弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役2年及び罰金150万円に処する。
     原審における未決勾留日数中30日をその懲役刑に算入する。
     その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間被告
人を労役場に留置する。
理由
 本件控訴の趣意は,弁護人眞田順司が提出した控訴趣意書記載のとおりであるか
ら,これを引用する。
第1 法令適用の誤りの主張について
  論旨は,要するに,原判決は,(1)原判示の児童福祉法違反行為と児童買春,児童
ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春等処罰
法」と略称する。)違反行為とは観念的競合の関係にあるとしたが,これは法条競合の
関係にあり,いずれか一方のみが適用されるべきである,また,(2)刑及び犯情の最も重
いAに対する児童福祉法違反罪に定めた懲役刑で処断するとしながら,児童買春等処
罰法に定めた罰金刑を併科したが,これは法律上の根拠がなく,懲役刑のみで処断す
べきである,これらの点で原判決には法令適用の誤りがある,というのである。
 そこで,原審記録を調査して検討する。
 (1)の点について
 児童福祉法34条1項6号違反罪(以下,単に「児童福祉法違反罪」ともいう。)は,児
童に淫行をさせる行為をすることにより成立するのに対し,児童買春等処罰法5条2項
違反罪(以下,単に「児童買春等処罰法違反罪」ともいう。)は,児童買春の周旋をする
ことを業とすることが構成要件とされているところ,それぞれの法律の目的にも照らす
と,いずれか一方の罰条のみを適用することが予定されている法条競合の場合に当た
らないことが明らかである。したがって,原判決が,原判示事実につき各児童福祉法違
反罪(ただし,下記に述べるところに留意)及び児童買春等処罰法違反罪が成立すると
した上で,各児童福祉法違反罪と児童買春等処罰法違反罪とが観念的競合の関係に
あるとしたことは正当である。
 なお,原判決は,児童福祉法違反罪に関し,「判示1ないし4の各所為はいずれも児童
福祉法60条1項,34条1項6号にそれぞれ該当する」としているが,同罪は児童ごとに
別罪が成立し,かつ,Bに関しては,淫行をさせた回数が複数回であるが,包括して1罪
を構成するものと解するのが相当であるから,C(原判示1),B(同2ないし4)及びA(同
4)それぞれにつき同罪が成立し,これがいずれも児童買春等処罰法違反罪と観念的競
合の関係にあるというべきで,その点で原判決の法令適用には誤りがある。しかし,これ
は処断刑の範囲に変更を来さないから,判決に影響を及ぼすものではない。
 (2)の点について
 前記のとおり,〈要旨〉児童福祉法違反罪(法定刑は10年以下の懲役又は50万円以
下の罰金,同法60条1項)は3名の各児童ごとに1罪となり,それぞれ児童買春等処罰
法違反罪(法定刑は5年以下の懲役及び500万円以下の罰金,同法5条2項)と観念的
競合の関係に立ち,結局,以上が1罪として処理されることとなり,刑法54条1項前段に
より「その最も重い刑」により処断すべきところ,その趣旨を合理的に解釈すると,刑及
び犯情の最も重いBに対する児童福祉法違反罪の懲役刑及び児童買春等処罰法違反
罪につき定められている併科刑である罰金刑によって処断すべきものと解するのが相
当である(最高裁昭和28年4月14日第三小法廷判決・刑集7巻4号850頁,同昭和3
2年2月14日第一小法廷判決・刑集11巻2号715頁参照)。〈/要旨〉なお,このように
解しても少年法37条2項の解釈として,児童買春等処罰法5条2項違反罪についての
家庭裁判所の管轄が失われるものではない。そうすると,この点についても,原判決に
所論のいうような法令適用の誤りは存しない。
 論旨はいずれも理由がない。
第2 量刑不当の主張について
  論旨は,要するに,被告人を懲役2年6月及び罰金150万円に処した原判決の量刑
は重過ぎて不当である,というのである。そこで,検討する。
 本件は,売春クラブを経営していた被告人が,当時15歳の女子児童2名及び当時16
歳の女子児童1名を雇い入れ,原判示のとおり,遊客に引き合わせて,それぞれ性交さ
せ,もって,それぞれ18歳に満たない児童に淫行をさせる行為をするとともに,児童買
春の周旋をすることを業としたという事案である。被告人は,借金の返済をするため,手
っ取り早く現金を得ようとして売春クラブの経営を始めたもので,まさに本件犯行は職業
としてなされたものである。被害児童の年齢は15歳ないし16歳と低年齢であって,相当
長期間にわたって多数回の淫行をさせていたものであり,その心身に及ぼした悪影響は
大きいこと,本件犯行等により多額の利益を得ていたと認められることなどに照らして,
犯情は悪く,悪質な事案といわなければならない。加えて,被告人は,昭和62年10月,
児童福祉法違反罪(本件と同種の犯行)により懲役1年6月,執行猶予3年に処せられ
たことがあるほか,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反罪等によ
る罰金前科4犯を有する。以上によれば,被告人の刑事責任は相当に重い。
 しかし,他方において,被告人が捜査段階から事実関係を認め,今後は正業に就く旨
述べていること,弟が監督を誓っていること,懲役刑に服するのは今回が初めてである
ことなど被告人のために斟むべき情状を考慮すると,被告人を懲役2年6月及び罰金1
50万円(求刑懲役3年及び罰金150万円)に処した原判決の量刑は,懲役刑の刑期に
おいていささか重きに失するというべきである。論旨は理由がある。
第3 自判
  そこで,刑訴法397条1項,381条により原判決を破棄し,同法400条ただし書によ
り,当裁判所において,更に次のとおり判決する。
 原判決が認定した罪となるべき事実に法令を適用すると,原判示各児童に淫行をさせ
た点は,C(原判示1),B(同2ないし4を包括して)及びA(同4)の各児童ごとにいずれ
も児童福祉法60条1項,34条1項6号(同1につき更に同法60条3項)に,原判示児童
買春の周旋をすることを業とした点は,児童買春等処罰法5条2項(原判示1につき更に
同法9条)にそれぞれ該当するところ,各児童に淫行をさせた点と児童買春の周旋をす
ることを業とした点は,それぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,刑
法54条1項前段,10条により結局以上を1罪として刑及び犯情の最も重いBに対する
児童福祉法違反罪の懲役刑及び児童買春等処罰法違反罪の罰金刑で処断することと
し,その所定刑期及び金額の範囲内で,前記情状を考慮して被告人を懲役2年及び罰
金150万円に処し,刑法21条を適用して原審における未決勾留日数中30日をその懲
役刑に算入し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金1万円を1
日に換算した期間被告人を労役場に留置し,原審及び当審における訴訟費用は,刑訴
法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中川武隆 裁判官 角田正紀 裁判官 岡部 豪)

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