弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成18年4月26日判決言渡
平成17年(ワ)第10681号損害賠償請求事件
判決
主文
1被告らは,原告に対し,連帯して金450万円及びこれに対する平成
14年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用はこれを5分し,その1を被告らの連帯負担としその余を原
告の負担とする。
4この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
1被告らは,原告に対し,連帯して金2623万4151円及びこれに対す
る平成14年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2訴訟費用は被告らの負担とする。
3第1項につき仮執行宣言
第二事案の概要
本件は,原告が,被告府中市の開設する府中市民医療センター(以下「医療
センター」という)において健康診断を受けたが,医療センターに勤務する。
被告A医師(以下「A医師」という)が胸部レントゲン写真(以下「胸部。
」という)の肺の陰影を見落としたことが原因で肺ガンの発見が遅れ,手Xp。
術が1年間遅れたために肺ガンが進行し,手術で腫瘍は摘出したものの1年前
に手術を受けた場合と比べて5年生存率が低下したとして,被告A医師に対し
ては民法709条の不法行為,被告府中市に対しては民法715条の使用者責
任あるいは診療契約に基づく債務不履行責任に基づき,損害賠償と不法行為の
日である平成14年9月25日から支払済みまで民法所定年5分の割合による
損害金の連帯支払を求めた事案である。
一争いのない事実等
1原告は,昭和26年6月28日生まれの女性である。被告府中市は,医療
センターを開設する地方自治体であり,被告A医師は,原告が医療センター
で健康診断を受けた当時,同センターで胸部の読影を担当していた。Xp
2原告は,平成14年9月11日,医療センターで個別の有料健康診断(総
合健康診査)を受診した。医療センターでは,同日,原告の胸部を撮影Xp
したところ,肺に直径約1センチメートルの異常陰影が存在していたが,A
医師は,同月25日,原告に対し,胸部には異常がないと判断しその旨Xp
説明した。
3原告は,平成15年7月,B医院で府中市無料健康診断を受診し,同年8
月上旬,肺に腫瘍の疑いがあると指摘された。原告は,同月11日,C病院
で胸部検査を受け,腫瘍を疑われ早期に手術をすることを勧められた。CT
原告は,同年9月1日,D病院で,胸腔鏡下肺葉・区域切除術()のVATS
方法で右肺下葉を切除し,同月6日退院した(甲,甲)。A2C4
4切除した腫瘍の病理診断は,肺ガン(低分化型腺癌)であり,進行度分類
は,のⅡであり,リンパ節転移は1群まで存在した。T2N1Stageb
5被告A医師は,平成14年9月25日,原告の胸部の読影に際し,異Xp
常所見の有無を慎重に判断すべき注意義務が存在するのにこれを怠り,右肺
の異常陰影を見落とした注意義務違反(以下「本件見落とし」という)が。
ある。
二争点及び争点についての当事者の主張
本件の争点は,第1に,A医師の本件見落としにより原告の5年生存率がど
の程度低下したかという点であり(争点1,第2に,原告の損害の程度であ)
る(争点2。)
1争点1(A医師の本件見落としにより原告の5年生存率がどの程度低下し
たか)についての当事者の主張
(原告の主張)
(一)本件見落としの時点では,原告の肺ガンの進行度はⅠであStagea
ったもので,Ⅰであれば,術後の5年生存率は95.4パーセStagea
ントであった。しかし,本件見落としのせいで発見が1年近く遅れたた
め,原告の肺ガンは,Ⅱまで進行してしまい,5年生存率は,Stageb
50.0パーセントに低下してしまった。したがって,A医師の本件見
落としによって,原告の5年生存率は,45.4パーセント低下したも
のである。
(二)胸腔鏡下肺葉・区域切除術()は,ⅡよりもⅠで実VATSStageStage
施されることが多く,原告は,Ⅱ期で胸腔鏡下肺葉・区域切除Stageb
術()を実際に受けたのであるから,Ⅰ期であれば当然胸VATSStagea
腔鏡下肺葉・区域切除術()を受けていたはずである。したがっVATS
て,本件見落としがなかった場合の術後5年生存率は,一般的な切除術
ではなく胸腔鏡下肺葉・区域切除術()の成績を基準とすべきでVATS
ある。
肺癌診療ガイドライン(乙)(以下「ガイドライン」という)は,B1。
胸腔鏡下肺葉・区域切除術()について,現時点では統計学的にVATS
明らかな優位性が立証されているわけではないが,多くの記述研究から
はその有用性が窺われることも又事実であると評価しており,十分な症
例数を持ったランダム化比較試験が行われていなくても,各施設の報告
等でも5年生存率を認定できる。
(三)岡山赤十字病院(以下「岡山日赤」という)の統計において,胸。
VATSStagea腔鏡下肺葉・区域切除術()は,開胸手術と比べて特にⅠ
期の生存率が極めて良好であり,他の胸腔鏡下手術を行っている全国の
主な施設でも同様の成績であると記載されている。
北海道大学病院からは「病理ⅠA期肺癌に対する胸腔鏡手術」を主,
体とした症例73例(胸腔鏡症例67例,開胸症例6例)の5年生存率
が98.5パーセントであることが報告されている(甲。B4)
(被告の反論)
(一)手術時の肺ガンの病期の進行度によって,予後に差があることは認
めるが,肺ガンの病期と予後については種々の統計があり,原告が主張
する5年生存率は,岡山日赤という一施設における胸腔鏡手術を施行し
た症例の成績に過ぎず,一般性あるいは信頼性に欠ける。
一般には,肺ガンに対する胸腔鏡手術と開胸手術とで,予後,侵襲性,
安全性に有意な差はないとされており,胸腔鏡手術の優位性を指摘する
一部の医療施設における胸腔鏡手術の限られた症例の結果をもとに,予
後を判断することは妥当ではない。
(二)肺ガンは,その進行度によって病期分類(分類)がなされてStage
おり,分類には,①臨床的()分類と②病理学的StageclinicalStage
()分類の2つが存在する。①臨床的分類は,症状pathologicalStageStage
や胸部等の画像所見等に基づいて肺ガンの進行や広がりの程度を判Xp
断して当該判断に基づいて分類したもので,②病理学的分類は,Stage
手術や生検等で得られた組織の病理学的所見に基づいて肺ガンの進行や
広がりの程度を判断して当該判断に基づいて分類したものである。
ガイドライン(乙)は,厚生労働省の研究班によってまとめられたB1
肺ガンの臨床医療のガイドラインであるが,肺ガンの術後の成績に関し
ては,肺癌登録合同委員会の報告(乙)が現状に最も近い報告としてB2
信頼できるものとしている。肺癌登録合同委員会の報告によれば,手術
時の肺ガンの病期がⅠとⅡの場合の術後5年生存率は,以StageStage
下の通りである。
Ⅰの術後5年生存率Stage
臨床的()分類c72パーセントcT1N0M0
c50パーセントT2N0M0
病理学的()分類p79パーセントpT1N0M0
p60パーセントT2N0M0
Ⅱの術後5年生存率Stage
臨床的()分類c47.8パーセントcT1N1M0
c42.5パーセントT2N1M0
病理学的()分類p58.6パーセントpT1N1M0
p41.0パーセントT2N1M0
(三)原告の肺ガンの病期は,平成14年9月に医療センターを受診して
健康診断を受けた時点では,胸部の所見から見て,腫瘍の大きさがXp
1センチメートル前後,遠隔転移の所見はなく,リンパ節転移の所見も
確認されていないから,臨床的に見てc(Ⅰ)であるとT1N0M0Stage
推定される。
他方,術後の診断では,D病院でp(Ⅱ)であると診T2N1M0Stage
断されている。
(四)そうすると,原告の5年生存率は,ガイドラインによれば,医療セ
ンター受診時には72パーセント,手術時には41パーセントであり,
約11ヶ月間で31パーセント低下したことになる。
国立がんセンター中央病院における肺ガンの症例(平成5年~平成1
4年)の術後成績の統計(乙)によれば,Ⅰの5年生存率は7B3Stage
7.4パーセント,Ⅱの5年生存率は,52.3パーセントであStage
る。したがって,国立がんセンター中央病院の統計によれば,原告の5
年生存率は,25.1パーセント低下したことになる。
2争点2(原告の損害の程度)についての当事者の主張
(原告の主張)
(一)逸失利益合計金1184万9229円
()家事労働分金782万9033円1
原告は,家事労働の他,Eで添削業務を継続的に行っていた。
しかし,原告は,術後肺ガンがかなりの割合で再発転移する可能性
があるため,できるだけ免疫力が落ちないように,無理をせずストレ
スを避けるよう健康に細心の注意を払って生活するようになった。一
時的にでも疲れることはよくないので軽い運動すら行わない,インフ
ルエンザ流行期には人の集まる場所に行かない,飲酒はしないなど,
免疫力低下をもたらすことは一切行わないようにしている。
原告は,家事労働については,家族の協力の下,手術前の8割程度
に制限しているので,20パーセントの労働能力喪失が認められる。
平成15年の女子労働者全年齢学歴計平均賃金は,349万030
0円であるから,原告の家事従事者としての逸失利益は,下記のとお
り782万9033円である。
①平成15年9月1日から平成17年6月27日までの逸失利益
万円×(日÷日)×%=万円34903001+300365201271807
②平成17年6月28日以降の家事労働逸失利益
万円×%×=万円3490300209.39356557226
(歳から歳までの年間のライプニッツ係数)5467139.3935
①と②を合計すると782万9033円となる。
()給与分金402万0196円2
原告は,Eで添削業務を継続的に行い,給与を得ていた。原告は,
平成15年9月の手術後から添削業務を休止し,平成16年に添削業
務を再開したが,長時間の添削業務による疲労はストレスとなり,免
疫力が低下するので仕事量を従前より減らさざるを得ない。
平成14年1月1日から同年12月末日までの添削業務で得た給与
収入は71万4007円であり,平成15年1月1日から同年12月
末日までの添削業務による給与収入は62万3054円で,平成16
年1月1日から同年11月末日までの添削業務による給与収入は34
万9182円である。
①平成15年分の減収は,9万0953円である。
万円-万円=万円71400762305490953
②平成16年分の減収は,33万2512円である。
万円-万円÷日×日=33万2512円714007349182335366
③平成17年1月1日から同年6月27日までの減収は,46万5
931円である。
万円-万円÷日×日=46万5931円714007349182335238
④平成17年6月28日以降の減収は,313万0800円である。
(万円-万円÷日×日)×=714007349182335365.259.3935
万円(歳から歳までの年間のライプニッツ係数3130800546713
)9.3935
①ないし④を合計すると,402万0196円となる。
()有職の主婦は,時間的な制約等から専業主婦と比較して家事労働3
が質量ともに劣るのが通常であり,特別な事情がない限り,家事労働
と他の労働を併せて一人前の労働として評価するのが相当とされてい
る。
しかし,本件は,その特別な事情がある場合に該当する。添削業務
は家事の合間に自宅でできる性質の業務であり,原告が添削業務に従
事したことで家事労働への影響が生じたことは全くなく,原告の家事
労働は,専業主婦と比較して質量ともに劣るものでは決してなかった。
このような特別の事情があるので,原告の場合,家事労働分の逸失利
益と添削業務の逸失利益は加算されるべき性質のものである。
(二)慰謝料合計金1200万円
()①原告は,1年後にB医院で健康診断を受診していなければ,完1
全に手遅れとなって死亡したはずであり,被告らは,原告の死亡に
よる損害賠償債務を負うことになっていた。
原告は,日頃から体に気をつけており,できるだけ早期に診断治
療を受けることが健康維持のために必要であると強く自覚していた。
原告は,体のだるさ,易疲労感等体調不良を感じ,その原因を突き
止めて異常があれば治療したいとの思いから医療センターを積極的
に受診した。原告は,健康に気をつけ病気を発見するためにわざわ
ざ有料の健康診査を受診したのに,本件見落としのような医療過誤
に遭ってしまったことについて,原告の無念さは計り知れない。
②原告は,本件見落としがなければ,進行度がⅠ期で手術Stagea
を受けられたはずであるのに,本件見落としのために発見が約1年
近く遅れⅡ期で手術を受けることになったため,術後5年Stageb
.生存率は半減した。Ⅰ期であれば,術後5年生存率は95Stagea
4パーセントであったのであるから,原告は,死について心配する
.ことはなかった。しかし,Ⅱ期では術後5年生存率は50Stageb
0パーセントしかなく,原告は,死に直面して過ごさなければなら
ず,ある意味で死よりもつらいことである。
原告は,再発・転移がないか不安を覚えながら検査を受け,検査
結果を聞きに行くときの何ともいえない気持ち,再発・転移がない
とわかって一瞬はほっとしても次の検査までに間があり,体調に変
化があると再発しているのではないかと不安に駆られ,緊張と怖れ
に苛まれる日々が続く。
原告は,術後5年生存率が半減し,ガン再発・転移の危険性が倍
加したことで,日々ガン再発・転移の恐怖に怯えることになった。
原告の肺ガンは,幸いにも脳転移はなく肺切除術ができたが,1群
までのリンパ節転移が認められたことが判明し,小さいうちには発
見できない転移もあり得る旨告げられ,現在も再発・転移の恐怖に
怯えている。
Ⅰ期で切除できたのであれば,原告にはこのような不安Stagea
はなかったことを考えると,医療過誤による生存率の低下から生じ
たこのような精神的苦痛は,正当に評価して賠償されねばならない。
③原告は,民間療法には発ガンを防止するエビデンスがなくても,
藁にもすがる思いで少しでも効果がありそうに思えるものについて
はいかに高額でも試している。これは,原告のみならず,生死の狭
間にいるガン患者では通常のことで,民間療法の費用を積極損害と
して認定することは無理であっても,民間療法に多額の費用を費や
さざるを得ない精神状態にあることは,慰謝料において十分考慮す
べきである。
④原告は,貴重な時間を訴訟に割きたくなかったが,被告府中市の
担当者が本件について調査中であるという理由で原告に対応せずに
放置したため,原告が裁判を考えていることを伝えた。しかし,被
告府中市は,話合いによる解決を強く要望したので,原告も話合い
による解決を検討することにして,平成16年2月19日から被告
府中市が委任した弁護士と原告との間で被告府中市の責任を認める
前提で協議が始まったが,被告府中市は,平成16年7月,損害が
不明であるため裁判にして欲しい旨述べ,交渉を打ち切った。被告
府中市のかかる対応は,原告を振り回すもので,術後5年の経過あ
るいは原告の死を待っているかの如くであり,交渉の経緯自体が不
誠実である。
被告らは,過誤が明白であり原告に解決の意思があるのに,具体
的な金額の提示をせず,原告は,訴訟による解決を図らざるを得な
くなって,費用と時間と労力の負担が生じていることは,慰謝料を
算定するうえで考慮すべきである。
()原告は,上記(二)()で記載したように,死の危険にさらされて死21
にも匹敵する精神的苦痛を現実に受けている。この精神的苦痛は,死
の結果が発生するか否かにかかわらず,現実の損害として発生してお
り,死の危険にさらされていることから受ける精神的苦痛は,死の前
段階の苦痛であって,死亡慰謝料は死の直前の苦痛に対する慰謝を含
むものであるから,死の危険にさらされていることから受ける精神的
苦痛に対する慰謝料も,死亡慰謝料と同様に認められるべきものであ
る。
判例は,傷害の極限概念として死亡についての慰謝料を認め,死亡
慰謝料を傷害慰謝料と連続的なものと位置付け,死亡慰謝料は,死者
本人において発生するという考え方をとっていることと調和する。
本件においては,上記(二)()に記載した諸事情を勘案することは1
もちろん,本件見落としがなければ術後5年生存率が95.4パーセ
ントと死の可能性をほとんど問題にしなくともよかったのに,過誤が
あったために術後5年生存率が50.0パーセントになったことを考
慮すると,慰謝料は,死亡慰謝料2400万円の半額にあたる120
0万円が相当である。
()被告らの注意義務違反は以下に記載するとおり重大であり,かか3
る事実は,慰謝料額等に反映されるべきである。
①肺ガンは,日本において臓器別ガン死亡原因の第一位とされてい
る重大な疾患であり,日常的に遭遇する機会が高く,進行が早く致
死的で,発見された時点の病期で生存率が大きく異なる疾患である
から,稀な疾患で,進行が遅く,被致死的で発見された病期で生存
率があまり異ならない疾患と比較すると,早期発見・早期治療が有
効で,肺ガンを見落とさないようにする注意義務がより大きく,そ
の注意義務違反は重大である。被告A医師が肺ガンを見落としたこ
とは,重大な過誤である。
②肺ガン検診は,旧厚生省の「がん予防重点健康教育及びがん検診
実施のための指針」に基づき,市町村が実施する事業のひとつであ
る。肺ガン検診に責任を負う市町村である被告府中市が,肺ガンを
見落としたことは,被告府中市の責任を加重するものである。
③原告の肺ガンは,肺野部に存在し,肺野部は胸部で異常発見Xp
が困難な部位ではない。被告A医師の過誤は,極めて初歩的な過誤
である。
④原告が受診したのは,集団検診ではなく,患者の主訴をもとに病
変を発見しようとする個別健診である。本件では,原告は,体調の
異常を訴えており,発見が困難な部位ではないのであるから,被告
A医師が原告の体調不良がどこから来るものか注意して病変を発見
しようという態度で読影していれば,他の疾患でマスクされて肺ガ
ンの発見が困難であった等の事情はなく,原告の肺ガンは十分発見
可能であった。
⑤被告A医師は,平成元年に医学部を卒業し,内科医として10年
以上のキャリアがあったが,通常10年以上のキャリアを有する医
師であれば,かかる異常を発見することができる程度の能力を当然
持っていたはずである。
原告は,被告府中市が開設している施設であることやベテラン医
師であることを信頼しているから医療センターを受診したのであり,
その信頼を裏切った点は,慰謝料算定に影響する事情である。
()札幌高裁平成16年1月16日判決は,型肝炎ウイルスの持続4B
B感染者(キャリア)の慰謝料について500万円を相当としたが,
型肝炎ウイルスの持続感染者(キャリア)が生存に対する深刻な脅威
となり,一生涯解放されることのない不安と苦悩を持ち続けることを
考慮すると,慰謝料500万円は決して高額ではない。
型肝炎ウイルスの持続感染者(キャリア)の約90パーセントはB
沈静化し,約10パーセントが慢性肝炎となり,20年以上経てその
20~30パーセントが肝硬変となる。慢性肝炎と肝硬変から肝ガン
になったものを合わせると,約25パーセントの発癌率と推定できる。
つまり,型肝炎ウイルスの持続感染者(キャリア)の約2.5パーB
セントが約30年以上を経て発ガンする。
型慢性肝炎には,インターフェロン,ラミブジン,アデホビルとB
いう治療薬があるのに対し,肺ガンには特効薬はない。国立がんセン
ター中央病院の肺ガン(~)と肝ガン(~)の治療1993200219902000
成績を比較しても,より新しい肺ガンの方が生存率が低い。本件は,
型肝炎ウイルスの持続感染者以上に生存に対する深刻な脅威が切迫B
しているので,500万円の慰謝料では,到底足りない。
()については,判例上7級から9級相当と認められている。5PTSD
原告は,生存に対する深刻な脅威にさらされ,近い将来起こるかもし
れない死の恐怖に支配されている状態にある。これは,に勝るPTSD
とも劣らない深刻な損害であり,過去の記憶が薄れていくことで
は軽快するが,今後起こる再発,転移,死亡への恐怖は薄れるPTSD
ことはなく,その意味で本件の方がよりも損害は大きい。PTSD
したがって,本件の慰謝料は,7級の慰謝料(1051万円)より
高額となってしかるべきであり,原告が請求する慰謝料1200万円
は,この観点からしても相当である。
(三)小計金2384万9229円
(四)弁護士費用金238万4922円
被告らは,任意の賠償に応ぜず,原告は訴訟提起を余儀なくされた。
本件医療事故と相当因果関係がある弁護士費用は,(三)小計の1割に相
当する238万4922円である。
(五)総計金2623万4151円
(被告の反論)
(一)逸失利益について
()原告は,肺ガンに罹患しており,仮に医療センターで胸部の1Xp
異常所見を指摘し早期に肺ガンと診断して治療が実施されたとしても,
肺ガンの再発,転移の危険性は残る。胸部の所見からリンパ節そXp
の他の臓器への転移の有無について明確に判断することはできず,少
なくとも細胞レベルのリンパ節その他の臓器への転移が画像診断で描
出されるものではないから,リンパ節その他の臓器への転移がないと
はいえない。
したがって,本件見落としと家事労働あるいは添削業務に影響が出
ることとの間に相当因果関係はない。仮に原告が主張するように,で
きるだけ免疫力が落ちないように無理をせずストレスを避けるよう健
康に細心の注意を払って生活するため,家事労働に制約が生じるとい
う影響があるとしても,また,長時間の添削業務による疲労はストレ
スとなり免疫力が低下するので,添削業務の仕事量を従前より減らさ
ざるを得ないという影響があるとしても,それは,原告が肺ガンに罹
患したことによるものであり,肺ガンである以上,平成14年9月に
医療センターを受診した時点で診断して治療したとしても常に再発,
転移の危険性はつきまとう。肺ガンの再発,転移の危険性があること
によって家事労働あるいは添削業務を制約せざるを得ないという影響
があるとしても,手術実施時の肺ガンの病期の進行度が違っているこ
とで,その影響に大きな違いが生じるとは考えられない。
原告の肺ガンの診断が遅れたことによって,原告の労働能力の低下
あるいは就労時間を減少させるといった損害が生じたとは考えられな
い。
()原告の平成15年分の添削業務からの収入の減少については,原2
告が肺ガンの手術を受けた年であるから手術による休業に伴う収入減
少が考えられるが,肺ガンの診断時期を問わず手術は必要であったの
であり,手術のための入院期間や術後の静養期間に大きな違いがある
とは考えられず,手術に伴う休業による収入減少は,本件見落としと
相当因果関係がある損害ではない。
()原告は,家事労働と添削業務の双方について逸失利益があると主3
張しているが,通常は,双方について逸失利益が生じるとは認められ
ない。
(二)慰謝料について
()一般論として,肺ガンの病期が進行した場合には術後の予後が悪1
化するが,術後の予後の悪化を根拠とする慰謝料の算定については明
確な基準がない。本件では,肺ガンのⅠとⅡの術後5年StageStage
生存率を比較した場合に,原告が主張する慰謝料の金額は過大である。
()肺ガンの再発,転移の可能性を排除するための民間療法が存在す2
るようであるが,一般的に効果が確認されていないような民間療法を
行っていることをもって,損害の算定に加味することは相当ではない。
3Xp()被告らは,平成14年9月に原告が健康診査を受けた際の胸部
検査で異常がないと判断したことについて不適切であったことを認め,
原告側と被告側の双方が弁護士を介して損害賠償の交渉を始めたが,
本件では,損害額の算定が困難であることについては,双方に共通の
認識があった。原告は,交渉の当初慰謝料として少なくとも700万
円を請求する旨表明していたが,これが,本件見落としによって肺ガ
ンの診断が遅れたことに基づく損害の全てであるという趣旨ではない
と理解され,終局的な解決のための和解案の提示であるとは考えられ
ない状況であった。そうであれば,訴訟外の交渉を続けるよりは,裁
判で解決する方が速やかで合理的であるということになったのである。
(三)()被告A医師は,胸部の異常所見を判読できず,結果的に肺1Xp
ガンの診断が遅れたが,肺ガンという疾患であるが故に注意義務違反
の程度が重大であるということにはならない。
()地方自治体が開設した健康診断施設であることの故に,担当医師2
の注意義務が加重され,その注意義務違反及び損害賠償責任が重大で
あるということにはならない。
()被告A医師は,胸部で肺野の異常所見を見落としたが,原告3Xp
の異常所見の判読は必ずしも容易ではないのであり,異常所見の部位
が肺野であることをもって,注意義務違反が重大であるということに
はならない。
()医療センターの健康診査は,いわゆる健康診断であって,受診者4
が具体的な身体症状を有していて,その診断,治療を受けるために受
診するものではない。原告は,問診票に体のだるさ等を記載している
が,その症状について診断,治療のために医療センターの健康診査を
受けたわけではない。
原告は,平成14年9月11日,医療センターの健康診査を受けた
際に作成した問診票に不定愁訴を記載したが,咳が出る,痰がからむ,
痰に血が混じるといった項目には丸を付けておらず,特に肺ガンを疑
わせるものではなく,原告の身体症状から肺ガンを疑うことはできな
い。その際に実施した腫瘍マーカーも正常値を示している。
()被告A医師が診療経験10年以上の内科医であることをもって,5
本件における胸部の判読にあたっての注意義務違反が重大であるXp
ということにはならない。
第三当裁判所の判断
一肺ガン切除術後の生存率についての事実認定
甲第3号証,乙第1号証のほか下記()内に記載した証拠及び弁論のBB
全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
1(一)ガンの進行度分類としての分類が,原発巣(),リンパ節TNMT
(,遠隔転移()のそれぞれについて進行度を判定し,総合して治NM)
療方針決定や予後の判定に用いられていることは,当裁判所に顕著である。
,(二)肺ガンは,その進行度によって病期分類(分類)がされておりStage
分類には,①臨床的()分類と②病理学的()StageclinicalStagepathological
分類の2つが存在する。Stage
①臨床的分類は,症状や胸部等の画像所見等に基づいて肺ガStageXp
ンの進行や広がりの程度を判断して当該判断に基づいて分類したもので,
②病理学的分類は,手術や生検等で摘出した臓器の組織を顕微鏡をStage
用いて観察し,その病理学的所見に基づいて肺ガンの進行や広がりの程度
を判断して当該判断に基づいて分類したものである。
臨床的()分類は,胸部やなどの画像をもとにガンの広がcStageXpCT
りを推測したものであるが,ガン細胞のひとつひとつは顕微鏡でしか見え
ないほど小さいもので,小さな転移があっても胸部やなどに現れXpCT
ないことがあるから,100パーセント正確なものではない。他方,病理
学的()分類は,上記のとおり臓器の組織を顕微鏡で観察して病理組pStage
織学的に判定された病期であり,臨床的分類と病理学的分類StageStage
が食い違うことがあるが,病理学的分類が最終的又は確定的な判定Stage
とみるべきものである。
肺ガンの分類は,ⅠからⅣまで4つに分類され,おおStageStageStage
まかにいうと,Ⅰは血行性,リンパ行性いずれの転移もない時期,Stage
Ⅱは血行性転移はないが小範囲のリンパ節転移がある時期,ⅢStageStage
は血行性転移はないが広範囲のリンパ節転移がある時期,Ⅳは既にStage
血行性転移をきたした末期の時期をさし,手術で完全に治る可能性がある
のは,Ⅰ,ⅡとⅢの一部である(甲の頁)StageStageStageB32。
2(一)ガイドライン(年版)は,厚生労働省の研究班によってまとめら2003
れた肺ガンの臨床医療のガイドラインであるが,肺ガンの術後の成績に関
しては,肺癌登録合同委員会の報告(乙)が,日本全国の303施設でB2
1994年に切除された7408例(1999年12月で術後5年が経過
した症例)をもとに術後5年生存率を算定しており,解析規模で世界最大
規模,集積1年という短期間,1994年というが普及した時代でのCT
解析であり,本邦における外科切除成績の現状に最も近い報告と考えられ
るとする(乙の頁,乙の頁)。B1110B2556
Stage(二)肺癌登録合同委員会の報告によれば,手術時の肺ガンの病期が
ⅠとⅡの場合の術後5年生存率は,以下のとおりである。Stage
Ⅰの術後5年生存率(乙の頁)StageB2555
臨床的()分類c715パーセント(2618例)cT1N0M0.
c501パーセント(1646例)T2N0M0.
病理学的()分類p792パーセント(2142例)pT1N0M0.
p601パーセント(1488例)T2N0M0.
Ⅱの術後5年生存率(乙の頁)StageB2555
臨床的()分類c478パーセント(169例)cT1N1M0.
c404パーセント(793例)T2N1M0.
病理学的()分類p586パーセント(261例)pT1N1M0.
p422パーセント(785例)T2N1M0.
3岡山日赤呼吸器外科は,インターネットのホームページに「肺癌に対する
外科治療」という文書を掲示している。そこでは,平成7年7月から平成1
5年12月1日までの間に,289例の肺ガンに対して胸腔鏡下肺葉・区域
切除術()を実施した手術成績(術後5年生存率)を以下のとおり掲VATS
載している(甲の頁)。B317,18
臨床的()Ⅰ91.2パーセントcStagea
Ⅰ82.5パーセントStageb
病理学的()Ⅰ95.4パーセントpStagea
Ⅱ50パーセントStageb
同ホームページには,平成13年に発表された日本全国3043例の肺ガ
ン症例の手術成績として,術後5年生存率が,病理学的()Ⅰで79.pStagea
0パーセント,病理学的()Ⅱで45.0パーセントとの記載がある。pStageb
(甲の頁)B315
Stageそして,岡山日赤の手術成績が,全国平均と比較して特に病理学的
Ⅰで極めて良好なことがわかり,他の胸腔鏡下手術を行っている全国の主a
な施設でも同様の成績であるとの記載がある(甲の頁)。B318
さらに,同ホームページには,胸腔鏡下肺葉・区域切除術()は,VATS
手術時間,術中出血量,術後入院期間,術後合併症発生率,術後疼痛におい
て標準開胸よりも有意に優れていました,以上の結果から胸腔鏡下肺葉・区
域切除術は標準開胸に比較してあらゆる面で低侵襲すなわち『患者さんに優
しい手術』といえます,との記載もある(甲の頁)。B313
4ガイドラインは,治療成績として,胸腔鏡下肺葉・区域切除術()VATS
が標準手術に比較して予後,侵襲性,安全性などの点で同等ないし優れてい
るかどうかに関しては,肯定的な研究は多いものの確定的な結論は出ておら
ず,行うよう勧めるだけの根拠が明確でないと記載している。
また,ガイドライン中には,エビデンスとして,臨床的Ⅰ期の肺ガStage
ンの予後に関する胸腔鏡下肺葉・区域切除術()と標準手術を比較しVATS
た十分な症例数を有したランダム化比較試験は存在しない。しかし,症例数
はやや少ないながらもランダム化比較試験が1つあり,予後は同等とされて
いる。その他に多数のケース・シリーズが存在し,予後は標準開胸と比較し
て同等またはそれ以上とするものが多い。胸腔鏡下肺葉・区域切除術
()の有用性に関して,現時点では統計学的に明らかな優位性が立証VATS
されているわけではないが,多くの記述研究からはその有用性が窺われるこ
ともまた事実である。臨床的Ⅱ期以上の肺ガンに対する胸腔鏡下肺葉Stage
・区域切除術()の研究はほとんどなされていないので,有用なエビVATS
デンスはないとの記載がある(乙の頁)。B1104,105
5外科系臨床雑誌「外科治療」2005年10月号に掲載された論文「肺癌
に対する胸腔鏡下手術の適応と手技」には,胸腔鏡下手術の肺ガンの治療成
績について「多くの施設で開胸手術に劣らない,あるいは優れていると報,
告されているが,これらの多くはランダム化された試験ではない。胸腔鏡下
手術症例と同時期の開胸症例とは背景因子が基本的に一致しない。たとえ一
致したとしても,手技的に容易なために胸腔鏡下手術が選択された症例と,
困難なため開胸手術が選択された症例を単純に比較することはできない。過
去の症例であれば手術のベースが異なることもあり,やはり単純な比較は困
難である。胸腔鏡下手術による肺癌の治療成績が良好であることは納得でき
るものがあるとはいえ,その理由付けや再現性の確認はこれからの問題であ
る。胸腔鏡下手術は高度な技術が必要な標準化されていない手術であり,施
設間の格差が大きいため困難性は高いが,今後ランダム化された前向きの比
較試験による手術成績の検討が期待される」との記載がある(甲の。。B4
頁)418
二争点1(A医師の本件見落としにより原告の5年生存率がどの程度低下した
か)についての判断
1原告の肺ガンの病期は,平成14年9月の医療センターを受診して健康診
断を受けた時点では,胸部の所見から見て,腫瘍の大きさが1センチメXp
ートル前後,遠隔転移の所見はなく,リンパ節転移の所見も確認されていな
いから,臨床的に見るとc(Ⅰ)であろうと推定される点にT1N0M0Stage
ついては,当事者間に争いがない。
他方,平成15年9月1日に右肺下葉の切除術を受けた後の病理学的診断
では,D病院でp(Ⅱ)であると診断されている。T2N1M0Stage
2そうすると,原告の5年生存率は,前記2(二)のガイドラインの全国統計
によれば,医療センター受診時には臨床的()Ⅰ期でcの7cStageaT1N0M0
StagebT2N1M02パーセント(四捨五入,手術時には病理学的Ⅱ期でp)
の42パーセント(四捨五入)であり,本件見落としによって肺ガンの発見
が約11か月間遅れた間に30パーセント低下したことになる。
3原告は,医療センター受診時に肺ガンが発見された場合の手術成績として,
前記一3の岡山日赤における胸腔鏡下肺葉・区域切除術()の術後5年VATS
生存率である病理学的()Ⅰ期の95.4パーセントを採用するようpStagea
主張し,さらに北海道大学病院からは「病理ⅠA期肺癌に対する胸腔鏡手術
を主体とした症例」73例の5年生存率が98.5パーセントであったとの
報告がされているとも指摘している。
そこで検討するに,まず,分類については,上記二1で認定したよStage
うに,原告の肺ガンの病期は,平成14年9月の医療センター受診時には,
手術も生検もなされていないので病理学的の診断は不可能であり,臨Stage
床的の診断しかできない状態であることに照らすと,原告の医療センStage
ター受診時の分類は,臨床的()Ⅰ期であったとしか判定できStagecStagea
ず,病理学的()Ⅰ期を前提として考察することは誤りといわざるをpStagea
得ない(従って,仮に,原告が主張するように岡山日赤における胸腔鏡下。
肺葉・区域切除術()の術後5年生存率を前提として考えるとしても,VATS
医療センター受診時に原告の肺ガンが発見されたとしても,その場合の原告
の5年生存率は,臨床的()Ⅰ期の5年生存率である91.2パーセcStagea
ントであるとしか認定できない。それゆえ,原告は,その主張どおり本件見
落としがなく平成14年9月の医療センター受診時に肺ガンが発見されたと
仮定し,なおかつ岡山日赤の胸腔鏡下肺葉・区域切除術の手術成績を採用し
たとしても,約9パーセントと1割近い死亡率があったと認定せざるを得な
い)。
次に,臨床的()Ⅰ期を前提とした場合における5年生存率についcStagea
てみると,ガイドラインの全国統計が全国の303施設を対象とし症例数が
7408例の肺ガン手術例をもとに算定したものであるのに対し,岡山日赤
の症例数は1施設の成績で症例数も289例にとどまること,岡山日赤のデ
ータは,ホームページに掲載されたものであり,医学論文に発表されたもの
と同等に評価することにはいささか躊躇せざるを得ないこと,胸腔鏡下手術
は高度の技術が必要な標準化されていない手術で施設間の治療成績の格差が
大きいこと,そもそも原告が岡山日赤で肺ガンの胸腔鏡下肺葉・区域切除術
を受けたのではないこと,前記一4及び5で認定したように十分な症例数を
有するランダム化比較試験が存在しないため胸腔鏡下肺葉・区域切除術が標
準開胸手術と比べて予後が優れていると確定的に結論づけることはできない
こと等に照らすと,岡山日赤の手術成績は,一般性あるいは信頼性がガイド
ラインの全国統計と比べて不足しており,判決の基礎として採用することは
できないといわざるを得ない。
4したがって,原告の5年生存率は,二2のガイドラインの記載に基づき,
平成14年9月の医療センター受診時には少なくとも72パーセントであり,
D病院で手術をした時点では42パーセントであったと認定するのが相当で
ある(なお,被告は,国立がんセンター中央病院における統計数値(乙)B3
にも言及しているが,同統計は,分類について病理学的と臨床StageStage
的の別が明らかにされていないから,原告の生存率を検討するに当たStage
っては使用できない。。)
そうすると,争点1については,A医師の本件見落としによって原告の肺
ガンの発見が約11か月間遅れ,摘出手術が遅くなったことによる術後5年
生存率の低下は,30パーセントと認定できる。
三原告の損害についての事実認定
甲第3号証,甲第1号証,第2号証,甲第4号証,乙第1号証,ABCA
第2号証のほか下記()内に記載した証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事
実を認めることができる。
1(一)A医師は,平成15年11月14日付けの「原告への説明内容につい
て」と題する書面(甲)を作成し,同年10月20日に医療センターでB1
原告と面談した内容について被告府中市に報告をした。同書面には「平,
成14年9月25日に判定させていただいた,胸部レントゲンを再度拝見
すると,約1㎝の結節影がありました。私は,にみると確かRetrospective
に存在し,癌とは診断できないまでも,精査をすすめなければならないも
のであったと思うとお話ししました。肋間ではあるが右肺動脈と重なって
おり,気が付かなかったものと思うこと,この時点でみつけていれば,F
【裁判所注:原告のこと】様の受けた精神的,肉体的負担が軽く済んだで
あろうことをお話し申し訳ないと謝罪しました「F様は,D病院の先。」
生からも3㎝ならわかるが,1㎝を健診でみつけるのはなかなか難しいと
言われたことをお話ししてくださいました。私は,医師である以上,患者
様の異常の早期発見はそれがどんなに小さいものでも義務であり,それを
発見できず,F様に負担をかけてしまったことについて再度謝罪しまし
た」との記載がある。。
(二)原告は,その陳述書(甲)において,平成15年10月20日A医C4
師と面会した際のことにつき,1㎝は発見が難しかったのではという原告
の問いに対し,A医師が「そんなことはありません。これは明らかに私の
見落としです」と見落としを認め,何度もお詫びをされました。正直に。
見落としを認め土下座するごとく謝るA医師はすばらしいと思いました。
私の命があってありがとうと言った気持ちを真摯に受け止め,医療向上に
努めてほしいと思いました,と記載している。
。,2(一)府中市健康診査事業等適正運営調査会(以下「調査会」という)は
平成15年12月8日,府中市長に対して,調査会の開催結果についてと
いう書面を提出し,原告から申出があった疑義の概要とA医師の報告書の
説明を受けた後,本件見落としがあった胸部を委員全員で詳細に観察Xp
し意見を交換した結果「異常なしの判定をすることが適正であったと認,
定するには困難があった」と報告した。この調査会の委員は,呼吸器科医
師2名を含む医師が4名と弁護士が1名で構成されていた(甲)。B2
(二)医療センター受診時の胸部(乙)によれば,原告の肺ガンの発生XpA2
部位は,縦隔に存在する心臓や大動脈の陰影に隠れてしまう部位ではなく
肺野であるが,肺野の末梢部に境界鮮明な直径1センチメートルの円形の
陰影(いわゆる硬貨状の病変)が存在しているわけではなく,右肺動脈等
の血管陰影と重なるように肺ガンの陰影が存在している。
したがって,素人が見ても一見明白に肺に直径1センチメートルの腫瘤
が存在すると判断できるわけではない。
3原告は,平成14年9月11日,問診票に,①目がかすんで見えにくい,
⑭顔,足がむくむ,<>めまい,立ちくらみがある,<>右下肢がしびれる,2324
<>頭痛がある,<>疲れやすい,<>肩こり,腰痛がある,<>股関節痛32333435
があるといった項目に○をつけて医療センター受診時に提出した。
他方,原告は,9咳が出る,たんがからむ,ゼイゼイする,たんに血10
が混じったことがある,動悸,息切れがするといった呼吸器の症状を示11
す項目には○をつけなかった。(乙)A1
4(一)肺は,解剖学的には,右肺が上葉,中葉,下葉の3つ,左肺が上葉と
下葉の二つに分かれている。肺ガンに対する標準的な根治手術は,がんが
発生した肺葉ごと切除し,その周囲のリンパ節を郭清するのが一般的であ
る(甲の頁)。B32
(二)原告は,手術時には肺ガンがⅡまで進行していたが,受けたStageb
手術の内容は,右肺下葉切除術である。そうすると仮に,原告が医療セン
ターを受診した時点で肺ガンが発見されたとし,その場合の病期が病理学
的()Ⅰであったと仮定しても,その際に受ける手術の内容が,右pStagea
肺下葉切除ではなく,より小範囲の下葉の一部切除にとどまったと認める
に足りる証拠はない。
したがって,原告は,平成14年9月の医療センター受診時に本件見落
としがなく肺ガンが発見されていたとしても,手術時期は早まるものの,
受けた手術の内容は平成15年9月に受けた手術と同一内容になり,肺ガ
ンの発見が約11か月間遅れたことによって肺の切除範囲が広がったこと
はないと認定できる。
5肺ガン切除術後の再発については,術後5年を経過した後に生ずることは
ほとんどなく,その間に再発がなければガンは完治したものとみなすことが
できるし,少なくとも,上記期間経過後の再発事例がきわめて少ないことか
らして,当初手術時の分類によって術後5年経過後の再発の可能性にStage
有意な差異は認められないというのが一般的な知見であり,弁論の全趣旨か
らすると,原告もこのことを当然の前提としているものと認めることができ
る。
四争点2(原告の損害の程度)についての判断
1原告の逸失利益について
(一)まず,肺の切除術自体による損害の有無を検討するに,前記三4(二)
で認定したように,本件見落としがあっても原告の肺の切除範囲は広がっ
ておらず,平成14年9月の医療センター受診時に原告の肺ガンが発見さ
れたと仮定しても,今回原告が受けたのと同一内容の手術を受けたと認め
られることに照らすと,仮に現在原告に何らかの身体症状が存在したとし
ても,肺の切除範囲が異ならない以上,それらの症状は,平成14年9月
の医療センター受診時に肺ガンが発見されて速やかに手術を受けた場合で
あっても出現したものと認めるのが相当である。
したがって,肺の切除術によって原告に現在何らかの身体症状が存在し
たとしても,それは,本件見落としとは相当因果関係が認められないこと
になる。
(二)次に,5年生存率の低下に伴う不安等により何らかの経済的損失が生
じたか否かを検討する。
一般に,ガンの再発・転移は出現するか出現しないかのいずれかであり
その中間はなく,いかに確率的には低くとも特定の個人についてガンの再
発・転移が出現した場合には,多くは死亡という結果を免れない結果とな
る。そうすると,結局,5年生存率が100パーセントでない限りガンの
再発・転移による死の不安からは逃れられないということになり,たとえ
5年生存率が99パーセントであっても,それは死亡率が1パーセントで
あることを意味するのであるから,上記三5のとおり術後5年経過してガ
ンが完治したとみなされるまでの間は,やはり程度の差こそあれ死の不安
からは逃れられないというのが,通常のガン患者の心情であると考えられ
る。
その上,本件では,前記二5で認定したように,原告が平成14年9月
に医療センターを受診した時点でガンが発見されて適切な手術がされてい
たとしても,5年生存率は72パーセントであり,死亡率は28パーセン
トに達していると認定できるのである。
原告は,平成15年8月11日にC病院で検査を受け,3センチメCT
ートルくらいの腫瘍があるので,ガンとは断定できないが早期に手術を受
けるよう告げられた際に,気管支鏡検査の予約を取るように勧められたが
同病院では翌週まで予約が入らないと聞き,ガンかも知れないとの不安に
より翌週まで検査ができないことに耐えきれず取り乱し,夫の知人の医学
部教授に連絡を取りD病院の医師を紹介してもらったことが認められると
ころ(甲の3頁,このことや弁論の全趣旨から窺われる原告の性格かC4)
らすると,術後5年間の死亡率が28パーセントにとどまったとしても,
原告は,ガンの再発とそれによる死亡についてかなりの程度の不安や恐怖
を感ずることを免れず,もはやガンが発見される前と同様に毎日を過ごす
ことはできなかったと認めるのが相当である。
したがって,原告は,平成14年9月の医療センター受診時に本件見落
としがなく肺ガンが発見され,速やかに適切な手術を受けていたとしても,
かなりの程度の不安や恐怖を感じながら毎日の生活を過ごさざるを得なか
ったと認められるから,仮に原告が,現在,ガンの再発・転移を防ぐため
に家事や添削業務を制限していたとしても,かかる制限は,本件見落とし
がなく,早期に適切な手術を受けていたとしても,やはり死の不安や恐怖
を免れるために行っていたものと認められ,本件見落としとの間には相当
因果関係が認められないことになる。
(三)以上によると,原告が現に受けた手術自体からはもとより,5年生存
率の低下による不安等によっても,原告に経済的損失が生じたとは認めら
れず,原告に逸失利益が生じたとは認められない。
なお,逸失利益に関する原告の主張には,添削業務に費やした時間だけ
家事労働に費やすことができる時間が減少しているにもかかわらず家事労
働による逸失利益と添削業務による逸失利益の両方を請求していることや,
術後5年経過して再発がない場合には,前記三5のとおり,少なくともガ
ンの再発の危険について当初ののいかんによって有意な差異があるStage
とは認められないにもかかわらず,その期間を超えて13年分の逸失利益
を請求していることなどの疑問点が含まれているが,上記の検討によると,
これらの疑問点を検討するまでもないこととなる。
2原告の精神的損害について
(一)前記二2,三5及び四1(二)で認定説示したところからすると,本件
見落としによって原告に生じた精神的損害は,本件見落としがなく早期に
ガンが発見され速やかに手術がされた場合に比較して,術後5年生存率が
低下してガンの再発による死の危険が高まったことに伴い,その不安や恐
怖もまた高まったことによる精神的苦痛を内容とするものと認められる。
このような精神的苦痛に対する慰謝料をどのように算定すべきかについ
ては,これまでのところ拠るべき基準等も見当たらず,困難な問題といわ
ざるを得ないところ,原告は,この点について準拠すべき事項や増額すべ
き事項を主張しているので,まず,(二)及び(三)において,原告のこれら
の主張を検討した上,(四)において,当裁判所の判断を示すこととする。
(二)原告が準拠すべきであるとする事項について
()まず,原告は,死亡慰謝料を基準として5年生存率が半減したこと1
から死亡慰謝料の半額をこの場合の損害額として認めるべきであると主
張するが,原告の5年生存率は,本件見落としによって半減したとは認
められず,30パーセント低下したにとどまることは,前記二2のとお
りである。
また,死に対する不安や恐怖による精神的苦痛は,それ自体無視し難
いものであることはいうまでもないが,死亡による精神的苦痛とは質的
に異なるものであるから,前者に対する慰謝料を算定するに当たって,
後者に対する慰謝料額に死亡の可能性の高まった割合を乗ずるとの考え
方は,両者の質的差異を捨象するものといわざるを得ず,到底採用でき
ない。
したがって,原告の上記主張は採用できず,死亡慰謝料の額は精神的
苦痛に対する慰謝料額の上限を画するものとして参酌するにとどめるべ
きである。
()次に,原告は,B型肝炎の持続感染者(キャリア)の慰謝料につい2
て500万円を認めた札幌高裁の判決との対比において,本件では,原
告の精神的苦痛はB型肝炎の持続感染者(キャリア)を上回ると主張す
る。
しかし,同判決は,B型肝炎の持続感染者(キャリア)は,そのこと
自体が生存に対する深刻な脅威となり,一生涯解放されることがない不
安と苦悩を持ち続けることを理由として500万円という慰謝料額を認
めたものであるところ,前記三5で認定説示したとおり,術後5年経過
して再発がない場合には原告の肺ガンは完治したものとみなされ,少な
くともその後はより早期にガンが発見された場合と比較してもガンの再
発の可能性に有意な差異は認められなくなるのであるから,術後5年経
過以降も原告が死の不安や恐怖を抱くとしても,それは本件見落としに
よって生じたものとは認め難く,本件見落としによって生じたと認めら
れる不安や恐怖は術後5年間のものに限定されると認められる。そうす
ると,原告の慰謝料額は,上記札幌高裁の事案を上回るものとは認めら
れず,むしろ,上記金額はそのような趣旨で参考とすべきものとなる。
また原告は,B型肝炎の持続感染者(キャリア)が肝ガンを発症する
確率が約2.5パーセントであることを理由として原告の方が脅威が深
刻であると主張するが,死因に限定すると,B型肝炎の持続感染者(キ
ャリア)は肝ガンを発症して死亡するだけではなく,むしろ肝ガンを発
症するまでに至らなくとも肝硬変によって死亡する症例が多いことは,
公知の事実であり,原告の主張はB型肝炎の持続感染者(キャリア)の
死亡率を不当に低く評価している点で採用できない(上記札幌高裁の判
決は,集団訴訟の事案に対するものであり,多数の一審原告らに一律の
慰謝料額を認定したものであるという特殊性を無視できない。。)
()さらに,原告は,との対比において慰謝料額を定めるべきで3PTSD
あると主張する。
しかし,について,原告と同様の状況下に多額の慰謝料を肯定PTSD
することが実務上確立しているとは認め難く,むしろ相当低額の慰謝料
を認めるにとどまることも多いことからすると,仮にこれに準拠したと
しても,原告主張のような多額の慰謝料を認めることにはならないし,
原告の受けている精神的苦痛とのそれとの間に共通性があるか否PTSD
かも明らかではないから,原告の上記主張も採用できない。
(三)次に,原告が慰謝料を増額すべき事由として,前記争点2(原告の主
張)(二)()及び(二)()において主張する点について順次検討する。13
()原告は肺ガンの見落としが重大な過誤であると主張するが,悪性腫1
瘍全てについて,一般的にいうと放置すれば致死的であり,発見された
時点の病期によって生存率が大きく異なり,早期発見,早期治療が有効
であるということが当てはまる。悪性腫瘍の中には,胃ガンや肝ガンな
ど患者数が相当多いものが肺ガン以外にもいくつも存在する。したがっ
て,肺ガンを見落とさないようにする注意義務違反が特に重大であると
はいえない。
()原告は被告が肺ガン検診に責任を負うことや健診の主体が公立病院2
であることを指摘しているが,地方自治体が旧厚生省の指針によって肺
ガン検診をする義務を負うとしても,それは行政上の義務にすぎず,公
立病院の医療過誤がそれ自体で被告の民事上の損害賠償責任を加重する
ものではないのと同様に,地方自治体が肺ガンを見落としたことが民法
上の責任を加重することとは結びつかない。
()原告はA医師に初歩的過誤があったと主張するが,前記三1及び23
で認定したように,A医師が本件見落としをしたことは争いがないもの,
原告が平成14年9月に医療センターを受診した時点の胸部の右肺Xp
の異常陰影が,誰もが容易に発見できたとまでは必ずしも言い切れない
ことに照らすと,A医師の本件見落としが極めて初歩的な過誤であると
はいえない。
()原告は,平成14年9月の医療センターの受診が個別健診であって4
集団健診ではないと指摘しているが,個別健診はあくまでも健康診断で
あり,医療センターの医師側の注意義務の内容を,明確な症状を訴えて
その治療を求めて医療機関を受診した場合と同一に考えることはできな
いし,前記三3で認定したように,原告が医療センター受診時に提出し
た問診票によれば,呼吸器症状は全く訴えておらず,丸が付されている
ものを総合すると不定愁訴というほかないものである。
したがって,A医師に,特に胸部を詳細に観察する義務を課す前Xp
提を欠いている。
()原告は民間療法に多額の費用を支出したと主張するところ,ガン患5
者が藁にもすがる思いで効果が不明な民間療法に頼ることもしばしばあ
るが,前記認定したように本件見落としがなくとも原告には28パーセ
ントの死亡率があったことに照らすと,原告は,本件見落としがなくと
も民間療法に頼ったことが推認され,本件見落としとの間に相当因果関
係が認められないから,慰謝料の増額要因としても考慮できない。
()原告は本訴提起前の被告府中市の交渉態度が不誠実であったと主張6
するところ,被告は,A医師に過失があったことは争っておらず,しか
も弁論の全趣旨からすると原告に全く損害がないとも考えていなかった
と認められるのであるから,自ら相当と考える金額の提示を行うのが本
来のあり方であるが,本件のように,原告が,未だガンの再発がない段
階でガンの発見が遅れたことを理由として損害賠償請求をした事案の裁
判例は見当たらず,訴訟外の和解例も乏しいと推認されることに照らす
と,被告府中市が具体的な金額を提示し得なかったことにも無理からぬ
面があり,この点をとらえて不誠実な交渉態度であるとまでは認定でき
ない。
()以上判断したように,原告が主張する前記争点2(原告の主張)(二)7
()①,③,④及び()の慰謝料の増額要因については理由がない。13
(四)慰謝料額についての当裁判所の判断
以上のとおり,慰謝料算定に当たっての原告の主張はいずれも採用でき
ず,この点について拠るべき明確な基準等も見当たらないといわざるを得
ないが,原告の抱いている死への不安や恐怖は,本件見落としがなくても
生じていたものであって,本件見落としによってその程度が高まったとい
うものであり,しかもその程度が高まっていると評価すべき期間が現に手
術を受けた平成15年9月から5年間に限定されること,このような原告
の精神的苦痛と類似した面を有しかつその苦痛の程度が高いと認められる
事案について,上記四2(二)()のとおり500万円の慰謝料を相当とし2
た先例があることのほか,前記三1で認定したとおり,被告Aが原告に対
して謝罪していることなど本件に現れた一切に事情に照らすと,原告の精
神的損害に対する慰謝料は,金400万円と評価するのが相当である。
なお,上記の慰謝料は,既に説示したとおり,現在原告が抱いている死
に対する不安や恐怖に対するものにとどまるのであるから,仮に将来不幸
にして原告に肺ガンが再発し,死亡の結果が生じた場合には,その死亡の
結果と本件見落としとの因果関係が認められる限り,改めて被告らに損害
賠償義務が生ずることはいうまでもない。もっとも,既に認定説示したと
おり,本件見落としがなく当初の健診時にガンが発見され手術がされたと
しても,原告にガンが再発して死亡に至る可能性が相当程度存在したので
あるから,仮に原告がガンの再発によって死亡した後に損害賠償請求がさ
れたとしても,死亡と本件見落としとの間の相当因果関係が認められない
可能性もまたかなりの程度に達するといわざるを得ない。このように死亡
の結果が生じても,その損害の賠償が得られない可能性が高いことから,
そのことを考慮して本訴における慰謝料額を増額すべきではないかとの考
え方が生じないでもない。しかし,前記認定のとおり,肺ガン手術後の生
存率は早期にガンが発見されるほど高いのであるから,本件見落としと死
亡自体との因果関係が認められないとしても,本件見落としがなく,より
早期にガンが発見されて手術が行われていれば,現に死亡した時点におい
てはなお生存していた相当程度の可能性があると認められる余地は十分に
あり,その限度で損害の賠償を受けることは可能であるから(最判平成1
2年9月22日民集54巻7号2574頁参照,本件における慰謝料の)
算定に当たり,あえて将来死亡の結果が生じた場合における訴えの帰趨を
考慮する必要はない。
3弁護士費用及び遅延損害金の起算点
本件見落としと相当因果関係を認めることができる弁護士費用は,事案の
難易等を考慮すると,金50万円が相当である。
被告A医師の本件見落としという不法行為は,平成14年9月25日に原
告に検診結果を説明した際になされているから,被告らの損害賠償債務は同
日から遅滞に陥ることとなる(客観的には,この時点でガンが発見されない
まま手遅れとなることなどを含めて原告の死の可能性が高まり,それに応じ
た損害が発生したものの,その約1年後の手術によって原告の損害が上記認
定の程度にまで減少したこととなる。。)
五以上によれば,原告の本訴請求は,450万円の支払と不法行為の日である
平成14年9月25日から支払済みまで民法所定年5分の割合による損害金の
支払いを求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余の請求につい
ては理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法6
4条本文,65条1項但書,61条をそれぞれ適用し,仮執行宣言につき同法
259条1項を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第34部
裁判長裁判官藤山雅行
裁判官金光秀明
裁判官萩原孝基

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