弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、
二審共被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を
求めた。
 当事者双方の主張は控訴代理人において、昭和二十四年七月二十五日当時の控訴
人村議会の議員全員はその任期を満了し、昭和二十六年四月二十三日控訴人村議会
議員の総選挙が行われ、被控訴人も再び控訴人村議会議員に当選したのであるか
ら、被控訴人は本訴を維持する利益がないと述べ、被控訴代理人において控訴人の
右主張のように昭和二十四年七月二十五日当時の控訴人村議会の議員全員が任期満
了しその主張のように総選挙が行われて控訴人が再び控訴人村議会の議員に当選し
たことは認める。しかし本件控訴人村議会の除名決議を取消すことは、被控訴人の
名誉を回復するため及び被控訴人が右改選前の議員としての報酬を請求するために
役立つのであるから尚本訴を維持する利益があると述べた外事実上の主張は原判決
事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
 証拠として、被控訴人代理人において、甲第一、二号証、第三号証の一乃至四、
第四号証の一、二、第五号証(但し第五号証は写)を提出し、原審証A、B、C、
当審証人Dの証言、原審はおける被控訴人本人訊問の結果を援用し乙各号証の成立
を認め、控訴代理人において、乙第一乃至第九号証(但し第二、六号証は各一乃至
三)原審証人E、F、G、Hの証言を援用し、甲第一号証、第四号証の一、二の成
立並に第五号証の原本の存在及びその成立を認め、第二号証第三号証の一乃至四は
知らない、その他の甲各号証の成立を認めると答えた。
         理    由
 <要旨第一>先づ被控訴人が本訴を維持する利益があるかどうかを考察することに
する。控訴人村議会が被控訴人を除名する旨の本件議決をしたのは昭和
二十四年七月二十五日の会議でありその後控訴人村議会議員の任期満了のため昭和
二十六年四月二十三日総選挙が行われ被控訴人が再選されたことは当事者間に争の
ないところであるから、ことを村議会議員たる資格回復の点にのみ限定してみるな
らば、被控訴人が前示のように再選された今日本訴を維持する利益はないように一
応考えられる。しかし地方自治法第二百三条及び成立に争がない甲第四号証の一、
二によつて知り得るa村職員費用弁償額報酬額並に支給条例中改正条例の件の規定
に徴すると、控訴人村議会の議員は単なる実費弁償を受けるのではなく年間定額の
報酬を受ける権利あることが明かであるから、この一事から見ても被控訴人におい
て本訴を維持する利益がないものということはできない。従つて右の点に関する控
訴人の抗弁は理由がない。
 よつて本案につき判断する。被控訴人が控訴人村議会の議員であり且つ議長であ
つたこと、控訴人村議会が昭和二十四年七月二十五日の会議において被控訴人を懲
罰に付する緊急動議を採り上げ除名の議決をしたこと及びこの議決において控訴人
村議会が被控訴人を除名する事由として挙げた被控訴人の行為の中に第一、昭和二
十三年十一月二十二日の控訴人村議会の会議において被控訴人が議長として自ら村
長不信任の動議を提出し且つ村長に対し退場を求めた行為(被控訴人挙示の
(四)、(五)の事実、控訴人挙示の(五)の事実)第二、昭和二十四年一月二十
八日の控訴人村議会の会議において被控訴人が一議員に対し退場を命じた行為(被
控訴人挙示の(一)の事実、控訴人挙示の(一)の事実)第三、同年三月二十六日
開会の控訴人村議会の同日における会議において被控訴人が村長提出の議案の審議
を延ばし散会した行為(被控訴人の挙示の(二)の事実、控訴大挙示の(ニ)の事
実)第四、右議会の第二日目の会議(同月二十八日)において被控訴人が傍聴席に
いた警官に常し一議員を退場せしめよと要求した行為(被控訴人挙示の(三)の
(2)の事実、控訴人挙示の(三)の事実)第五、右会議(第二日目)において他
の議員から被控訴人の一身上の議事に関し退場を要求せられ右が被控訴人に対する
懲罰動議に関するものであることを明かにされても尚被控訴人が退場しなかつた行
為(被控訴人挙示の(三)の(3)(4)の事実、控訴人挙示の(四)の事実)第
六、被控訴人が控訴人村議会の議長名を以て昭和二十四年一月二十八日附でa村選
挙管理委員会に対し当時のa村長Fに公職被選挙権なき旨の決定申請書を提出した
行為(被控訴人挙示の(六)の事実、控訴人挙示の(六)の事実)以上の事実を挙
げていることは当事者間に争なく、又成立に争のない乙第二号証の二、第六号証の
一乃至三、原審証人EGの証言を綜合すると控訴人村議会の挙げた除名事由は以上
の外第七、前示第匹掲記の会議において被控訴人が選挙管理委員会に対する調査書
提出問題等で他の議案の審議を防害した行為(被控訴人挙示の(三)の(1)の事
実)第八、昭和二十四年三月二十九日の控訴人村議会の会議における同議会の議決
に対し被控訴人が法務庁に訴願した行為(被控訴人挙示の(三)の(5)の事実)
を挙げていることが判る。控訴人は本件除名事由としては昭和二十四年七月二十五
日の会議(本件除名を議決した会議)における被控訴人の言動のみでも充分足りる
と主張するけれども、前示乙第六号証の一乃至三その他控訴人提出援用の全立証を
以てしても右七月二十五日の会議における被控訴人の言動を以て本件懲罰の事由と
したものと認めることはできない。
 しかして前示乙第六号証の一、二、三によれば、昭和二十四年七月二十五日の村
議会は昭和二十四年第五回定例会として同日午前九時に招集され、午前九時三十分
に開会、午後三時十分に閉会されたものであるが、被控訴人を懲罰に付する緊急動
議は同日開会劈頭に上程され、懲罰委員会の審議を経て、除名の決議がなされるに
至つたものであることを認め得る。然るに以上懲罰事由のうち、第一乃至第五、及
び第七は本件懲罰の議決をした昭和二十四年七月二十五日の控訴人村議会より前の
控訴人村議会の会議における被控訴人の行為に関し、第八は控訴人村議会の会議外
における被控訴人の行為に関するものであることは明かであり、又第六の被控訴人
の行為は控訴人村議会の議決に基かないものであることは成立に争のない乙第一号
証、原審証人Hの証言に徴し明かであるから右は第八と同様控訴人村議会の会議外
における被控訴人の行為に関するものといわねばならない。
 そこで先づ右のように村議会が前の議会の会議中における議員の行為に関し後の
議会において懲罰を科し得るかどうかの点につき考察する、国会法第六十八条には
会期中に議決に至らなかつた事件は後会に継続しない(同条但書の例外の場合を除
いて)と規定し、地方自冶法第百十九条も同様に規定しいわゆる会期不継続の原則
を採用している。そして国会法第百二十一条第三項は懲罰動議は事犯があつてから
三日以内に提出することとしているところから見ると国会法の下では議員に対する
懲罰についても会期不継続の原則をとつているものとみなければならない。しかし
て地方自治法の前示第百十九条は国会法と同趣旨の下に規定されたものと解すべき
であるから、地方自治法第百三十四条の懲罰についても亦会期不継続の原則が適用
あるものと解すべきである。ただ地方自治法には普通地方公共団体の議会の懲罰権
につき前示国会法のような懲罰動議の提出時期につき規定がないのはこれ等議会の
会期は一般に短く殊に村議会の会期の如きは二、三日であるのを通常とするから特
に規定するの要ないものとしたによるものと思われる。若し議会の議員に対する懲
罰につき会期不継続の原則の適用がないものとするならば、此の点につき他になん
ら規定ない現行法の下では時間的制限がないことになり、一紋の犯罪につき時効制
度が設けられていることとの権衡を失することにもなる。
 <要旨第二>次に村議会が議員の議会外における行為に対し懲罰を科し得るかどう
かの点につき考えるに、村議会の議員に対する懲罰権は村議会が会議内
の秩序を維持する為め、議会の自律権に基き会議内における議員の非行に対しその
議員に科するものと解すべきであつて、このことは地方自治法及び控訴人村議会々
議規則(甲第一号証、乙第七号証)に徴しても明かである
 そうだとすると、控訴人村議会が昭和二十四年七月二十五日の控訴人村議会にお
いて、それより前の控訴人村議会の会議中における被控訴人の行為及び控訴人村議
会の会議外の被控訴人の行為を事由として被控訴人を懲罰に附した本件議決は爾余
の点につき判断をなすまでもなく違法であり取消しを免れない。
 よつて右と同趣旨の原判決は正当で本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三百
八十四条第九十五条第八十九条を適用し主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 谷本仙一郎 判事 村木達夫 判事 小嶋弥作)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛