弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人宗宮信次、同川合昭三の上告理由第一点(一)について。
 所論は、原判決が、「本件字aと字bの字境は本件土地分割より前に客観的にあ
つたものと考えるのが相当であろう」と判示したことを非難するものであるけれど
も、右は原判決の挙示する証拠関係、事実関係からこれを肯認し得ないことはない。
原判決に所論の違法は存せず、論旨は、ひつきよう、原審の認定にそわない事実を
主張して、原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定並びにこれに基づく正当
な判断を非難するに帰し、採るを得ない。
 同点(二)、(三)、(四)、(五)について。
 所論は、原判決が、判示第七号標の立つている沢およびそれより北方に連らなる
沢が、本件字境であつたと認めるのが相当であり、従つて本件甲乙両地の境界は、
右第七号標と鑑定人の測点Bを結ぶ線であると認めざるを得ない旨判示するに際し
てなした証拠の取捨判断を非難するものであるけれども、原判決の右判示はその挙
示する証拠関係、事実関係からこれを肯認し得ないことはない。原判決に所論の違
法は存せず、論旨は、ひつきよう、原審の認定にそわない事実を主張して原判決の
適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採るを得ない。
 同点(六)(末項記載の部分も含む)について。
 所論は、原審の認定せる本件甲地乙地の境界線と異なる境界線を主張し、これを
前提として原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、その
他の論旨の理由のないことは前述のとおりであつて、論旨はいずれも採るを得ない。
 同第二点について。
 所論は、原判決が原審鑑定Dの鑑定の結果を援用したことを非難するものである
けれども、右は原審の自由な裁量権の範囲に属する事項を非難するものであり、論
旨は、ひつきよう、原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰
し、原判決に所論の違法は存せず、論旨は採るを得ない。
 同第三点について。
 本件の如き境界確定訴訟にあつては、裁判所は当事者の主張に覊束されることな
く、自らその正当と認めるところに従つて境界線を定むべきものであつて、すなわ
ち、客観的な境界を知り得た場合にはこれにより、客観的な境界を知り得ない場合
には常識に訴え、最も妥当な線を見出してこれを境界と定むべく、かくして定めら
れた境界が当事者の主張以上に実際上有利であるか不利であるかは間うべきではな
いのであり、当事者の主張しない境界線を確定しても民訴法一八六条の規定に違反
するものではないものと解するのを相当とする(最高裁判所昭和三七年(オ)第九
三八号同三八年一〇月一五日第三小法廷判決、民集一七巻九号一二二〇頁参照)。従
つて、原判決に所論の如き事実があつても、何ら違法は存せず、論旨は独自の見解
に立つて原判決を非難するものであり、所論引用の判例中、大審院昭和二年六月一
四日(論旨に一日とあるのは誤記と認む)の判例は本件に適切でなく、その余の各
判例の見解については、本件判決の趣旨に抵触する部分は、当裁判所の採るを得な
いところである。論旨は採るを得ない。
 同第四点について。
 原判決の所論判示が肯認し得ないことはなく、原判決に所論の違法が存しないこ
とは、前記第一点において述べたところから明らかである。論旨は採るを得ない。
 同第五点について。
 所論は、原判決が本件境界を認定するに際してなした証拠の取捨判断を非難する
ものであるけれども、原判決の右判示は、その挙示する証拠関係、事実関係からこ
れを肯認し得ないことはなく、原判決に所論の違法は存せず、論旨は、ひつきょう、
原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    田   中   二   郎

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