弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人遠藤一の控訴趣意は記録編綴の同弁護人名義の控訴趣意書の記載と同一で
あるから茲に引用する。
 控訴趣意第一、二点について
 しかし記録を精査し、原判決摘示の証拠を綜合考察するに原判示事実は認定しう
るところであつて、原判決には事実誤認を窺うべき事由や採証法則違反や法令の誤
り等は存しない。所論は結局独自の見解に基く主張ないし原審の採用しない証拠に
立脚する主張であつて採るを得ない。論旨は理由がない。
 同第三点について
 記録を調査するに医師A作成の診断書は弁護人の不同意のため証拠調は実施せら
れず終結となつたが右書面は昭和二十六年四月五日原審第三回公判期日に右医師A
を証人として尋問した際原審検察官は該書<要旨第一>面を同人に示して夫れに基き
尋問したことは洵に明らかである。しかし結局証拠とならなかつた右書面につい 要旨第一>て証人に示して尋問が行はれこの供述を証拠に採つ化からと言つても判決
に影響を及ぼすべき明らかな法令違反があつたと断ずることは出来ない。論旨は採
用しえない。
 同第四点について、
 <要旨第二>弁護人が公判廷で「本件公訴事実は其の証明不十分で本件事実は究明
の上無罪の裁判を求める」旨の弁論があつたとしても右は裁判所が刑事
訴訟法第三百三十五条第二項の判断を示さなければならない事由の主張に該当しな
いと認めるべきであるから原判決がこれに対し何等の判断をも示さなかつたのは当
然であつて毫も違法の点は存しない。論旨は理由がない。
 以上のとおりであるから刑事訴訟法第三百九十六条に則り本件控訴を棄却すべき
ものとして主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 大野正太郎 裁判官 松村美佐男 裁判官 蓮見重治)

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