弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
東京都大島町長が原告に対してした平成19年5月16日付け情報非公開決
定(19大総収第×××号×)を取り消す。
第2事案の概要
本件は,東京都世田谷区の住民であり,東京都議会議員を務める原告が,平
成19年5月7日,大島町情報公開条例に基づいて東京都大島町長(以下「大
島町長」という。)の交際費及び東京都大島町議会議長(以下「大島町議会議
長」という。)の交際費の出納簿及び領収書の情報公開請求をしたところ,大
島町長が,原告が同条例5条に定める「情報の公開を請求できる者」に該当し
ないことを理由に情報非公開決定をしたため,同決定の取消しを求める事案で
ある。
1大島町情報公開条例の定め
(1)1条(目的)
この条例は,大島町の保有する情報を公開し,町政に関する町民の知る権
利を保障することにより,町民の町政への参加をより一層推進するとともに,
町政の公正な運営を確保し,もって福祉の増進に寄与することを目的とする。
(2)5条(情報の公開を請求できる者)
次に掲げる者は,実施機関に対し情報の公開を請求することができる。
1号大島町(以下「町」という。)の区域内に住所を有する者
2号町の区域内に事務所又は,事業所を有する個人及び法人その他の団体
3号町の区域内に存する事務所又は,事業所に勤務する者
4号町の区域内に存する学校に在学する者
5号前各号に掲げるもののほか,実施機関が行う事務事業に利害関係を有
する者。ただしこの場合の情報公開は,その者の有する利害関係に係る
ものに限る。
2前提事実
証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実は末尾に当該証拠を掲記した。
その余の事実は争いのない事実である。
(1)当事者等
ア原告は,東京都世田谷区の住民であるが,東京都議会議員を務めており,
東京都の予算の適正執行等を監視することを職務として活動している。
イ被告は,東京都に位置しており,東京都から総合交付金や各種補助金の
交付を受けるなどして,事務事業を行っている。
ウ大島町長は,大島町情報公開条例2条に定める被告の実施機関である。
(2)本件訴えに至る経緯
ア原告は,平成19年5月7日,大島町長に対し,大島町情報公開条例5
条5号に基づき,同18年4月1日から同19年4月30日までの大島町
長の交際費及び大島町議会議長の交際費の出納簿及び領収書の情報の公開
を請求した。
イ大島町長は,平成19年5月16日付け情報非公開決定通知書をもって,
原告が大島町情報公開条例5条に規定する「情報の公開を請求できる者」
に該当しないことを理由に,上記アの請求について公開しないことに決定
した旨の通知をした(以下,同決定を「本件非公開決定」という。)。
(甲1)
ウ原告は,平成19年5月29日,本件非公開決定の取消しを求めて本件
訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実)
3争点
原告が大島町情報公開条例5条5号に定める「実施機関が行う事務事業に利
害関係を有する者」に該当するか否か。
4争点に関する当事者の主張
(1)原告の主張
被告は,東京都に位置し,東京都から総合交付金や各種補助金の交付を受
けるなどして,事務事業を行っているものであるところ,原告は,東京都議
会議員を務め,東京都の予算の適正執行等を監視することを職務として活動
しているものであるから,大島町情報公開条例5条5号に定める「実施機関
が行う事務事業に利害関係を有する者」に該当する。
原告は,東京都新島村,東京都神津島村及び東京都八丈町に対しても,本
件と同様に情報の公開請求をしたが,その際公開された文書等には,上記各
町村の町長,村長,町議会議長及び村議会議長の各交際費を支出した相手方
として,東京都知事を含む多くの東京都職員の職名及び氏名が記載されてい
た。大島町長が本件非公開決定により非公開にした文書にも,東京都職員が
接待の相手方や土産の贈り先として記載されているものと推測され,そうで
あるからこそ,官官接待を隠すために非公開にしたものと考えられる。
したがって,本件非公開決定は,大島町情報公開条例に反し違法である。
(2)被告の主張
被告は,大島町情報公開条例を制定するに当たり「大島町情報公開制度事
務手引き」を作成し,同手引きに基づき,同条例の解釈適用及び運用を行っ
てきた。
同手引きでは,大島町情報公開条例5条5号にいう「利害関係を有する
者」として,①実施機関によって処分を受けた者が,自己の権利利益に影響
を受け又は受けるおそれのある場合,②町の施設の利用者が,当該施設の使
用に関して,自己の権利利益に影響を受け又は受けるおそれのある場合,③
町の区域内に土地建物を有する者が町の事務事業によって当該土地建物に影
響を受け又は受けるおそれがある場合,④町の区域内において,災害等の発
生で被害を受けたことにより,一時的に町の行政に利害関係を有する場合と
いう具体例を挙げているが,いずれも,同号ただし書が「この場合の情報公
開は,その者の有する利害関係に係るものに限る。」としていることにかん
がみ,この「利害関係」は,請求者の権利利益に具体的な影響がある場合を
想定しているものである。
そうすると,原告が原告と被告との間に大島町情報公開条例5条5号に定
める具体的な利害関係が存在することを主張し,又は疎明していない以上,
原告は,同号に定める情報公開を請求することができる者に該当しないとい
わざるを得ない。
したがって,本件非公開決定は適法である。
第3争点に対する判断
1原告は,被告が東京都に位置し,東京都から総合交付金や各種補助金の交付
を受けるなどして,事務事業を行っているものであるところ,自らが東京都議
会議員を務め,東京都の予算の適正執行等を監視することを職務として活動し
ている者であるから,その職務の一環として,大島町長及び大島町議会議長の
各交際費の支出に関して適正な執行等がされているか否かを監視する利害関係
を有するとして,大島町情報公開条例5条5号に定める「実施機関が行う事務
事業に利害関係を有する者」に該当すると主張する。
2そこで検討するに,大島町情報公開条例は,大島町の保有する情報を公開し,
町政に関する町民の知る権利を保障することにより,町民の町政への参加をよ
り一層推進するとともに,町政の公正な運営を確保し,もって福祉の増進に寄
与することを目的とするものである(1条)。そして,地方自治体が定める情
報公開条例において情報公開請求をすることができる者をどのように定めるか
については,当該地方自治体の立法政策として選択の余地があるところ,被告
においては,大島町情報公開条例の定める上記目的に資するように,同条例5
条において情報の公開を請求することができる者を規定し,具体的には,大島
町の区域内に住所を有する者(1号),同区域内に事務所又は事業所を有する
個人及び法人その他の団体(2号),同区域内に存する事務所又は事業所に勤
務する者(3号),同区域内に存する学校に在学する者(4号)を列挙し,加
えて,5号において,実施機関が行う事務事業に利害関係を有する者を前各号
に準ずる者として規定している。他方,公開の対象となる情報は,実施機関の
職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画,写真,フィルム及び電磁的記
録その他これに類するものから出力又は採録されたものであるが(2条),同
条例5条5号に基づく情報公開の請求である場合には,公開の対象となる情報
は,上記のような情報のうち,情報の公開を請求した者の有する利害関係に係
るものに限定されている(同号ただし書)。そうすると,同号にいう「利害関
係を有する」とは,大島町の予算の適正な執行等を監視する職務を遂行すると
いうような抽象的な関係性にとどまらず,その者に固有の具体的な権利ないし
利益との関係性をいうものと解するのが相当である。
原告が東京都議会議員を務め,東京都の予算の適正執行等を監視することを
職務として活動している者であり,他方,被告は,東京都に位置し,東京都か
ら総合交付金や各種補助金の交付を受けるなどして,町政に関する事務事業を
行っているものであることは争いのない事実であるが,大島町情報公開条例の
目的は上記のとおりであり,住民自治の観点からその制度目的に資するように,
大島町の住民等その他その情報に関わる具体的な権利ないし利益を有する者に
当該情報の公開を請求する権利を付与するにとどめているのであって,東京都
議会議員であっても,大島町の外部の者が大島町の行政一般を監視するための
制度として規定されているものではない以上,前記1の関係以上に大島町の町
政に関し具体的な利害関係を有していることを主張立証していない原告が大島
町情報公開条例5条5号に定める者に該当すると認めることはできないといわ
ざるを得ない。
3以上のとおりであるから,原告は,大島町情報公開条例5条各号に定める
「情報の公開を請求できる者」に該当しないというべきである。
4結論
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担に
つき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官杉原則彦
裁判官小田靖子
裁判官島村典男

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