弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人が控訴人に対して平成14年10月30日付けでした平成10年10月11
日から平成11年10月31日までの傷病手当金を控訴人に支給しない旨の処分を取り
消す。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
4仮執行宣言
第2事案の概要
1本件の事案の概要は,原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」の冒頭部分(原
判決2頁4行目から同12行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。
原審は,控訴人の請求を棄却したため,控訴人がこれを不服として控訴した。
2関係法令の定め,前提事実,争点及び当事者の主張の要旨は,次のとおり付加訂正す
るほか,原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」一ないし四(なお,原判決6
頁2行目の「二」は「三」の,同9行目の「三」は「四」の誤記と認める)記載のとお。
りであるから,これを引用する。
(1)原判決の付加訂正
「,」「,」。原判決4頁9行目の審査官に対しの次に平成11年10月5日を加える
(2)控訴人の当審における主張
①控訴人に発症した疾病が業務上のものであれば,労働基準監督署が給付手続の窓
,,,口となり業務外のものであれば社会保険事務所が給付手続の窓口となるところ
業務上外の判断は表裏一体であり,しかも,労災法に基づく療養補償給付も旧健康
保険法に基づく傷病手当金給付も,共に政府が保険者であり,労働基準監督署も社
会保険事務所も,行政組織上厚生労働省に属する同省の出先機関であるから,同一
の行政出先機関が窓口として,療養補償給付と傷病手当金給付の手続事務を扱うべ
きであり,そうすれば,双方から給付が受けられなくなるという事態は,高い確率
で防げるものである。控訴人は,同一疾病について,労災法に基づく療養補償給付
請求をしているのであるから,傷病手当金給付請求について権利不行使の状態であ
ったということはできない。これを否定することは,政府の行政組織上の不手際を
控訴人の責任に転化するもので,違法である。
②原審は,被控訴人が本件不支給処分をするまでに1年の期間を費やしていること
について適当な評価を行っていない。被控訴人が著しい不作為をして適正でない行
政手続が行われた処分の場合は,消滅時効の成立についても,柔軟に判断すべきで
ある。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり付加
訂正するほか,原判決「事実及び理由」の「第三当裁判所の判断」一ないし三記載の
とおりであるから,これを引用する。
(1)原判決の付加訂正
原判決17頁下から8行目の「A社労士は」の次に「被控訴人に宛てた平成13年,
10月30日付け書面で」を,同下から2行目の「余地はない」の次に「なお,控,(
訴人が本件請求をしたのは,労災法に基づく療養補償給付の請求が前橋労働基準監督
署長により棄却された平成11年9月28日よりも2年以上後で,群馬労働者災害補
償保険審査官により棄却された平成12年2月28日よりも1年半以上後である平成
13年11月1日である」をそれぞれ加える。。)
(2)控訴人の当審における主張に対する判断
①控訴人の窓口一本化の主張は,傾聴に値する面があるとはいえ,法令上,労災法
に基づく療養補償給付と旧健康保険法に基づく傷病手当金給付とは,その給付目的
を全く異にしており,請求先や請求手続も個別に規定されているのであるから,そ
,の各給付手続の窓口を労働基準監督署と社会保険事務所とに区分していることには
相応の合理性があるということができ,上記の窓口区分が直ちに違法,不当である
ということはできない。控訴人は,法令上,同一疾病について,労災法に基づく療
養補償給付と旧健康保険法に基づく傷病手当金給付の双方の請求をすることが可能
であったのであるから,前者の請求をしたからといって,後者の請求をしたと同視
することはできず,後者について権利不行使の状態であったというほかはない。
なるほど,控訴人主張のとおり,労災法に基づく療養補償給付は業務上発生した
疾病が前提となり,他方,旧健康保険法に基づく傷病手当金給付は業務上発生した
ものでない疾病が前提となっていることや,法律上,これらの給付を同時に受ける
ことができないことから,両者を同時に請求することは,請求者において,相反し
矛盾する主張を同時にしなければならないこととなる。そこで,労災法に基づく療
養補償給付を先行して請求した場合,その結果をまってから旧健康保険法に基づく
,。,傷病手当金給付の請求をしたくなることは十分に理解し得るところである特に
労災法に基づく療養補償給付を請求しながら,旧健康保険法に基づく傷病手当金給
付も請求した場合,そのことが前者の給付の可否を審査する担当者に判明し,同担
当者が,請求者において当該疾病を業務上のものでないことを自認していると受け
取るものと思料し,心理的に両者を同時に請求することに抵抗を感ずる請求者もあ
。,,,り得ないわけではないしかしながら本件においては前橋労働基準監督署長は
平成11年9月28日,控訴人に対し,控訴人の疾病は業務上の事由によるものと
は認められないとの理由で控訴人の請求する療養補償給付をしない旨の処分をして
いるのである。このように,労災法に基づく療養補償給付の可否については,最終
的ではないとしても,行政庁による一応の判断は示されているため,控訴人におい
て,旧健康保険法に基づく傷病手当金給付を請求することは十分可能な状況となっ
たのであり,また,それから1年以上は旧健康保険法に基づく傷病手当金給付のす
べてについて時効により消滅しないのであるから,時効による消滅を理由とする本
件不支給処分には何らの違法もない。
,(),。したがって控訴人の前記第2の22①の主張は採用することができない
②被控訴人が本件不支給処分をするまでに1年の期間を費やしていることは,争点
3に関するものであるところ,その前提問題である争点2に関する控訴人の主張は
認められないから,争点3に関する判断をしていない原審が不当であるとはいえな
い。また,被控訴人が著しい不作為をして適正でない行政手続が行われた処分の場
合は消滅時効の成立についても柔軟に判断すべきである旨の控訴人の主張は,独自
のものであって,採用することができない。
したがって,控訴人の前記第2の2(2)②の主張も理由がない。
2よって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,
これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第17民事部
裁判長裁判官南敏文
裁判官佐藤公美
裁判官堀内明

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