弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

      主    文
1 原判決を次のとおり変更する。
    2 被控訴人は,控訴人に対し,5万円を支払え。
    3 控訴人のその余の請求を棄却する。
    4 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを10分し,その9を控訴人の負担とし,
その余を被控訴人の負担とする。
              事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人は,控訴人に対し,55万円を支払え。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
  (1)本件控訴を棄却する。
(2)控訴費用は控訴人の負担とする。
第2事案の概要
 1本件は,地方公共団体である被控訴人の公権力の行使に当たる富山県八尾警察
署(以下「八尾署」という。)の署員が,控訴人の勤務先会社を訪問して,同社社長
に対し,①控訴人が八尾署に出入りしていることを告げたこと,②その際の控訴人
の言動や態度を明らかにして控訴人に対する消極的評価を告げたことは,故意又
は過失により控訴人のプライバシーを違法に侵害したものであるとして,控訴人
が,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料55万円の支払を求め
た事案の控訴審である。
 原審は,八尾署署員に違法行為はないとして控訴人の請求を棄却したところ,これ
を不服とする控訴人が本件控訴を提起した。
 2 前提事実(争いのない事実と末尾記載証拠による認定事実)
(1)控訴人は,平成16年1月に退社するまでの29年間,株式会社A(以下「勤務先
会社」という。)に勤務していた(甲10,乙1,控訴人本人)。B(以下「B社長」とい
う。)は同社社長の地位にある。
(2)被控訴人は,八尾署を置き,C(以下「C警察官」という。)は,平成9年3月25日
から現在まで八尾署に勤務している警察官(警部補)である(乙1)。
(3)控訴人は,その父を事故当事者として平成12年4月29日に発生した交通事故
(以下「別件交通事故」という。)の件につき,同年5月9日に八尾署を,同月10
日に富山警察署を,同年6月1日に再度八尾署をそれぞれ訪問した。
(4)C警察官は,平成13年11月中旬ころ,八尾署長の指示に基づき,控訴人の勤務
先会社を訪問してB社長と面談し,その際,B社長に対し,控訴人が八尾署に出
入りしていることを告げた(乙1,弁論の全趣旨)。
3 争点
(1)警察署出入りの事実告知の違法性の有無
(控訴人の主張)
ア 一般に公務以外で警察に出入りしているという事実は,それ自体でその人物に
対するマイナスイメージを生じさせるものであり,人によっては他人に知られた
くないと感ずる事柄であるところ,C警察官は,控訴人の了解もないのに,そ
の雇用主であるB社長に対し,上記2(4)のとおり,控訴人が八尾署に出入りし
ている旨告げて控訴人のプライバシーを侵害した。
 被控訴人の主張アのうち,控訴人が平成13年10月1日,同月27日及び同年1
1月2日,八尾署を訪問したことは認めるが,その余は否認する。
イ C警察官が控訴人の八尾署出入りの事実を告げた行為は,地方公務員法34
条1項の守秘義務に違反する点でも違法である。未処理案件の処理や警察
の対応の善処を求めて警察を訪問する者にとっては,警察署に出入りするこ
とが公になることを希望しないのが通常であり,控訴人も,C警察官によるB
社長訪問の件を知るまでは八尾署出入りの事実を公表していなかったから
(控訴人が,その後,自らの八尾署訪問などの事実を公にしたのは,C警察官
によるプライバシー侵害の違法行為を知り,これを是正するためには,警察に
対する直接的働きかけでは限界があると感じたためであり,それ以前に,控
訴人が自らのプライバシーを放棄したことはない。),秘密性の点で欠けるとこ
ろはない。
(被控訴人の主張)
ア 八尾署長がC警察官に対して控訴人の勤務先会社を訪問してB社長と面談す
ることを指示したのは,控訴人が,別件交通事故の件が既に解決した後であ
る平成13年10月1日,同月27日及び同年11月2日,八尾署を訪問し,談合
や選挙違反についての捜査内容を執拗に聞き出そうとしたり,家族調査や休
日出勤中の警察官のテレビ視聴等,控訴人に直接関係のないことについて
不合理な質問を繰り返したことにより,公務に支障を来たし,今後不測の事態
が生ずるおそれもあったため,警察署運営の責任者として,控訴人に対する
適切な対応や警察業務への理解を得るべく,控訴人の目的を正確に把握す
る必要があるものと判断し,正当な職務行為として,控訴人の上司に当たるB
社長から控訴人に関する情報を得ようとしたことによるのであって,それ以上
に,B社長に対し,何らの依頼もしていない。
 警察署には各種行政手続等のために来訪する者も多数存するのであるから,
警察署への出入りという事実は直ちに消極的評価に結びつくものではない
し,また,C警察官は,B社長から控訴人の人となりを聴取するために必要な
限度で,控訴人の警察署における言動を抽象的に告げたものにすぎないか
ら,控訴人のプライバシーを侵害したとはいえない。
イ 地方公務員法34条1項の「秘密」に該当するというためには,非公知性及び要
保護性を要するところ,控訴人は,公然と警察署に何度も出入りしていたので
あるから,警察署への出入りの事実を秘密にすることを欲していたとはいえな
いし,本件訴訟の係属中であるにもかかわらず,これに関する書籍を発刊し
たり,八尾署を揶揄するホームページを設けるなどしているから,非公知性及
び要保護性に欠け,上記「秘密」には該当しない。
(2)勤務先会社社長に対する控訴人の消極的評価の告知の有無及びその違法性の
有無
(控訴人の主張)
ア C警察官は,B社長と面談した際,控訴人の八尾署訪問時の言動を具体的に告
げ,控訴人が警察にとって不都合又は迷惑な行動を取っている人物である旨
表明し,警察側の控訴人に対する消極的評価を伝えた上,控訴人の行動を
制止するように依頼した。
 実際にも,控訴人は,C警察官との面談後のB社長から,「世の中には,正しい
ことは必ずしも良いこととはいえないし,そんなことをして,子供さんや家族に
将来良い結果が得られるのか否かを考えてみたことがあるのか。立ち小便を
とがめられぬように行動しられや。」との忠告を受けた。
イ 仮に被控訴人の主張するようにC警察官によるB社長訪問が控訴人に対する
調査活動の一環として行われたとしても,控訴人に犯罪の嫌疑はないから,
捜査機関としての調査活動は許されない。控訴人は,警察の対応に不審,不
満を持ったことから,八尾署を訪問して説明や是正を求めていただけであり
(別件交通事故については,そのような立場に立った市民であれば誰でも行う
程度の言動であり,談合,選挙違反,家族調査及び休日出勤中の警察官の
テレビ視聴等についても,通常の市民なら誰でも感じている程度の言動があ
ったにすぎない。),控訴人に対し適切な対応を取るため又は警察業務の理
解を控訴人から得るためというのであれば,控訴人に直接質問したり訪問時
の控訴人の言動を観察すれば足りるのであって,それを超えて,控訴人の了
解もなく,第三者である控訴人の雇用主に対し,控訴人に対する消極的評価
を告げて質問するような調査は許されない。
(被控訴人の主張)
ア C警察官がB社長に対して告げた内容は,①控訴人のことで伺いたい,②先
日,私が当直でいると,控訴人が訪ねてきて刑事課長と立ち話をし,さらに在
署中の署員に対し,「今日は休みか。勤務中か。勤務なら金をもらっているの
か。仕事中にテレビを見ているのか。」などと言い出したので,勤務の支障に
なると思い,帰ってもらったことがあった,③控訴人の父親が工事現場の穴に
落ちたとの別件交通事故のことで,八尾署は適正に処理しているのに,しな
かったと抗議に来ているらしい,どういう性格の人か知りたい,というものにと
どまり,控訴人に対する消極的評価を伝えたものではないから,違法ではな
い。
イ 八尾署としては,控訴人の言動により公務の支障の発生や今後の不測の事態
のおそれがあったため,控訴人の真の来署目的やその人となりに関する調査
を行い,今後の方針等を検討する必要性が高かったのであるから,C警察官
のB社長訪問は正当な職務行為に当たり,そもそも違法性がなく,そうでない
としても,違法性が阻却される。
(3)控訴人の損害
(控訴人の主張)
 控訴人は,争点(1)及び(2)で主張したC警察官の行為によりプライバシーを侵害さ
れたから,その慰謝料として55万円を請求する。
(被控訴人の主張)
 控訴人の主張は争う。
第3 当裁判所の判断
1 事実経過
 前記前提事実並びに証拠(甲1ないし8,甲9の1及び2,甲10,乙1,2,控訴人本
人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)別件交通事故は,控訴人の父親が,平成12年4月29日,富山県婦負郡a町bの
県道道路工事中の歩道の溝に自転車ごと転落し,肋骨を骨折したというもので
あった。
 控訴人は,平成12年5月9日,別件交通事故につき事故認定を受けようとしてこ
れを八尾署に届け出たが,その届出に係る事故態様は,控訴人の父親が自転
車を引いて歩いていた際に事故に遭ったというものであったため,八尾署は,歩
行中の事故である以上,交通事故には該当しない旨説明して,別件交通事故に
ついての交通事故認定通知書を発行しなかった。
 八尾署の対応に不満であった控訴人は,翌日,富山警察署を訪れ,別件交通事
故につき相談したところ,交通事故に該当しない旨の説明は同様であったが,事
故目撃者の証言と署名押印があれば,保険の適用を受けられる可能性がある
ことを指摘され,八尾署交通課長に連絡しておくから,再度同署に相談しに行く
ように助言された。
(2)控訴人は,平成12年6月1日,八尾署を再度訪れた際,控訴人の父親は自転車
に乗っていた際に別件交通事故に遭ったと主張するようになった。
 そこで,八尾署は,翌日,控訴人の父親を含む関係者から事情を聴取し,事故現
場の見分も実施したところ,別件交通事故は控訴人の父親が自転車で走行中
の事故であったことが判明したため,その数日後に,控訴人の実家に平成12年
6月7日付け交通事故認定通知書を送付した。
    そのため,その後は,控訴人が,八尾署に対し,別件交通事故に関して不満等を
述べるようなことはなくなった。
(3)ところが,平成13年9月初旬,八尾署警察官が家族調査の件で控訴人宅を訪れ
た際,控訴人は,家族調査それ自体には協力したものの,別件交通事故のこと
を思い出し,八尾署の対応に不満があった旨述べ,また,過去に同様の事故が
発生した際にも,八尾署による実況見分が実施されなかった結果,その被害者
が不利な条件での示談を余儀なくされたことがあったとして,そのことを引き合い
に出して,八尾署としての再発防止策を検討すべきであるなどと述べた。
(4)そして,控訴人は,平成13年10月1日,八尾署を訪れ,同署署員に対し,別件
交通事故の件のほか,①家族調査訪問は定期計画的な業務であるか,②上下
水道談合疑惑捜査に関し,八尾町役場にEメールを送信した旨告げた上,百条
調査特別委員会の最終調査報告書の中から嫌疑はあるのか,官製談合防止法
案の施行後であれば,違いが出るのか,捜査へ着手するプロセス又はポイント
は何か,③八尾町議選挙につき,飲酒接待,買収等の選挙運動違反の範囲及
び最近の事例を問いただし,選挙運動期間中の取締りや巡回をしているのか
等,控訴人には直接関係のない事柄につき突然質問してきた。
 八尾署署員は,控訴人に対し,別件交通事故については,済んだことを今更蒸し
返すのは建設的ではなく,忙しくてそんなことを話している暇はない旨告げたも
のの,その他の事柄については,家族調査訪問の件は1年に1回を目途に行っ
ている旨を返答したり,犯罪捜査に関する捜査内容は話せないが,控訴人が具
体的な事実を知っているのであれば,聞かせてほしい旨依頼するなどして控訴
人との対応に長時間を費やした。
(5)控訴人は,平成13年10月27日にも,八尾署を訪れ,前回訪問時と同様に,談
合問題,選挙違反捜査問題等につき話し始めたが,担当署員がこれに取り合わ
ず退席したため,控訴人は,今度は休日出勤していた在署中の他の署員を相手
として,「今日は休みか,勤務中か。勤務なら金をもらっているのか。仕事中にテ
レビを見ているのか。」などと言って署員の勤務状況を問題視するような発言を
するようになった。同日の当直責任者であったC警察官は,このような控訴人の
言動が同署で執務する警察職員の執務の妨げとなると考え,「警察官は祝祭日
を問わず仕事があれば出勤して仕事をしている。まだ用件があれば聞くが,なけ
れば帰っていただきたい。」などと述べて,控訴人に退去を求め,控訴人はこれ
に従って同署から退去した。
 しかし,八尾署の上記対応に強い不満を抱いた控訴人は,「風紀の乱れ八尾署
内」という件名の同日付けEメール(甲5)を警務部長に宛てて送信した。控訴人
は,同Eメールにおいて,非番出勤の八尾署署員がテレビでゴルフ鑑賞をしてお
り,職場と休憩部屋を同一に使っているように見えるが,訪問者のためにテレビ
を置くべきではないのか,署内にたむろしていながら,非番を口実に取り合わな
いのは不可解である,それほど残業や非番出勤をしなければならない理由は何
か質問する等を記載した上,家族調査訪問に関する件や別件交通事故の顛末
に関する調査及び対策に対する回答を求めるべく,署長との面会を求める旨の
記載もした。
(6)控訴人は,上記Eメールに対して回答が得られなかったため,平成13年11月2
日,八尾署を訪れ,再び上記のような質問を繰り返し,同署署員から既に回答
済みである旨の返答を受けても,署長に報告未了ではないかなどと疑って全く
納得せず,同様の質問を長時間にわたり繰り返し,最後には上記「風紀の乱れ
八尾署内」という件名のEメールの写しを交付し,これを署長及び次長に見せる
ように言い残してようやく帰っていった。しかし,控訴人は,このような八尾署の
対応に強い不満を抱き続けており,同月10日,「八尾副署長へ紹介の件」という
件名のEメール(甲7)を警務部長に宛てて再度送信し,八尾署の上記対応を強
く批判した。
(7)このように,控訴人が八尾署を頻繁に訪問し,執拗に警察の捜査に関すること等
について質問し,また,同じ質問を何度も繰り返し,さらには,署長との面会まで
要請するようになったことから,上記Eメールの写しを見た八尾署長は,同署の
執務に対する支障にもなるとして,控訴人への対応を真剣に検討する必要があ
るものと考え,C警察官に対し,控訴人の勤務先会社のB社長のもとを訪問し
て,控訴人の人となりを把握するように指示した。
 上記指示を受けたC警察官は,平成13年11月中旬,控訴人の勤務先会社にB
社長を訪れ,同社社長室において,同社長に対し,「先日(同年10月27日),私
が当直でいると,控訴人が訪ねてきて,刑事課長と立ち話をし,さらに在署中の
署員に対し,『今日は休みか,勤務中か。勤務なら金をもらっているのか。仕事
中にテレビを見ているのか。』などと言い出したので,勤務の支障になると思い
帰ってもらった。控訴人の父親が工事現場の穴に落ちた交通事故のことで,八
尾署に抗議に来ているらしい。」等と告げるとともに,八尾署長,同署次長らが
「控訴人の八尾署来署により事務に支障を来している。」などと言っていると伝え
た上(以下,C警察官がB社長に話した上記内容を「本件情報」といい,その行為
を「本件開示行為」という。),控訴人の真意を確認するためには,その人となり
について知りたい旨訪問の趣旨を述べ,控訴人の人となりについての質問をし
た。
(8)控訴人は,平成14年3月ころ,勤務先会社の社長室において,B社長に会って所
用を済ませたが,その際,同社長から,「君は,最近八尾署によく出入りしている
そうだね。警察の方から話があったよ。昨年のことだけど。世の中には,正しいこ
とが必ずしも良いこととは言えないし,そんなことをして,子供さんや家族に将来
良い結果が得られるのか否か,考えてみたことがあるのか。立ち小便をとがめら
れぬように行動しられや。」と言われたが,そのことに関しては,その後,同社長
から何の言及もなかったし,勤務先会社又はその関係者から控訴人に対して何
らかの働きかけがあったということもなかった。
 控訴人は,このとき初めて,八尾署署員が勤務先会社を訪問した事実を知った
が,同年2月1日及び同年4月4日の2度にわたり,白内障手術を受けたこと等
のこともあって,直ちに抗議等の行動に出ることはなかった。
(9)控訴人は,平成14年4月18日,八尾署を訪れ,別件交通事故の捜査の遅れを
踏まえた今後の防止策の件のほか,控訴人の八尾署出入りをB社長に告げた
件についても苦情を申し入れ,八尾署との間で1時間余りにわたってやり取りを
したが,控訴人が納得するような回答は得られなかった。
 そこで,控訴人は,「苦情処理の基本が抑圧に向かう」という件名の同日付けEメ
ール(原審記録42丁のもの)を警務部監察課に宛てて送信した。同Eメールに
は,控訴人の申入れが正式の苦情として適切に処理されていないことに対する
調査回答を求めること等が記載されていた。
 (10)控訴人は,平成14年6月18日,富山県公安委員会に宛てて,これまでの件に
つき苦情申出書(原審記録43,44丁のもの)を提出したが,同公安委員会か
ら,同年7月16日付け苦情処理結果通知書(甲1)をもって,控訴人に対し,控
訴人の苦情を容れない旨の回答があった。しかし,同回答に納得できなかった
控訴人は,同年8月5日,再審査を依頼した。控訴人は,その際,広報室長から
八尾署と再度話し合うことを打診され,同月9日,八尾署において意見交換の場
をもったが,控訴人はそれでも納得せず,全容の解明を更に求める旨の同月10
日付けEメール(甲8)を送信した。
 控訴人は,上記再審査の回答も遅れていることに怒りを感じて,同年9月7日,富
山県公安委員会の事務局に対し,督促のEメールを送信した上,直接受付にも
赴き,担当者の上司との面会を強く求める行動にも出て,強硬にこれを拒否する
同委員会との間で押し問答を繰り返すなどした。
 富山県公安委員会は,同年10月29日付け苦情処理結果通知書(甲2)をもっ
て,控訴人に対し,控訴人の苦情を容れない旨の回答をしたが,同回答書に
は,八尾署警察官がB社長と面接した経緯に関して,八尾署の警察官が別件交
通事故に関する交通事故認定状況のこと等について何度も控訴人に説明した
が,控訴人の理解が得られず,同趣旨の申出が繰り返される状況が続いたた
め,「同署では,あなたのご理解が得られるように回答するためには,あなたに
ご迷惑がかからないよう十分留意したうえで,あなたのことを良くご存知の方か
ら,あなたの真意などについて幾らかお話を聞く必要があると判断し,やむを得
ず,社長からお話を伺ったものと認められます。また,警察官が社長にお話しし
た内容は,あなた個人の人格や名誉を傷つけるようなものとは認められず,か
つ,あなたに自制を求めるよう警察官が社長に依頼したという事実も認められま
せんでした。」と記載されていた。
    控訴人は,上記回答を不満として,公安委員との直接面談を希望したり,関係書
類一式を添えた「嘆願書」を郵送するなどした。
 (11)控訴人は,その後も,告発センターに相談するなどしたが,控訴人の満足するよ
うな回答が得られないことから,「富山県警広場1」と題するホームページに「オ
ワラ署管内で発生した事故か」と題して,別件交通事故以来の経緯に関する控
訴人の認識とこれに対する警察及び公安委員会等の対応を詳細に記した文章
を掲載した上,平成14年末には,「富山県警幹部・署員の皆様 ホームページ
□富山県警広場1□の深刻な問題提起にどうぞお立寄り下さい。」という文章と
同ホームページのアドレスを記載した年賀状を,公安委員会,県警本部,市町
村の警察署などの県職員録に記載されていた百数十人の警察職員幹部に差し
出した。
 また,控訴人は,本件訴訟を提起した平成15年3月17日以降,本件訴訟に提出
された主張立証等を自己のホームページ上に掲載し続けているほか,平成16
年1月に勤務先会社を自主的に退社した上,同年8月10日,控訴人の認識する
本件の経緯を詳細に記した著書「謝れない県警-警察はそんなにエライのか」
(甲10)を出版した。
 2 争点(1)(警察署出入りの事実告知の違法性の有無)及び争点(2)(勤務先会社社長
に対する控訴人の消極的評価の告知の有無及びその違法性の有無)について
  (1)C警察官の告知等の内容
   ア 八尾署のC警察官が,同署長の指示を受けて,平成13年11月中旬ころ,控訴
人の勤務先会社にB社長を訪れ,同社社長室において,同社長に対し,同署
訪問時の控訴人の言動に関する本件情報について本件開示行為をしたこと
は,上記1(7)で認定したとおりである。
   イ 控訴人は,C警察官がB社長と面談した際,控訴人の八尾署訪問時の言動を
具体的に告げたほか,控訴人が警察にとって不都合又は迷惑な行動を取っ
ている人物である旨表明し,警察側の控訴人に対する消極的評価を伝えた
上,控訴人の行動を制止するように依頼した旨主張する。
 (ア)C警察官がB社長と面談した際に同社長に話した内容として認定した上記1(7)
の事実は,同警察官が作成した陳述書(乙1)という直接証拠により認定し
た事実であるところ,C警察官の面談目的は,B社長から控訴人の人となり
を聴取することにあったのであるから,同警察官から同社長に対しては,八
尾署として同社長に面談を求めるに至った経緯について,上記認定事実以
外にも,上記1(1)ないし(7)に関連して控訴人の八尾署訪問時の言動につき
より具体的に説明し,控訴人の言動による事務の支障の具体的な状況に
より具体的に言及した可能性がないわけではないが,他の証拠を子細に検
討しても,この点に関して証拠により認定できる事実は上記1(7)の事実の
範囲に止まるものである。
    (イ)本件開示行為によりC警察官がB社長に開示した八尾署訪問時の控訴人の
言動に関する本件情報は,上記アのとおり,上記1(7)で認定した内容であ
ったから,同警察官が,直接的に,かつ,意図的に,八尾署あるいはその
署長らが控訴人に対して消極的評価をしている旨を伝えたものと認めるこ
とまではできない。
      しかし,C警察官が,B社長に対し,八尾署の署長らが控訴人の同署訪問時
の言動によって同署の事務に支障を来している旨話していることを述べ伝
えることにより,これを聞いた同社長は,同署での控訴人の言動について
同署長らが消極的な評価をし,控訴人が同署から迷惑な人物であると思わ
れていることを容易に理解し,そのように感得したものと推認することがで
きる。このことは,B社長が,上記面談から4か月程経過した後になってで
はあるが,上記1(8)のとおり発言して,控訴人に対し,八尾署への批判的
言動を自制するよう忠告をした事実からも裏付けられているものである。
    (ウ)C警察官がB社長に対して控訴人の言動の自制を依頼したとの事実はこれを
認めることができない。
      すなわち,B社長が,上記のとおり,控訴人に対し,八尾署への批判的言動を
自制するよう忠告をした事実があるが,これは,上記面談後4か月程経過
した後の出来事である上,同忠告も,控訴人が所用でB社長の下に赴いた
際に,その所用の終了後に雑談的にされたものであったこと(上記1(8)の
事実),さらには,B社長は控訴人にとってその結婚の媒妁人となってもらっ
た間柄であったこと(控訴人本人の供述)を考慮すると,同忠告は,B社長
が,その意思に基づき,専ら控訴人のためを思って自発的にされた可能性
を否定することはできないから,同忠告の存在から直ちに上記依頼があっ
たことを推認することはできないし,他にC警察官がB社長に対して上記依
頼をしたことを認めるに足りる証拠はない。
  (2)本件情報は控訴人のプライバシーとして保護されるべき法的な権利又は利益に
該当するか。
   ア 上記(1)によれば,本件開示行為に係る本件情報は,控訴人が八尾署に出入り
して,同署に対する批判的言動をし,その事務の支障となっていることを内容
とする控訴人の言動とこれに対する消極的評価を感得させる情報であるか
ら,このような情報は,控訴人のプライバシーに係る情報として,控訴人と同
様な立場にある者において,一般的に,自己が欲しない他者にみだりに開示
されたくないと考えることが自然な情報に当たり,かつ,そのような期待は,憲
法13条に基礎付けられた個人の人格的な権利に基づくプライバシーの権利
あるいは利益として,法的に保護するに値する権利あるいは利益に当たるも
のというべきである(最高裁判所平成15年9月12日第二小法廷判決・民集5
7巻8号973頁参照)。
   イ ところで,控訴人は,一般に公務以外で警察に出入りしているという事実がそれ
自体でその人物に対するマイナスイメージを生じさせるから,控訴人が八尾署
に出入りしているという情報自体が控訴人のプライバシーとして保護されるべ
きであると主張するのに対し,被控訴人は,各種行政手続のために警察署を
訪問する者も多数存在するから,警察署への出入りという事実が直ちに消極
的評価に結び付くものではないと主張する。
    (ア)警察署へ出入りするといっても,その理由や事情には種々のものが存するの
であって,被控訴人主張のように各種行政手続(例えば,免許証の更新手
続など)のために警察署へ出向く者も多数存することは公知の事実である
から,そのことのみに関する情報がその情報に係る個人について当然にマ
イナスイメージあるいは消極的評価を生じさせる情報であるということはで
きないし,警察署もそうであるが,公衆の出入りが予定されている公的建物
については,多くの人が利用しやすいように幹線道路に面したり,街の中心
的な場所に位置するなどのため,これに出入りする者がそのことを意識す
るとしないとにかかわらず,その出入りは多くの人の目に晒される状態にあ
るのを通常とするから,その出入り自体についてのプライバシー性(私事性
あるいは秘匿性)を一般的に肯定することはできない(なお,控訴人が上記
1で認定した八尾署の出入りを人目を忍び,あるいはこれを憚るような態様
で行っていたとの事実を認めるべき証拠はない。)。
      したがって,控訴人が八尾署に出入りしているという情報自体が控訴人のプラ
イバシーとして保護されるべきであるとの控訴人の上記主張は直ちには採
用し難い。
    (イ)しかしながら,等しく警察署へ出入りするといっても,その理由や事情のいか
んによっては,警察署への出入りという事実自体も他者にはみだりに開示
されたくないと考えることが自然な場合(その典型的な場合として,犯罪の
被疑者として取り調べを受けるために出入りする場合がある。)があること
も否定できない。
      そして,上記1で認定した事実によれば,控訴人は,当初においては,別件交
通事故の処理の不手際があったとしてその再発防止策についての要求の
ほか,特定の談合疑惑や選挙違反問題に関する捜査の具体的なあり方に
対する批判等を目的として八尾署を訪れていたが,八尾署署員の対応に
満足できなかったことから,その後は,八尾署の執務態勢一般に対する批
判もするなどして,同署への出入りを重ねていたのであり,したがって,控
訴人は,単なる事務的な手続を行うためではなく,警察に対する批判的活
動を行う一環として八尾署への出入りをしていたのであって,控訴人による
八尾署への出入りには自己の信念や信条に関連する情報であるとの側面
もあるということができる。そうすると,控訴人にとっては,専ら批判の対象
とする警察(八尾署を含む警察組織に属する機関)との関係は別として,そ
れ以外の他者との関係において,そのことを知られたくないと考えることが
自然でないということはできない上,本件開示行為にあっては,控訴人が八
尾署に出入りしている事実は,同署での控訴人の言動が同署長らの消極
的評価を感得させる内容の本件情報の一部として勤務先会社社長に開示
されたのであるから,全体として,控訴人に関するプライバシー性(私事性
あるいは秘匿性)を肯定するのが相当であり,かつ,控訴人のプライバシー
に係る情報として法的保護の対象となるものというべきである。
    (ウ)なお,上記1で認定したとおり,控訴人は,平成14年の後半になっ て,ホー
ムページに掲載するなどの方法で,控訴人と八尾署等の従前の 経過に関す
ることを一般に広く知らせる行動をとっているが,これは, もとより,C警察官
による本件開示行為の存在を知った後のことであ り,控訴人が,それより前
に,本件情報の他者への開示を広く容認して いたことを認めるべき証拠はな
い。
(3)本件開示行為は控訴人のプライバシーを侵害する違法な行為か否か。
   ア プライバシーに係る情報が他人に開示された場合の違法性の有無は,人格的
な権利としてのプライバシーの権利あるいは利益の性質,その範囲の不明瞭
性,他の諸権利あるいは法的な利益との調整の必要等に照らして,開示の目
的,開示の相手方の範囲,開示方法,開示状況等の開示行為の態様と開示
されたプライバシーの性格,内容(私事性及び秘匿性の強弱等)とを総合考慮
して判断されるべきである。
   イ そこで,上記アの観点に立って,本件開示行為が控訴人のプライバシーを侵害
する違法な行為か否かを検討する。
    (ア)上記1で認定した事実によれば,C警察官による本件開示行為の目的は,八
尾署の署長らが,控訴人の同署に対する執拗な責任追及的ないし批判的
言動が繰り返され,これに対して同署として相応の対応をしても控訴人の
理解が得られず,控訴人から当該組織の責任者である署長との直接面談
を要求されるようになったこともあって,控訴人の真意を図りかねた上,少
なからず同署の事務の支障となっているとの判断もあって,控訴人の真意
を明らかにして控訴人に対する適切な対応を検討するため,控訴人をよく
知る人物である勤務先会社のB社長から,控訴人の人となりを聴取しようと
したことにあったのであり,開示の相手方は,控訴人の勤務先会社の社長
という,控訴人の社会生活上で最も重要な部分の一つをなす就業関係にお
いて,人事権等を通じて控訴人に対する処遇を決定することができる優越
的な地位に立つことの明らかな者であったのであり,開示の方法及び態様
は,C警察官が,控訴人の勤務先会社を訪問して,その社長室において同
社長に面談を求めてされたというのである。なお,C警察官による本件開示
行為の際,同社長以外の者が同席したことを窺わせる証拠はないところ,
本件開示行為が上記のような開示の方法及び態様でされたことを考慮する
と,上記同席者はいなかったものと推認される。
    (イ)他方,本件情報は,上記のとおり,控訴人が八尾署に出入りして,同署に対す
る批判的言動をし,その事務の支障となっていることを内容とする控訴人の
言動とこれに対する消極的評価を感得させる情報であったところ,そのよう
な情報は,一般に,労働契約に基づき就業している会社員等の労働者にと
って,その勤務先にあって自己の労働条件について決定権限を有する上
司に知られた場合の不利益な取扱いに対する危惧から,知られること,あ
るいは伝達されることを望まない事柄であることが明らかなものであるか
ら,控訴人において,そのような情報が勤務先会社の社長に知られ,ある
いは伝達されることを希望し,これを歓迎することはほとんど考え難い性質
のものであり,したがって,少なくとも,控訴人の勤務先会社の社長との関
係でそのプライバシー性(私事性及び秘匿性)は相当に強度であるというべ
きである。
      もっとも,本件情報中の事実関係部分は,八尾署に対する批判的な言動を内
容とするものであって,控訴人の純然たる私事に関するものではなく,むし
ろ公共の利害に関する面が大きいものであること,そして,そのような公共
的な利害に関する事柄に積極的に取り組もうとする以上,そのことに関す
る控訴人の言動が他者に明らかとなることは相当程度必然であり,実際に
も,控訴人は,上記1(11)のとおり,平成14年の後半以降,ホームページを
開設するなどして,本件情報に関することを他者に積極的に開示する行動
に及んでいることに照らすと,控訴人においては,本件情報を他人に知ら
れたくないと感じる程度がそれほど大きくなく,本件情報を秘匿する必要性
が稀薄であると考える余地もないではない。しかし,本件情報中の事実関
係部分が公共の利害に関する面が大きいからといって,本件情報が,控訴
人にとって,その勤務先の上司との関係で,上記観点からプライバシー性
を失い,あるいは大幅に減弱させるものということはできないし,控訴人が,
本件開示行為前において,八尾署への出入りやそこでの言動を他者に開
示するような行為をしたことを認めるべき証拠はないから,上記で指摘した
諸点をもって,本件情報が控訴人の勤務先会社の社長との関係でそのプ
ライバシー性(私事性及び秘匿性)が相当に強度であるとの上記判断を左
右するものということはできない。
    (ウ)なお,証拠(甲10,控訴人本人)によれば,B社長は地区の名士として政治家
や警察に対して協力的な人物であったこと及び控訴人の結婚について媒
酌人となったことが認められるが,八尾署においてそのような点の認識を有
していたか否かは証拠上明らかでない。
    (エ)上記(ア),(イ)を総合考慮すると,C警察官による本件開示行為は,その相手が
控訴人の勤務先会社のB社長のみであったことを考慮しても,控訴人のプ
ライバシーを侵害する行為に当たるものというべきである。
   ウ 被控訴人主張の違法性阻却事由の存否
     被控訴人は,前記第2,3(2)被控訴人の主張イのとおり主張して,C警察官がB
社長を訪問して本件開示行為をしたことは正当な職務行為に当たり,違法性
がなく,そうでないとしても,違法性が阻却されると主張する。
     しかし,本件開示行為までの八尾署における控訴人の言動等は,上記1(1)ない
し(6)で認定したとおりであって,警察の対応に対する不満を述べ,その説明
や是正を求めて,また,世間で話題となった談合や選挙違反の捜査に関して
発言し,休日出勤中の警察官のテレビ視聴について批判的発言をしたという
程度であり,その言動等において多少執拗な点があり,同署の事務について
ある程度の支障となり,あるいはそのおそれがある状態があったとしても,そ
れ以上のものではなかったことは明らかであり,まして,今後の不測の事態の
発生やそのようなおそれを予想させるような事実があったということはできな
いし,他にそのような事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,控訴人
に対する適切な応対のために,控訴人の真の来署目的やその人となりに関
する調査を行って,今後の方針等を検討するために控訴人に対する人物調
査をする必要性があったとまでは到底認めることができない。そして,もとよ
り,警察署等の捜査機関が,個人の生命,身体及び財産の保護,犯罪の予
防,公安の維持等警察法が定める職責と関わりなく,個人についてその思
想,信条等の内心に関する調査をすることは許されるものでないところ(警察
官職務執行法1条2項参照),本件開示行為当時,控訴人について何らかの
犯罪の嫌疑などがあって,その人物調査をする必要があったような事情はこ
れを認めることができない。
     なお,仮に八尾署として控訴人に対する適切な応対のために控訴人の真の来
署目的やその人となりを知る必要があったとしても,控訴人の勤務先会社の
社長と面談して控訴人という人物に関する調査をしたからといって,控訴人の
上記言動に関する真の意図や目的が判明するか否か明らかでない一方,そ
のことが控訴人の勤務先会社における状況等に与えるかもしれない影響を考
えると,上記必要から,控訴人の勤務先会社の社長を勤務先会社に訪問し
て,控訴人という人物に関する聴取をするということが適切な方法であったと
いうこともできない。
     したがって,C警察官がB社長を訪問して本件開示行為をすることが八尾署の
正当な職務行為であったということはできず,被控訴人の上記主張は採用す
ることができない。
  (4)以上によれば,C警察官による本件開示行為は,控訴人のプライバシーを侵害す
る違法な行為に該当するものである。
    そして,既に認定説示したところによれば,C警察官による本件開示行為は,公権
力の行使に当たる同警察官が,八尾署長からの指示で,同署に勤務する警察
官として控訴人の勤務先会社の社長を訪問して控訴人の人物調査を行うという
職務の執行に密接に関連してされた行為であり,同警察官には本件開示行為に
より控訴人のプライバシーを違法に侵害したことについて少なくとも過失があっ
たものというべきである。なお,C警察官の上記職務執行そのものは,上司に当
たる八尾署長からの指示に従ってされたものであるが,同署長が,同警察官に
対し,B社長を訪問した際に説明すべき事項や控訴人に関して提供すべき情報
の内容について具体的に指示したことを認めるべき証拠はないから,同警察官
の上記職務執行が同署長からの指示に従ってされたものであるからといって,
同警察官が本件開示行為をして控訴人のプライバシーを違法に侵害したことつ
いて過失がないということはできない。
 3 争点(3)(控訴人の損害)について
  (1)上記2で説示したとおり,控訴人は,八尾署警察官が職務執行の際にした本件開
示行為により,そのプライバシーの権利あるいは利益を侵害されたものというべ
きであるから,被控訴人は,国家賠償法1条1項により,控訴人が被った損害を
賠償する責任がある。
  (2)そして,上記1認定の事実及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,本件開示行
為により本件情報が勤務先会社の社長の知るところとなり,また,同社長から,
上記1(8)記載の内容の忠告をされたことで,不安,不快の念を抱き,相当の精
神的苦痛を被ったものと推認することができるが,それ以外に実害と目すべきも
のは生じていないこと,控訴人は,平成14年の後半以降ではあるが,自ら,ホ
ームページにおいて,本件情報の事実関係についてはこれを公表する態度をと
っていること等の本件に顕われた諸般の事情を総合考慮すると(なお,控訴人
主張の地方公務員法34条1項違反の成否が控訴人の被った精神的苦痛の大
小に直ちに影響するものではない。),上記精神的苦痛に対する慰謝料としては
5万円が相当であると認める。
第4 結論
1 以上のとおり,控訴人の請求は,慰謝料5万円の支払を求める限度で理由がある
から同限度で認容し,その余は失当として棄却すべきである。
 2 よって,原判決を上記趣旨に変更することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法
67条2項本文,64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所金沢支部第1部
裁判長裁判官 長   門   栄   吉
   裁判官  渡   邉   和   義
   裁判官  田   中   秀   幸

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛