弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を水戸地方裁判所土浦支部に差し戻す。
         理    由
 本件控訴の趣旨は別紙被告人名義の控訴趣意提出書と題する書面及び弁護人岩村
辰次郎名義の控訴趣意書と題する書面にそれぞれ記載の通りである。これに対して
当裁判所は左の通りに判断する。
 弁護人論旨第一点について。
 <要旨第一>刑事訴訟法が第三百十九条の規定を設け、且つ同法第二百九十一条第
二項及び刑事訴訟規則第百九十七条の手続を定めた所以のものは、久し
く権威主義的訴訟制度の下に推移して来た我国において、法的自覚の十分でない被
告人が不用意の中にその防禦権を不当に損なわれることがあるのを深く憂えたから
に外ならない。それ故に、裁判所は刑事事件を審理するに当つては、常にこれら規
定の趣旨に則り被告人の不熟練を補つてその防禦に万全を尽くさせるように力め、
かりそめにもその不用意の中に蒙むることのある不利益を表過するような<要旨第
二>ことがあつてたらないことは勿論である。従つて、裁判所は、公判期日において
被告人が犯罪事実に相違ない旨述べたような場合においても、その陳述
が果してその真意に出たものであるかどうか、殊に犯罪事実の内容である各要件を
十分認識理解してこれを述べておるものであるかどうかを検討した上でなければ容
易にこれを受容れるべきではなく、若しこれについていささかでも疑問があるよう
なとき又はその後の取調によつてかかる疑問が生じたようなときには、或いは具体
的に詳しくこれを問い質し或いは反対質問を試みる等の方法をもつて、十分にその
真意を釈明することの労を厭うべきではない。従つて、若し右のように公判期日に
おいて被告人が犯罪事実に相違ない旨冒頭陳述をした場合において、その後の証拠
調の結果により右陳述について社会通念上その真意を疑わねばならないような事情
があらわれたにも拘らず、裁判所が何等右のような措置に出ることなく漫然その審
理を終え、しかもこの陳述に基いて犯罪事実を認定するようなことがあるとすれ
ば、それはただにその認定の結果が誤となるばかりでなく、それ自体すでに真意に
出たものでない疑のある自白を証拠とする違法を冒すものと言わなければならない
わけである。記録によると、本件において被告人は原審公判期日の冒頭に裁判所か
ら刑事訴訟法第二百九十一条第二項刑事訴訟規則第百九十七条第一項の事項を告げ
られた上被告事件についてはその通りであつて別に争う事もない旨述べ、原審はこ
の陳述と各被害者の被害届被害始末書とによつてその判示する窃盗事実を認めたも
のであることが明らかである。しかし、原審において右被告人の冒頭陳述の後証拠
として順次朗読せられた書類の中の被告人及び原審相被告人aの各供述調書の内容
は所論に詳細援用する通りであつて、これによれば、公訴事実中特に第一、第二事
実の犯意については被告人の右陳述と甚だしくその趣旨を異にするものであり、し
かも原審が取調べたその他の各証拠に照らしてもこれらの記載が不合理で信用でき
ないものとは容易に考えることができないものであるから、これを前記被告人の冒
頭陳述と考え合せるときはその間の不一致ひいて右冒頭陳述の真意に出たものであ
るかどうかについて何人も疑を起さないわけにはいかないものである。従つて原審
としては、よろしくこの点に思を致し、前述のように重ねて被告人に対して必要左
釈明を行うべき筈であつたのに拘わらず、原審はその後の取調においても犯罪事実
については少しも被告人の陳述を聴くことなく、漫然その審理を経て、しかも前諾
のように、判決に当つてこの真意に出たものであることの疑われる被告人の冒頭陳
述と被害届等とのみを以て犯罪事実を認めたものであるから、原審は所論のように
審理を尽さず経験則によらないで事実を誤認した違法があると何時に、真意に出た
ものでない疑のある自白を証拠とした違法があるものと謂わなければならない。而
してこれらの違法はいずれも原判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判
決には刑事訴訟法第三百八十二条及び第三百七十九条に当る事由があるものであつ
て、論旨はその理由がある。
 仍つて爾余の弁護人及び被告人の各論旨については判断を省略し、刑事訴訟法第
三百九十七条第四百条に則つて主文の通り判決する。
 (裁判長裁判官 佐伯顕二 裁判官 久礼田益喜 裁判官 仁科恒彦)

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