弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人A、同Bの弁護人徳岡二郎の上告趣意第一点、第二点は、単なる訴訟法違
反の主張であり(原判決中ナルコポンスコポラミン注射液三二二本とあるのは、記
録に照し同二二二本の誤記と認められる。されば、原判決には、所論の訴訟法違反
は認められない。)、同第三点は、事実誤認、並びに、これを前提とする法令違反
の主張に帰し、同第四点は、量刑の非難に帰し、すべて、刑訴四〇五条の上告理由
に当らない。また記録を調べても、同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 被告人Cの弁護人花井忠の上告趣意第一点について。
 原判決挙示の被告人の自白のほか挙示のDの供述を綜合すれば、判示第四の事実
認定を肯認できないことはないばかりでなく、判示第四の判示で、「前記第三記載
のとおり云々」と判示して判示第三の事実をも引用し、従つて、同第三判示の証拠
をも引用したものと解されるから、その証拠をも綜合すれは、被告人Cの供述とそ
の他の証拠と相俟つて判示第四の事実認定を裕に是認できること多言を要しない。
それ故、所論は、採用できない。
 同第二点について。
 麻薬取締法七四条による麻薬取締規則四二条、五六条一、二項所定の法定刑であ
る三年以下の懲役及び五千円以下の罰金の範囲内において量定された被告人に対す
る本件の懲役一年二月及び罰金五千円の実刑を目して残虐な刑罰といえないことは、
当裁判所大法廷屡次の判例の趣旨に照し多言を要しないところである。そして、懲
役の言渡を受けた者が年令七十年以上であるときは、検察官において刑の執行を停
止することができることは、所論刑訴四八二条及び旧刑訴五四六条の規定するとこ
ろである。されば、所論違憲の主張は、採用できないし、また、本件につき刑訴四
一一条を適用して、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められ
ない。
 被告人Eの弁護人松野祐裔の上告趣意について。
 憲法三七条一項にいわゆる公平な裁判所の裁判とは、裁判所の組織、構成におい
て、偏頗や不公平のおそれのない裁判所の裁判を指し、裁判の具体的内容が当事者
の側から見て不公平だと思われない裁判をいうものでないことは、当裁判所屡次の
判例とするところである。されば、所論違憲の主張は、採用できない。そして、記
録を調べても、本件につき同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 被告人Eの上申書は、上告趣意書提出期間経過後の提出にかかるものであるから、
これについては判断を与えない。
 よつて、刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条により、裁判官全員一致の意見で主
文のとおり判決する。
  昭和二九年一月二八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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