弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
一 原判決中控訴人aに関する部分を次のとおり変更する。
1 被控訴人は、控訴人aに対し金一九四万三九六〇円及び内金一〇六万六九〇九
円に対する昭和五八年八月一九日から、内金八七万七〇五一円に対する本判決確定
の日の翌日からいずれも支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 控訴人aのその余の請求を棄却する。
二 控訴人bの本件控訴を棄却する。
三 控訴人aと被控訴人との間に生じた訴訟費用は、第一・二審を通じてこれを三
分し、その一を右控訴人の、その余を被控訴人の各負担とし、控訴人bと被控訴人
との間に生じた控訴費用は右控訴人の負担とする。
四 この判決第一項のうち金一〇六万六九〇九円及びこれに対する年五分の割合の
金員の支払を命ずる部分は仮に執行することができる。
       事   実
第一 当事者の求める裁判
一 控訴人ら
 「原判決を取り消す。被控訴人は、控訴人a(以下「控訴人a」という。)に対
し金三〇六万八八三〇円、同b(以下「控訴人b」という。)に対し金二六万五八
〇〇円及び右各金員に対する昭和五八年八月一九日から支払ずみまで年五分の割合
による金員を支払え。訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判
決並びに仮執行の宣言。
二 被控訴人
 「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決。
第二 当事者の主張
 次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引
用する。
一 原判決二枚目裏七行目及び同行から同八行目にかけての各「四月」の次に「一
六日」を加え、同八行目の「なっている。」を「なった。」と改め、同一〇行目の
「あるのに、」の次及び同三枚目表七行目の「しないで、」の次にそれぞれ「包括
的な業務命令に基づき、」を加える。
二 同三枚目表末行の「原告」の前に「被控訴人は、控訴人らに対し一年間に給与
の三か月分を支給する旨を約しながら、」を、同裏二行目の冒頭に「控訴人aのし
た休日労働及び時間外労働のうち本訴において請求する分は別表(一)に記載した
とおりであって、」をそれぞれ加える。
三 同五枚目裏七行目の「である。」を「で、労働基準法(以下「法」又は「労基
法」という。)四一条にいわゆる断続的な業務として所轄労働基準監督署長の許可
を得る必要はなく、控訴人aの時間外、休日労働に対しては、労基法の労働時間、
休日に関する規定は適用されない。」と改める。
四 同九枚目表一〇行目の「なお」を「仮に、控訴人aの管理業務が実質的に監視
又は断続的労働といえるような、精神的緊張が少なく労働密度の薄い労働であった
としても」と、同末行から同裏一行目にかけての「ものである。」を「から、法四
一条の適用除外は認められず、控訴人aの時間外、休日労働に対しては割増賃金が
支払われなければならない。」とそれぞれ改める。
第三 証拠関係(省略)
       理   由
一 請求原因1の事実、同2のうち控訴人らの仕事の内容と賞与に関する事実を除
く事実、同3のうち控訴人aの勤務時間が午前八時から午後五時までである事実は
当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない甲第四号証の一、二及び弁論の
全趣旨によれば、右勤務時間のうち一時間は休憩時間であること、労働契約書に
は、日曜、祝祭日、年末年始を休日とする旨が記載されていたが、右の年末年始と
は一二月二九日以降翌年一月三日までをいうこと、給料は毎月一五日締切り、同月
三〇日支払の約束であったことが認められ、右認定に反する証拠はない。
二 控訴人aは、被控訴会社の包括的な業務命令に基づいて時間外、休日労働をし
た旨主張するので、この点について検討する。
1 前掲甲第四号証の一、二、成立に争いのない甲第一号証の一ないし五、甲第二
号証(原本の存在とも)、甲第三号証の一ないし四、甲第五号証の一、二、甲第九
号証の一、二(原本の存在とも)、甲第一〇、第一一号証、甲第一七号証の一ない
し四、甲第一八号証、甲第三一、第三二号証(原本の存在とも)、甲第三三号証の
一ないし四、乙第一号証、乙第二号証の一、二、昭和五七年八月当時の後記本件出
張所付近の写真であることに争いのない乙第五号証、原審証人cの証言により右当
時の本件出張所の写真であると認める乙第三号証の一、二、書き込み部分は当審に
おける控訴人a本人尋問の結果により真正に成立したものと認め、その余の部分は
成立に争いのない甲第一九号証、当審証人dの証言により真正に成立したものと認
める甲第二〇、第二一号証、原審における控訴人a本人尋問の結果により原本の存
在及びその成立を認める甲第七号証の一ないし三、甲第八号証、当審における控訴
人a本人尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第二二ないし第二八号
証、甲第二九、第三〇号証の各一ないし三、弁論の全趣旨により真正に成立したも
のと認める甲第一六号証、乙第二号証の三、原審証人c(一部)、同e(一部)、
当審証人f、同dの各証言、原審(一部)及び当審における控訴人a、原審におけ
る控訴人b各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めること
ができ、右認定に反する原審証人c、同eの各証言、原審における控訴人a本人尋
問の結果の各一部は措信することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はな
い。
(一) 被控訴会社は、昭和五六年四月二五日、水資源開発公団(以下「公団」と
いう。)三重用水建設所との間で、同建設所水源出張所(以下「本件出張所」とい
う。)及びその敷地の管理に関する業務委託契約を締結し、職業安定所に右の管理
に当たる者を募集する旨の求人の申込みをした。
(二) 控訴人a(大正一四年一一月一四日生)・同b(昭和五年一〇月一六日
生)夫婦は、職業安定所で、職種は賄給食兼管理人、作業内容は寮の管理人兼賄給
食などのほか建物内の清掃、就業時間は午前八時から午後五時まで(土曜日は午後
二時まで)、休日は日曜日及び祝日、時間外制度あり、夫婦で寮に住み込んで就労
すること等を内容とする被控訴会社の求人票を見て、昭和五六年四月二七日、被控
訴会社四日市支店において支店長等と面接した後、本件出張所において、本件出張
所の所長等の立会いのうえ、四日市支店長から被控訴会社と公団三重用水建設所と
の間で締結されていた業務委託契約書を示され、これに基づき本件出張所における
仕事内容の説明を受けて同意し、本件出張所の管理棟に住み込んで就労することに
なった。
(1) 右契約書に添付された仕様書(以下、単に「仕様書」という。)による仕
事内容は次のとおりである。
① 管理の範囲
 本件出張所とその敷地
② 清掃業務
 事務所とその付帯施設及び敷地内
③ 賄い業務
 職員の昼食の賄い(給食)、給茶の準備
④ 管理業務
 事務所の火気取締及び防犯、職員退庁後の郵便物の受領及び電話の受信連絡、緊
急の場合の処理と連絡、冷暖房期間中における冷暖房の準備及び職員退庁後の停
止、休日における施設見学者等の応対
(2) また、前記契約書に添付された清掃仕様書による仕事内容は次のとおりで
ある。
① 玄関ホール
 床の拭き掃除、出入口扉のガラス磨き、マットの清掃、紙屑の処理
② 廊下
 床の拭き掃除、研磨
③ 階段
 床の拭き掃除、手摺の雑巾がけ
④ 湯沸場
 床の拭き掃除、茶殻及び塵芥の処理、備品及び什器の手入れ
⑤ 洗面所、WC
 床の洗浄、手洗器の洗浄、便器の洗浄、鏡磨き、紙屑の処理、汚物の処理、トイ
レットペーパーの補給
⑥ 食堂
 床の拭き掃除、テーブル、椅子・カウンターの雑巾がけ、紙屑の処理、灰皿の処

⑦ 事務所等
 床の拭き掃除、机・テーブル・椅子の雑巾がけ、紙屑の処理、灰皿の処理
⑧ 外周
 玄関付近及び建物外周の拭き掃除並びに除草
⑨ その他
 公団職員の指示に従い協力する。
(三) 被控訴会社は、控訴人aが休日労働等を問題にした後の昭和五八年四月四
日に公団三重用水建設所と業務委託契約を更新したが、その際に、仕様書及び清掃
仕様書の内容を改めた。
(1) 改められた仕様書の主な内容は次のとおりである。
① 業務時間
 業務の拘束時間は七時から二二時までとし、実働時間は一日につき七時間を超え
ないものとする。
② 休憩時間
 休憩時間は拘束時間中の実働しない時間をもってこれに充てるものとする。
③ 業務内容
 事務所等の火気取締及び防犯、職員退庁後の郵便物の受領及び電話の受信連絡、
冷暖房機の操作及び調節、事務所等の清掃及び整備、職員への昼食の賄い及びこれ
に付随する業務、職員への給茶の準備、公団三重用水建設所の指定する業務日誌の
作成
 なお、右契約更新の際の仕様書案には、「休日 休日は、日曜日及び国民の祝日
に関する法律に定める日とする。」との項目があったが、被控訴会社の要請により
削除された。
(2) 右契約更新の際に交わされた覚書には、「火気取締及び防犯」業務に係る
巡視回数は次のとおりとし、夜間は原則として一回以上巡視するものとする旨の記
載がある。
① 平日 三回
② 土曜日 四回
③ 日曜日、祝日及び公団三重用水建設所が指定する日 五回
(3) しかし、被控訴会社は、控訴人らに対して業務内容及び業務時間について
は従前どおりでよい旨を指示した。
(四) 本件出張所の建物は、コンクリート造二階建で、正面約二一メートル、奥
行約一一メートルで、一階に会議室、機械室、休憩室、食堂、用務員室等、二階に
事務室、資料室、通信機室、操作室等がある。本件出張所に勤務する公団職員は、
時期によって異なるが数名であり、通常、午前九時から午後五時まで勤務していた
が、残業をすることもあり、また、休日に出勤することもあった。
(五) 控訴人らは、昭和五六年四月二七日から仕様書に書かれた仕事に従事した
が、主として、控訴人bが公団職員の賄い業務及び食堂、便所等の一部の清掃作業
を分担し、控訴人aがその他の清掃作業及び管理業務を行った。
(六)(1) 控訴人aは、仕様書に記載された仕事の内容を自己の職務内容と受
け止め、これを実行するために、通常の日には、午前七時頃から、時には午前六時
頃から本件出張所の清掃、管理の仕事を開始し、所定の就業時間内は、本件出張所
の監視、敷地の清掃、植え込みの手入れ等の業務を、午後五時以降は公団職員の退
庁を待っての戸締まり、巡視等の管理業務をし、日曜、祝祭日にも、清掃、草刈
り、電話番、本件出張所見学者等の監視を行った。しかし、控訴人aが就業開始時
刻である午前八時から仕事を始めても、支障を生ずることはなかったし、また、公
団職員の退庁を待ってその日のうちにしなければならない戸締り等の仕事に要する
時間は極くわずかなものであり、後片付けなどは翌日の就業開始後に行えば足りる
ものであった。なお、年末年始には、公団職員の緊急の際の連絡を引き受けたが、
実際に緊急連絡のあったことはなかった。
(2) 公団においても、控訴人らの職務内容は、仕様書に拘束されるものととら
えていたため、前記のような控訴人aの勤務を当然のこととして受け止め、職員の
残業後で控訴人aの就業時間外に戸締まりをさせたり、休日には連絡用に控訴人ら
のうちの少なくとも一名が本件出張所に居ることを求めた。
(3) 控訴人bは、以前から勤めていた四日市市内のキャバレーの会計事務の仕
事(午後六時から零時まで)を続けるため、午後四時三〇分頃から本件出張所を出
て翌日午前一時頃帰宅していた。これは控訴人らの退職まで続いたが、公団は控訴
人bの仕事が主として昼食の賄いであったことから、同控訴人の右のような勤務態
度について特段の苦情を述べなかった。
(七) 被控訴会社は、控訴人らの労働に対し法四一条の規定する労働基準監督署
長の許可を受けておらず、控訴人aが、当初、休日は休んでもよいかと質問したの
に対し、被控訴会社四日市支店長cは、「どちらか一人が残れば休んでもよい。」
と回答していた。しかし、被控訴会社は、昭和五七年四月一六日以降は控訴人aの
要求に応じて休日に代替要員を派遣したこともあった。
(八) 被控訴会社は、控訴人aが休日労働等を問題にした後の昭和五七年七月一
二日頃到達の内容証明郵便で同年八月一八日限り控訴人らを解雇する旨の解雇予告
通知をしたが、控訴人らは、同年九月一七日、津地方裁判所四日市支部において地
位保全の仮処分決定を得てそのまま継続して勤務した。しかし、昭和五八年六月末
日限りで業務委託契約の期間が満了した後、被控訴会社が公団から業務委託契約の
更新をしてもらえなかったため、控訴人らは同日限りで被控訴会社を退職した。
(九) 公団三重用水建設所は、昭和五九年四月から本件出張所の管理業務を株式
会社水の友に委託しているが、同会社から派遣されている管理人は、公団の休日に
は指定出勤日として休日以外の日と同様の業務を行っている。
2 以上の事実関係によれば、被控訴会社は、公団から本件出張所の管理等に関し
仕様書記載のとおりの業務を委託され、被控訴会社の従業員である控訴人らに対し
右業務を職務内容として指示し、控訴人らに対する実際の指揮、監督を公団側にも
重畳的に委ね、公団職員も、控訴人らに対して仕様書に基づいて仕事を指示してい
たものということができる。
そして、公団職員が退庁した後の戸締まり等の仕事をするために公団職員が退庁す
るまで待機している時間は、いわゆる手待ち時間として労働時間に含めて考えるべ
きものであるが、控訴人aにおいて、公団職員が退庁した後その日のうちにしなけ
ればならない仕事に要する時間は極くわずかなものであり、退庁後であれば、いつ
その仕事をするかは同控訴人の自由であるとの事情を考慮すると、被控訴会社の就
業日においては、就業時間の終了した午後五時以降、同控訴人が現実にその仕事を
した時刻までではなく、その仕事をすることのできる状態になった時刻まで、すな
わち、公団職員が最後に退庁した時刻までの労働時間を、また、被控訴会社の休日
においては、午前八時から午後五時までの労働(但し、休憩時間一時間)を、被控
訴会社の包括的な業務命令に基づくものと認めるのが相当である。しかし、就業開
始時刻である午前八時より前に行った労働及び公団職員退庁後にしたものであって
も翌日の就業開始後にすれば足りる後片付け等をした労働は、被控訴会社ないし公
団の指示に基づくものと認めることはできず、控訴人aの自発的な行為というべき
である。
 被控訴会社は、控訴人aの職務が管理業務であって、労働密度の極めて薄い精神
的緊張の伴わない軽易な労務であり、法四一条の労働基準監督署長の許可を得なく
ても労基法の労働時間及び休日に関する規定は適用されない旨主張するところ、前
認定の事実によれば、同控訴人の就業時間外及び休日における労働が労働密度の薄
い精神的緊張の伴わない軽易な労務で監視、断続的労働であるとは認められるけれ
ども、被控訴会社が同控訴人の労働につき法四一条の許可を得ていない以上、労働
時間及び休日に関する規定の適用は免れないというべきである。けだし、法四一条
の趣旨は、監視又は断続的労働と一般の労働との区別は実際には困難な場合が多
く、監視、断続的労働であることを口実に不当な労働時間形態がとられることもあ
るため、これを事前に労働基準監督署長に判断させ、労働者の保護を図ろうとした
ところにあると解されるからである。したがって、被控訴会社は、控訴人aに対
し、時間外、休日労働について法三七条の割増賃金を支払う義務があることにな
る。
三 そこで、前記の認定判断を前提として、控訴人aのした時間外、休日労働に対
する割増賃金額等について検討する。
1(一) 控訴人aは、被控訴会社の休日にした労働のすべてについて割増賃金を
請求しているが、法三七条による割増賃金を支払うべき休日労働とは、法三五条の
定める休日(以下「法定休日」という。)における労働をいうのであるから、法定
休日以外の休日(以下「法定外休日」という。)において労働をさせても、右の労
働により労働時間が一週間に四八時間(昭和六二年法律第九九号による改正前の法
三二条参照)を超えることになった等の事情のない限り、割増賃金を支払う義務は
なく、通常の賃金を支払えば足りると解すべきところ、本件においては、右の事情
が存することについての主張立証はない。
 そして、前掲甲第六号証(一部)、甲第七号証の一ないし三、甲第八号証、甲第
二二ないし第二八号証、甲第二九、第三〇号証の各一、三、原審における控訴人a
本人尋問の結果によれば、控訴人aは被控訴会社の休日に別表(二)記載のとおり
労働したこと、同控訴人の法定休日及び法定外休日にした労働の月毎の時間数は、
別表(三)の「法定休日労働」及び「法定外休日労働」の各「時間数」欄に記載し
たとおりであることが認められる。甲第六号証には、昭和五八年三月二〇日及び同
年四月一〇日にも労働した旨の記載があるが、前者については甲第八号証に午後六
時まで外出した旨の記載があることに照らし、また、後者については甲第七号証の
一に午前七時から午後一〇時まで外出した旨の記載があることに照らして、いずれ
も信用することができず、他に右認定を左右すべき証拠はない。
(二) 前記(一)掲記の証拠によれば、控訴人aのした時間外労働の月毎の時間
数は、別表(三)の「時間外労働」「時間数」欄に記載した括弧書き部分を除く部
分のとおりであることが認められる。控訴人aは、月によっては右認定時間以上の
時間外労働をした旨主張し、甲第六号証には右主張にそう記載があるが、右記載は
具体性に乏しく直ちに信用することができず、他に右に認定した以上に同控訴人が
時間外労働をしたことを認めるに足りる証拠はない。
2 控訴人aに対する給料は月によって定められており、月によって所定労働時間
数が異なるので、法施行規則一九条に従って割増賃金の基礎となる一時間当たりの
賃金額(以下「基礎賃金」という。)及び割増賃金額を計算すると、次のようにな
る。
(一) 昭和五六年四月二七日から昭和五七年四月一五日までは、給料月額が前記
のとおり一二万一〇〇〇円であるところ、昭和五六年四月一六日から昭和五七年四
月一五日までの一年間の労働日が二九七日であるから、基礎賃金は六一一円(円未
満四捨五入。以下同じ。)となる。
(二) 昭和五七年四月一六日から昭和五八年四月一五日までは、給料月額が前記
のとおり一二万六〇八八円であるところ、右一年間の労働日が二九七日であるか
ら、基礎賃金は六三七円となる。
(三) 昭和五八年四月一六日から退職までは、給料月額が前記のとおり一三万一
九八三円であるところ、同日から昭和五九年四月一五日までの一年間の労働日が二
九七日であるから、基礎賃金は六六七円となる。
3 右の基礎賃金に基づいて、法定休日労働及び時間外労働(但し、労働時間数が
控訴人aの請求する時間数を超える場合には、請求時間数を限度とする。)に対す
る二割五分の率で計算した割増賃金額並びに法定外休日労働に対する賃金額を月毎
に計算すると、別表(三)の「割増賃金」欄及び「賃金」欄記載のとおりとなる。
したがって、控訴人aは、被控訴会社に対し、休日労働に対する割増賃金合計五九
万七六九四円及び時間外労働に対する割増賃金合計三二万二一二七円の総計九一万
九八二一円の割増賃金請求権及び一四万七〇八八円の賃金請求権を有することにな
る。
四 控訴人aの付加金の請求について判断するに、特段の事情が存することについ
て主張立証のない本件においては、被控訴会社に対し付加金の支払を命ずるのが相
当である。そして、記録によれば、控訴人aが本訴を提起したのは昭和五八年七月
二一日であると認められるところ、法一一四条によれば付加金の支払の請求は違反
のあった時から二年以内にしなければならないとされているので、本訴提起前二年
以内の支払分、すなわち昭和五六年七月三〇日に支払うべき同年六月一六日以降に
生じた休日労働に対する割増賃金合計五五万四九二四円及び時間外労働に対する割
増賃金合計三二万二一二七円の総計八七万七〇五一円につき同額の付加金の支払を
命ずることとする。
五 次に、控訴人らは、被控訴会社との間に賞与として一年間に給与の三か月分を
支払う旨の合意をした旨主張し、控訴人a本人は、原審において、右主張にそう供
述をしているところ、前掲甲第二号証(求人票)には、賞与として「(前年度実
績)年二回(年三月分)」との記載があるが、右記載の趣旨は前年度実績を記載し
たにすぎないと認められること、原審証人c、同eは右合意の成立を否定する供述
をしていること、並びに前掲甲第六号証及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らは、
賞与として、昭和五六年七月に各一万円、同年一二月に各七万五〇〇〇円、昭和五
七年六月に各六万二〇〇〇円を格別の異議をとどめず受領したものと認められるこ
とに照らすと、控訴人a本人の前記供述は措信することができず、他に右事実を認
めるに足りる証拠はない。
六 以上に述べたところによれば、被控訴会社は、控訴人aに対し、時間外、休日
労働に対する割増賃金合計九一万九八二一円及び通常の労働に対する賃金合計一四
万七〇八八円の総計一〇六万六九〇九円及びこれに対する支払日の後である昭和五
八年八月一九日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金並びに付
加金合計八七万七〇五一円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払ずみま
で右年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があることになる。
 よって、控訴人aの本訴請求は右の限度で理由があるが、その余は失当であり、
同bの本訴請求は失当であるから、控訴人aに関する部分については、結論の異な
る原判決を右のとおりに変更し、同bに関する部分については、原判決は相当であ
り、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九六
条、九五条、八九条、九二条を適用し、なお、割増賃金及びこれに対する遅延損害
金の支払を命ずる部分については同法一九六条を適用して仮執行の宣言を付し、そ
の余の認容部分については相当でないのでこれを付さないこととして、主文のとお
り判決する。
(裁判者 野田宏 瀬戸正義 豊永多門)
別表(一)
<03531-001>
別紙(二)
<03531-002>
別紙(三)
<03531-003>
<03531-004>

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