弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告大学は,原告に対し,金100万円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みま
で年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,原告に生じた費用の2分の1と被告大学に生じた費用を合算し,その9を原
告のその1を被告大学の負担としまた原告に生じたその余の費用と被告学長に生じた,,,
費用を原告の負担とする。
4この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告学長が,原告に対し,平成13年2月8日付けでした3か月間停職するとの懲戒処分を
取り消す。
2被告大学は原告に対し金1000万円及びこれに対する平成13年2月9日から支払済みま,,
で年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
被告学長は同大学大学院教授である原告に対し原告が担当する教育方法学特論(以下,,
本件ゼミという)の科目等履修生であったAと平成11年5月18日飲食をしその後同人「」。,
をタクシーで自宅まで送り届けるまでの間に,同人に対し,性的な発言をしたり,身体に
,「」触ったりキスをするなどのセクシュアル・ハラスメント行為(以下本件セクハラ行為
という)をしたとして同13年2月8日付けで停職3月の懲戒処分をした(以下本件懲戒処。,「
分」という。)。また,被告大学は,原告に対し,本件懲戒処分執行後も,約3年間にわた
り教育活動の停止及び教授会への出席等大学運営への参加を停止する措置をとった(以下,
本件停止措置という)本件は原告が本件セクハラ行為をしておらず本件懲戒「」。。,,,
処分には手続的にも実体的にも違法があり,また,本件停止措置は原告の教授の自由及び
学校教育法上の大学教授の権利を合理的理由なく侵害する違法処分であり,原告は本件懲
戒処分及び本件停止措置により精神的損害を被ったと主張して,被告学長に対し,本件懲
戒処分の取消しを求め,また,被告大学に対し,国家賠償法1条1項に基づき慰謝料1000万
円及びこれに対する平成13年2月9日(本件懲戒処分告知日の翌日)から支払済みまでの間の
遅延損害金の支払を求めた事案である。
1争いのない事実等(証拠により認定した事実は,当該証拠を文末の括弧内に記載した。
)
(1)当事者
ア被告大学は,平成16年4月1日,国立大学法人法に基づき,国立大学Z大学及び同大学
院を設置・運営することを目的として設立された国立大学法人である。被告大学は,平成
16年4月1日当時,現に国が有する権利義務のうち同大学が行う業務に関するものを承継し
た(なお本件懲戒処分及び本件停止措置はいずれも被告大学が国立大学法人となる以前,,
。,,。。の行為である以下特に断らない限り被告大学とは国立大学Z大学を含んでいる)
イ原告
原告は昭和○年○月○日生まれであり,同46年3月宮城教育大学を卒業後,同53年3月東
京大学大学院教育学研究科博士課程を単位取得満期退学し同年4月同大学教育学部助手を,
経て,同55年4月被告大学文教育学部専任講師に採用され,同58年4月同学部助教授に,平
成4年1月同学部教授にそれぞれ昇進し,同10年4月以降は同大学大学院人間文化研究科(以
下「人文研究科」という。)教授をしている(甲99)。
ウA
Aは大韓民国(以下韓国という)からの留学生でありY大学で修士課程を終えた,「」。,
後,平成9年4月から同11年3月までの間,被告大学のB助教授を指導教官とする研究生とし
て人文研究科に在籍し同年4月以降本件ゼミ被告大学大学院教育社会学演習同教育,,,,
人間学特論の科目等履修生となった(甲4,18【6頁,乙27,弁論の全趣旨)。】
(2)Aが本件ゼミを受講するまでの経緯
アAは平成11年3月上旬指導教官の第一希望を文教育学部長C(以下C学部長という,,「」
。,,,。)第二希望を原告として被告大学の同年度博士課程を受験したが不合格となった
人文研究科における博士課程入試のうち,受験生の論文を読んだ上で行う口述試験の試験
官には,可能な限り受験生が希望する指導教官を配置することとされているところ,平成
11年度の原告の口述試験の試験官はC学部長,原告及び文教育学部教授D(以下「D教授」と
いう。)であった。(甲4,93【9ないし11頁】)
イAは,平成11年3月15日ころ,被告大学大学院の翌年度の博士課程を再受験するために
必要な研究・指導を受ける目的で,原告に科目等履修生としての受け入れを手紙で依頼し
,原告はこれを承諾した。そこで,Aは,平成11年4月から,原告が担当する本件ゼミの科
目等履修生になり,本件ゼミを受講するとともに,原告担当の文教育学部の授業科目であ
る教育方法学概論も聴講するようになったまたAはC学部長の教育人間学特論及びD教。,,
授の教育社会学演習についても科目等履修生として登録し受講した(甲437乙7弁,。,,,
論の全趣旨)
(3)Aが本件ゼミを受講していた際の出来事
ア原告は平成11年5月18日本件ゼミ終了後A及び同ゼミ員であったEを誘って同日,,,,
午後5時30分ころから被告大学近くの寿司屋α及びスナックβで飲食し同日午,「」「」,
後9時ころ,スナック「β」を出た。
その後,原告とAは,営団地下鉄丸ノ内線γ駅でEと別れたところ,原告は,同駅ないし
δ駅方面行きの電車内において,Aに対し更に30分位つきあうように誘った。原告は,Aが
原告の誘いを受け入れたことから,γ駅の次の駅であるε駅で下車し,同駅からタクシー
に乗車して年に5,6度利用している千代田区ζ所在のηホテルに向かった。原告は,同日
午後9時30分ころηホテルに到着しAとともに同ホテル○階θラウンジ(以下本件ラ,「」「
ウンジ」という。)において酒(グランマルニエ)を飲んだ。原告は,ηホテルを出ると,A
とともにタクシーに乗りAの自宅マンションがある北区ιまで乗車し一緒に下車した後,,
,Aと別れ千葉市にある自宅に帰宅した。なお,原告は,Aを自宅へ送る途中,別のホテル
(κ)に立ち寄り,空室の有無を確認したが,満室で部屋を取ることができなかった。(甲1
0,35【10頁,40,乙26,27,弁論の全趣旨)】
イその後,Aは,平成11年9月21日までの間,本件ゼミに出席していたが,同月27日,原
告に対し,今までの指導へのお礼等を書いた手紙を送り(以下「本件手紙」という。),原
告の本件ゼミの履修及び科目の聴講を中止した。本件手紙には以下のような記載があった
。(甲4,48,73,弁論の全趣旨)
「拝啓
突然で失禮とは存じますが,個人の事情で学校をやめることになりました。短い間でし
たが,先生のご指導,ありがとうございました。しばらくの間,韓国へもどる予定です。
それでは,おかわりもなくお暮らしの程祈り上げます。略儀ながらご挨拶まで。敬具」
ウ本件ゼミ受講中止後の経過
Aは本件ゼミ受講を中止した後もビザの関係もありC学部長及びD教授の科目の聴講を,,
継続したが,平成12年度の被告大学の博士課程の受験を断念し,同11年10月から,東京大
学大学院でF教授のゼミを聴講するようになった(甲20【12,13頁,弁論の全趣旨)。】
(4)教育公務員特例法(以下教特法という)の規定及び被告大学におけるセクシュア「」。
ル・ハラスメント防止に関する指針(以下「セクハラ防止指針」という。)
ア国立大学の教授等教育公務員に対する懲戒処分は,①評議会の審査を経て,任命権者
が行い(教特法9条1項,10条),②評議会が審査を行うに当たっては,被審査人に対し,審
査の事由を記載した説明書(以下「審査説明書」という。)を交付し(同法9条2項,4条2項)
,③被審査人が請求した場合には,口頭又は書面で陳述の機会を与えなければならないと
されている(同法9条2項,4条3項)。
イ被告大学では平成11年2月23日学生教職員等の人権侵害の発生防止と発生した人,,,
権問題の解決に当たるため,被告大学人権憲章を定め,その施行機関として人権委員会を
設置し,人権問題に対処するため指針を策定するなどの措置を講じている。また,被告大
学では平成11年2月23日セクハラ防止指針を定め処分手続等について概略次のと,,,,,
おり定めた。すなわち,セクハラがあったときの救済措置として,相談窓口の設置及び相
談員の配置防止対策委員会を設置して自主的解決苦情処理のための支援を行うこと(同,,
指針第4),学長は,セクハラ救済の申出があった場合には,防止対策委員会の下にセクシ
ュアル・ハラスメント調査委員会(以下「調査委員会」という。)を設置し,防止対策委員
会は,調査委員会の調査結果を受けて,人権委員会に対して調査結果を報告するとともに
必要に応じて講ずべき措置を提言すること(同指針第5)学長はセクハラの事実が明らか,,
になった場合には必要な措置を講ずること(同指針第6)等が規定されている。(乙3ないし5
)
(5)Aがセクハラ行為について救済を申し出た経緯
アAは,平成11年9月22日,B助教授に対し,原告と同年5月18日ηホテルに行った際,セ
クハラ行為を受けたことを話したこれを受けてC学部長とB助教授は平成11年10月6日。,,
Aの事情聴取をしたまたC学部長及びB助教授は平成11年10月13日被告大学大学院,。,,,
のG研究科長とともに,Aから再度事情聴取をした。(甲78【13ないし17頁,84,弁論の全】
趣旨)
イAは,平成11年10月27日,被告大学のセクハラ相談員である人文研究科教授H(以下「H
教授」という。)及びB助教授に対して,原告によるセクハラ行為についての救済を申し立
てたH教授及びB助教授は平成11年11月9日原告から事情を聞いた上これを防止対策。,,,
委員会に報告した。(甲6,21,78【18ないし20頁,84)】
(6)本件懲戒処分に至る経緯
ア防止対策委員会は平成11年11月12日Aの原告についてのセクハラ相談の概要に関し,,
,,,,。H教授から報告を受け調査が必要と判断し同月22日人権委員会にその旨報告した
被告学長は,人権委員会の報告を受けて防止対策委員会の下に調査委員会を設置すること
を決定し,調査委員会委員長には互選により生活科学部教授I(以下「I教授」という。)が
選出された。調査委員会は,以下のとおり,A,原告ら関係者の事情聴取等を行った。(甲
4,6,乙7,31,弁論の全趣旨)
(ア)平成11年11月29日Aと面接,調査開始の了解を得た。
(イ)同年12月10日Aに対する調査実施(甲7)
(ウ)同12年1月19日原告に対する調査実施(甲22)
(エ)同年2月1日本件ゼミ員Jに対する調査実施(甲86)
(オ)同月14日原告に対する再調査実施(甲23)
(カ)同月20日Aに対する電話による再調査実施(甲8,乙19)
(キ)同月21日Aに対する調査実施(甲9,乙20)
調査委員会は,上記調査結果を防止対策委員会に報告し,これを受けて,防止対策委員
会はA申出の原告によるセクハラ行為があったと判断し平成12年3月8日人権委員会に,,,
その旨報告した。(甲4,乙7,31,弁論の全趣旨)
イ人権委員会は,防止対策委員会の報告を受けて,被告学長に対し,原告を懲戒処分に
付すべきである旨報告した。被告学長は,人権委員会からの報告に基づき,平成12年5月2
4日原告を懲戒処分に付すことが適当か否かについて評議会に諮った評議会は教特法,。,
に基づく審査に付すことを決定し,事実関係の調査,審査説明書案の作成のため,評議会
の下に被告学長,I教授ら12人の委員で構成される評議会特別調査委員会(以下「特別調査
委員会」という。)を設置した。(甲4,乙30,31,証人K【1頁,弁論の全趣旨)】
ウ評議会議長である被告学長は,平成12年5月24日,Aに対してセクハラ行為をしたこと
について原告を減給(6月,俸給の月額10分の1)の懲戒処分に付すことが適当か否かの審査
を行うため,原告に対して審査説明書を交付した(以下「本件審査説明書」という。)。原
告は平成12年5月25日評議会に対し口頭で陳述する機会を与えるよう請求した評議,,,。
会は,原告に対し,口頭陳述の機会を与え,その結果,原告は,平成12年6月7日,評議会
。,「」。において口頭陳述を行った原告代理人新美隆同藤沢抱一(以下原告代理人という
)は平成12年6月7日被告学長ないし評議会に対し原告代理人による口頭陳述の機会を,,,
設けるよう要望したが,これは認められなかった。(甲2,25,27,60,61,弁論の全趣旨
)
エAは,平成12年5月26日,被告大学庶務課長L(以下「L庶務課長」という。)から本件審
査説明書の内容について説明を受けたが,処分は経済的制裁であり軽すぎるとの不服を述
べたまたL庶務課長は平成12年5月30日Aに対し本件審査説明書調査委員会報告。,,,,,
書等を見せたAは平成12年6月15日及び16日I教授に対し電子メールで原告から受け。,,,
たとされるセクハラ行為について新たな申出をした(甲411ないし131931頁弁論。,,【】,
の全趣旨)。
オ特別調査委員会は前記エのとおりAから本件審査説明書に記載のないセクハラ行為,,
の申出を受けて,更に実地調査,関係者からの事情聴取を行った(甲15,16,30,乙16,2
1,22,30ないし33,証人K【1頁,弁論の全趣旨)。】
また評議会は平成12年6月22日付けで原告に対し被告大学の教育環境の保全のた,,,,
め,処分を決定するまでの間,すべての教育活動の停止及び大学運営への参加停止を決定
した(乙13)。
カ評議会議長である被告学長は,特別調査委員会の報告を受けて,平成12年12月27日,
Aに対するセクハラ行為について原告を停職3月の懲戒処分に付すことが適当か否かの審査
,,,「」を行うため原告に対して再審査説明書を交付した(甲3乙8以下本件再審査説明書
という)原告及び原告代理人は平成13年1月9日評議会に対し口頭で陳述する機会。。,,,
を与えるよう請求をし,評議会はこれを認めた。そこで,原告及び原告代理人は,平成13
年1月25日,評議会において,口頭ないし書面による陳述を行った(甲31,32,乙9)。
(7)本件懲戒処分
被告学長は,国家公務員法82条1項1号,3号に基づき,平成13年2月8日付けでAに対する
セクハラ行為について原告を同月9日から停職3月とする懲戒処分をした(本件懲戒処分)。
原告は翌9日本件懲戒処分の告知を受け処分説明書(甲1以下本件処分説明書と,,,,「」
いう)を交付された本件懲戒処分の理由は概要原告が平成11年5月18日Aに対し。。,,,,
自分が人文研究科博士後期課程の入試においてAを不合格と判断した旨明言し翌年度の,,
合格に期待を持たせる発言を行うなど,大学における教員と学生との権力関係を利用し,
飲食店タクシー内Aの自宅付近においてわいせつな言動強制わいせつ行為を行うな,,,,
どAの意思に反した性的な侵害行為を行い,もってAに多大な精神的・肉体的苦痛を与え,
Aの人格及び個人の尊厳を著しく傷つけた上Aの学習・研究環境を著しく悪化させAの被,,
告大学大学院受験を断念させるなどし,国家公務員としての官職の信用を傷つけ,国家公
務員として,また,教育者として自覚と責任に欠けるというものであった。(甲1,乙10,
弁論の全趣旨)
(8)審査請求
原告は平成13年3月26日付けで人事院総裁に対し本件懲戒処分の審査請求を行った,,,
(同年4月19日受理)が,人事院は,同15年6月26日付けで本件懲戒処分を承認するとの判定
をし同決定は同年7月3日原告に送付された原告は平成15年9月11日本件懲戒処分,,。,,
の取消等を求めて本件訴えを提起した。(甲4,弁論の全趣旨)
(9)本件懲戒処分後の事情
被告大学評議会は本件懲戒処分の執行が終了した平成13年5月10日付けで原告に対し,,
,当分の間,すべての教育活動の停止及び被告大学運営への参加停止を命じる本件停止措
置を決定した。被告大学は,平成15年11月26日開催の評議会において,同16年4月1日以降
,原告に対する本件停止措置を解除する旨決定した。原告は,平成16年4月1日以降,被告
大学文教育学部人間社会科学科において教育方法学演習を,被告大学大学院人間文化研究
科博士前期課程発達社会科学専攻において教育方法学演習をそれぞれ担当し,教授会への
出席も制限されなくなった。(甲5,弁論の全趣旨)
2争点
(1)本件懲戒処分には手続的な違法があるか。
(2)本件懲戒処分には実体的な違法があるか(本件セクハラの存否)。
(3)本件停止措置は違法か。
(4)本件懲戒処分ないし本件停止措置に違法が認められる場合の損害額は幾らか。
3争点に対する当事者の主張
(1)争点(1)(本件懲戒処分の手続的違法性)について
【原告】
ア教特法所定の事前審査手続については,合理的客観的な適正手続が当然要請されると
ころ,かかる適正手続の基準を解釈する際には,行政手続法所定の聴聞に関する規定が準
用されるべきである。そうだとすると,教特法所定の事前審査手続についても,代理人選
任権の保障(行政手続法16条)文書等閲覧権の保障(同法18条1項24条)聴聞主宰者の公,,,
正確保等(同法19条,20条)が図られるべきである。ところが,被告大学評議会は,①本件
審査説明書について原告代理人による陳述を認めず(弁護士を代理人として付けることの,
拒否の違法)②原告に対し本件審査説明書ないし本件再審査説明書の事実を認定した資,,
料の開示を一切認めず,実質的な反論の機会を奪い(証拠資料不開示の違法),③本来審査
のための機関であるべき評議会が自ら調査を行う(審査機関の調査行為の違法)など,本件
懲戒処分には,手続的違法が存在する。
イまた,本件懲戒処分には,前記ア以外にも次のような手続的違法が存在する。
(ア)本件審査説明書をAに開示,閲覧させたことの違法
審査説明書は,被審査人の身分保障,権利保護のために作成されるものであるから,被
審査人に対してのみ交付すべきである。ところが,被告大学は,L庶務課長をして,Aに対
し本件審査説明書の内容を口頭で説明したり閲覧させたりしたその結果Aは原告,,。,,
の処分が軽すぎるとして被告大学に抗議し,新たに原告によるセクハラ行為を申し出たの
であって本件審査説明書をAに開示したことは本件懲戒処分に重大な影響を与える違法,,
行為である。
(イ)本件審査説明書についての審査不存在の違法
被告大学評議会は,平成12年6月7日,原告の陳述が終わったのであるから,直ちに審査
を行い処分を決めなければならなかった。ところが,被告学長は,原告に対する処分を直
ちに行わず,本件再審査説明書に基づく処分まで放置した違法がある。
(ウ)再審査申立ての不存在の違法
被告大学は,平成12年6月16日,Aから特別調査委員会に対し,新たなセクハラ被害の申
立てがあり,事実確認の調査を開始した旨主張する。しかし,当該申立ては,被告大学の
評議会ないし特別調査委員会の一委員にすぎないI教授がAからメールを受信したというだ
けでありI教授には調査の申立てを受け付けることやその申立てについて調査を行うか,,
否かを決定する権限を有していない。したがって,本件懲戒処分は,申立てがないにもか
かわらず作成された再審査説明書に従って行われたものであり違法である。
(エ)調査委員会申し合わせ事項違反
I教授は調査委員会申し合わせ事項においてヒアリングは必ず2名以上で行い1名は,,,
記録を担当する旨規定しているにもかかわらず,1人でAの事情聴取を行い,同申し合わせ
事項に違反した。
(オ)Aへの弁護士紹介の違法
I教授は,Aに対し,弁護士を紹介するなど,偏った立場で調査を実施した。
【被告ら】
ア行政手続法3条1項9号は「公務員又は公務員であった者に対してその職務又は身分に,
関してされる処分」については,同法15条ないし28条を適用しない旨規定している。
また,教特法は,昭和26年改正の際,不利益処分に関する事前審査制度について,従前
の規定による審査が争訟制度によるものの如き疑義を生じたので,大学自治行政の一環と
して聴聞主義によることを明らかにしたのである。確かに,教特法は,懲戒処分について
,評議会及び学長は,被審査人が請求した場合に口頭又は書面で陳述する機会を与えなけ
ればならないと規定する(同法9条2項,4条3項)が,その者の代理人に立会権や陳述権を与
えなければならないとは規定していない。以上のような教特法の改正経緯や規定文言に照
らせば,同法は被審査人の代理人の立会権や陳述権まで保障するものではないことが明ら
かである。また,被告大学評議会は,本件再審査説明書についての陳述の際,原告代理人
の立会いを認め,同代理人は詳細な陳述をしており,原告の防御権は何ら侵害されていな
い。
イ教特法は,被審査人に対する審査説明書の交付について定めるものの,被審査人が陳
述を行うに当たりあらかじめ資料の開示を受けることまでは保障していない(同法9条2項,
4条2項)また本件再審査説明書には原告に対する処分理由や事案の争点が明確に記,。,,
載されており,原告が防御する上で何ら支障はなかった。さらに,本件審査の資料の大半
は,被害者・関係者の証言であり,これを開示した場合にはプライバシー侵害の問題や証
拠隠滅のおそれがあった。
ウ被告大学評議会が原告に対し再審査説明書を交付したのはAの申立内容に新たな事実,
が加わり,その内容がそれまでの申立内容と時間的場所的に一体性のある継続的事実であ
ったことから,一括して審査することが相当であり,原告の防御の点からも妥当と考えた
からである。
エ原告は,本件懲戒処分について手続上達法があるとるる主張するが,すべて争う。
(2)争点(2)(本件懲戒処分の実体的違法性-本件セクハラの存否)について
【被告ら】
ア原告は,平成11年5月18日,Aに対し,次のとおり,セクハラ行為を行った。すなわち
①原告はAとEとともに飲食した際Aが人文研究科博士課程入試に不合格となった理由,,,
を述べ,来年度の合格に期待を持たせるような発言をしたこと,②原告は,E帰宅後,Aと
2人でηホテルの本件ラウンジで酒を飲むことにしたが本件ラウンジに向かうエレベータ,
ー内でAの肩に手を置いたり,同ラウンジにおいて,Aに対し,性的な発言をしたりしたこ
と③原告は同ラウンジを出た後エレベーター内でAの肩に触ったりηホテルの地下,,,,
1階においてAにキスをしたり胸を触ったりしたこと④原告はAを自宅に送る途中のタ,,,
,,。,クシー内でAの指を口に入れたり下腹部を触ろうとした以上のような原告の行為は
その官職の信用を傷つけ又は官職全体の不名誉となるような行為(国家公務員法99条「,」
)に当たるから,同法82条1項1号,3号所定の懲戒事由があるというべきであり,その行為
の内容やAに与えた被害の程度に照らすと,3か月間の停職とした本件懲戒処分は相当であ
って,裁量権の逸脱・濫用に当たるとはいえず,本件懲戒処分に違法はない。
イA供述の内容の些細な変遷をもってAの供述全体の信用性を否定することはできない。
これに対し,原告の供述は,セクハラ行為について,酔っていたため記憶が曖昧であると
か,寝ていたので記憶がないなどとする一方で,その他の場面について詳細な供述をする
など不自然なものであり,信用性がない。
【原告】
ア原告は,平成11年5月18日,①A及びEとともに飲食したこと,②E帰宅後,Aと2人でη
ホテルの本件ラウンジで酒を飲んだこと,③本件ラウンジを出た後,誤ってηホテルの地
下1階に行ったこと,④Aをタクシーで同人の自宅まで送ったこと,⑤別れ際,激励の意味
でAの肩を前から手で軽くたたいたことは事実である。しかし,原告は,Aに対し,性的な
発言をしたり,同人の身体に触るなど本件セクハラ行為はしていない。
イ本件処分説明書記載の事実は,主としてAの供述により認定されているが,①Aの供述
には合理的に説明がつかない変遷が存在すること②Aはa平成11年5月25日本件ゼミに,,,
出席し,ゼミ終了後に,原告,Eとともに喫茶店で談話したこと,b同年6月8日本件ゼミに
出席しゼミ終了後に原告Eらと飲食をしカラオケスナックにおいて原告の手を握っ,,,,
たことc同年8月末ないし9月初めころ原告に対し韓国製の茶器セットを贈ったこ,,,「」
とd同月13日原告及びEとともに飲食をしたことe本件ゼミを辞めるに当たり同月27日付,,
けで本件手紙を送ったことなど同年5月18日以降も原告に対する態度に変化がなくむし,,
ろ原告に対し好意的対応をとっていたこと,③Aは,平成11年5月18日以外に原告が同様の
行動をとった旨述べていないこと,④Aの供述とEら他の関係者の供述との間には不一致が
あること,⑤Aは,被告大学の調査,人事院の口頭審理,別件の損害賠償請求訴訟(当庁平
成14年(ワ)第10105号事件)において,本件セクハラに関連する事実について虚偽の供述を
していること,⑥Aは,本件セクハラの翌日にY大学時代の先輩である東京大学大学院生M
に相談したというが,かかる事実を平成12年9月8日に至るまで明らかにしていなかったこ
とからして,Aの供述には信用性がない。
ウAが虚偽の申告をしたのは,これまで世話になったB助教授から本件ゼミを辞める理由
を聞かれ,東京大学大学院に移るという本当の理由を言い出せなかったからである。また
,Aは,平成12年5月26日,原告の処分が減給(6月,俸給の月額10分の1)と聞いて供述を大
きく変遷させており,同人の供述は全体として信用性がない。
(3)争点(3)(本件停止措置の違法性)について
【原告】
ア本件停止措置は,原告の教授の自由及び教授会への出席等学校教育法上の大学教授の
権利を合理的理由なく侵害するものであり,本件懲戒処分に加えてする二重処分にほかな
らず,違法である。
イ大学の評議会の権限とされているのは,大学の運営に関する組織上の基本事項であり
,教員人事,研究教育の内容・方法・対象等の自主的決定権は依然として教員研究者で組
織する教授会にあるというべきである。本件停止措置は,原告の教授研究の自由や法的地
位に対する重大な侵害であり,評議会の裁量権の名の下に正当化できるものではない。
ウ人事院に対する不服申立ては,国家公務員法上の公務員の身分保障の一つとして認め
られたものであり,原告が人事院に対し不服申立てをしたことをもって,本件停止措置の
理由とすることは許されない。
【被告大学】
ア大学の評議会は,学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を
教授研究し知的道徳的及び応用的能力を展開させるという大学の目的(学校教育法52条,,
)実現のため基本的な計画に関する事項及び教員人事の方針に関する事項等大学運営に関,
する重要事項を審議事項として広い裁量権を有している。被告大学評議会は,このような
裁量権に基づき原告が依然としてAの供述は信用できないなどと述べ反省の態度を示し,,
ていなかったこと,原告の担当する授業科目は受講者が少人数であり,原告の態度に照ら
すと同種被害の再発の危険性が除去されたとはいえなかったこと,原告を無条件で復職さ
せれば,受講生のみならず学生全体に動揺や不安を与えることなどを考慮し,学生の適正
な教育環境を保全するためZ大学評議会規則第5条10号所定の本学の運営に関する重要,「
事項」として,暫定的に本件停止措置をとった。したがって,本件停止措置は,原告に対
する制裁を目的とするものではないから,二重処罰には当たらない。
イ国立大学教員の教育の自由は,自己の研究,教育活動について,公権力による干渉を
受けないことを意味するにとどまり,これにより大学に対し授業を担当することを請求す
る権利が保障されているわけではない。大学において,具体的にどの科目をどの教員に担
当させるかは,評議会及び教授会の決定事項であり,教員は割り当てられた授業を担当す
る義務を負うにすぎない。また,大学運営への参加について,原告が大学院及び学部の教
授会に出席することは,法令上,権利として保障されているわけではなく,評議会が「大
学の運営に関する重要事項(国立学校設置法7条の3第5項10号)として決定し得る事項であ」
る。仮に,原告が大学教員として授業を担当する権利及び大学運営に参加する法的権利を
有しているとしても,評議会には教務に関し広範な裁量権があることからすれば,評議会
が合理的な理由により,原告の権利を制限し得ることは当然のことである。
ウ本件停止措置のうち原告の教育活動の停止を命じた理由は①原告がAに対するセクハ,
ラ行為の存在を全面的に争い,反省の態度を示さなかったこと,②原告がそのような状態
のまま教育活動に復帰することになれば,学生に与える精神的,心理的影響が大きいこと
,③被告大学は教育者の育成を大きな目的とする女子大学であり,学生の不安を取り除く
ためにも,教育者によるセクハラ行為について厳格な対応が求められていたこと,④原告
が懲戒処分を争い人事院に対し審査請求をしたことから,その判定及びこれに対する原告
の対応を見る必要があったからである。したがって,被告大学が,人事院の判定がされた
後,復職の体制が整うまでの合理的期間内において,原告の教育活動の停止を命じること
には十分な合理性がある。
エ本件停止措置のうち原告の大学運営への参加の停止を命じた理由は,①原告が本件セ
クハラ行為について謝罪をせず,反省の態度も示さなかったことから,他の教員に与える
不信感,不安感が払拭されていなかったこと,②原告は指導担当者として担当教科の決定
等に多大な影響力を有しており,原告を担当教科の決定等に関与させることは学生に動揺
と不安を与えるおそれがあったこと,③本件セクハラ行為についての反省がないまま原告
を大学運営に参加させることにより,学生に対する教育的環境を悪化させるおそれがあっ
たからである。したがって,被告大学が,人事院の判定がされた後,復職の体制が整うま
での合理的期間,原告の大学運営への参加の停止を命じることには十分な合理性がある。
(4)争点(4)(損害額)について
【原告】
原告は,被告学長による違法な本件懲戒処分及び被告大学による違法な本件停止措置に
よって,甚大な精神的苦痛を被ったところ,その慰謝料相当額は1000万円を下らない。
【被告大学】
原告主張の損害額は争う。
第3争点に対する判断
1争点(1)(手続的違法の有無)について
(1)認定事実
前記争いのない事実等,証拠(文中又は文末に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば
,次の事実が認められる(証拠等を掲記しないものは当事者間に争いのない事実である)。
アAが本件セクハラ行為について救済を申し立てた経緯
(ア)Aは,平成11年9月22日,B助教授に対し,原告と同年5月18日ηホテルに行った際,
。,,,セクハラ行為を受けたことを話したその後C学部長及びB助教授は平成11年10月6日
Aの事情聴取をした。また,C学部長及びB助教授は,平成11年10月13日,G研究科長ととも
にAから再度事情聴取をした。(前記争いのない事実等(5)ア)
(イ)Aは平成11年10月27日被告大学のセクハラ相談員であるH教授及びB助教授に対し,,
て原告によるセクハラ行為についての救済を申し立てたAの申立内容は概略次のと,。,,
おりであったAは平成11年5月18日原告とEと飲食をした後Eと別れ原告と2人になっ。,,,
た際原告に更に30分位付き合ってくれと言われてηホテルの本件ラウンジで2人で酒を飲,
んだこと,Aはηホテルを出て帰宅しようとしたが,原告がAの荷物を持って離さないので
仕方なくついて行くと,原告は別のホテルに行きフロントで空室の有無を確認したが空室
がなかったことその後原告はAを自宅まで送ると言ってタクシーに無理矢理同乗しその,,
車内でAの身体を触り続けたというものであった。(前記争いのない事実等(5)イ,甲6,78
【13ないし17頁,84,弁論の全趣旨)】
(ウ)H教授及びB助教授は,平成11年11月9日,上記(イ)のAのセクハラ被害の申出を受け
て,Aの言い分をもとに原告の事情聴取を行ったが,原告はAに対するセクハラ行為を否認
した(前記争いのない事実等(5)イ,甲6,21,78【20,21頁,弁論の全趣旨)。】
イ本件審査説明書交付に至る経緯
(ア)防止対策委員会は平成11年11月12日Aから原告についてのセクハラ相談の概要に,,
関しH教授から報告を受け調査が必要と判断し同月22日人権委員会にその旨報告し,,,,
た。被告学長は,人権委員会の報告を受けて防止対策委員会の下に調査委員会を設置する
ことを決定し,調査委員会委員長には互選によりI教授が選出された。(前記争いのない事
実等(6)ア,甲4,6,乙7,30,31,証人K【1,2頁,弁論の全趣旨)】
(イ)調査委員会は平成11年11月29日から同12年2月21日にかけて次の①ないし⑦のと,,
おり,A,原告ら関係者の事情聴取等を行った(前記争いのない事実等(6)ア,甲4,乙30,
31,証人K【2,3頁,弁論の全趣旨)。】
①平成11年11月29日Aと面接,調査開始の了解を得た。
②同年12月10日Aに対する調査実施
③同12年1月19日原告に対する調査実施
④同年2月1日本件ゼミ員Jに対する調査実施
⑤同月14日原告に対する再調査実施
⑥同月20日Aに対する電話による再調査実施
⑦同月21日Aに対する調査実施
(ウ)防止対策委員会は調査委員会がA原告及び関係者からの事情聴取等を行ってまと,,
めた調査報告書に基づき,Aの申し出た原告によるセクハラ行為があったと判断し,平成1
2年3月8日人権委員会にその旨報告したこれを受けて人権委員会は被告学長に対し,。,,
。,,,て原告を懲戒処分に付すべきである旨報告した(前記争いのない事実等(6)アイ甲4
乙7,弁論の全趣旨)
(エ)被告学長は人権委員会からの報告に基づき平成12年5月24日原告を懲戒処分に,,,
付すことが適当か否かについて評議会に諮った。評議会は,教特法に基づく審査に付すこ
とを決定し事実関係の調査審査説明書案の作成のため評議会の下に被告学長I教授,,,,
。,,ら12人の委員で構成される特別調査委員会を設置した(前記争いのない実等(6)イ甲4
乙30,31,証人K【1,5,6頁,弁論の全趣旨)】
(オ)評議会議長である被告学長は平成12年5月24日原告を減給(6月俸給の月額10分,,,
の1)の懲戒処分に付すことが適当か否かの審査を行うため,原告に対して本件審査説明書
を交付した。本件説明書には,審査の理由として2頁にわたり原告のAに対するセクハラ行
為が1項から7項にわたって詳細に記載されている(前記争いのない事実等(6)ウ甲2弁。,,
論の全趣旨)。
ウ本件審査説明書に対する原告及び原告代理人の陳述
(ア)原告は平成12年5月25日評議会に対し本件審査説明書について口頭で陳述する,,,
機会を与えるよう請求し,評議会はこれを認め,原告は,同年6月7日,評議会において口
頭陳述を行った(前記争いのない事実等(6)ウ,甲4,25,27,弁論の全趣旨)。
(イ)原告代理人は,平成12年6月7日,被告学長ないし評議会に対し,原告代理人による
口頭陳述の機会を与えるよう要望したが,認められなかったが,原告の本件審査説明書に
対する口頭陳述後に評議会に対し詳細な書面による陳述を行った(前記争いのない事実,,
等(6)ウ,甲60ないし72,弁論の全趣旨)。
エ本件再審査説明書交付に至る経緯
(ア)Aは平成12年5月26日被告大学のL庶務課長から本件審査説明書の内容について説,,
明を受けたが,経済的制裁では軽すぎると抗議した。また,L庶務課長は,平成12年5月30
日,Aに対し,本件審査説明書,調査委員会報告書等を見せた。さらに,I教授は,平成12
年6月14日Aに対し原告が本件審査説明書に対する口頭陳述でAの申し出たセクハラ行為,,
をほとんど否認していることを告げAにおいて不服があるのであれば同人の申出内容と,,
原告の口頭陳述の内容が食い違う点について,改めて電子メールで事実関係を述べるよう
要請した。(前記争いのない事実等(6)エ,甲4,11,弁論の全趣旨)
(イ)Aは平成12年6月15日及び16日I教授に対し電子メールで原告から受けたセク,,,,
ハラ行為について新たな申出をしたすなわちAは上記メールにおいて概略原告は。,,,,
,ηホテルの本件ラウンジで,Aに対し「私は機能できないんだ,ただ君の白い肌を見,,
触りながら一晩君と過ごしたい「君が離婚して私も離婚し」などと言ったこと,本件。」,。
ラウンジを出た後の下りエレベーター内でもAの肩に触り,同ホテルの地下1階でキスをし
たり同人の胸を触ったりしたことAの自宅マンションの正面にあるマンションの駐車場,,
で胸を触ったりキスをしたり洋服を下ろそうとし逃げ出したAを追いかけて楽器店,,,,
の前でキスをしたり下腹部の方に手を入れようとしたり頭をAの胸につけたりしさら,,,
に自宅マンション前でわいせつ行為をしようとしたので,いとこが泊まっているので見ら
れたらどうしますかなどと言ったら逃げるように帰ったことなどを述べた(前記争いのな。
い事実等(6)エ,甲4,12,13,18,19,弁論の全趣旨)
(ウ)特別調査委員会は,上記(イ)のAの申出を受けて,原告のAに対するセクハラ行為に
ついて,改めて事実確認の調査を行うことを決定した。特別調査委員会は,平成12年6月1
8日,Aを伴って,ηホテルからAの自宅マンションまでの実地調査を行い,改めてAの事情
。,,,,聴取をしたまた特別調査委員会は平成12年9月8日Aに対する事情聴取を行ったが
この際,Aは,本件セクハラ行為を受けた翌日にY大学時代の先輩であるMに対し本件セク
ハラ行為について相談したと述べたそこで特別調査委員会は平成12年9月12日及び同。,,
年11月30日,Mの事情聴取をした。(前記争いのない事実等(6)オ,甲4,95,97,103,乙1
6,17,21,22,30,31,証人K【11頁,弁論の全趣旨)。】
(エ)特別調査委員会は,前記(イ)のAの申出,同(ウ)の調査後,平成12年9月28日,原告
に対し事情聴取をしたが,原告は,Aに対するセクハラ行為を否定した(前記争いのない事
実等(6)オ,甲4,30,109,乙32,33,弁論の全趣旨)。
(オ)特別調査委員会は,平成12年12月19日,上記(イ)ないし(エ)の調査結果を審査報告
書にまとめ,評議会に報告した。評議会は,翌20日,前記報告書に基づき原告の処分内容
について再検討を行い同月26日原告の処分内容を停職3月とすることが適当か否かを再,,
審査するため,本件再審査説明書の交付を決定した。これを受けて,評議会議長である被
告学長は平成12年12月27日原告を停職3月の処分に付すことが適当か否かの審査を行う,,
ため,原告に対して本件再審査説明書を交付した。本件再審査説明書には,審査の経緯,
再審査説明書交付の理由審査事由が記載されていた審査事由の項には原告がAに対し,。,
行った平成11年5月18日のセクハラ行為が1項から9項にわたって記載されていた。(前記争
いのない事実等(6)カ,甲3,4,乙8,弁論の全趣旨)
オ本件再審査請求に対する原告及び原告代理人の陳述
原告及び原告代理人は,平成13年1月9日,評議会に対し,口頭で陳述する機会を与える
よう請求をしたそして原告及び原告代理人は平成13年1月25日評議会において詳。,,,,
細な口頭及び書面による陳述を行った。(前記争いのない事実等(6)カ,甲4,31,証人K【
14,15頁,弁論の全趣旨)】
カ本件懲戒処分
評議会は平成13年2月8日原告を停職3月の懲戒処分とすることを決定し被告学長は,,,
,翌9日,原告に対し,懲戒処分書及び本件処分説明書を交付した(前記争いのない事実等
(7),甲1,4,乙10,弁論の全趣旨)。
(2)当裁判所の判断
ア代理人選任権の保障等の手続的違法について
(ア)原告は,本件懲戒処分の手続においては,行政手続法に規定するところの代理人選
任権の保障(行政手続法16条)文書等閲覧権の保障(同法18条1項24条)聴聞主宰者の公,,,
正確保等(同法19条,20条)が図られるべきところ,これが図られておらず,手続的違法が
あると主張するので,まず,この点から判断することにする。
(イ)なるほど,行政手続法は,行政庁の処分等に関する手続に関し,共通する事項を定
めることによって,行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り,もって国民の権
利利益の保護に資することを目的(同法1条1項)として制定されている。そして,同法は,
第3章において不利益処分に関する手続を定めるところ聴聞の通知を受けた者は代理人,,
を選任できること(同法16条1項)同代理人は各自当事者のために聴聞に関する一切,,,,
の行為をすることができること(同条2項)当事者等は聴聞の通知があった時から聴聞が,,
終結する時までの間,行政庁に対し,当該事案についてした調査の結果に係る調書その他
の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができること(同法1
8条1項)聴聞の公正な運営を目的として聴聞主宰者にふさわしい者を指名しその職につ,,
け,聴聞の公正性を担保するために一定範囲の者を聴聞の主宰者から除斥すること(同法1
9条),聴聞の期日における審理の方式(同法20条)等を規定していることが認められる。し
かしながら,同法は,公務員等に対してその職務又は身分に関してされる処分等について
は,事前・事後手続の統一的な整備が要請されていることから,同法第2章ないし第4章ま
での規定の適用を除外している(同法3条1項9号)ことが認められるしたがって国立大学。,
教授の懲戒処分手続において,代理人選任,文書等の閲覧,聴聞主宰者の公正確保が認め
られなかったとしても,直ちに当該懲戒処分手続が違法になると解することはできないと
いうべきである。
(ウ)また,証拠(乙11)によれば,昭和26年法律第241号による改正前の教特法(昭和24年
法律第1号)は,国立大学教授は,大学管理機関の審査の結果によるのでなければ,懲戒処
分を受けないと定め(同法9条1項),大学管理機関は,審査を行うに当たり,被審査人に対
し審査説明書を交付し(同条2項同法5条2項)被審査人から請求があったときは口頭,,,,
審理を行わなければならないとし(同法9条2項,5条3項),被審査人は,すべての口頭審理
に出席し,自己の代理人として弁護人を選任し,陳述を行い,証人を出席せしめ,書類,
記録その他あらゆる適切な事実及び資料を提出することができる(同法9条2項,5条4項)と
規定していることが認められる。ところが,証拠(乙12)及び弁論の全趣旨によれば,国立
大学教授等教育公務員に対する不利益処分の手続は昭和26年法律第241号による改正によ,
り現行教特法と同様の規定に改められたところ,その立法趣旨は,不利益処分に関する事
前審査制度について,従前の規定による審査は,争訟制度によるものとの疑義が生じてい
たが,大学自治行政の一環として聴聞主義によることを明らかにした点にあることが認め
。,,,られるそして現行教特法による国立大学教授に対する懲戒処分は同法9条に基づき
評議会の審査を経て任命権者が行うこととされ(同条1項)また評議会が審査を行うに,,,
当たっては,被審査人に対し,審査説明書を交付しなければならず(同条2項,同法4条2項
)その者が請求した場合には口頭又は書面で陳述の機会を与えなければならない(同法9条,
2項,4条3項)と定められているが,被審査人の代理人による口頭陳述権,被審査人の資料
等閲覧権については何ら規定が存在しない。このような教特法の改正の経緯,現行教特法
の規定に照らしてみると,国立大学教授等教育公務員に対する懲戒処分に係る審査におい
ては,被審査人代理人による口頭陳述権の保障,文書等閲覧権の保障がされていると解す
ることはできない。また,現行教特法の規定からは,審査開始後に評議会が事実調査をす
ることが禁止されていると解することもできない。
(エ)さらに前記(1)で認定した事実によれば①本件審査説明書にかかる審査において,,
は,原告代理人による口頭陳述は認められなかったものの,原告代理人から詳細な書面に
よる陳述がされていること(前記(1)ウ(イ))②本件再審査説明書にかかる審査においては,
,原告代理人による口頭陳述も認められ,同代理人による詳細な口頭及び書面による陳述
が行われたこと(前記(1)オ)③原告には本件審査説明書ないし本件再審査説明書にかか,,
る口頭陳述までに処分理由を裏付ける資料等が開示されなかったものの,各審査説明書は
いずれも詳細に審査事由が記載され,本件再審査説明書においては詳細に審査の経緯,再
審査説明書交付の理由も記載されており,原告が口頭陳述を行うに当たり防御等に格別困
難あったとは認め難く,実際,原告はいずれの口頭陳述においても詳細な反論を行ってい
ること(前記(1)ウ(ア),同(1)オ),④本件再審査説明書にかかる事実調査については,特
別調査委員会が担当し,一応審査者である評議会との分離が図られていたこと(前記(1)エ
(ウ)ないし(オ),乙30,31,証人K【5,6,26,40,41頁】)が認められ,以上の事実に照
らすと,本件懲戒処分手続が適正・公正性を欠き,原告の権利が侵害されたということは
できず,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
(オ)以上によれば被告大学評議会が原告代理人による陳述を認めなかったこと(代理,,
人選任権の保障についての違法)審査説明書の事実を認定した資料を開示しなかったこと,
(文書等閲覧権の保障についての違法),自ら資料を収集し,本件再審査説明書を交付した
こと(聴聞主宰者の公正確保についての違法)等を理由として,本件懲戒処分手続は違法で
あるとの原告の主張は理由がなく,これを採用することはできない。
イ原告のその他の主張について
(ア)本件審査説明書をAに開示,閲覧させたことの違法
原告は被告大学評議会がAに対し本件審査説明書を開示したことが本件懲戒処分に重大,
な影響を与える違法行為であると主張する。この点,確かに,本件再審査説明書が交付さ
れるに至ったのは本件審査説明書の処分内容にAが異議を唱え新たに原告によるセクハ,,
ラ行為を申し出たことによることは認められる(前記(1)エ(ア)ないし(ウ))しかしセク。,
ハラ行為にかかる懲戒処分手続において,その被害者とされる者に審査説明書を開示する
ことが,教特法その他の法令に違反するということはできず,また,これにより審査の適
正・公正性が害されたとまでは解されない。よって,上記原告の主張は採用することがで
きない。
(イ)本件審査説明書についての審査不存在の違法
原告は,被告大学評議会が,原告の本件審査説明書にかかる口頭陳述終了後直ちに処分
をせず,本件再審査説明書に基づく処分まで放置したことが違法であると主張する。しか
しながら,教特法は,被審査人に対し,口頭又は書面で陳述する機会を与えなければなら
ないと規定する(同法9条2項,4条3項)ものの,処分決定の時期については何ら規定がなく
これにより審査の適正・公正性が害されたとは解されないのみならず前記(1)アない,。,
しカで認定した事実によれば,被告大学評議会は,本件審査説明書に基づく処分について
は原告の口頭陳述後被害者であるAからの申出を受け本件再審査を開始することによ,,,
り,終了させたものと認めるのが相当である。そうだとすると,本件審査説明書に基づく
処分を本件再審査説明書に基づく処分まで放置したとの原告の主張は,この点でも理由が
ないというほかない。よって,上記原告の主張は採用することができない。
(ウ)再審査申立ての不存在の違法
原告は,本件再審査説明書にかかる審査事由は,適式な申立てに基づかず作成されたも
のであり,これに従って行われた本件懲戒処分手続は違法であると主張する。しかしなが
ら,被告大学においては,セクハラ行為に関する教授の懲戒処分の申立てについては,厳
格な規定が存在するわけではない(乙4,5参照)。また,本件再審査説明書は,本件審査説
明書にかかる原告の口頭陳述後特別調査委員会の構成員であるI教授を通じて同委員会に,
原告のAに対するより重大なセクハラ行為が明らかになったとして更に事実調査が行われ,
,同委員会の報告に基づき,評議会が同セクハラ行為を審査事由に付加したものであって
(乙30,31,証人K【32,33頁,証人I【10,11頁,弁論の全趣旨),教特法ないしセクハ】】
ラ防止指針等に違反するものではない。よって,上記原告の主張は採用することができな
い。
(エ)調査委員会申し合わせ事項違反等
原告は,I教授が,申し合わせ事項に違反して1人でヒアリングを行ったことを理由に本
件懲戒処分手続は違法であると主張する。この点,確かに,証拠(乙31,証人I【7,12,1
6頁】)及び弁論の全趣旨によれば,上記事実が認められる。しかし,かかる申し合わせ事
項に違反したことにより,本件懲戒処分までが直ちに違法になると解することはできない

また,原告は,I教授がAに対し弁護士を紹介した点を捉え違法であると主張する。しか
しながら,セクハラ行為の被害者保護の見地からすれば,被害者,しかも外国からの留学
生に対し弁護士を紹介することが直ちに調査の適正・公正性を疑わせることにはならない
(乙31,証人I【4,18頁】参照)というべきである。
よって,上記原告の主張は,いずれも採用することができない。
(3)小括
以上のとおり,本件懲戒処分の手続には原告が主張するような違法な点を認めるに足り
る証拠は存在せず,その他同処分の手続が教特法その他の法令に違反すると認めるに足る
事情も存在しない。よって,原告の本件懲戒処分に手続上違法があり,同処分は取消しを
免れないとの主張は,理由がないというべきである。
2争点(2)(本件セクハラの存否)について
(1)認定事実
前記争いのない事実等,証拠(文中又は文末の括弧内に掲記したもの)及び弁論の全趣旨
によれば,以下の事実が認められる。
アAは,平成11年3月上旬,被告大学の同年度博士課程を受験し,不合格となった後,同
大学の翌年度博士課程を再受験するために必要な研究指導を受ける目的で同11年4月から,
,,,原告が担当する本件ゼミの科目等履修生となった(前記争いのない事実等(1)ウ(2)ア
イ,乙27,弁論の全趣旨)。
イ原告は,平成11年5月18日,本件ゼミ終了後,原告とゼミ員であったEを誘って,同日
午後5時30分ころから被告大学近くの寿司屋「α」で飲食をした。その際,原告は,Aが前
年度の被告大学の博士課程入試で不合格になったことに触れ自分がAを不合格にしたこと,
,不合格の理由等を述べ,来年は入れるからなどと話した。(前記争いのない事実等(3)ア
,甲13,18【53,54頁,19【4,5頁,乙27,弁論の全趣旨)】】
ウ原告は,寿司屋「α」を出た後,A及びEとともに更に被告大学近くのスナック「β」
で飲食し,同日午後9時ころ同店を出て,営団地下鉄丸ノ内線のγ駅でEと別れた後,同駅
ないしδ駅方面行きの電車内においてAに対し更に30分位付き合うように誘った原告は,。
,,,,Aが同意したことからγ駅の次の駅であるε駅で下車し同駅からタクシーに乗車し
年に5,6回利用しているηホテルに向かった。(前記争いのない事実等(3)ア,甲6,7,13
,18【55頁,35【10頁,乙27,弁論の全趣旨)】】
エ原告は,ηホテルに到着すると,原告を伴い,本件ラウンジのある○階に向かった。
その際,原告は,上りエレベーター内で原告の肩に手を置いた。(前記争いのない事実等(
3)ア,甲18【57頁,19【38,39頁,乙27,弁論の全趣旨)】】
オ原告は,本件ラウンジにおいて,酒を飲みながら,Aに対し「私は機能できないんだ,
,つまり,男としての性機能が・・・。ただ,君の白い肌を見て,触りながら,一晩を君
と過ごしたい,それだけ「君が離婚して,私も離婚して」などと原告と性的関係を望ん」,
でいるような発言をした。(甲7,9,13,18【60頁,19【39頁,乙27,弁論の全趣旨)】】
カ原告は,ηホテルの本件ラウンジを出た後,自分の鞄とAの荷物を持ってAとともに下
りエレベーターに乗り同エレベーター内でAの肩に触り地下1階で降りてAにキスをし,,,
たり,胸を触ったりした後,Aとηホテルを出た(甲12,13,18【63,64頁,19【40頁,】】
乙27,弁論の全趣旨)。
キ原告は,Aをタクシーで自宅まで送ると言って,自分とAの荷物を持って先にタクシー
に乗車し,Aの自宅マンションがある北区ιまで同乗した。原告は,当該タクシー内でAの
身体に触ったりAの指を自分の口に入れたりしたなお原告はηホテルを出た後徒,。,,,
歩又は上記タクシーで別のホテル(κ)に立ち寄り,空室の有無を確認したが,満室で部屋
を取ることはできなかった(前記争いのない事実等(3)ア甲679131864ないし。,,,,,【
68頁,19【6頁,20【52,53頁,乙17,27,弁論の全趣旨)】】】
(2)A供述の信用性等について
アAは前記(1)のイないしキの文末で摘示した部分等で前記(1)で認定したとおりの供述,
及び陳述(以下「A供述」という。)をし,他方,原告は,Aに対し,セクハラ行為をしたこ
。,,,,とはないと供述するすなわち原告は前記(1)のうち平成11年5月18日Eと別れた後
Aと2人でηホテルの本件ラウンジに行き酒を飲んだこと同ラウンジを出た後Aを自宅マ,,
ンション付近までタクシーで送ったことなどは認めるもののAに対するセクハラ行為につ,
いては否定する供述,陳述をしている(甲33,34,40,乙26,原告本人【24ないし29頁,】
弁論の全趣旨)。そして,原告は,Aが原告からセクハラ行為を受けたというのは虚偽であ
り,Aが虚偽の申告をしたのは,これまで世話になったB助教授から本件ゼミを辞める理由
を聞かれ,東京大学大学院に移るという本当の理由を言い出せなかったからであるなどと
。,,主張するこのようにA供述と原告の供述等とは真っ向から対立するところ当裁判所は
A供述の方が信用性があり前記事実認定の証拠に供するのが相当と考え他方原告の供,,,
述等は信用することができずこれを採用しなかったものであるが,その理由は,以下のと
おりである。
イまず,原告の本件セクハラ行為に関するA供述は,前記(1)で認定に供した限りでは,
それぞれが具体的かつ詳細であり特段不自然・不合理な点は見当たらないAが原告から,。
本件セクハラ行為を受けたことは翌日電話でAと話をしたMの供述(甲103乙1617)と,,,,
も合致している。また,Aが本件セクハラ行為を被告大学に申し出たのは,被害から4か月
余り後である(前記1(1)ア(ア))が,これは,セクハラ行為の被害者としての羞恥心等のほ
かAは被告大学の博士課程の入試に失敗したばかりであったのに対し原告が合格を左右,,
しうる力を有しているかのような言動をしていたこと(前記2(1)イ),本件ゼミにおいて扱
いが悪くなることへの懸念があったこと,酒に酔った上での出来事であったことなどによ
るものとして十分了解することができ,事を荒立てないほうがよいとのMの助言(甲95,乙
16)も影響したと考えられ,これによりA供述の信用性を否定することはできない。さらに
,Aは,本件セクハラを積極的に申し出たものではなく,B助教授から本件ゼミを辞める理
由を聞かれ,答えに窮して本件セクハラ行為を述べるに至ったのであるが,原告が主張す
るように他大学に移ることを言い出せないため,担当教授のセクハラ行為をねつ造すると
の事態は予想し難くむしろかかる本件セクハラ発覚の経緯はA供述の信用性を高めるも,,
のということができる。
ウこれに対し原告はA供述には合理的に説明のつかない変遷が存在すると主張する,,,
。この点,確かに,原告は,平成11年5月18日における原告のAに対する行為について,①
当初,同年10月27日にH教授及びB助教授に相談した際には,ηホテルに誘われ,帰宅しよ
うとしても原告がAの荷物を離さず別のホテルに連れて行かれまたタクシー内で身体,,,
を触られたことを供述するにとどまっていたところ(前記1(1)ア(イ)),②その後,同年12
月10日の調査委員会の事情聴取の際には原告から本件ラウンジでAとの性行為を望んでい,
るような話が出たこと等の話が追加され(甲7,乙18),③平成12年2月21日の調査委員会の
事情聴取の際には原告がηホテルのエレベーター内でAの肩に手を置いたこと原告がタ,,
クシー内でAの胸から下腹部にかけて触り,指を口にくわえたことなどの話が追加され(甲
9,乙20),④さらに,同年6月15日及び16日のI教授に対する電子メールにおいて,ηホテ
ルの地下1階で原告からキスをされたり胸を触られまた自宅マンション付近でキス,,,,
をされたり,胸を触られ,洋服をおろされそうになり,さらに,原告から逃れようとした
ところ,自宅マンション近くの楽器店の前でキスされ,下腹部の方に手を入れられるなど
のわいせつ行為を繰り返し受けたこと等の話を追加するに至っている(前記1(1)エ(イ))。
しかし上記A供述の変遷のうちηホテルの本件ラウンジでの会話内容及びタクシー内,,
での行為は,従前から述べていた行為を具体的かつ詳細に述べたものであって,このこと
によりA供述の信用性が否定されることにはならない。また,Aの自宅マンション付近での
原告の行為はともかく,それ以外の新たに付け加えられた事実についてみれば,その供述
自体,客観的事実等に反する部分はなく,特段不自然,不合理な点は見当たらない。かか
る事実を当初から述べなかった理由については,Aが当初は原告の厳罰を望んでおらず(甲
17乙2967頁)キスをされたり身体に触られたことを積極的に述べたくないと考,【,】,,
えたが,審査における原告の態度等に不快感を覚え,ことの次第をすべて明らかにし,原
告についてより厳しい処分を求めるようになったものとうかかがうことができ,かかる心
境の変化は,セクハラ行為の被害者の心情として理解することができ,かかる供述の変遷
をもってA供述の信用性を否定することはできない。
エまた,原告は,Aが平成11年5月18日以降も原告に対する態度に変化がなく,むしろ原
告に対し好意的対応をとっていたことを理由にA供述には信用性がないと主張するこの点。
,確かに,証拠(甲14,18【12ないし14,16,33頁,20【21ないし25頁,乙26)及び弁論】】
の全趣旨によれば,Aは,①平成11年5月25日,本件ゼミに出席し,ゼミ修了後に,原告,
,,,,Eとともに喫茶店で談話していること②同年6月8日本件ゼミに出席しゼミ終了後に
原告Eらと飲食をしたこと③同年8月末ないし9月初めころ原告に対し韓国製の茶,,,,「
器セットを贈ったこと④同月13日原告Eとともに飲食をしたこと⑤同月27日付け」,,,,
で,原告に対し,本件ゼミを辞めるに当たり,本件手紙を送ったことが認められる。
しかし,Aの前記①ない⑤の行為は,前記イのとおり,Aは被告大学大学院の平成11年度
博士課程の入試に失敗したばかりであったのに対し,原告が合格を左右しうる力を有して
いるかのような言動をしていたこと(前記2(1)イ)事を荒立てないようにとの前記Mの助言,
があったこと(前記2(2)イ)などによるものと解することができ原告に対し茶器セット,,「
」を贈ったこと,本件ゼミを辞めるに当たり本件手紙を出したことも儀礼的なものにすぎ
ず,これをもってAの供述の信用性を否定することはできない。
オさらに原告はAから原告が本件セクハラ行為以外に同様の行為をとったとの主張が,,
されていないこと,A供述には他の関係者の供述との間に食い違いがあること,Aが被告大
学の調査,人事院の口頭審理,別件の損害賠償請求訴訟(当庁平成14年(ワ)第10105号事件
)において虚偽の供述をしていることからして,A供述には信用性がないと主張する。しか
しながら原告が本件セクハラ行為以外にAに対し同様の行為を行っていないことをもって,
直ちに本件セクハラ行為の存在を否定することにはならないし仮にAの供述中に本件セク,
ハラ行為の枢要部分に関わらない部分で若干事実と異なる点があるとしても,これにより
A供述全体の信用性を否定することはできない。
カこれに対し原告はAに対し本件セクハラ行為をしたことはないと供述するしか,,,。
し,原告のかかる供述を採用することができないのは次のような事実が認められるからで
ある。
(ア)すなわち,前記(1)ウで認定したとおり,Aが原告と一緒にηホテルの本件ラウンジ
に行ったのは原告がAを誘ったからであるところその誘った理由について原告は平,,,,
成13年11月2日に実施された人事院での本人尋問において「私と学生,教師と学生という,
関係よりは,私が男であり,○さん(Aを指す)が女であるということですから。しかも,1
8,19歳ではないと。そういう意味で言えば,N先生がおっしゃるとおり,男と女の関係と
,,。」【】言われればそれはそうでしょうねそういう意味ですと供述しており(甲33103頁
),Aを女性として付き合わせるつもりでηホテルへ誘ったことを認めており,この部分は
,Aの供述を補強している。
(イ)また原告は平成13年11月2日に実施された人事院での本人尋問においてηホテ,,,
ルのエレベーターの中でAから体を支えられていたとか,Aの自宅前で軽く抱擁し合ったこ
とを供述し(甲33【40,122頁】),Aと身体的接触があったことを認める供述をしており,
この部分も,Aの供述を補強している。
(ウ)また,原告は,酒の影響や入れ歯の痛みから,ηホテルの本件ラウンジでは意識が
もうろうとし,ほとんど眠ってしまったとして,あまり会話はしたことがないように供述
する(原告2930頁)しかし前記のとおりAを女性として付き合わせるつもりでη【,】。,,
ホテルに誘った原告が,眠ってしまうというのは不自然である。原告は,ηホテルの地下
1階でAにキスをしたことも否認するが前記(1)ウで認定したとおり原告は年56回ηホ,,,
テルを利用し(甲35【10頁】),同ホテルの構造等は知っており,同ホテルを出るためには
地下1階に行く必要がないところ,何故地下1階へ行くのか,原告の行動は不自然というほ
かないさらに前記争いのない事実等(3)アによれば原告はηホテルを出て途中で。,,,,
別のホテルに立ち寄り空室を確認したり,原告の自宅前でタクシーから下車したことが認
められるがこれらの行動は不可解というほかないなぜ不可解かといえばAを自宅に送,。,
るのであれば途中でタクシーを止め別のホテルの空室しかもAの部屋まで予約しようと,,
する(甲30【19,20頁,同33【126頁】)必要はないはずであり,また,原告において千葉】
市の自宅に帰宅するにはAの自宅前から再び移動を要するのでタクシーを降りる必要は,,
ないからである。
(エ)以上のとおり原告の供述の一部はAの供述を補強するものであり原告の平成11年,,
,。,5月18日の行動は本件セクハラ行為がないとするには不自然な行動であるしたがって
本件セクハラ行為がないとの原告の供述は信用性に乏しいというほかない。
キこれらの事情に照らすと,A供述は信用性が高く,前記(1)の事実認定に使用するのが
相当であり他方原告の主張及びこれに沿う原告の供述はA供述と真っ向から異なる内,,,
容であるところ,A供述に信用性がある以上,A供述に反する前記原告の供述等は採用する
ことができない。
(3)小括
以上によれば,原告はAに対し,前記(1)のとおりセクハラ行為を行ったことが認められ
他にこの認定を左右するに足りる証拠は存在しないそうだとするとAの自宅マンショ,。,
ン付近での原告の行為を除いてみても原告のAに対するセクハラ行為について国家公務,,
員としての官職の信用を傷付け国民全体の奉仕者たるに相応しくない非行であり(国家公,
務員法99条)国家公務員としてまた教育者としての自覚と責任感の欠如によるものと,,,
判断し,国家公務員法82条1項1号,3号に基づき,原告を停職3月とした本件懲戒処分は,
相当なものであって,取消事由は存在しないというべきである。
3小括
前記1,2の検討結果によれば,本件懲戒処分は,手続的にも実体的にも違法な点は存在
せず,したがって,同処分の取消請求は理由がなく,また,同処分が違法であることを前
提とする原告の国家賠償請求も理由がないというべきである。
4争点(3)(本件停止措置の違法性)について
(1)認定事実
前記争いのない事実等,証拠(文中又は文末の括弧内に掲記したもの)及び弁論の全趣旨
によれば,以下の事実が認められる。
ア被告大学評議会は平成12年6月22日付けで原告に対し被告大学の教育環境の保全,,,
のため,処分を決定するまでの間,すべての教育活動の停止及び大学運営への参加停止を
決定した(前記争いのない事実等(6)オ,乙13)。
イ被告学長は国家公務員法82条1項1号3号に基づき平成13年2月8日付けで原告を同,,,
月9日から停職3月とする本件懲戒処分をした(前記争いのない事実等(7),甲1,乙10)。
ウ原告は平成13年3月26日付けで人事院総裁に対し本件懲戒処分の審査請求を行っ,,,
たこれに対し被告大学評議会は本件懲戒処分の執行が終了した平成13年5月10日付け。,,
で,原告に対し,当分の間,すべての教育活動の停止及び大学運営への参加停止を命ずる
本件停止措置を決定した。(前記争いのない事実等(8),(9),甲5)
エ人事院における本件懲戒処分についての審査請求の審理は,平成13年11月で審理を終
えた。しかし,人事院は,審理終了から10か月を経過しても,判断を出さなかった。そこ
で原告及び原告代理人は平成14年9月27日被告学長に対し本件懲戒処分は終了した,,,,
こと,それにも関わらず本件停止措置を継続することには重大な疑義があること,本件停
止措置を続ける根拠を教示してほしいとして,本件停止措置の解除を迫った。これに対し
,被告学長から,原告及び原告代理人に対し,的確な回答が示されたか否かは証拠上不明
である。(甲33,111,弁論の全趣旨)
オ人事院は平成15年6月26日になって同日付けで本件懲戒処分を承認するとの判定を,,
したこれに対し原告は平成15年9月11日本件懲戒処分本件停止措置が違法である。,,,,
として本件訴えを提起した。原告代理人は,平成15年10月9日の本件訴えの第1回口頭弁論
期日において,被告大学に対し,早急に本件停止措置の解除を要求した。被告大学は,平
成15年11月26日開催の評議会において,同16年4月1日以降,原告に対する本件停止措置を
解除する旨決定した被告大学は平成16年4月から同年7月にかけて月1回のペースで原。,,
告に対し,憲法の話,人権の話をするなどして研修を受けさせ,再度,セクハラ行為を行
わないような措置を講じている。こうして,原告は,平成16年4月1日以降,被告大学文教
育学部人間社会科学科において教育方法学演習を,人文研究科博士前期課程発達社会科学
専攻において教育方法学演習をそれぞれ担当し,教授会への出席も制限されなくなった。
(前記争いのない事実等(8)(9)甲4原告1516頁当裁判所に顕著な事実弁論の,,,【,】,,
全趣旨)
(2)当裁判所の判断
被告大学は,本件懲戒処分執行後も,原告に反省の態度がなく,同種被害再発の危険性
が除去されたとはいえず,受講生を含む学生全体の動揺や不安を除去し,学生の適正な教
育環境を保全するため被告大学評議会規則第5条10号本学の運営に関する重要事項に,「」
基づき,人事院の判定が行われた後,復職の体制が整うまでの合理的期間内において,本
件停止措置をとったと主張している。
この点,評議会は,大学の自治と学問の自由を担うため,国立学校設置法7条の3に基づ
き,大学運営に関する重要事項について審議するため設置される機関であり(乙24参照),
大学運営に関する措置について一定の裁量権を有していると解することができるものの,
かかる裁量権も絶対無制限なものではなく,裁量の範囲を逸脱し,大学教授らの権利を不
当に制約する場合には,当該措置は違法になるものと解される。
ところで,大学教授にとって,学生に教授することは,その学問研究の成果の発現の機
会であるとともに,学生との対話等を通じて更に学問研究を深め,発展させるための重要
かつ不可欠な場であるということができる。そうだとすると,大学教授が,学生に対し,
講義を担当することは,単なる義務にとどまらず,権利でもあると解するのが相当である
。また,学校教育法によれば,大学には重要な事項を審議するため,教授会を置かねばな
らず(同法59条1項)教授会の組織には助教授その他の職員を加えることができる旨規定,,
しており(同条2項)同法は教授は教授会の構成員であることを当然の前提としているも,,
のと解されるところ,大学に教授会が設けられ,教授がその構成員と認められているのは
,研究,教育の自由を守るための制度的要請として教授会自治を中心とする大学の自治を
尊重するためであり,教授である以上教授会に出席することは,義務にとどまらず,権利
でもあると解するのが相当である。そうだとすると,たとえ大学自治の担い手であるべき
評議会において,大学教授の学生に教授する権利ないし教授会等大学運営への参加につい
てそれぞれ停止措置がとられたのだとしても,当該措置が評議会の裁量権を逸脱し,当該
教授の学生に対し教授する権利ないし教授会等大学運営に参加する権利を不当に制約する
場合には,当該措置は違法になるものと解される。
これを本件停止措置についてみると,本件停止措置は,原告の教授の権利ないし教授会
等大学運営に参加する権利を制約するものであるが,本件事案の性質,本件懲戒処分に至
る経緯(前記1(1))に照らしてみれば,本件懲戒処分の執行が終了した後であっても,受講
生を含む学生全体の動揺や不安を除去し,学生の適正な教育環境を保全するため,原告が
教育課程に復帰するまでの準備期間として,一定期間,原告の教育活動の停止及び教授会
等大学運営への参加停止措置をとることは,大学の自治を担う評議会として裁量の範囲内
にあったということはできるしかしながら本件停止措置は前記(1)ウないしオのとお。,,
り本件懲戒処分の執行が終了した後約3年間に及んでいるところ上記事情を考慮しても,,
,原告が教育課程に復帰するための準備期間としては,本件懲戒処分の執行が終了し,か
つ,人事院の審理が終了し約1年を経過した後の新学期開始前日の平成15年3月31日までで
十分であると解するのが相当である前記2(1)で認定したとおり原告のAに対するセクハ。,
ラ行為は平成11年5月18日の1回だけであり本件全証拠を検討するも原告がA以外の学,,,
生に対し,セクハラ行為をしていたと認めるに足りる証拠の存在しない本件にあっては,
,原告及び原告代理人が被告学長に対し本件停止措置の解除を求めた平成14年9月27日以降
6か月もあれば被告大学において原告に研修等を受けさせること等の措置をとることによ,
り,原告が被告大学において学生に対しセクハラ行為を働く危険性は除去された蓋然性が
高いというべきである。しかるに,被告大学評議会が,本件停止措置を解除することなく
,当該措置を漫然と放置したことは,原告の教授の権利ないし教授会等大学運営に参加す
る権利を不当に制約するものであり,本件セクハラ行為を理由に本件懲戒処分のほか本件
停止措置まで課すものとしていわば二重処分をしたことにほかならず,平成15年4月1日以
降の本件停止措置は,裁量権の逸脱があったとして違法という評価を免れない。この点に
関し,被告大学は,人事院の判定がされるまでの間及びその後一定期間は,復職の体制を
整えるための合理的期間であると主張する。しかしながら,被懲戒処分者である原告が,
人事院に対し審査請求をすることは国家公務員法90条1項に基づく正当な不服申立権,,,
の行使であり,これについての判定が出るまでは,教育活動の停止及び教授会等大学運営
への参加停止措置をとることができるとすれば,大学教授について正当な不服申立権の行
使を抑制し,実質的にみて,二重の処分を課するのと同様な結果を招来することになるこ
と,仮に人事院の結論が出るまで長期間を要し,この期間中原告の権利を制限し続けるこ
とになれば,原告に酷を強いる結果となり相当とは思われず,これらの諸点に照らすと,
上記被告大学の主張は採用することができない。この点,確かに,被告大学が女子大学で
あること,本件セクハラ行為が大学教授の学生に対するものであることなど諸般の事情に
照らせば,被告大学において本件停止措置をとり,これを継続したことは心情的に理解で
きなくはないしかし前記のとおり本件懲戒処分から2年を経過した後も本件停止措置。,,
をとり続けることは,やはり違法であるとの謗りを免れないというべきである。
したがって,本件停止措置のうち,平成15年4月1日から同16年3月31日(本件停止措置の
解除日の前日)までの部分については違法であり被告大学は国家賠償法1条1項に基づ,,,
く,損害賠償責任を免れないというべきである。
5争点(4)(損害額)について
前記4のとおり,原告は,平成15年4月1日から同16年3月31日までの間の本件停止措置に
ついて,被告大学に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償請求権を有する。そして
,平成15年4月1日以降本件停止措置が解除されるまでの期間,原告が教育者として学生に
対し教育活動をすることができず,教授会にも出席を許されなかったために被った不利益
(甲108弁論の全趣旨)は大きいものがありその他本件における諸般の事情を総合考慮す,,
ればこれによって原告が被った精神的苦痛を慰謝するための金額は100万円を下らない,,
ものと認めるのが相当であり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
第4結語
以上によれば,原告らの本訴請求は,主文1項(前記4)の限度で理由があるのでこれを認
容し,その余はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし,被告大学の仮執行免脱
宣言の申立てについては,不相当と認め,却下することにする。
東京地方裁判所民事第36部
裁判長裁判官難波孝一
裁判官知野明
裁判官増永謙一郎は,転補のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官難波孝一

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