験結果は,たまたま,室温管理温度(20℃)より高い
温度下で保管されていた吸着剤を包装体に充填したものをサンプルにして
実験したものと思われる。
3争点3(被告製品1()が本件特許発明の技術的範囲に属するか)1。
()原告1
ア争点1において述べたとおり,被告製品1()に内包されている内服用1
吸着剤が,10℃から30℃までの昇温で1g当たりに放出する空気の量
は,2.6~3.4mlであるから,被告製品1()は構成要件Aを充足1
する。
イ争点2において述べたとおり,被告製品1のうち外観上しぼんでいるも
の(被告製品1())の25℃における内部圧力は,680~730mm1
Hgであるから,被告製品1()は構成要件Cを充足する。1
ウ本件特許発明の構成要件Cを充足するものは,同構成要件Bを充足する
関係にある。被告製品1()は前記イのとおり,構成要件Cを充足するか1
ら,構成要件Bをも充足する。
エよって,被告製品1()は,本件特許発明の技術的範囲に属する。1
()被告ら2
ア争点1において述べたとおり,被告製品1()に内包されている内服用1
吸着剤は,10℃から30℃までの昇温で1g当たりに放出する空気の量
が,0.66ないし1.13mlであるから,被告製品1()は構成要件1
Aを充足しない。
,,イ争点2において述べたとおり被告製品1の25℃における内部圧力は
,。740mmHgを下回らないから被告製品1は構成要件Cを充足しない
原告は,被告製品1のうちしぼんでいるものとふくらんでいるものがあ
り,しぼんでいるものだけが構成要件Cを充足するなどと主張する。仮に
原告の主張どおりであったとしても,同一製造方法で作成された製品でも
構成要件を充足したりしなかったりすることは,本件特許発明の外延の不
明確性を示すものである。
また,構成要件Cは「体積膨脹あるいは体積収縮が行なわれ大きく変,
」。,形するとの課題との関係で技術的意義を有しないものであるすなわち
内服用吸着剤は,自然状態における昇温によって分包体内部に空気を放出
して分包体を膨脹させる性質を有するから,内部圧力を大気圧よりわずか
に2.6%減圧されただけの740mmHgとすることで分包体の変形を
抑制する効果が実現されるとは考え難い。
さらに,分包包装体の内部圧力を「740mmHg」とすることに本件
特許発明の課題との関係における臨界的意義が存在しないことも明らかで
ある。例えば,夏季に冷房のきかない充填室において分包体に収納された
活性炭は気温の下がる秋口に保存温度が25℃まで下がると必然的に分包
体内に存在する空気を吸着し,これにより分包体は自ずと見かけ上しぼん
だ状態になる。その結果内部圧力も740mmHg以下になる。本件特許
発明は,このような分包体内部圧力の低下減少の場合をも包含し得る特許
発明である。
本件特許発明の構成要件Cは,このように本件特許発明の作用効果との
対比において技術的意義の不明な構成要件であるから,仮に原告の提出す
る試験結果により被告製品1の内部圧力が740mmHgを下回ると立証
されたとしても被告製品1が本件特許発明の技術的範囲に属するとはいえ
ない。
ウ本件特許発明の構成要件Cを充足するものは,同構成要件Bを充足する
関係にあることは認める。しかし,被告製品1は前記イのとおり,構成要
件Cを充足しないから,構成要件Bを充足しない。
エよって,被告製品1()は,本件特許発明の技術的範囲に属しない。1
4争点4(本件特許発明は,特許法29条2項に違反するか)
()被告ら1
ア構成要件Aを充足する内服用吸着剤の存在について
本件特許発明の構成要件Aは,分包包装体に充填される内服用吸着剤の
性質に関するものである。構成要件Aの構成を有する内服用吸着剤は,本
件出願前にカプセル剤の形で公然実施されていたものである(特公昭62
-11611号公報,乙2。以下「乙2文献」という。。)
イ内服用吸着剤を分包包装することについて
内服用吸着剤を分包包装体に包装することは,本件出願時,既に周知慣
用の技術であった(特開平4-2348号公報・乙3(以下「乙3文献」
という,特開平4-28367号公報・乙4(以下「乙4文献」とい。)
う)の各特許請求の範囲の記載参照。。)
原告は,従来の薬用炭については密閉容器に保存すればよいという認識
があったから,本件内服用吸着剤を分包包装体に包装することは,当業者
は容易に想到し得なかった旨主張する。
,,しかし薬剤を包装する手段としての分包体は古来の慣用技術であって
本件内服用吸着剤の存在そのものが公知であった以上,本件内服用吸着剤
を分包体に包装することは通常考え得ることである。第十改正日本薬局方
(昭和56年,乙19)には,医薬品(顆粒剤)を包装する分包体につい
て「付着性がないのでポッパーから落とすタイプの分包機ではシール面,
に粒子が付着しないのでシールが完全である」旨の記述がある(A-54
)。「」ページ末尾から2行目以下また顆粒剤について気密容器に保存する
旨の記載もある(同15行目。従来の薬用炭について薬局方に密閉容器)
に保存する旨の記載があることをもって,公知であった本件内服用吸着剤
を分包体に包装することが技術常識に反する行為であったなどという原告
の主張は採り得ない。
ウ分包包装において内部圧力を減圧する技術について
本件特許発明の構成要件Cは,本件内服用吸着剤を,分包包装体に包装
する際に,包装体の内部圧力を25℃で740mmHg以下にするという
構成である。本件出願前に,次のような技術が存在しており,包装体の内
部圧力を25℃で740mmHg以下にする技術は,本件出願当時,既に
公知であった。
)特開平4-200549(乙5,以下「乙5文献」という)a。
「無菌混合粉末が真空度600mmHg以下において封入されている
ことを特徴とする無菌減圧包装物(特許請求の範囲請求項1)」
「吸湿により構成成分の安定性が低下する無菌混合粉末においては,
吸湿を阻止する必要もある。…本発明者らは鋭意検討した結果,減圧状
態で包装することにより上記課題が解決されることを見い出し,本発明
を完成するに至った。すなわち,本発明は無菌混合粉末が真空度600
mmHg以下において封入されていることを特徴とする無菌減圧包装物
に関する(同1頁右欄7行~2頁左上欄1行)」
)特開昭56-161914公報(乙22・1頁右欄14行~2頁左欄b
2行)
「圧縮可能でかつ微生物劣化を受けやすい不定形原料を容器内を減圧
しつつ機械的に圧縮して収納することを特徴とする不定形原料の保存方
法」
)特開昭57-45321公報(乙23・2頁右上欄15~18行)c
「活性炭収納容器1を真空断熱するために容器1の全体を断熱容器1
2内に封入し,その断熱容器12内を真空ポンプ13で排気し減圧化で
きる」
)特公昭57-27009公報(乙24・第2欄6~10行)d
「本発明は真空密着包装方法に関するもので,その目的とするところ
は高能率に作業を行ない得るとともに被包装品頂面と上側フィルムの間
に微量の空気層を残さず皺のない美しい密着包装品を得んとするにあ
る」。
)特開昭59-221222公報(乙25・2頁右上欄4~13行)e
「包装された製品の貯蔵寿命を改善し,包装品に良好な外観を与える
ために包装品の内容物を真空に引くことは真空包装業界において従来か
ら行なわれてきた方法である。また,包装品の外層として熱収縮性(即
ち配向性)のフィルムを用い,真空密封された製品を高温の水浴または
高温の空気通路の中で収縮操作に付し,プラスチックス・フィルムを熱
収縮させてこれを含有製品と緊密に接触させることにより真空密封され
た包装品の外観を改善することも公知である」。
)特開昭61-21303公報(乙26・特許請求の範囲)f
「真空引台盤上に下部包装フィルムを介して被包装物を載置した後,
真空引台盤の上方に設定した電熱ヒータによる加熱軟化熱膨脹状態の上
部包装フィルムを被包装物上に急降下させると同時に真空引作用により
上部包装フィルムを被包装物と下部包装フィルムの周縁部に密着させ,
その後,この余剰の周縁部を被包装物の下周部に沿って切除し,残りの
周縁部を熱処理により加熱収縮溶着一体化させて被包装物の真空密着包
装を完了することを特徴とする真空密着包装方法」
)実願昭61-47621(実開昭62-159410)のマイクロフg
ィルム(乙27・1頁15~17行)
「本考案は,袋密封装置に係り,例えば真空包装機等に用いられ袋の
開口部を熱線によって溶着して密封するようにしたものに関する」。
)化学情報1986年10月号(乙28)h
「1956年にブーローニュ=シュール=メールにベルナール氏が設
立したベルナール社は,非常に早くから真空パック(特に魚用)業務を
取り扱ってきた。社は徐々に気密パッケージのスペシャリストとなり,
化学製品,薬品,または食品のパッケージ用の特に競争力のある『Em
bavrac』システムを作り出すことに成功した」。
(.i)続医薬品の開発第9巻医薬品の包装と容器Ⅱ乙29・383頁A
1~2行)
「品質の劣化に酸素の影響が大きいときは,包装容器内の酸素濃度を
下げることが考えられる。その方法としてガス置換包装,真空包装,酸
素吸収剤包装が考えられ」る。
エ内服用吸着剤を分包包装する際に内部圧力を減圧することについて
上記アの内服用吸着剤を上記イのように分包包装するに当たって,包装
体の内部圧力を上記ウのように25℃で740mmHg以下にすること
は,当業者であれば容易に推考できた事項である。
すなわち,本件内服用吸着剤がその高い吸着性ゆえに吸湿性をも有し,
高湿度下では保存安定性を欠くことは,本件出願前から当業者にとって自
明であった。原告が平成3年12月に発売した本件内服用吸着剤の添付文
書には「湿気を避けて保存すること」と記載されているし(乙6,昭和)
7年6月25日発行の第五改正日本薬局方注解の332頁には薬用炭の貯
蔵方法として「薬用炭は大気中より水分竝ガス体を吸収する力強きを以て
壜中に密栓して貯うべし」と記載されている(乙21。そうすると,本)
件内服用吸着剤の分包包装に際して,乙5文献に記載された技術を用いて
,,減圧包装とすることは何らの技術的阻害要因もないというにとどまらず
,。むしろ乙5文献の記載内容により積極的に誘引されていた事項であった
原告は,乙5文献に係る発明の主たる目的が2種類の混合粉末の構成成
分を均一に保つことにあるとして,本件内服用吸着剤の包装にはそのよう
な課題は存在しないから,本件内服用吸着剤の包装において乙5文献に係
る減圧包装の技術を用いることは通常想到しない旨主張する。しかし,乙
5文献にそのような目的が記載されていたとしても「吸湿性防止」の効,
果も奏することも記載されている以上,吸湿性を有する内服用吸着剤の包
装に乙5文献記載の構成を適用することに何ら技術的障害はない。なお,
分包体の内圧を測るに際し温度を25℃という常温に設定することに何ら
かの想到困難性が存在するはずもない。
本件特許発明の構成要件Bについては,原告も自認するとおり,構成要
件Cを充足するものは,当然に構成要件Bを充足する。
したがって,乙2文献に記載され,公然実施されていた内服用吸着剤を
分包包装するに際し,乙5文献に基づいて内圧を740mmHg以下とす
ることは当業者が容易に想到できたものである。
オ原告は,内服用吸着剤が昇温によって空気を放出することは本件特許発
明の発明者が平成4年9月ころに初めて解明したかのように主張し,本件
特許発明は,上記の内服用吸着剤の空気放出能を発見したことによっては
じめてなし得たものであると主張する。
しかし,薬用炭(活性炭)が気体等の媒質に対して強い吸着能をもつこ
と,換言すれば,吸着条件に対する逆条件下では放出能をもつことは18
世紀から知られていた技術常識である(乙13,18。)
()原告2
ア本件内服用吸着剤を分包包装することについて
被告らは,乙3文献及び乙4文献をもって,本件特許発明にかかる内服
用吸着剤を分包包装体に包装することは周知慣用の技術である旨主張す
る。
しかし,乙3文献及び乙4文献は,構成要件Aの構成を備えない固体薬
剤を包装する技術に関するものであって,同各文献から本件特許発明にか
かる内服用吸着剤を分包包装体に包装することが周知慣用の技術であった
ということはできない。本件明細書に記載されているとおり,吸着剤とし
て周知であった薬用炭は,日本薬局方において「貯法密閉容器」と定め
られているように,従来,吸着剤の包装としては密閉容器が用いられてい
た。密閉容器とは,日常の取扱いをし,又は通常の保存状態において固形
の異物が混入することを防ぎ,内容医薬品が損失しないように保護するこ
とができる容器であって,例えば紙箱,紙袋等がその例である(甲1・3
欄3~6行,第十二改正日本薬局方解説,廣川書店。このように,吸着)
剤は密閉容器に包装することが通常であり,気密容器である分包包装体に
包装することは周知慣用技術ではなかった。実際に本件出願前に販売され
ていた日本薬局方薬用炭は単なる紙袋(密閉容器)に入れられていた(甲
73。)
イ内服用吸着剤を分包包装する際に内部圧力を減圧することについて
)医薬品を分包包装体に包装する技術自体が周知であったことは争わなa
い。しかし,かかる分包包装は大気圧下において室温で行なうのが技術
常識であった。乙5文献のように減圧した上での分包包装の技術が存在
していたものの,これは,2種類以上の粉体混合物において成分の偏り
が生じるという特殊な課題があるような極めて限定された状況でのみ用
いられていたものである。本件出願当時,本件内服用吸着剤の分包包装
において減圧分包包装技術を用いなければならないような課題は認識さ
れていなかったから,当業者が本件内服用吸着剤について分包包装を考
えたとしても,乙3文献及び乙4文献に記載されたような大気圧下,室
温における分包包装する周知慣用技術が用いられたに過ぎないのであ
り,本件特許発明の構成を想到することは容易ではなかった。
)被告らは,乙2文献に炭素質吸着剤が記載されており,乙5文献に無b
菌混合粉末を減圧状態で包装する技術が記載されていることを根拠に,
これらを組み合せて内服用吸着剤を分包包装するにあたって,包装体の
内部圧力を減圧して構成要件Cの構成とすることは,周知慣用技術であ
り当業者であれば容易に推考できた旨主張する。
しかし,乙5文献に係る発明の課題は「従来,2種類以上の粉体を混
合した無菌混合粉末においては,その物性の違いにより成分の偏り,す
なわち偏析がおき混合均一性が保持しにくいという問題がある」とい。
う点にあり(乙5・1頁左下欄下から2行目~右下欄2行目,このよ)
うな課題が生じるとは考えられない吸着剤を無菌混合粉末と置換する動
機はまったく存在しない。
)被告らは,乙5文献における「吸湿により構成成分の安定性が低下すc
る無菌混合粉末においては,吸湿を阻止する必要もある」旨の記載を。
。,。指摘するしかし上記記載は副次的な効果についての記載にすぎない
仮に,乙5文献にかかる記載があることをもって,吸湿性を有する薬剤
の包装を減圧包装とすることが容易想到というならば,相当多数の減圧
包装された薬剤の分包体が市場に存在するはずである。しかし,実際に
は減圧包装された薬剤の分包包装体は全く存在しない。
また,被告らは,本件内服用吸着剤がその高い吸着性ゆえに吸湿性を
も有し,高湿度下では保存安定性を欠くことは本件出願前から当業者に
とって自明であった,本件内服用吸着剤の分包包装に際して減圧包装と
することは乙5文献の記載により積極的に誘引されることであった旨主
張する。しかし,本件内服用吸着剤の分野では「吸湿性を阻止する」と
いう課題は存在していなかった。このことは,日本薬局方において薬用
炭について「貯法」として紙箱や紙袋である密閉容器が定められている
こと,実際にも本件特許発明の出願前に,日本薬局方薬用炭が単なる紙
()。袋に入れられて市販されていたこと甲73などからも明らかである
被告らは,原告製品1(カプセル剤)の添付文書(乙6)に「湿気を
避けて保存すること」との記載があることを根拠に,本件内服用吸着剤
が吸湿性を有することが,本件出願当時,課題として認識されていた旨
主張する。しかし,原告製品1の薬価収載,販売開始は平成12年7月
であるから,上記添付文書(乙6)の記載から本件出願当時の認識を認
定することはできない。なお,本件出願当時販売されていた原告製品2
の添付書面にも「湿気を避けて保存する」旨の記載がある(甲79。)
しかし,原告製品2はカプセル剤であって,カプセルの材料であるゼラ
チンそのほかの吸湿性のものであるためカプセル剤全体について湿気を
避けて保存することが必要なのであって,当該記載から本件内服用吸着
剤の吸湿性が課題として認識されていたということはできない。実際,
被告製品1は安定性試験において乾燥減量規格は15%以下であり甲,(
74,原告製品1の乾燥減量規格である5%よりはるかに高いもので)
あったから,被告らは,被告製品1を開発する時点において被告製品1
の内服用吸着剤が吸湿性を有するもので高湿度下では保存安定性を欠く
というような認識を有していなかったことが明らかである(被告らは,
被告製品1の製造時承認書(乙12)を提出して,甲74の上記記載は
誤記である旨主張するが,医薬品の添付書類においてそのような重大な
ミスがあるとは考えられない。製造承認申請の段階では甲74記載の乾
燥減量であり,製造承認書の際には乙12記載の乾燥減量であったと考
えるのが相当である。よって,本件内服用吸着剤がその高い吸着性。)
ゆえに吸湿性をも有し,高湿度下では保存安定性を欠くことは,本件出
願前から当業者にとって自明であったとはいえない。
仮に,本件内服用吸着剤が吸湿性を有することに着目したとしても,
吸湿を防止するためには水分を透過しない密閉容器に包装すればいいの
であって,本件内服用吸着剤が吸湿性を有することは,本件特許発明前
の当業者が,乙2文献と乙5文献に記載された発明との組み合わせを考
える誘引とはならない。むしろ,吸湿性が高い薬剤であるにもかかわら
ず減圧されることなく通常の分包包装によって市販されている薬剤は多
数ある(甲85ないし88。各枝番含む。かえって,減圧すると,。)
包装体内外の水蒸気圧の差が大きくなって包装体の材料を通過する水蒸
気の量が増加してしまい,吸湿性防止という面からは,減圧することに
よって好ましくない結果をもたらす。
被告らは,さらに乙22ないし29の各文献に記載された公知技術を
指摘する。しかし,これらの文献によって立証できることは内容物を包
材に包装する際に減圧あるいは真空引きすることが周知慣用であったと
いうことにすぎず,本件内服用吸着剤の吸湿防止という課題解決のため
に減圧分包包装することが容易であったということは立証されていな
い。減圧包装技術は,酸化を抑止して内容物の保存期間を延長すること
を目的として行なわれるものというのが通常の認識であるから(甲9
2,酸化防止という目的が存在しない以上,内服用吸着剤を減圧分包)
包装するという本件特許発明に想到することは容易ではない。
)本件特許発明は,内服用吸着剤が室温の範囲内で空気を放出するといd
う事実を発見して初めて想到することができた発明である。
本件特許発明において内服用吸着剤を分包する際に内部圧力を減圧す
る技術を用いたのは,気密容器である分包包装体に球形炭素質吸着剤を
充填すると,包装体が周囲の温度変動により体積膨脹あるいは体積収縮
が生じることを発見し,その原因が球形炭素質吸着剤が10℃から30
℃までの昇温で吸気を放出することにあることを解明したことによるも
のである。すなわち,原告は当初原告製品2(カプセル剤)を製造販売
していたものの,必要量の薬剤を摂取するためには1回10カプセルを
服用しなければならなかったため,本件特許発明の発明者らは,より服
用しやすいように細粒の商品化に着手した。そして,これを一般の薬剤
のように分包袋で包装すると,包装体が大きく膨らんでしまったり大き
く変形してしまったため,本件特許発明の発明者らは,調査,研究を行
,,ない上記現象の原因が内服用吸着剤の空気放出能にあることを解明し
本件特許発明に至ったものである(☆X準(3)p2。)
乙5文献には,吸着剤が昇温によって空気を放出する性質を有するこ
とについて何らの記載もしていないし示唆もしていない。従来から知ら
れていた日本薬局方薬用炭も昇温により空気を放出する性質を有してい
たものであるものの,同薬用炭が気密容器ではなく密閉容器に包装され
ていたため昇温による空気放出が何の問題も生じさせず,薬用炭が空気
を放出することは従来認識されていなかった(第十二改正日本薬局方解
説,第十四改正日本薬局方改正にはいずれも昇温による空気放出につい
ての記載はない。化学大辞典(乙13)の437頁には活性炭につ。)
いて「各種ガス,溶液中の無機あるいは有機物質,コロイド粒子などに
対して強力な吸着能をもっている」旨の記述はあるが,活性炭が上記の
ものを「着脱ないし放出する」旨の記述はどこにもない。また同辞典4
38頁には活性炭の用途として「空気浄化」と記述されており,このこ
とは活性炭が空気を着脱ないし放出することが知られていなかったこと
を示している。薬用炭が気体(ガス)等の媒質に対して強い吸着能をも
つことは技術常識であったとしても,10℃から30℃程度の温度変化
で脱着(放出)能を発揮することは本件出願前には全く知られていなか
った。被告らは,吸着能を有する物質は即ち放出能を有することが前提
として主張しているが,そのような前提はない。
本件特許発明のように原因の解明に基づく発明の進歩性判断につい
て,特許庁の審査基準には「いったん原因が解明されれば解決が容易な
発明の進歩性を判断するときは,原因の解明を含めて技術水準に基づい
て検討するべきであって,解決手段を考えることが当業者にとって容易
であるという理由だけでは,進歩性を否定することはできない」旨記。
載されている(審査基準第ⅠⅠ部第2章2.9(2。また吉藤幸朔))
「特許法概説第9版増補」64頁12行ないし15行(甲84)には,
「用途発明から『発見』を切り離し,残りの部分のみについて創作性が
極めて小であることを理由に,用途発明の特許性の有無を論ずることも
また誤りであるといわなければならない『発見』をも含めた全体を従。
来技術との比較において論ずべきものである」と記載されている。した
がって,当業者が乙2文献及び乙5文献によって,内服用吸着剤の分包
包装体が周囲の温度変化により変形することを防止するという課題に想
到することはあり得ない。
5争点5(本件明細書の特許請求の範囲の記載は,改正前特許法36条5項2
号に違反するか)
()被告ら1
本件特許発明の構成要件Aは,吸着剤の10℃から30℃まで昇温したと
きの空気放出量で内容を特定している。また,本件明細書の発明の詳細な説
明の【0006】には空気放出量の測定方法の記載がある。
しかし,被告製品1の内容物たる内服用吸着剤は,包装体に充填してヒー
トシールするときの温度次第で10℃から30℃までの昇温で1g当たりに
放出する空気の量が異なる。例えば,吸着剤を75℃(高温)で保管した状
態(空気を放出しきった状態)で包装袋に充填してヒートシールし,これを
10℃まで降温した後に30℃まで昇温したとしても,空気は放出しない。
逆に,被告製品1()の内容物である内服用吸着剤を5℃(低温)で保管し1
た状態(空気を吸収した状態)で包装袋に充填してヒートシールし,これを
10℃まで昇温した後に30℃まで昇温すれば,当然空気を放出する。
そうすると,本件特許発明において内服用吸着剤の包装時の温度を画する
ことなく構成要件Aを定めたとしても,当業者が発明の外延を明確に把握で
きる程度に発明の構成に必要な事項を記載しているとはいえない。また,本
件明細書には,当業者が容易に本件特許発明の外延を理解しこれを実施でき
る程度に発明の構成を記載したものとはいえない。
原告は,本件特許発明の特許請求の範囲の記載から,室温と同じ温度の吸
着剤を大気圧下に包装袋にいれて空気放出量を測定した場合の空気放出量を
規定したものと解釈するのが通常であると主張する。しかし,本件明細書に
はそのような測定方法の示唆はなく,本件出願当時,原告主張の条件で内服
用吸着剤の空気放出量を測定する旨の技術常識があったわけではない。
また,原告は,構成要件Aは内服用吸着剤の物としての性質を述べたもの
であって,物としての性質は被告らが主張するような測定方法いかんによっ
て変わらない旨主張する。しかし,本件特許発明の特許請求の範囲には「1
0℃から30℃までの昇温で1g当たり1.3~10mlの空気を放出する
内服用吸着剤が包装されている分包包装体であって」と記載してあり「分,
包包装体」に関する限定要素を規定したものであって,包装体内部における
空気の放出に関する発明なのであるから,吸着剤そのものの性質ではなく,
分包体内部における空気放出量について規定したものと解釈すべきである。
仮に,原告主張のとおり,構成要件Aが内服用吸着剤の物としての性質につ
いて定めたものであったとしても,同一の内服用吸着剤の空気放出量測定結
果が保管方法次第で異なる結果になることに変わりはないから,構成要件A
が不明確なものであることに変わりはない。
また,被告製品1のうちしぼんでいるものとふくらんでいるものがあり,
原告は,しぼんでいるものだけが本件特許発明の技術的範囲を充足するなど
と主張する。仮に,原告の主張どおりであったとしても,同一製造方法で作
成された製品が構成要件を充足したりしなかったりすることは,本件特許発
明の外延の不明確性を明りょうに示すものである。
さらに,内服用吸着剤は,自然状態における昇温によって分包体内部に空
気を放出して分包体を膨脹させる性質を有するから,内部圧力を大気圧より
わずかに2.6%減圧されただけの740mmHgとすることで分包体の変
形を抑制する効果が実現されるとは考えがたい。また,分包包装体の内部圧
力を「740mmHg」とすることに本件特許発明の課題との関係における
臨界的意義が存在しないことも明らかである。本件明細書の特許請求の範囲
の記載どおりに解釈すると,例えば,夏季に冷房のきかない充填室において
分包体に収納された活性炭は気温の下がる秋口に保存温度が25℃まで下が
ると必然的に分包体内に存在する空気を吸着し,これにより分包体は自ずと
見かけ上しぼんだ状態になる。その結果内部圧力も740mmHg以下にな
る。本件特許発明は,このような分包体内部圧力の低下の場合をも包含し得
る特許発明ということになってしまう。
このように,本件明細書は,作用効果との関係で発明を容易に把握できる
程度にその構成を記載したものとはいえず,改正前特許法36条4項,同条
5項2号不適合の瑕疵が存在する。本件特許には改正前特許法123条1項
4号の無効理由があり,本件特許に基づく権利行使は許されない。
()原告2
被告製品1()の内容物である内服用吸着剤は,これを包装体に充填して1
ヒートシールするときの温度次第で10℃から30℃までの昇温で1g当た
りに放出する空気の量は異なるから,ヒートシールする際の吸着剤の温度の
記載がない場合には,構成要件Aの「内服用吸着剤が10℃から30℃まで
の昇温で1g当たり1.3~10mlの空気を放出する」旨の記載のみでは
吸着剤を特定できないのであって,ヒートシール時の吸着剤の温度について
記載のない本件明細書は記載不備である旨主張する。
しかし,ヒートシール時の吸着剤の温度にかかわりなく,空気放出量の測
定は10℃で大気圧下に平衡状態から開始されるのであって,ヒートシール
時の温度を規定する必要はない。構成要件Aは内服用吸着剤の物としての性
質を述べたものであって,物としての性質は被告らが主張するような測定方
法いかんによって変わるものではない。このことは,本件明細書の次の記載
から明らかである。
「この出願発明で使用される内服用吸着剤は,保存中に,温度の変化によ
って空気を吸着したり放出したりする内服用吸着剤であれば,どのような内
。,.服用吸着剤でも良い例えば10℃から30℃までの昇温で1g当たり1
3~10mlの空気を放出する内服用吸着剤である(甲1・4欄41~。」
46行)
「10℃から30℃までの昇温で球状炭素質吸着剤は,例えば,1g当た
り約1.46mlの空気を放出する(同4欄9~11行)。」
「試料1は,10℃から30℃までの昇温で1g当たり1.46mlの空
気を放出する(同13欄6~7行)。」
「スティックパッカーSP-135P-4MH型(株)小松製作所製)(
を用いて分包包装体を得た。各分包包装袋に2gの試料1を充填して,ヒー
トシールして,分包包装体を得た(同13欄23~26行)。」
「空気放出量は次のようにして測定する。内服用吸着剤を防湿包装袋に充
填し,ヒートシールして包装体とする。この包装体をメスシリンダ内壁に固
定する。流動パラフィンを加え,包装体全体が流動パラフィンに浸るように
する。このメスシリンダを10℃の恒温槽中に固定し,液面の目盛りを読み
とり,30℃まで昇温して,液面の増加量を読みとる。流動パラフィン自体
,,の10℃から30℃までの体積膨脹量を差引き内服用吸着剤重量で除して
1g当たりの空気放出量とする(同4欄46~5欄5行)。」
上記のとおり,内服用吸着剤の空気放出量測定に用いる包装体は「出願発
明の分包包装体(体積膨張率の測定方法に関する第6欄42行以下参照)」
ではなく「防湿包装体」と記載されている。
被告らは,被告製品1について原告が提出する試験結果と被告らが提出す
る試験結果が齟齬していることをもって,本件明細書の不明確性を示すもの
と主張する。しかし,両者の結果が齟齬しているのは被告ら提出の試験結果
が前記のとおり異常な測定方法によってなされたことによるものであって,
本件明細書の記載内容が不明確だからではない。
6争点6(本件明細書の発明の詳細な説明は,改正前特許法36条4項に規定
する要件に違反するか)
()被告ら1
本件特許発明において,空気放出量が1.3ml/g,分包体の内圧が4
0mmHgという,体積膨張率が最も小さくなるはずのパラメータを構成要
件A及びCにおいてそれぞれ選択しても,構成要件Bに規定された最小値で
ある0.000ml/℃・gが実現されることはない。
すなわち,分包体の内圧の低下に比例して体積膨張率も低下するとの推測
に基づき,内圧測定時の温度は25℃前後とした場合,構成要件Aとの関係
で,内服用吸着剤として10℃から30℃までの昇温で1g当たり10ml
の空気を放出するものを選択し,構成要件Cとの関係で25℃における内部
圧力が40mmHgとなるようにした場合の体積膨張率は,次のとおり試算
される。
10ml/g÷20(10~30℃の温度差)×(40mmHg/760
mmHg)=0.026ml/℃・g
次に構成要件Aとの関係で,内服用吸着剤として10℃から30℃までの
昇温で1g当たり1.3mlの空気を放出するものを選択し,構成要件Cと
の関係で25℃における内部圧力が40mmHgとなるようにした場合の体
積膨張率は,次のとおり試算される。
1.3ml/g÷20(10~30℃の温度差)×(40mmHg/7
60mmHg)=0.003ml/℃・g
このように,構成要件A及びCにおいて,選択し得る範囲で体積膨張率
が最も小さくなる選択をした場合であっても,構成要件Bにおける体積膨
張率の最小値である0.000ml/℃・gが実現されることはない。
なお,本件明細書の実施例3【0031【0032】には,体積膨張】,
率が0.000ml/℃・gとなる実施例が記載されている。しかし,当
.該実施例に充填される吸着剤の10℃から30℃における空気放出量は0
00mlになっており,構成要件Aを充足しないから,上記実施例は,本
件特許発明の技術的範囲に属さないものである。
このように,本件特許発明の技術的範囲には実施不能の発明が含まれて
いるから無効とされるべきである。
原告は,構成要件Aは内服用吸着剤の物としての性質を述べたものであ
って,構成要件Aの空気放出量を本件特許発明の分包包装体内に包装され
た状態における内服用吸着剤の空気放出量と解釈することを前提とする被
告らの上記主張は採り得ない旨主張する。しかし,本件特許発明の特許請
求の範囲には「10℃から30℃までの昇温で1g当たり1.3~10m
lの空気を放出する内服用吸着剤が包装されている分包包装体であって」
,「」,と記載してあり分包包装体に関する限定要素を規定したものであって
包装体内部における空気の放出に関する発明なのであるから,吸着剤その
ものの性質ではなく,分包体内部における空気放出量について規定したも
のと解釈すべきである。
()原告2
被告らは,本件特許発明において,空気放出量が1.3ml/g,分包体
の内圧が40mmHgという,体積膨張率が最も小さくなるはずのパラメー
タを構成要件A及びCにおいてそれぞれ選択しても,構成要件Bに規定され
た最小値である0.000ml/℃・gが実現されることはないから,本件
特許発明の技術的範囲には実施不能の発明が含まれている旨主張する。
しかしながら,被告らの上記主張は,構成要件Aの空気放出量を本件特許
発明の分包包装体内に包装された状態における内服用吸着剤の空気放出量と
解釈することを前提としているものであり,その前提が誤っている。すなわ
ち,構成要件Aの空気放出量は内服用吸着剤の物としての性質を特定するた
めの要件であるから,大気圧下で測定するものであり,構成要件B及びCと
は異なる。
また,被告らは,本件明細書の実施例3【0031【0032】には,】,
体積膨張率が0.000ml/℃・gで,10℃から30℃における空気放
出量は0.00mlの分包体が記載されているものの,当該実施例は構成要
件Aを充足しない旨主張する。しかしながら,実施例3については「実施例
1において包装材料a,eを用い,各温度(…)で充填した,分包包装体の
体積膨脹量を,各外部温度において,測定し」その体積膨張率を算出したも
のである旨記載されている。そして,実施例1については「各分包包装体に
2gの試料1を充填して」と記載されているとおり,内服用吸着剤として試
料1を用いている。この試料1は,10℃から30℃までの昇温で1g当た
り1.46mlの空気を放出する(本件明細書13欄6~7行)と記載され
ているから,被告らの主張する,実施例3の試料の空気放出量が0.00m
lであるとの認識は誤っている。
7争点7(原告製品1の包装が不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」
として周知性を有するといえるか)。
()原告1
ア原告製品1の包装は,特徴的である。特に,原告製品1の包装B(金色
の地に青色の文字からなる包装)は,医薬品の包装としては稀であり,顕
著な特徴であるといえる。
製剤がアルミシートの複数連装された構成を有する点はありふれたもの
といえるとしても,横に細長いスティック状の分包包装体であり金色地に
青色調の文字が記載された外観のものが横方向に3包並んでいる構成はあ
りふれたものではなく,需要者,取引者の注意を惹く。また,包装に販売
名(商品名)及び容量表示を付することは,薬事法50条が法定している
ものでありありふれた構成であるものの,その記載位置や記載方法(日本
語表記と英語表記を並記するなど)は法定されておらず,原告製品1の具
体的な販売名(商品名)及び容量表示の記載方法は,ありふれたものでは
なく,地色が金色調で文字が青色調であることもあって需要者及び取引者
の注意を惹く。被告らは,これらの字体のみを取り上げて字体がありふれ
ている旨の主張もする。しかし,文字の色等と字体の特徴が相俟って商品
等表示性を基礎づける一つの要素になっているというべきである。包装袋
が金色調で文字が青色調であるという構成は原告製品1の販売時である平
成12年7月以前にはほとんどなかった。色彩,配色そのものにも出所表
示機能は認められるものである(大阪地裁昭和58年12月23日,大阪
地裁昭和41年6月29日,大阪地裁昭和60年5月28日。また,被)
告らは,原告製品1の包装を各構成要素を個別に取り上げて,いずれもあ
りふれたもので出所識別機能を有しない旨主張する。しかし,原告製品1
の包装を全体的に観察したとき,これをありふれたものということはでき
ない。
原告製品1は,慢性腎不全(進行性)における尿毒症症状の改善・透析
導入遅延の適応を取得した唯一の薬剤であった原告製品2の必要量が1回
10カプセルであったため,より服用しやすい形状の薬剤として,平成1
2年7月ころまでに開発されたものである(甲57。原告は,上記外観)
を有する原告製品1を広告に掲載するなどして広告を行なっており,広告
費用は平成12年ないし16年までで合計4923万0800円に昇る
()。,,甲32ないし49原告は原告製品1の販売を三共に委託しており
平成12年ないし同16年にかけて三共従業員だけで延べ6103人の営
()。業担当者を用いて全国的に営業活動を行なってきた甲12ないし30
原告製品1の現在までの販売実績は約120万ケース(1ケース84包)
である(甲57。)
以上のような極めて特徴的な外観と原告の宣伝活動,営業活動,販売実
績により,原告製品1の包装は,薬剤師等の医療関係者及び慢性腎不全に
罹患している患者等の間において,原告の商品等表示として広く認識され
ている。
イ原告は,リサーチ会社に依頼して原告製品1の包装,形態の認知度を調
査した。その結果,薬剤師においては90%が原告製品1の包装,形態を
認知していることが判明した。このことは,薬剤師が原告製品1をその外
観で識別していることを示すものである(甲77。さらに,原告製品1)
を処方される患者においても原告製品1の包装,形態の認知率は38%と
なっており,患者については患者向けの宣伝広告が一般的には行われてい
ない上,医師や薬剤師と異なり,自らに処方されない限り原告製品1の包
装,形態を目にすることはないにもかかわらず,上記程度の高い認知度を
有している。以上の調査結果は,原告製品1の包装が原告の商品等表示と
して周知性を有することの証左である。
ウ被告らは「クレメジン細粒「Kremezin,本件三共ロゴマ,」,」
ーク及び「SANKYO」の表示が原告製品1の包装で出所表示機能を有
する部分である旨主張する。原告も上記表示が出所表示機能を有すること
を争うものではない。しかしながら,上記表示部分に出所表示機能がある
からといって商品の包装の出所表示機能が否定されるものではない。
()被告ら2
ア原告が主張する原告製品1の包装は,製剤の包装において何ら特異性を
,。有するものではなく当該構成要素は出所識別機能を有するものではない
原告製品1の包装Aについては,製剤がアルミシートの複数連装された
構成を有する点は医薬品の分包包装体の形状としては当然の極めてありふ
れた構成である。同包装Bについては,地色の光沢の抑えられた金色調は
アルミシートが本来有する色であり,文字部分の青色調は地色と対照的な
色であり,製剤の包装においては文字部分に地色と対照的な色を配色する
ことは何ら特異なことではない。同包装Cについては,その表面に和英文
の販売名(商品名)あるいは内容量が記載されることも,薬事法50条に
より医療用医薬品の製造業者に義務づけられた選択の余地のない構成であ
る。原告が主張する字体の特徴も医薬品の販売名(商品名)の表記方法と
してごくありふれたものである。
イ原告製品1の包装を全体的に観察した場合,需要者,取引者が着目する
のは原告製品1の包装に付されているもっとも典型的な商品出所表示商,(
標)である「クレメジン細粒「Kremezin,本件三共ロゴマー」,」
ク及び「SANKYO」の表示である。原告は,上記販売元表示をことさ
らに除外して原告製品1の包装からどのような出所識別がなされるかを主
張する。しかし,上記各表示を除外して原告製品1の包装のほかの部分を
商品等表示部分と解釈することは取引現場における経験則ないし取引の実
情からあまりにもかけ離れた主張である。
ウ商品の包装が特別顕著性を有する色彩や配色の組み合わせを有する場
合,かかる色彩や配色の組み合わせに出所表示機能が認められることもあ
り得る。しかし,原告製品1の包装はその色彩,配色は,単なる「光沢の
少ない金色調」であり,これが,典型的な商品等表示であり,かつ原告製
品1の包装に大書されている「クレメジン細粒「Kremezin,」,」
本件三共ロゴマーク及び「SANKYO」の各表示を凌駕する特徴要素と
して看者に特別な印象を与えるものではない。
8争点8(原告製品1の包装と被告製品1の包装の類似性)
()原告1
不正競争防止法2条1項1号の類否の判断は「取引の実情の下において,
取引者又は需要者が両者の外観・呼称又は観念に基づく印象,記憶,連想等
から両者を全体的に類似したものと受け取るおそれがあるか否かを基準とし
て判断すべき」である(最高裁昭和58年10月7日・民集37巻7号92
0頁。また,その類否の判断は,離隔的観察方法,すなわち,場所と時間)
を異にして見聞きした状況を想定して両者の類否を判定する方法によって判
断されなければならない(大阪高裁昭和43年12月13日・判時564号
85頁,札幌地裁昭和51年12月8日・無体集8巻462頁。)
これを本件に当てはめると,原告製品1の包装A(包装体の外形,同C)
のうち商品名と容量表示がなされている点及び同D(両端の熱融着)は,医
薬品の包装体としてありふれた構成であって,看者の注意を惹く部分とはい
えない。他方,原告製品1の包装B(包装体の地の色と文字の色,同Cの)
,「」,うち表側の上半分に商品名の日本語表記クレメジン細粒を上段に配し
商品名の英語表記「Kremezin」を下段に配した1セットの表示が横
書きで記載されている点,同E(3連1セットの点)及び同F(切り離し用
),,。点線は看者の注意を惹く部分であり原告製品1の包装の要部といえる
被告製品1の包装bにおいては,具体的な色彩はその濃淡の点で違いがあ
る。しかし,原告製品1と被告製品1とは,いずれも,地が金色調,文字が
青色調という点で共通している。そのため,離隔的観察方法による場合,看
,,。者は地が金色調文字が青色調という基本的な色彩構成に注意を惹かれる
色彩の濃淡から受け取られる印象の相違は些細な相違にすぎず,両者を別の
ものと印象づけるほど顕著なものではない。
被告製品1の包装cのうち表側の上半分に,商品名の日本語表記「メルク
メジン細粒」を上段に配し,商品名の英語表記「MerckmezinF
ineGranules」を下段に配した1セットの表示が横書きで記載
されている点については,表示されている文字が,原告製品1においては商
品名「クレメジン細粒「Kremezin」であり,被告製品1におい」,
ては商品名「メルクメジン細粒「MerckmezinFineG」,
ranules」であるという点で異なる。しかし,包装体の上半分の位置
に上段が日本語表記,下段が英語表記で商品名が記載されているという点,
字体がゴシック体を基調としつつハネ部分が先端方向に向かって略鋭角上に
細くなっている点で共通する。商品名自体も「メジン「mezin」と」,
いう特徴的な部分及び「ク」の部分が一致している上「レ」と「ル」がい,
ずれもラ行で共通するなどの点において看者に共通の印象を与えるものであ
る。被告らは,原告製品1と被告製品1が「メジン」と略称されることがな
「」,いことををもってメジンが共通していても類似しない旨の主張をするが
そのような略称がなされているかどうかと類比の判断は無関係である。上記
の事情から,上記相違点は,被告製品1の包装が原告製品1の包装に類似す
るという結論に影響を与えるものではない。
原告製品1の包装Eについて,被告らは,アミノメルクを根拠に従前から
存在していた旨主張する。しかし,アミノメルクの包装は,3連包ではない
(甲83。被告らは「3連包「横長スティック状」の包装形状の例を),」,
,「」それぞれ個別に挙げるが原告製品1の包装は3連包の横長スティック状
なのであって,このような形状を備えた例は一つも挙げられていない。むし
ろ,被告らは,原告製品1の包装Eについては,乙14号証の各枝番のよう
な反証を提出できていないことから,同外観が極めて特徴的なものであるこ
とがわかる。
さらに,被告製品1と原告製品1は,それぞれ外観H,Fとh,fの点に
おいて共通している。
以上のとおり,被告製品1と原告製品1は,要部において共通しており,
細部においては相違点があるものの,全体の印象の類似性と比較してその差
はいずれも軽微であり,離隔的観察方法によって観察した場合,看者に与え
る印象はほぼ同一であるから,類似する。
()被告ら2
原告は,原告製品1の包装B,同Cの文字部分,同E及び同Fと被告製品
1の包装b,同cの文字部分,同e及び同fが共通しているとして両者の外
観が類似する旨主張する。
しかし,原告製品1の包装Bと被告製品1の包装bについては,具体的に
は色が異なっている。原告製品1の包装Bは地の色は色調の薄い薄黄色系の
金色調であり,文字部分は水色に近い薄い青色であるのに対し,被告製品1
の包装bは地の色は真鍮状でやや濃い目の光沢のある金色調であり,文字部
分は濃い紺色である。このような色の相違は,離隔的に観察した場合には看
者に両者を異なるものとして印象づけるといえる。
原告製品1の包装Cと被告製品1の包装cについては,包装袋に商品名を
日本語及び英語で並記することは極めて一般的であり,販売名(商品名)を
容量と共に表示することも薬事法50条により義務づけられているものであ
って,かかる点が共通することをもって原告製品1と被告製品1が類似して
。(),いるということはできない両者の販売名商品名の和文表記については
,,,「」。字数字体音節数が異なり後半部分のメジンが共通するにすぎない
原告は「メジン」が一致していることをもって,両者が類似であると主張,
する。しかし,取引現場において,原告製品1や被告製品1が「メジン」と
略して称呼されることは皆無であるから,かかる一部の点の一致をもって両
者を類似しているということはできない。同英文表記については,原告製品
1が「Kremezin」であるのに対して,被告製品1が「Merckm
ezinFineGranules」であって,字体も異なり,両者は
。,(),明らかに相違するなお原告製品1及び被告製品1の販売名商品名は
いずれも特段の観念を生ずるものではない。あえていえば,被告製品1の販
売名「メルクメジン」からは,世界的に著名な被告メルクの製剤であるとの
観念を生じる。
原告は,原告製品1の包装Eをも特徴的な外観であることを前提に類似し
ていると主張する。しかし,横長の包装体,3連包,スティック状等の分包
体の形状は市販の胃薬等に古くから採用されていたありふれた形状である。
むしろ,原告製品1と被告製品1は,A及びaにおいて縦横比が異なると
いう相違点がある。原告製品1及び被告製品1はいずれも単純な長方形の分
包体であるところ,このような縦横比の相違は離隔的観察において需要者に
認識されるものである。また,原告製品1にはF,G及びHが存在するのに
対し,被告製品1にはそのような外観が存在しない点でも両者は異なってい
る。
以上のとおり,原告製品1と被告製品1においては,原告指摘の共通箇所
が存在する(なお,原告指摘の共通箇所のうち一部については相違すること
は前述のとおりである)ものの,両者のデザインの違い,色彩の違い,な。
により,もっとも看者の目を惹く商標,販売元,製造元の表示が大書されて
いることから,全体的観察において,両者が非類似の包装であることは明ら
かである。
9争点9(被告らが被告製品1を販売等することによって原告の商品と混同を
生じさせるといえるか)。
()原告1
被告らは,原告各製品の需要者は医師及び薬剤師であるとして,医師及び
薬剤師においては商品名,識別コードで医薬品を特定するから,その外観の
ために医薬品を誤認混同することはない旨主張する。
確かに,医師及び薬剤師においては商品名,識別コードで医薬品を特定す
るのが一般であるが,医師及び薬剤師であっても,外観の類似性の程度によ
っては医薬品を混同するおそれはある(甲77。実際,甲77のアンケー)
トでは原告製品1の包装をみてこれを被告製品1と誤認した医師が1名同,(
5頁)存在した。
また,医師及び薬剤師のみならず,患者も原告各製品の需要者であるとい
うべきである。患者は自らの意思と支出で医薬品を購入しているのであるか
ら,医療用医薬品であっても患者に選択権があるというべきである。したが
って,患者も医療用医薬品の需要者である。
()被告ら2
医薬品には医師による処方が必要とされる医療用医薬品と,医師による処
方が不要な一般医薬品に区別されるところ,原告製品1及び被告製品1は前
者の医療用医薬品である。医療用医薬品における需要者は,処方資格を有す
る医師及び処方する薬剤師等の専門家である。医師や薬剤師が医療用医薬品
を処方する場合,商品名や識別コードで医薬品を特定するのであって,医薬
品の包装・形態で特定することはあり得ない。
原告は,患者も需要者である旨主張するが,患者はあくまでも被施用者で
あって商品の出所判断,選択を行う需要者ではない。
原告製品1と被告製品1の包装に原告の主張するような共通点があったと
しても,需要者である医師や薬剤師が両者の外観から薬品の出所を混同して
取引するなどということはあり得ない(乙31ないし262。むしろ,医)
師や薬剤師など,専門家である需要者にとっては,原告製品1と被告製品1
の出所が異なることは極めて顕著な事実である。
10争点10(故意・過失の有無)
()原告1
一般的に,後発医薬品を製造販売する医薬品メーカーは,先発医薬品を服
用していた患者が違和感なく当該後発医薬品に切り替えられるように,先発
医薬品の包装・形態を模倣する傾向がある。
本件において,被告らは,原告各製品の後発医薬品として被告各製品を製
造ないし販売しているところ,被告製品1,2が原告製品1,2と酷似する
包装,形態を採用しており,商品名においても「メジン」という原告各製品
において用いられた造語を用いていることから,原告が作り上げてきた成果
にフリーライドする意図があることは明らかである。
11争点11(原告製品2の形態・包装が不正競争防止法2条1項1号の「商
品等表示」として周知性を有するか)。
()原告1
ア原告製品2の形態・包装Cは,他に存在しない極めて特徴的な配色であ
る。
原告製品2の形態・包装A,B,Cが相俟って,特徴的な配色のカプセ
,。ルが10個並んだ外観となっており極めて看者の注意を惹くものである
原告製品2の形態・包装の要部は原告製品2の形態・包装AないしC及び
Eのうち赤色の識別コードが記載されている部分である。
そして,原告製品2は,慢性腎不全(進行性)における尿毒症症状の改
善・透析導入遅延の適応を取得した唯一の薬剤であった(甲57。原告)
は,上記外観を有する原告製品2を広告に掲載するなどして広告を行なっ
ており,広告費用は平成5年ないし16年までで合計5070万7800
円に昇る(甲31ないし49,57。原告は,原告製品2の販売を三共)
に委託しており,平成5年ないし同16年の間,三共従業員を含む延べ1
万6166人の営業担当者を用いて全国的に営業活動を行なってきた(甲
12ないし30。原告製品2の現在までの販売実績は約130万ケース)
(1ケース1000カプセル)である(甲57。)
以上のような極めて特徴的な外観と原告の宣伝活動,営業活動,販売実
績により,原告製品2の形態・包装は,薬剤師等の医療関係者及び慢性腎
不全に罹患している患者等の間において,原告の商品等表示として広く認
識されている。
イ原告は,リサーチ会社に依頼して原告製品2の包装,形態の認知度を調
査した。その結果,薬剤師においては84.8%が原告製品2の包装,形
態を認知していることが判明した。このことは,薬剤師が原告製品2をそ
の外観で識別していることを示すものである(甲77。さらに,原告製)
品2を処方される患者においても,原告製品2の包装,形態の認知率は3
4.8%となっている。患者については,患者向けの宣伝広告が一般的に
は行われていない上,医師や薬剤師と異なり,自らに処方されない限り原
告製品2の包装,形態を目にすることはないにもかかわらず,上記程度の
高い認知度を有している。以上の調査結果は,原告製品2の形態・包装が
原告の商品等表示として周知性を有することの証左である。
ウ被告は,乙14号証(枝番の記載は適宜省略する。以下同じ)を提出。
して,原告製品2の形態・包装Cがありふれたものである旨主張する。し
かし,乙14号証はほとんどがカプセル全体が白色の例である。カプセル
の半分が白色の例も存在するものの(乙14の3の1・2,14の39,
14の59,いずれもカプセルの半分が白色で残り半分が灰色の形状の)
ものではない。このことは,原告製品2の形態・包装Cの特殊性を際だた
せるものといえる。
()被告ら2
ア原告製品2の「カプセルは白色半透明であり,カプセル内の球形吸着炭
が黒色であり,外観上は,カプセルの半分が白色,残り半分が灰色に見え
る」という外観(原告製品2の形態・包装C)は,白色のカプセル内に黒
色の製剤が仕込まれたことによる当然の帰結であって特異なものではな
く,看者をして特段の顕著性を認識させるようなものではない。このよう
な単純なツートンカラーのカプセル剤の外観を原告が独占できる根拠はな
い。
「PTPシート一つに10個のカプセルが2列5段で包装されている構
成(原告製品2の形態・包装A)は,カプセルの服用量にかかわらず採」
用される一般的なものであり(ジェネリック製品一覧2005年版(乙「」
7)のアリーゼNカプセル(2頁,イデノラートカプセル(5頁,オ))
イスロンカプセル(6頁,カリアントTPカプセル(7頁,コロジレ))
ートカプセル(11頁,セスファルコ50カプセル(15頁,100))
カプセル(15頁,セルパスカプセル(17頁,ロペナカプセル(4))
0頁,ロンミールカプセル(41頁)等,原告製品2を特徴づける自))
他識別力を発揮する包装の構成要素たり得ない。
イ原告は,原告製品2の形態・包装Eのうちカプセルに赤色で識別コード
が記載されていることを原告製品2の形態・包装の要部である旨主張す
る。しかし,識別コードとは極めて小さい文字でアルファベット3文字,
算用数字3文字の記載であり,かかる表示が商品等表示の一要素であると
いう主張は採り得ない。
ウ原告製品2の形態・包装と被告製品2の形態・包装との間で共通する,
形態・包装A,B及び同Dのうちアルファベットと数字からなる識別コー
ドが記載され,シート裏面に商品名と容量が記載されているという特徴を
有するPTPシートは多数存在する(乙14の7の2,14の19,14
の21,14の24の2,14の31,14の48,14の54の2,1
4の54の2,14の58,14の60。)
12争点12(原告製品2の形態・包装と被告製品2の形態・包装の類似性)
()原告1
原告製品2は,従前は,原告製品2従前の形態・包装であった。しかし,
原告製品2従前の形態・包装と原告製品2の形態・包装との相違点は,本件
円形三共マークの有無のみであり,原告製品2の形態・包装を全体的に観察
した場合には,本件円形三共マークの有無は些細な構成要素にすぎず,両者
について,需要者,取引者の受ける印象に差異はない。
被告製品2の形態・包装aないしdは,いずれも原告製品2の形態・包装
AないしDと一致するものであり,被告製品2の形態・包装と原告製品2の
形態・包装は類似する。特に,原告製品2の形態・包装の要部は原告製品2
の形態・包装AないしC及びEのうち赤色の識別コードが記載されている部
,,。分であるが被告製品2の形態・包装はこれらの点で完全に一致している
被告製品2の形態・包装d及び原告製品2の形態・包装Dにおいては,表
示されている文字が,原告製品2においては表側が「Kremezin,」
裏側が「クレメジン」であり,被告製品2においては表側が「Merckm
ezinCap,裏側が「メルクメジンカプセル」であるという点で異」
なる。しかし,これらは,全体から見て小さな表示にすぎず,両カプセルの
酷似性やその他の共通点に比して軽微な相違である。むしろ,両者の商品名
の表記は,字体において酷似しており,表側において「mezin」と「m
ezin「Kre」と「Merck」の「k「r「e」が完全に一」,」,」,
致している。裏側においても「メジン」と「メジン「ク」と「ク」が完」,
全に一致しており「レ」と「ル」は,いずれもラ行で共通していることか,
ら,いずれも一つの固有名詞として読んだときの称呼が類似している。被告
は,販売名の表示は記載することが定められている旨主張する。たしかにそ
のとおりであるが,具体的記載方法について日本語表記にするか英語表記に
するかで選択の余地があり,また,識別コードの記載は任意である。
上記の事情から,上記相違点は,被告製品2の形態・包装が原告製品2の
形態・包装に類似するという結論に影響を与えるものではない。
()被告ら2
原告は,原告製品2の形態・包装と被告製品2の形態・包装を対比して類
似している旨主張する。しかし,原告製品2は先ごろまで原告製品2従前の
形態・包装であったから,原告製品2従前の形態・包装と被告製品2の形態
・包装とを対比して類似性を判断すべきである。
まず,原告製品2の形態・包装Dと被告製品2の形態・包装dとの対比に
おいては,包装の表面に識別コードあるいは販売名(商品名,容量表示を)
記載することは,医療用医薬品の製造販売業者に薬事法上義務づけられてい
るのであって(乙8の別紙4,原告製品2の特徴的な外観とはいえない。)
原告は,原告製品2の形態・包装Dのうち販売名の記載方法が日本語表記に
するか英語表記にするかで選択の余地があること,識別コードの記載が任意
であることから,原告製品2の形態・包装Dのうち識別コードの記載や販売
名の記載が特徴部分であると主張する。しかし,識別コードの記載は任意で
,,あっても記載するのが通常であること販売名の英語表記か日本語表記かは
二者択一でありいずれかの記載をとらざるを得ないものである。また,被告
製品2には本件円形三共マークはないから原告製品2従前の形態・包装Dと
被告製品2の形態・包装dは異なる。むしろ,被告製品2の形態・包装dに
おいては,表面においてシート最上段に商品名の英語表記「Merckme
zinCap」を記載し,裏面において「メルクメジン」の文字を大書.
して表示しており,世界的に著名な薬品メーカーである被告メルク・ホエイ
ないしその関連会社であることを示唆する表示をしている。
原告は,原告製品2の形態・包装Dと被告製品2の形態・包装dとの比較
において,PTPシートの地に記載されている文字の字体(ゴシック調を主
体としてハネの部分を幅細に終端させる字体)が共通している旨主張する。
しかし,かかる字体は,原告製品2,被告製品2のみならず,他の薬品にも
使用されているごくありふれたものである(乙7のアミノメルク(2頁,)
ウナスチン(5頁,グリミラン(9頁,コロキノン(11頁,セダガス)))
トン16頁セルパス17頁ネオメルク22頁バザロイン2(),(),(),(
3頁,フルコナメルク(31頁,フルタメルク(31頁,ペミストメル)))
ク(33頁,ラニメルク(37頁,リシノメルク(38頁,ロペナカプ)))
セル(40頁,ワンサー(41頁)等。また,原告製品2において用い))
られている字体は終端がコの字状であるが,被告製品2に使用されている字
体は終端が鋭角状であるという違いもある。
文字の内容である商品名も,原告製品2の商品名「クレメジン」と被告製
品2の商品名「メルクメジン」とでは,前者が5音節,後者が6音節で相違
する上,それぞれ一気に呼称される短いものであるため,その全体が要部で
あり,称呼において両者は類似しない。
13争点13(被告らが被告製品2を販売等することによって原告の商品と混
同を生じさせるといえるか)
()原告1
被告らは,原告各製品の需要者は医師及び薬剤師であるとして,医師及び
薬剤師においては商品名,識別コードで医薬品を特定するから,その外観の
ために医薬品を誤認混同することはない旨主張する。
確かに,医師及び薬剤師においては,商品名,識別コードで医薬品を特定
するのが一般である。しかし,医師及び薬剤師であっても,外観の類似性の
程度によっては医薬品を混同するおそれはある(甲77。実際,甲77の)
アンケートでは,原告製品2の形態・包装をみてこれを被告製品2と誤認し
た医師が1名(同4頁)存在した。
また,医師及び薬剤師のみならず患者も原告各製品の需要者であるという
。,べきである患者は自らの意思と支出で医薬品を購入しているのであるから
。,医療用医薬品であっても患者に選択権があるというべきであるしたがって
患者も医療用医薬品の需要者である。
()被告ら2
争点9()と同様の理由で被告らが被告製品2を販売等することによって2
原告の商品と混同を生じさせるおそれはない。
14争点14(故意・過失の有無)
()原告1
争点10と同じ。
15争点15(損害の額)
()原告1
原告は,原告製品1を製造,販売して本件特許権を実施しており,また,
原告製品2を製造,販売している。原告は,被告メルクが被告製品1及び同
2を製造,販売したことにより得べかりし利益を失った。
被告製品1の1包の薬価は212円40銭であり,販売単価はその75%
であるから159円30銭である。被告メルクは,本訴提起までの約6.5
か月で少なくとも被告製品1を92万4000包販売した。また,被告メル
クの利益率は80%である。したがって,被告メルクが被告製品1を製造,
販売したことによって得た利益は,1億1775万4560円(159円3
0銭×92万4000包×80%)である。
被告製品2の1カプセルの薬価は21円40銭であり(甲70,販売単)
価はその75%であるから16円5銭である。被告メルクは,本訴提起まで
の約6.5か月で少なくとも被告製品2を230万個販売した。また,被告
メルクの利益率は80%である。したがって,被告メルクが被告製品2を製
造,販売したことによって得た利益は,2953万2000円(16円5銭
×230万個×80%)である。
したがって,被告メルクは,被告各製品を製造,販売することにより合計
1億4728万6560円の利益を得た。上記利益の額は,特許法100条
2項又は不正競争防止法5条2項により原告が受けた損害の額と推定される
ため,原告が,被告メルクの本件特許権侵害行為又は本件不正競争行為によ
り被った損害の額は1億4728万6560円である。
()被告ら2
原告主張の損害額は争う。
第4当裁判所の判断
1特許権侵害の成否
,,(,特許権侵害の成否については事案の内容に鑑み争点4本件特許発明は
特許法29条2項に違反するか)から判断する。。
()乙2文献には,次の記載がある(以下,同文献に記載された炭素質吸着剤1
に係る発明を「引用発明」という。。)
「,,,a)本発明は肝腎疾患患者に対し経口的な服用により治療する即ち
経口肝腎疾患治療薬として有用な吸着剤に係る。更に詳しくは,多孔性
の球形炭素質物質から得られる,有害な毒性物質()の消化器系Toxin
内における吸着性能に優れ且つ消化酵素等の体内の有益成分の吸着性の
少ない両性炭素質吸着剤に係る(乙2・2欄15~21行)。」
)「本発明の炭素質吸着剤は多孔性球形炭素質物質から得られる。該多b
孔性の炭素質物質は,直径0.05~1mm,細孔半径80Å以下の空
..,.隙量02~10cc/g細孔半径100~7500Åの空隙量0
1~1cc/gを有する炭素質球形体であることが好ましい(4欄。」
34~39行)
乙2文献の上記記載によれば,引用発明は,内服用の多孔性球形炭素質
吸着剤であると認められる。なお,原告は,上記引用発明に係る吸着剤の
実施品(商品名「クレメジンカプセル)について、平成3年10月4日」
に指定医薬品として承認を受け,同年11月に薬価収載を受け,同年12
月にその販売を開始した。クレメジンカプセルは,クレメジン原体(石油
系炭化水素由来の球形微粒多孔質炭素を高温にて酸化及び還元処理して得
た球形吸着炭)を1カプセル中200含有するものであり,慢性腎不mg
全の疾患における尿毒症症状の改善及び透析導入の遅延の効能・効果を有
し,製剤の剤形が「白色硬カプセル」である(甲79,乙6。)
()本件特許発明と引用発明とを比較すれば,引用発明の吸着剤は,本件特許2
発明と「内服用吸着剤」である点で一致し,次の点で相違する(以下「相違
点1」などという。。)
ア相違点1
内服用吸着剤に関し,本件特許発明は,内服用吸着剤を分包包装袋に包
装した分包包装体であるのに対し,引用発明は,内服用吸着剤の包装方法
を特に特定していない点。
イ相違点2
本件特許発明の内服用吸着剤は「10℃から30℃までの昇温で1g,
当たり1.3~10mlの空気を放出する」ものであるのに対し,引用発
明の内服用吸着剤は,この点について明らかではない点(なお,被告は,
争点5において上記空気放出量は包装体内部における空気の放出に関する
ものであって,吸着剤そのものの性質ではない旨主張するが,上記空気放
出量が内服用吸着剤の性質を表すことは本件明細書の記載から明らかであ
る(甲1【0006】参照。)。)
ウ相違点3
本件特許発明の分包包装体は「10℃から30℃までの体積膨張率が,
0~0064ml/℃・g内服用吸着剤であり構成要件B分.()」(),「
包包装体の25℃における内部圧力が40~740mmHgである(構」
成要件C)のに対し,引用発明は,そのようになっていない点。
()相違点1について3
ア)乙2文献には,引用発明の炭素質吸着剤を肝腎疾患治療薬として用a
いる場合について「投与形態は散剤,顆粒,錠剤,糖衣錠,カプセル,
懸濁剤,乳剤等いずれもとり得る(乙2・7欄9~10行)と記載。」
されている。
)「第十改正日本薬局方解説書A・B・C1981(乙19。財b」
団法人日本公定書協会,株式会社廣川書店)には「顆粒剤…密閉容器又
は気密容器に保存する「顆粒剤が,散剤,錠剤あるいはカプセル剤」,
などのほかに剤形として必要な理由は…付着性がないのでホッパーから
落とすタイプの分包機ではシール面に粒子が付着しないのでシールが完
全であることなど…」と記載されている。
)密閉容器とは,通常の取扱い,運搬又は保存状態において,外部からc
の固形の異物が混入することを防ぎ,内容医薬品が損失しないように保
護することができる容器(例えば,紙箱,紙袋等)をいい,気密容器と
は,通常の取扱い,運搬又は保存状態において,液状又は固形の異物又
は水分が侵入せず,内容医薬品の損失,風解,潮解又は蒸発を保護する
ことができる容器(例えば,…分包,…等)をいうことは,本件出願時
における周知の技術である(甲1・3欄【従来の技術】欄参照。。)
)乙4文献にも「従来,…からなる塩酸プロムヘキシン組成物は,使d,
用上の簡便性から散剤,細粒材または顆粒剤等の固形製剤とされ,これ
を予め秤量しプラスチック包材またはプラスチック積層アルミニウムに
分包して保存されている(乙4・1頁右欄6~13行)との記載が。」
ある。
イ前記ア)ないし)によれば,錠剤,カプセル剤,散剤,顆粒剤等の経ad
口製剤は密閉容器又は気密容器に保管するものであること,及び,分包包
装体は気密容器の一種であることは周知の技術であり,かつ,引用発明の
内服用吸着剤の投与形態は散剤,顆粒,錠剤等いずれの形も取り得るので
あるから,引用発明の内服用吸着剤について散剤,顆粒剤等の形態を採用
した上,気密容器(分包包装容器)に包装することは,当業者が適宜設計
し得る事項であるといえる。
原告は,代表的な内服用吸着剤である薬用炭について,第五改正日本薬
局方に「薬用炭は大気中より水分竝ガス體を吸収する力強きを以て壜中に
密栓して貯ふべし(乙21)と記載されていること,犬日の出製薬が平」
成17年4月7日ころまでに製造,販売した薬用炭は,紙袋に包装されて
いたこと(甲73)から,本件内服用吸着剤を気密容器である分包包装体
に包装することは周知慣用技術ではない,と主張する。しかし,引用発明
に開示された球形炭素質吸着剤は,従来の薬用炭と比べ,胆汁酸等の存在
下でも吸着能が優れ,腸内に存在する消化酵素等の有益成分に対する吸着
性が少なく,便秘作用もないという効果を奏する内服用吸着剤であること
(乙2・2欄~4欄)からすれば,その包装を薬用炭と同じにする必然性
はないのであり,当業者であれば,密閉容器よりも高い性能の容器である
気密容器によってこれを包装することを選択することも十分にあり得るこ
とである。薬用炭を密閉容器に包装していたことが,引用発明に係る内服
用吸着剤を気密容器に包装することを阻害する事由となるわけではない。
原告の上記主張は採用し得ない。
()相違点2について4
本件明細書には「…このような従来の薬用炭の持つ種々の欠点を克服した
新しい型の内服用吸着剤が開発されている(特公昭62-11611号(判
決注・乙2文献(米国特許第4681764号。これは球形炭素質吸着)))
剤であり,肝腎疾患者に対して経口肝腎疾患治療薬として有用である。…」
(甲1【0003「通常の医薬品の分包包装体は,温度により膨張ある】),
いは収縮するような現象は認められないので特に問題はなかった。しかし,
気密容器である分包包装袋に球形炭素質吸着剤を充填した後,シールして得
られる分包包装体は,周囲の温度の変動により,体積膨張あるいは体積収縮
が行われ大きく変形するということを,この出願発明者らは発見した(甲。」
1【0004)と記載されている。このことから明らかなように,引用発】
,,,明の炭素質吸着剤は原告により公然実施され販売されていたものであり
もともと「10℃から30℃までの昇温で1g当たり1.3~10mlの空
気を放出する」との性状を有していたものである(当業者が,この性状を認
,,識していたかこれを認識することが困難なことであるかどうかについては
次に検討する。。)
物質のある性状を発見したことを契機としてある発明がなされた場合,そ
の発明の進歩性の判断については,物質のある性状を発見することの困難性
も含めて,課題の解決手段の容易性の判断をすべきである。しかし,活性炭
が昇温により空気を放出し,冷却すると再び空気を吸着することは,次の文
献の記載から明らかなように,18世紀から知られていたことである。すな
わち,活性炭読本(乙18。柳井弘著,日刊工業新聞社,昭和51年4月2
0日初版発行)には「多孔質固体が比較的多量の凝縮性ガスを吸着するこ,
とは,ずっと以前から知られている。1777年,は新しく焼成しFontana
た炭を真空下で冷却すると,各種気体を自身の容積の数倍を吸着する性質が
あることを認めている。同じ年は,加熱によって炭から出た空気はScheele
冷却すると再び吸着されると述べている。彼の記述によると,乾燥粉末炭を
レトルトの半分に充填し,それを空気のない袋に連結する。レトルトの底部
を赤熱すると袋は膨脹し,レトルトを冷却すると空気は袋から炭のほうにか
える。この空気量は炭によって占められた空間の8倍であったという」と。
記載されているところからすれば,活性炭の一種である引用発明の炭素質吸
着剤(本件内服用吸着剤)が昇温により空気を放出することは,当業者であ
れば通常予想し得る範囲内の事項であり,また,これを実験等により確認す
ることは何ら困難なことではない(なお,原告は「赤熱」の大約の温度は9
50℃であるから(甲90,当該記載をもって室温程度の温度の昇降で薬)
用炭ないし内服用吸着剤が空気を放出することまで示すものではない旨主張
するが,内服用吸着剤は炭以上に吸着能が強力である上,上記記載も薬用炭
ないし内服用吸着剤が温度変化に伴って空気を放出ないし吸着する性質を有
していることを示すものであることに変わりはない。。)
以上からすれば,引用発明の炭素質吸着剤が昇温により空気を放出する性
状を有していることは,当業者にとっては容易に予想し得る事実であり,引
用発明の炭素質吸着剤が相違点2に係る構成を備えていたことは,当業者が
。,実験により容易に確認し得る事実であるにすぎないものと認められるまた
本件特許発明の課題の解決手段の容易性(相違点3の構成の容易想到性)に
ついては,この点を踏まえて,次の項で判断する。
()相違点3について5
相違点3は,本件と距発明の構成要件B及びCに関するものである。本件
特許発明において,構成要件Cの構成を採用すれば,構成要件Bの構成(体
積膨張率)を達成することができることは当事者間に争いがない。そこで,
引用発明に係る炭素質吸着剤において,構成要件Cの構成を採用することの
容易想到性について,次に判断する。
ア減圧包装の技術について
減圧包装は,包装の技術分野において,次に述べるとおり,周知慣用の
技術手段であり,薬剤の包装においても,これを用いる例がみられる。
)特開昭59-221222公報(乙25・2頁右上欄4~13行)a
「包装された製品の貯蔵寿命を改善し,包装品に良好な外観を与える
ために包装品の内容物を真空に引くことは真空包装業界において従来か
ら行なわれてきた方法である。また,包装品の外層として熱収縮性(即
ち配向性)のフィルムを用い,真空密封された製品を高温の水浴または
高温の空気通路の中で収縮操作に付し,プラスチックス・フィルムを熱
収縮させてこれを含有製品と緊密に接触させることにより真空密封され
た包装品の外観を改善することも公知である」。
)特開昭61-21303公報(乙26)b
「真空引台盤上に下部包装フィルムを介して被包装物を載置した後,
真空引台盤の上方に設定した電熱ヒータによる加熱軟化熱膨脹状態の上
部包装フィルムを被包装物上に急降下させると同時に真空引作用により
上部包装フィルムを被包装物と下部包装フィルムの周縁部に密着させ,
その後,この余剰の周縁部を被包装物の下周部に沿って切除し,残りの
周縁部を熱処理により加熱収縮溶着一体化させて被包装物の真空密着包
装を完了することを特徴とする真空密着包装方法(特許請求の範囲)」
「従来一般に行われている包装フィルムによる被包装物の真空密着包
装方法においては,…上下包装フィルムの密着周縁部は糊着状態で密着
不良等により気密性を失い,剥離し易く…この発明によると,…瞬時的
に熱収縮溶着一体化させて密封し,被包装物を完全に真空密着包装する
ことができた。…被包装物としては,一般食品…その他総ての被包装物
に適用可能である(2頁右上欄7行~左下欄18行)。」
)特開平4-200549(乙5文献,乙5)c
「無菌混合粉末が真空度600mmHg以下において封入されている
ことを特徴とする無菌減圧包装物(特許請求の範囲請求項1)」
「従来,2種類以上の粉体を混合した無菌混合粉末においては,その
物性の違いにより成分の偏り,すなわち偏析がおき混合均一性が保持し
にくいという問題がある(1頁左下欄下から2行~右下欄2行)。」
「また,吸湿により構成成分の安定性が低下する無菌混合粉末におい
ては,吸湿を阻止する必要もある。…本発明者らは鋭意検討した結果,
減圧状態で包装することにより上記課題が解決されることを見い出し,
本発明を完成するに至った。すなわち,本発明は無菌混合粉末が真空度
600mmHg以下において封入されていることを特徴とする無菌減圧
包装物に関する。本発明において使用される無菌混合粉末としては,例
えば点眼剤の主薬と等張化剤あるいは安定化剤からなる混合粉末,また
は注射剤の主薬と溶解補助剤からなる混合粉末等があげられる(1。」
頁右下欄7行~2頁左上欄5行)
)続医薬品の開発第9巻医薬品の包装と容器Ⅱ(東京廣川書店発行,d
乙29・383頁)
「特殊容器・包装の目的・機能は下記項目に要約される.
①医薬品を保護する(薬剤の安定性を高める)
②医薬品を使い易くする(…)
③医薬品の一部として構成されている(…)
5.5.1内容物の保護
脱酸素包装A.
品質の劣化に酸素の影響が大きいときは,包装容器内の酸素濃度を下
げることが考えられる。その方法としてガス置換包装,真空包装,酸素
吸収剤包装等が考えられ,ここでは酸素吸収剤(脱酸素)包装について
述べる」.
イ上記各記載によれば,減圧包装は,本件出願時において,食料品その他
のすべての被包装商品について必要に応じて用いられる周知慣用の技術で
あり,医薬品についても,必要に応じ用いられている技術であること,及
び,被包装医薬品の品質の劣化に酸素の影響が大きいときは,その安定性
を高めるために,包装容器内の酸素濃度を下げることがあり,その課題を
実現する方法の一つとして,真空包装があり,これにより包装体内の酸素
(空気)の量を減らすことが開示されている(上記ア)。そして,引用d)
発明に係る炭素質吸着剤が,昇温により空気を放出するため,これを気密
容器に包装すれば,その包装袋の体積が膨張するとの課題が生じることは
前記認定したところから当業者にとって容易に予想し得ることであり,こ
れを実験により確認することも何ら困難性はなく,また,このような課題
を解決する方法として,包装における周知慣用技術である真空包装ないし
減圧包装の技術を分包包装体(気密容器)に採用すれば,あらかじめ減圧
されて包装容器内の空気の量が減らされて包装されるため,温度が上昇し
て炭素質吸着剤から空気が放出されても,通常の条件で分包包装されたも
のに比べ,分包包装体の体積の膨張が生じにくくなることは,当業者が容
易に想到し得るところである。また,気密容器である分包包装体は,内外
の圧力に応じて体積膨張,体積収縮することは明らかであり,あらかじめ
その包装体を減圧して包装すれば,包装後に内部の空気量が増えることが
あったとしても,外部との圧力差で体積膨張が抑えられることは,減圧包
装の技術分野における技術常識から自明の事柄である。以上によれば,当
業者であれば,昇温による空気放出との前記課題を解決するために,引用
発明に係る炭素質吸着剤を分包包装体に包装する場合に,減圧包装の技術
を適用することに想到することは容易であるというべきである。
ウ次に,相違点3に係る構成のうち「分包包装体の25℃における内部,
圧力が40~740mmHgである」との数値限定に臨界的な意義がある
かどうかを検討する。
本件明細書には次のような記載があり,これ以外に,本件特許発明の構
成要件B及びCの具体的数値が設定された理由についての記述は存在しな
い(甲1。)
)「このような内服用吸着剤を分包包装した時,10℃から30℃までa
の体積膨張率が0~0.064ml/℃・g(内服用吸着剤)になるよ
うに分包包装できれば,その方法は問わない…(5欄44~47行)」
)「この出願発明の分包包装体変形の指標として,分包包装体の体積b
膨張率を用いる。体積膨張率は,10℃と30℃の間の体積膨張量か
ら算出される値…であるその値は0~0064ml/℃・g内。,.(
服用吸着剤)であり,好ましくは,0~0.045ml/℃・g(内
服用吸着剤)である(6欄36~42行)。」
)「大気圧未満の場合40~740mmHgが好ましい。より好ましくc
は120~680mmHg,さらにより好ましくは260~650m
mHgである。充填圧を大気圧以下にしてシールすることにより,分
.()包包装体の体積膨張率は0~0064ml/℃・g内服用吸着剤
となる。体積膨脹率0~0.045ml/℃・g(内服用吸着剤)が
好ましい。…減圧充填の方法は従来の真空包装法を使用することが出
,。」来るが大気圧以下となるような包装方法であれば特に限定されない
(7欄5~14行)
本件明細書の上記の記載に鑑みると,本件特許発明の構成要件B及びC
において重要なことは,分包包装体が膨脹しないように内部圧力を減圧す
るという点にあるのであって,上限及び下限の具体的数値には臨界的意義
はないものと認められる。
そうすると,相違点3(本件特許発明の内部圧力が25℃において40
ないし740mmHgである点)は,引用発明に係る炭素質吸着体に,包
装における周知慣用技術である減圧包装技術を適用する際に,減圧の程度
に関し,当業者が適宜設定し得る設計事項にすぎないものと認められる。
エ原告は,減圧包装技術は,酸化を抑止して内容物の保存期間を延長する
ことを目的とする技術であるから,酸化防止という目的が存在しない炭素
質吸着剤の分包包装に減圧包装技術を使用することは容易ではない,と主
張する。しかし,減圧包装技術は,前記認定のとおり,食品のみならず,
すべての被包装商品に必要に応じ適用されるものであり,被包装医薬品に
ついても必要に応じ採用されていることは前記のとおりである。確かに,
炭素質吸着剤の分包包装体に減圧包装技術を適用することを直接示唆する
文献はないものの,炭素質吸着剤を分包包装した場合に,昇温による空気
の放出により,包装体の体積が膨張するとの課題を認識することが容易で
あり,また,この課題を認識すれば,これに減圧包装技術を適用してその
課題を解決し得ることは,当業者であれば,容易に想到し得るところであ
ることは,前記のとおりである。
原告は「いったん原因が解明されれば解決が容易な発明の進歩性を判,
断するときは,原因の解明を含めて技術水準に基づいて検討するべきであ
って,解決手段を考えることが当業者にとって容易であるという理由だけ
では,進歩性を否定することはできない」との特許庁の審査基準につい。
ても言及する。しかし,本件特許発明は,その原因の解明も,その解決手
段も,いずれにも困難性がないことは前記認定のとおりである。したがっ
て,特許庁の上記審査基準に照らしても,上記認定判断に誤りはなく,原
告の上記主張もまた理由がないことは明らかである。
()小括6
以上によれば,本件特許発明は,当業者が本件出願時における公知技術及
び周知慣用技術に基づいて容易に発明することができたものというべきであ
るから,特許法123条1項2号,29条2項に基づき,特許無効審判によ
り無効にされるべきものと認められる。よって,原告は,本件特許権に基づ
いて,被告らに対し,権利行使することができない(特許法104条の3第
1項。原告の本件特許権侵害に基づく請求はいずれも理由がない。)
2被告製品1の販売等が不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たる
か。
被告製品1の不正競争行為の成否については事案の内容に鑑み争点7原,,(
告製品1の包装が不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」として周知性
を有するといえるか)から判断する。。
()商品の包装は,本来的には商品の包装としての機能・効用の発揮や商品の1
美感の向上等のために選択されるものであり,商品の出所を表示することを
目的として選択されるものではない。しかし,特定の商品の包装の形状・模
様及びこれらと色彩との結合が独自の特徴を有し,かつ,この包装の形状・
模様・色彩が長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも強力
な宣伝等が伴って使用されることにより,その包装の形状・模様・色彩が特
定の者の商品であることを示す表示であると需要者の間で広く認識されるよ
うになった場合には,当該包装の形状・模様・色彩が不正競争防止法2条1
項1号における周知商品表示として保護されることになると解すべきであ
る。
そこで,以下,原告製品1の包装の周知商品表示性について検討する。
()証拠(甲1,11の1・2,12,13,22ないし49,53ないし52
8,77,83,乙2,7,9,14,30ないし262)及び弁論の全
趣旨によれば次の事実が認められる。
ア原告製品1の包装の特徴について
原告は,平成12年7月から,本件特許発明の実施品として原告製品1
を製造,販売している。原告製品1の包装は,原告製品目録1の外観のと
おりであり,細長い長方形(縦1:横3)の分包包装体3包みが横方向に
つながって1セットになっていること,その包装体の地の色が金色で,文
字の色が青色であること,及び,1袋ごとに,上記青色の文字で「クレメ
ジン細粒「」の商品名と本件三共ロゴマークと「」」,KuremezinSANKYO
の販売者名並びに「2g」との表示が付されていることが,その特徴であ
る。なお,この商品名は,原告の従業員が原告の会社名の一部である「ク
レハ」の「クレ」と,開発を担当した「部門」の「メ」と「腎medeical,
不全用剤」の「ジン」を組み合せて考案したものである(甲58。)
イ分包包装体から成る医薬品一般の包装について
平成17年作成の「ジェネリック製品一覧(乙7,被告メルク作成,」)
「医療用医薬品添付文書集(乙30,大日本製薬作成,平成17年5月」
発行,ウェブサイト(乙9,14)及び医薬品添付文書やパンフレット)
(),。乙14には次のような分包包装体から成る医薬品が掲載されている
)細長いスティック状であって正面方向から見て横方向に細長い長方形a
の分包包装体のもの
①「アミノメルク(被告メルク製造の分岐鎖アミノ酸製剤,乙7の」
2頁,甲83,弁論の全趣旨)
(,)。アミノメルク顆粒の包装の外観は次のとおりである乙7甲83
()上記包装体の地の色は銀色調であり,地に記載された文字の色i
は青色調である。
()包装体の中央の上段には,商品名の日本語表記「アミノメルクii
顆粒」が,下段には商品名の英語表記「」がAminomerckGranules
横書きで記載され,右上には,容量表示「4.74g」との横書き
の記載がある。
②「カディアンスティック粒(乙30の70頁)」
カディアンスティック粒の包装の外観は次の3種類である(乙30
の70頁。)
()包装体の地の色は桃色,薄紫色又は若草色であり,地に記載さi
れた文字の色は順番に(以下同じ,赤色,紫色又は緑色である。。)
,「」,「」,()包装体の中央の上寄りには容量表示30mg60mgii
又は「120mg」が横書きされ,その左横に商品名の略称「KA
DP-291「KADP-292」又は「KADP-2」,
93」が2段に分けて横書きされ,上記容量表示及び商品名の略称
の下に注意書き「かまずにお飲みください」が横書きで記載されて
いる。
③「トリコマイシンK錠(抗生物質(乙29の383頁)」)
色彩は不明であるものの,包装体の中央上部に,商品名「トリコ
マイシンK錠」が横書きで記載され,その右下には容量表示「10
g」との横書きの記載がある。
)細長いスティック状とはいえないものの,正面方向から見て横方向にb
長い長方形の分包包装体のもの(いずれも,商品名等の記載がある)。
①「カルタン細粒(乙7の8頁)」
②「酸化マグネシウム(乙7の12頁)」
③「新ドライアーゼ(乙7の13頁)」
④「セダガストン顆粒(乙7の16頁)」
⑤「ピナロック(乙7の27頁)」
ウ原告製品1の宣伝広告について
原告製品1は,平成12年5月ころから平成14年5月ころまでの間,
各種座談会,シンポジウムにおいて取り上げられたものの,これらの座談
会等において,原告製品1の外観(包装)が示されたことはない(甲53
ないし56。)
原告各製品の販売元である三共は,平成12年1月25日ころから平成
16年12月10日ころまで医学,薬学関係の雑誌等に原告各製品の広告
を掲載したものの,これらの広告においては原告製品1の外観(包装)の
写真は掲載されていない(甲31ないし49。)
三共が平成12年7月ないし平成16年11月ころ使用していた原告製
品1のパンフレットには,原告製品1の外観(包装)は掲載されていなか
った(甲22ないし30。ただし,三共が平成12年7月ないし同年1)
1月ころ使用していた原告各製品のパンフレットには,原告製品1の表側
の外観写真のみが大きく掲載されていた(甲12,13。)
原告各製品の販売元である三共は,平成17年1月13日現在,原告製
品1の外観(包装)の写真をウェブページに掲載して,宣伝している(甲
11の1・2。)
三共は,平成12年から平成16年の間に原告各製品の宣伝広告費とし
て合計4923万0800円を使用し,延べ6103人の営業担当者を用
いて全国的に営業活動を行なってきた(甲57。)
エ原告各製品は,いわゆる先行医薬品として,一定期間独占的に販売され
てきている(甲1,乙2。原告製品1の売上げは,平成12年度が33)
億円,同13年度が86億円,同14年度が109億円,同15年度が1
24億円であった(甲57。)
オ株式会社電通(以下「電通」という)が,平成17年2月ころ実施し。
たインターネットによるアンケート調査の結果によれば,薬剤師250名
のうち225名(90.0%)が,原告製品1の包装の写真(ただし,表
側の商品名「クレメジン細粒「」及び「三共の図案化されたロ」,Kremezin
ゴマーク」を判読できないようにしたもの)を見て,これを慢性腎不全患
者の為に調剤したことがあること,及び,上記225人のうち217名が
当該薬剤が原告製品1(クレメジン)である旨回答したこと,及び,1名
が当該薬剤について「メルクメジン(被告製品1)である旨回答したこ」
と,並びに,現在又は過去に慢性腎不全の治療のため治療薬を服用してい
る,又は,服用した経験のある患者250名のうち95名(38.0%)
が,原告製品1の包装写真(ただし,表側の商品名「クレメジン細粒,」
「」及び「三共の図案化されたロゴマーク」を判読できないようKremezin
にしたもの)を見て,当該薬剤を服用した経験がある(78名,31.2
%)又は服用したことはないが知っている(17名,6.8%)こと,及
び,上記95名のうち68名が当該薬剤が原告製品1(クレメジン)であ
る旨回答したことが認められる(甲77。)
しかし,被告メルクが,平成17年8月ころ,全国の医療業務従事者に
対し,原告各製品と被告各製品の製造元を誤認混同したり,誤って調剤・
処方した事実の有無を尋ねるアンケート調査を行なった結果によれば,2
32名が記名捺印,署名ないし記名入りで,そのような事実はない旨回答
したことも認められる(乙31ないし262。)
()上記()のア及びイからすれば,原告製品1の包装の特徴中,細長い長方32
形状の形状は,医薬品の包装として,特段珍しいものではなく,3袋が1連
になっているところ,及び,金色の地に青色の文字が付されている分包包装
体であることは,医薬品としては他に類例が少なく,一応,外観上の特徴と
なる部分であるということができる(なお,原告製品1の包装については,
前記前提となる事実において詳細に認定しているものの,その包装の特徴と
なり得る部分は,上記認定の部分に限定されると解すべきである。。)
しかし,上記認定事実を考慮しても,原告製品1の包装の上記特徴は,次
に述べる理由により,これを周知商品表示として保護することはできない。
ア前記()のウ及びエからすれば,原告各製品は,いわゆる先行医薬品と2
して,一定期間独占的に販売されたものの,原告製品1の包装の宣伝広告
は前記認定の程度であり,医薬品の宣伝広告としては,短期間に強力な宣
伝広告が行われたものとはいいがたく,また,その宣伝広告において,原
告製品1の包装(外観)が示されていないものが多い。
,,イ単純な配色や単純な形状であってもそれが特定の商品と密接に結合し
その配色や形状を施された包装の商品を見たり,その配色や形状の包装の
商品である旨を耳にすれば,それだけで特定の者の商品であると判断され
るようになった場合には,当該商品の包装に施された配色ないし形状が,
出所表示機能を取得し,その商品の商品等表示になっているということが
できるのであるから,商品の包装の配色や形状に商品等表示性を認めるこ
とができる場合があること自体は否定できない。
しかしながら,商品の包装の単純な色彩や形状は,原則として,何人も
自由に選択して使用することができるものであって,単一の色彩を使用し
た場合はもちろん,ある色彩と別の色彩とを単純に組み合わせて同時に使
用したという程度の単純な配色あるいは単純な形状であれば,そのこと自
体には特段の創作性や特異性が認められるものではないから,それによっ
て出所表示機能が生じ得る場合というのは,極めて限定されると考えられ
る。
また,仮に,商品の包装の単純な配色や形状が出所表示機能を持つよう
になったと思われる場合であっても,色彩や単純な形状はもともと自由に
使用できるものである以上,色彩や単純な形状の自由な使用を阻害するよ
うな商品等表示の保護は,公益的見地からみて容易に認容できるものでは
ない。こうした点からすれば,商品の包装における単純な配色や形状が不
正競争防止法において保護すべき出所表示機能を取得したということがで
きるかどうかの判断に当たっては,その配色や形状を商品等表示として保
護することが,上記の色彩や形状の使用の自由を阻害することにならない
かどうかという点も含めて慎重に検討されなければならないというべきで
。,,,ある特に医薬品には極めて多数の種類があり分包包装体の形式でも
今後さまざまな種類の医薬品が販売される可能性が大きいのに対し,単純
な色彩や形状の組合せは極めて限定的な数となるものであることを考慮す
,,,れば少なくとも医薬品については単純な色彩や形状の組合せの包装に
周知商品等表示性を認めることは極めて例外的なものであると解すべきで
ある。
ウ原告製品1は,医療用医薬品であるから,医師がその専門的な判断によ
って選択した医薬品を処方せんに記載し,薬剤師や看護師その他の医療従
事者(以下,これらの者を「医師・薬剤師等」という)がこれに従って。
患者に処方するものである。そして,医師は,通常,医薬品を特定するた
めに,その名称(商品名)あるいはその略称等を処方せんに記載し,薬剤
師や看護師その他の医療従事者も,医師の処方せんに記載された商品名の
医薬品を選別して患者に処方したり,投与したりするのであるから,医師
・薬剤師等が,極めて多数の種類が存在する医薬品について,その包装の
特徴などにより特定して処方ないし投与することは,誤処方,誤投与防止
の観点からもあり得ないことである。また,製薬メーカーや問屋から病院
や調剤薬局までの医薬品の取引においては,個々の医薬品がまとめて段ボ
ール箱等に梱包されて取引されるのが通常であり,その場合,個々の医薬
品の包装の色彩や形状などではなく,医薬品の名称による取引がなされる
であろうことは,自明の事項である。このような医療用医薬品市場の取引
の実情に鑑みると,医師・薬剤師等の間で,医薬品の商品名があるにもか
かわらず,商品の包装における単純な色彩の組合せあるいは単純な形状が
特定の者の周知商品等表示となる場合は,極めて例外的な場合に限定され
るというべきである。
エ以上に記載した原告製品1の包装の宣伝広告が十分なものではないこ
と,原告製品1の包装の単純な色彩や形状が出所表示機能を獲得する場合
というのは極めて限定されると考えられ,特に医療用医薬品においては極
めて困難であること,及び,医療用医薬品の取引の実情を考慮すれば,原
告製品1の取引者・需要者にとっては,原告製品1を識別し,選択する際
に,その名称である「クレメジン(クレメジン細粒)が重要なのであ」「」
り,原告製品1の包装の単純な色彩や形状の組合せが,原告製品1の識別
や選択において重要な役割を果たしているものということはできず,原告
製品1の包装のうち,3包みの長方形の分包包装体が1セットで連結され
ているということや,金色の地に青色の文字が表示された分包包装体であ
るとの単純な色彩と形状の組合せだけでは,これをもって周知商品等表示
であると認めることはできない。
なお,電通がなした前記アンケート調査の結果によれば,多数の薬剤師
及び慢性腎不全の治療のため治療薬を服用している,又は,服用した経験
のある患者のうちの一部が,原告製品1の包装をみて,その商品名が判読
できなくとも,これを原告製品1(クレメジン)と回答したことは前記の
とおりである。しかし,このことは,被告メルクが行ったアンケート調査
の結果において,全国の多数の医療業務従事者が,原告各製品と被告各製
品とを誤認混同したり,誤って調剤・処方した事実はないと回答している
こと,並びに,原告製品1の包装を周知商品等表示と認めることができな
いとした上記認定判断と矛盾するものではない。すなわち,医師・薬剤師
等は,前記認定のとおり,原告各商品と被告各商品とをその商品名で識別
して処方せんを書き,あるいは,処方せんに基づいて医薬品を識別・選択
し,処方ないし投与し,また,製薬メーカーや問屋との間の医薬品の取引
においては,医薬品の商品名によりこれを識別しているのであり,被告各
製品が原告各製品と同じように,金色の地に青色の文字が表示された分包
包装体で,3包みが1セットになって販売されているとしても,医師・薬
剤師等は,これをもって商品等表示として認識するわけではなく,その分
包包装体に表示されている商品名をもって,商品等表示として認識し,各
商品を選択しているのであるから,仮に,原告製品1の包装をもって,原
告製品1と推認することができる人が多数いるとしても,医薬品について
はこれをもって商品等表示として認識しているわけではないと解すべきで
ある。
()小括4
よって,原告製品1の包装を原告の周知商品等表示と認めることはできな
い。
3被告製品2の販売等が不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たる
か。
被告製品2の不正競争行為の成否については,事案の内容に鑑み,争点11
(原告製品2の形態・包装が不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」と
して周知性を有するか)から判断する。。
()商品の形態及び包装は,本来的には商品あるいはその包装としての機能・1
効用の発揮や商品の美感の向上等のために選択されるものであり,商品の出
所を表示することを目的として選択されるものではない。しかし,特定の商
品の形態並びに包装の形状・模様及びこれらと色彩との結合が独自の特徴を
有し,かつ,この形態並びに包装の形状・模様・色彩が長期間継続的かつ独
占的に使用されるか,又は短期間でも強力な宣伝等が伴って使用されること
により,その形態並びに包装の形状・模様・色彩が特定の者の商品であるこ
とを示す表示であると需要者の間で広く認識されるようになった場合には,
当該商品の形態並びに包装の形状・模様・色彩が不正競争防止法2条1項1
号における周知商品表示として保護されることになると解すべきである。
そこで,以下,原告製品2の形態・包装の周知商品表示性について検討す
る。
()証拠(甲1,11の1・2,12ないし58,77,乙2,7ないし9,2
,)。1430ないし262及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる
ア原告製品2の形態・包装の特徴について
原告は,平成3年12月ころから原告製品2を製造,販売している。原
告製品2の販売開始当時の形態・包装は,原告製品2従前の形態・包装の
とおりであり,現在の形態・包装は,原告製品2の形態・包装のとおりで
ある。すなわち,原告製品2の形態的特徴は,頭部白色,胴部灰色のカプ
セル剤であることであり,その包装の特徴は,このカプセル剤10個が2
列5段で,銀色の台紙に黒色の文字が記載されたPTPシートに包装され
ていること,及び,そのPTPシートの表面,裏面には商品名「クレメジ
ン」の日本語表記ないし英語表記が規則的に複数表示されていることであ
る。
イカプセルとPTPシートから成る医薬品一般の形態と包装について
平成17年作成の「ジェネリック製品一覧(乙7,被告メルク作成,」)
「医療用医薬品添付文書集(乙30,大日本製薬作成,平成17年5月」
発行,ウェブサイト(乙9,14)及び医薬品添付文書やパンフレット)
(乙14)には,次のとおり,PTPシートに包装されたカプセル剤が掲
載されている。
)PTPシート一つに10個のカプセルが2列5段で包装されているのa
ものは,別紙1のとおり58種類,
)PTPシートの地の色が表裏共に銀色であるものは,別紙2のとおりb
50種類,
)カプセルが白色であるものは,別紙3のとおり68種類,c
)PTPシートの裏面に商品名及び容量表示がなされているものは,別d
紙4のとおり42種類,
)カプセルに赤色の識別コードが付されているものは,別紙5のとおりe
24種類,
)上記)ないし)のすべての構成を有するものは,別紙6のとおり7fae
種類である。
ウPTPシートの表示事項及び販売名(商品名)の取扱いについての取決

旧厚生省医薬安全局長が,平成12年9月19日付けで各都道府県知事
宛てに配布した「医療事故を防止するための医薬品の表示事項及び販売名
の取扱いについて」と題する文書には,医療事故を防止するための方策と
して,医療用医薬品のPTPシートの記載事項として次のような取扱いを
周知徹底するよう記載されている(乙8。)
原則として,以下のとおりとする。ただし,線等のデザインや記載項目
を抜き文字等とする工夫は任意とするが,本取扱いの趣旨が損なわれない
よう配慮すること。
)和文販売名a
製造(輸入)承認書に記載された販売名を記載すること。ただし,規
格又は含量を表す数字又は剤型を表す錠,カプセル等の文字は省略して
もよい。
)英文販売名b
和文販売名に対応する英文販売名を記載すること。ただし,通常英文
で処方されることが想定されないものについては,この限りでない。
)規格・含量c
濃度,含量等を記載すること。
)識別コードd
個々の医薬品が識別できるように,数字又はアルファベット等を用い
た識別コードをできる限り記載すること。
)ケアマークe
患者がPTPシートのまま誤飲しないように,PTPシートから医薬
品を取り出す方法をイラスト等で記載すること。
エ原告製品2の宣伝広告について
原告製品2の販売元であった三共は,平成10年5月ないし平成16年
11月ころ,甲14ないし30のパンフレットを用いて原告製品2の宣伝
広告を行なったものの,当該パンフレットには原告製品2の形態・包装は
掲載されていない(甲14ないし30。)
原告製品2は,単独で又は原告製品1と共に,平成7年10月ころから
平成14年5月ころまでの間,各種座談会,シンポジウムにおいて取り上
げられたものの,これらのいずれにおいても原告製品2の形態・包装が示
されたことはない(甲50ないし56。)
原告製品2の販売元である三共は,平成12年1月25日ころから平成
16年12月10日ころまで医学,薬学関係の雑誌等に原告製品2の広告
を掲載したものの,これらには原告製品2の形態・包装は掲載されなかっ
た(甲31ないし49。)
三共が,平成12年7月ないし同年11月ころ使用していた原告各製品
のパンフレットには,原告製品2の表側の外観写真のみが大きく掲載され
ていた(甲12,13。)
原告各製品の販売元である三共は,平成17年1月13日現在,原告製
()。品2の形態・包装写真をウェブページに掲載している甲11の1・2
三共は,平成3年から平成16年の間に原告各製品の宣伝広告費として
合計5070万7800円を使用し,延べ1万6166人の営業担当者を
用いて全国的に営業活動を行なってきた(甲57。)
オ原告各製品は,いわゆる先行医薬品として,一定期間独占的に販売され
てきている(甲1,乙2。原告製品2の売上げは,平成3年度が270)
,,,,0万円同4年度が18億円同5年度が32億円同6年度が43億円
同7年度から同11年度まで46億円から49億円程度,同12年度が3
8億円,同13年度が24億円,同14年度が22億円,同15年度が1
9億円であった(甲57。)
カ電通が,平成17年2月ころ実施したインターネットによるアンケート
調査の結果によれば,薬剤師250名のうち212名(84.8%)が,
原告製品2の形態・包装の写真(ただし,薬剤師に対する調査においては
シートの表面の写真及びカプセルの写真のみを示した。表側の商品名「K
remezin」と識別コード「KRH102」及びカプセルに付された
赤色識別コードを判読できないようにしたもの)を見て,当該薬剤を慢性
腎不全患者の為に調剤したことがあること,及び,上記212人のうち2
05名が当該薬剤が原告製品2(クレメジン)である旨回答したこと,及
び,1名が当該薬剤について「クレメジン又はメルクメジン」である旨回
答したこと,並びに,現在又は過去に慢性腎不全の治療のため治療薬を服
(.),用し又は服用した経験のある患者250名のうち87名348%が
原告製品2の形態・包装写真(表側の商品名「Kremezin」と識別
コード「KRH102,裏側の商品名「クレメジン」及びカプセルに付」
された赤色識別コードを判読できないようにしたもの)を見て,当該薬剤
を服用した経験がある(85名,34.0%)又は服用したことはないが
知っている(2名,0.8%)こと,及び,上記87名のうち48名が当
該薬剤が原告製品2クレメジンである旨回答したことが認められる甲()(
77。)
しかし,被告メルクが,平成17年8月ころ,全国の医療業務従事者に
原告各製品と被告各製品の製造元を誤認混同したり,誤って調剤・処方し
た事実の有無を尋ねるアンケート調査を行なった結果によれば,232名
が記名捺印,署名ないし記名入りで,そのような事実はない旨回答したこ
とも認められる(乙31ないし262。)
()ア上記()のアないしウによれば,PTPシート一つに10個のカプセル32
が2列5段で包装されている構成(原告製品2の形態・包装A,PTP)
(),シートの地の色が表裏共に銀色である構成原告製品2の形態・包装B
カプセルが白色であること(原告製品2の形態・包装Cの一部,PTP)
シートの裏面に商品名及び容量表示がなされていること(原告製品2の形
態・包装Dの一部カプセルに赤色の識別コードが付されている構成原),(
告製品2の形態・包装Eの一部)は,多くのPTPシートにおいて採用さ
れている構成であり,PTPシートの外観としてありふれたものというこ
。,(),とができる特にPTPシートに和文販売名商品名を記載すること
,,和文販売名に対応する英文販売名を記載すること含量等を記載すること
数字又はアルファベット等を用いた識別コードを記載すること,PTPシ
ートから医薬品を取り出す方法をイラスト等で記載すること(原告製品2
の形態・包装D及びEの一部)は,旧厚生省医薬安全局長が各都道府県知
事に宛てた文書により周知徹底されている事柄であり,かつ,上記のよう
に多くのPTPシートにおいて用いられているのであるから,原告製品2
の包装の特徴となり得ないことは明らかである。
また,原告製品2の形態・包装Cのうち,外観上,カプセルの半分が白
色,残り半分が灰色に見える点については,ほかに同様の外観を有するP
TPシート入りカプセル剤の存在は証拠上認められないものの,カプセル
の半分と残り半分の色が異なるカプセル剤はよく目にするものであり,白
色,灰色共特に目立つ色ではなく,この点についても需要者に強い印象を
与えるような特徴的な形態とはいえない。
原告は,原告製品2の形態・包装AないしC及びEのうち赤色の識別コ
ードが記載されている部分は,極めて看者の注意を惹くものであり,これ
らの原告製品2の形態・包装を全体的に観察すればありふれたものという
ことはできない旨主張する。確かに,原告製品2の形態・包装AないしC
及びEのうち赤色識別コードを備えるという構成を共通して有するPTP
,(,シート入りカプセル剤は被告製品2のほかは証拠上認められないなお
原告製品2の形態・包装A,B,Eをいずれも備えるPTPシート入りカ
プセル剤は他に存在することは前記のとおりである。しかしながら,。)
ほかの同種商品に同一の外観を有する商品がないからといって,当該外観
。,が患者の注意を惹くと認められるものでもない原告製品2の上記外観は
需要者に強い印象を与えるような特徴的な形態とは認められない。
イ原告製品2は,いわゆる先行医薬品として,一定期間独占的に販売され
たものの,原告製品2の宣伝広告は前記認定の程度であり,医薬品の宣伝
広告としては短期間に強力な宣伝広告が行われたものとはいいがたく,ま
た,その宣伝広告においては,原告製品2の形態・包装が示されていない
ものが多いことは前記認定のとおりである。
ウ原告製品2は,医療用医薬品であるから,医師がその専門的な判断によ
って選択した医薬品を処方せんに記載し,薬剤師や看護師その他の医療従
事者がこれに従って患者に処方するものである。そして,医師は,通常,
医薬品を特定するために,その名称(商品名)あるいはその略称等を処方
せんに記載し,薬剤師や看護師その他の医療従事者も,医師の処方せんに
記載された商品名の医薬品を選別して患者に処方したり,投与したりする
のであるから,医師・薬剤師等が,極めて多数の種類が存在する医薬品に
ついて,そのカプセルの色や包装の特徴などにより特定して処方ないし投
与することは,誤処方,誤投与防止の観点からもあり得ないことである。
また,製薬メーカーや問屋から病院や調剤薬局までの医薬品の取引におい
ては,個々の医薬品がまとめて段ボール箱等に梱包されて取引されるのが
通常であり,その場合,個々の医薬品の包装の色彩や形状などではなく,
医薬品の名称による取引がなされるであろうことは,自明の事項である。
このような医療用医薬品市場の取引の実情に鑑みると,医師・薬剤師等の
間で,医薬品の商品名があるにもかかわらず,商品の形態・包装における
カプセルにおける単純な色彩の組合せあるいはPTPシートの単純な色彩
や形状が特定の者の周知商品等表示となる場合は,極めて例外的な場合に
限定されるというべきである。
エ以上に認定した原告製品2のカプセルの色彩やPTPシートの形状・色
彩に特徴的なものがないこと,原告製品2の形態・包装の宣伝広告が十分
なものではないこと,及び,上記のような医療用医薬品の取引の実情によ
れば,原告製品2の取引者・需要者にとっては,原告製品2を識別し,選
択する際に,その名称である「クレメジン(クレメジンカプセル20」「
0)が重要なのであり,原告製品2のカプセルの色彩の組合せや包装の」
単純な色彩・模様・形状などが,原告製品2の識別や選択において重要な
役割を果たしているものということはできず,原告製品2の前記のような
形態・包装だけでは,これをもって周知商品等表示であると認めることは
できないというべきである。
,,,なお電通がなした前記アンケート調査の結果によれば多数の薬剤師
及び,慢性腎不全の治療のため治療薬を服用している,又は,服用した経
験のある患者のうちの一部が,原告製品2の形態・包装の写真を見て,そ
の商品名が判読できなくとも,これを原告製品2(クレメジン)と回答し
たことは前記のとおりである。しかし,このことは,被告メルクが行った
アンケート調査の結果によれば,全国の多数の医療業務従事者が,原告各
製品と被告各製品とを誤認混同したり,誤って調剤・処方した事実はない
と回答していること,並びに,原告製品2の形態・包装が周知商品表示と
はいえないとした上記認定判断と矛盾するものではない。すなわち,医師
・薬剤師等は,前記認定のとおり,原告各商品と被告各商品とをその商品
名で識別して処方せんを書き,あるいは,処方せんに基づいて医薬品を識
別・選択し,処方ないし投与し,また,製薬メーカーや問屋との間の医薬
,,品の取引においては医薬品の商品名によりこれを識別しているのであり
被告各製品が原告各製品と同じように,頭部白色,胴部灰色のカプセル剤
10個が,灰色のPTPシートに2列に包装され,販売されているとして
も,医師・薬剤師等は,これをもって商品等表示として認識するわけでは
なく,そのPTPシートに表示されている商品名をもって,商品等表示と
して認識し,各商品を選択しているのであるから,仮に,原告製品2の形
態・包装の写真をもって,原告製品2と推認することができる人が多数い
るとしても,医薬品についてはこれをもって商品等表示として認識してい
るわけではないと解すべきである。
()小括4
よって,原告製品2の形態・包装を原告の周知商品等表示と認めることは
できない。
第5結論
以上によれば,本件特許発明は,特許法123条1項2号,29条2項に基
づき特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,同
法104条の3により,本件特許権に基づいて被告らに権利行使することがで
きないものであり,また,原告製品1の包装及び原告製品2の形態・包装は,
いずれも不正競争防止法2条1項1号の周知商品等表示と認めることはできな
いものである。したがって,原告の請求は,その余の点について判断するまで
もなく,いずれも理由がない。
よって主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
一裁判長裁判官設樂隆
裁判官古河謙一
吉川泉裁判官
別紙
被告製品目録1
別紙
被告製品目録2
別紙
原告製品目録1
別紙
原告製品目録2(販売開始当時)
別紙
原告製品目録2(現在)
別紙1
10個のカプセルが2列5段で包装されているのもの
「アリーゼNカプセル(乙7の2頁)」
「イデノラートカプセル(乙7の5頁)」
「オイスロンカプセル(乙7の6頁)」
「カリアントTPカプセル(乙7の7頁)」
「コロジレートカプセル(乙7の11頁)」
「セスファルコ50カプセル(乙7の15頁)」
「セスファルコ100カプセル(乙7の15頁)」
「セルパスカプセル(乙7の17頁)」
「ロペナカプセル(乙7の40頁)」
「ロンミールカプセル(乙7の41頁,乙9)」
「チアパストンカプセル10(乙14-1)」
「ザジテン(カプセル(乙14-2))」
「コリオパンカプセル(乙14-4)」
「ピメノールカプセル50mg(乙14-6)」
「ピメノールカプセル100mg(乙14-6)」
「フマルフェンカプセル(乙14-7)」
「ロペランカプセル(乙14-8)」
「ソルニラートカプセル100(乙14-12)」
「アドバストンカプセル10(乙14-13)」
「パゼアジンRカプセル100(乙14-14)」
「メラボンカプセル(乙14-15)」
「メナミンカプセル50(乙14-16)」
「スプデルカプセル(乙14-17)」
「プログラフカプセル1mg(乙14-18)」
「サジフェンカプセル(乙14-19)」
「チノラートカプセル10(乙14-20)」
「キセブレンカプセル(乙14-21)」
「インフリーカプセル100mg(乙14-23)」
「ポンタールカプセル125mg(乙14-24)」
「ジフルカンカプセル50mg(乙14-25)」
「ロペミンカプセル(乙14-26)」
「ケタスカプセル10mg(乙14-28)」
「ダイスパスSRカプセル(乙14-29)」
「バリアックカプセル(乙14-30)」
「ボルタレンSRカプセル(乙14-31)」
「アビリットカプセル(乙14-34)」
「エストラサイトカプセル(乙14-35)」
「セロシオンカプセル10(乙14-37)」
「ドグマチールカプセル(乙14-38)」
「センセファリンカプセル125(乙14-40)」
「センセファリンカプセル250(乙14-47)」
「ソルシリンカプセル250(乙14-41)」
「アモリンカプセル125(乙14-44)」
「アモリンカプセル250(乙14-45)」
「ソルシリンカプセル500(乙14-46)」
「ポンタールカプセル125mg(乙14-48)」
「マブールカプセル(乙14-50)」
「リザラストカプセル(乙14-51)」
「ピナトスカプセル(乙14-52)」
「スルピリドカプセル(乙14-53)」
「アブフロニックLカプセル(乙14-54)」
「リザモントカプセル(乙14-55)」
「イソコロナールRカプセル(乙14-56)」
「セキシードカプセル(乙14-57)」
「ブレクルスカプセル(乙14-58)」
「アントブロンLカプセル45(乙14-59)」
「ソレルモンSRカプセル(乙14-60)」
「スタマクリットカプセル50(乙14-61)」
別紙2
PTPシートの地の色が表裏ともに銀色のもの
「アリーゼNカプセル(乙7の2頁)」
「イデノラートカプセル(乙7の5頁)」
「オイスロンカプセル(乙7の6頁)」
「カリアントTPカプセル(乙7の7頁)」
「コロジレートカプセル(乙7の11頁)」
「セルパスカプセル(乙7の17頁)」
「ロペナカプセル(乙7の40頁)」
「ザジテン(カプセル(乙14-2))」
「コリオパンカプセル(乙14-4)」
「フマルフェンカプセル(乙14-7)」
「ロペランカプセル(乙14-8)」
「アポジピンLカプセル40mg(乙14-9)」
「アポジピンカプセル20mg(乙14-32)」
「ザジトマカプセル(乙14-10)」
「ブレイフルカプセル10(乙14-11)」
「アドバストンカプセル10(乙14-13)」
「メラボンカプセル(乙14-15)」
「メナミンカプセル50(乙14-16)」
「スプデルカプセル(乙14-17)」
「プログラフカプセル1mg(乙14-18)」
「サジフェンカプセル(乙14-19)」
「チノラートカプセル10(乙14-20)」
「キセブレンカプセル(乙14-21)」
「ポンタールカプセル125mg(乙14-24)」
「ジフルカンカプセル50mg(乙14-25)」
「ロペミンカプセル(乙14-26)」
「ダイスパスSRカプセル(乙14-29)」
「バリアックカプセル(乙14-30)」
「ボルタレンSRカプセル(乙14-31)」
「アビリットカプセル(乙14-34)」
「エストラサイトカプセル(乙14-35)」
「トーピリドカプセル(乙14-36)」
「セロシオンカプセル10(乙14-37)」
「ドグマチールカプセル(乙14-38)」
「ハルナール0.1mgカプセル(乙14-39)」
「センセファリンカプセル125(乙14-40)」
「タケプロンカプセル(乙14-42)」
「アモリンカプセル125(乙14-44)」
「アモリンカプセル250(乙14-45)」
「ポンタールカプセル125mg(乙14-48)」
「ポンタールカプセル250mg(乙14-49)」
「マブールカプセル(乙14-50)」
「リザラストカプセル(乙14-51)」
「スルピリドカプセル(乙14-53)」
「アブフロニックLカプセル(乙14-54)」
「リザモントカプセル(乙14-55)」
「イソコロナールRカプセル(乙14-56)」
「ブレクルスカプセル(乙14-58)」
「ソレルモンSRカプセル(乙14-60)」
「スタマクリットカプセル50(乙14-61)」
別紙3
カプセルが白色のもの
「セスファルコ50カプセル(乙7の15頁)」
「セスファルコ100カプセル(乙7の15頁)」
「ロペナカプセル(乙7の40頁)」
「ロンミールカプセル(乙7の41頁,乙9)」
「チアパストンカプセル10(乙14-1)」
「ザジテン(カプセル(乙14-2))」
「ベリチーム(カプセル(乙14-3))」
「コリオパンカプセル(乙14-4)」
「ロメバクトカプセル100mg(乙14-5)」
「ピメノールカプセル50mg(乙14-6)」
「ピメノールカプセル100mg(乙14-6)」
「フマルフェンカプセル(乙14-7)」
「ロペランカプセル(乙14-8)」
「アポジピンLカプセル40mg(乙14-9)」
「アポジピンカプセル20mg(乙14-32)」
「ザジトマカプセル(乙14-10)」
「ブレイフルカプセル10(乙14-11)」
「ソルニラートカプセル100(乙14-12)」
「アドバストンカプセル10(乙14-13)」
「パゼアジンRカプセル100(乙14-14)」
「メラボンカプセル(乙14-15)」
「メナミンカプセル50(乙14-16)」
「スプデルカプセル(乙14-17)」
「プログラフカプセル1mg(乙14-18)」
「サジフェンカプセル(乙14-19)」
「チノラートカプセル10(乙14-20)」
「キセブレンカプセル(乙14-21)」
「ウルグードカプセル(乙14-22)」
「インフリーカプセル100mg(乙14-23)」
「ポンタールカプセル125mg(乙14-24)」
「ポンタールカプセル250mg(乙14-24)」
「ジフルカンカプセル50mg(乙14-25)」
「ロペミンカプセル(乙14-26)」
「ブロクリンLカプセル5mg(乙14-27)」
「ブロクリンLカプセル15mg(乙14-27)」
「ケタスカプセル10mg(乙14-28)」
「ダイスパスSRカプセル(乙14-29)」
「バリアックカプセル(乙14-30)」
「ボルタレンSRカプセル(乙14-31)」
「ナックレスLカプセル100(乙14-33)」
「アビリットカプセル(乙14-34)」
「エストラサイトカプセル(乙14-35)」
「トーピリドカプセル(乙14-36)」
「セロシオンカプセル10(乙14-37)」
「ドグマチールカプセル(乙14-38)」
「ハルナール0.1mgカプセル(乙14-39)」
「センセファリンカプセル125(乙14-40)」
「センセファリンカプセル250(乙14-47)」
「ソルシリンカプセル250(乙14-41)」
「タケプロンカプセル(乙14-42)」
「ポリトーゼ(乙14-43)」
「アモリンカプセル125(乙14-44)」
「アモリンカプセル250(乙14-45)」
「ソルシリンカプセル500(乙14-46)」
「ポンタールカプセル125mg(乙14-48)」
「ポンタールカプセル250mg(乙14-49)」
「マブールカプセル(乙14-50)」
「リザラストカプセル(乙14-51)」
「ピナトスカプセル(乙14-52)」
「スルピリドカプセル(乙14-53)」
「アブフロニックLカプセル(乙14-54)」
「リザモントカプセル(乙14-55)」
「イソコロナールRカプセル(乙14-56)」
「セキシードカプセル(乙14-57)」
「ブレクルスカプセル(乙14-58)」
「ソレルモンSRカプセル(乙14-60)」
「スタマクリットカプセル50(乙14-61)」
「ミロピンカプセル(乙14-62)」
別紙4
PTPシートの裏面に商品名及び容量表示がなされているもの
「イデノラートカプセル(乙7の5頁)」
「オイスロンカプセル(乙7の6頁)」
「カリアントTPカプセル(乙7の7頁)」
「コロジレートカプセル(乙7の11頁)」
「セスファルコ50カプセル(乙7の15頁)」
「セスファルコ100カプセル(乙7の15頁)」
「セルパスカプセル(乙7の17頁)」
「ロペナカプセル(乙7の40頁)」
「ロンミールカプセル(乙7の41頁,乙9)」
「チアパストンカプセル10(乙14-1)」
「コリオパンカプセル(乙14-4)」
「ピメノールカプセル50mg(乙14-6)」
「ピメノールカプセル100mg(乙14-6)」
「フマルフェンカプセル(乙14-7)」
「アポジピンLカプセル40mg(乙14-9)」
「アポジピンカプセル20mg(乙14-32)」
「ザジトマカプセル(乙14-10)」
「ソルニラートカプセル100(乙14-12)」
「アドバストンカプセル10(乙14-13)」
「パゼアジンRカプセル100(乙14-14)」
「メラボンカプセル(乙14-15)」
「スプデルカプセル(乙14-17)」
「プログラフカプセル1mg(乙14-18)」
「キセブレンカプセル(乙14-21)」
「ポンタールカプセル125mg(乙14-24)」
「ポンタールカプセル250mg(乙14-24)」
「ジフルカンカプセル50mg(乙14-25)」
「ロペミンカプセル(乙14-26)」
「ケタスカプセル10mg(乙14-28)」
「ダイスパスSRカプセル(乙14-29)」
「セロシオンカプセル10(乙14-37)」
「ドグマチールカプセル(乙14-38)」
「ハルナール0.1mgカプセル(乙14-39)」
「ポンタールカプセル125mg(乙14-48)」
「ポンタールカプセル250mg(乙14-49)」
「アブフロニックLカプセル(乙14-54)」
「リザモントカプセル(乙14-55)」
「イソコロナールRカプセル(乙14-56)」
「ブレクルスカプセル(乙14-58)」
「アントブロンLカプセル45(乙14-59)」
「ソレルモンSRカプセル(乙14-60)」
「スタマクリットカプセル50(乙14-61)」
別紙5
赤色識別コードのもの
「オイスロンカプセル(乙7の6頁)」
「カリアントTPカプセル(乙7の7頁)」
「セスファルコ50カプセル(乙7の15頁)」
「セルパスカプセル(乙7の17頁)」
「チアパストンカプセル10(乙14-1)」
「ベリチーム(カプセル(乙14-3))」
「コリオパンカプセル(乙14-4)」
「ロメバクトカプセル100mg(乙14-5)」
「ピメノールカプセル100mg(乙14-6)」
「フマルフェンカプセル(乙14-7)」
「ロペランカプセル(乙14-8)」
「アポジピンLカプセル40mg(乙14-9)」
「アポジピンカプセル20mg(乙14-32)」
「ザジトマカプセル(乙14-10)」
「ブレイフルカプセル10(乙14-11)」
「ソルニラートカプセル100(乙14-12)」
「アドバストンカプセル10(乙14-13)」
「メラボンカプセル(乙14-15)」
「メナミンカプセル50(乙14-16)」
「スプデルカプセル(乙14-17)」
「プログラフカプセル1mg(乙14-18)」
「サジフェンカプセル(乙14-19)」
「チノラートカプセル10(乙14-20)」
「キセブレンカプセル(乙14-21)」
別紙6
)ないし)の全ての構成を有するものae
「コリオパンカプセル(乙14-4)」
「フマルフェンカプセル(乙14-7)」
「アドバストンカプセル10(乙14-13)」
「メラボンカプセル(乙14-15)」
「スプデルカプセル(乙14-17)」
「プログラフカプセル1mg(乙14-18)」
「キセブレンカプセル(乙14-21)」

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