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平成28年2月17日判決言渡
平成27年(行コ)第68号新石垣空港完成検査合格処分取消請求控訴事件
主文
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
(前注)略称は,原判決の例による。
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2処分行政庁が平成24年12月11日付けで沖縄県に対してした航空法42
条2項に基づくA空港に係る完成検査合格処分(阪空理第○号,阪空全第○号)
を取り消す。
第2事案の概要
本件は,A空港(本件空港)の空港利用者であるなどと主張する控訴人らが,処
分行政庁が沖縄県に対してした航空法42条2項に基づく本件空港に係る完成検査
合格処分(本件処分)は,十分な検査をせずにされたものであり,航空法及び航空
法施行規則(規則)の定める基準に適合しない違法なものであるとして,その取消
しを求めている事案である。
原審は,控訴人らの訴えをいずれも却下した。これに対し,控訴人らが控訴した。
関係法令の定め,前提事実,本件処分の適法性の根拠及び争点とこれに対する当
事者の主張は,次のように補正するほかは,原判決の事実及び理由の第2の1ない
し5に記載のとおりであるから,これを引用する。
1原判決6頁20行目から21行目にかけての「そして」の次に「,たとえば」
を加える。
2原判決7頁16行目及び18行目の「原告B,」をいずれも削除する。
3原判決26頁20行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「(5)48条
国土交通大臣は,次に掲げる場合には,空港等若しくは航空保安施設の設置の許
可を取り消し,又は期間を定めて,空港等の全部若しくは一部の供用の停止を命ず
ることができる。ただし,2号から5号までの場合について設置の許可を取り消す
ことができる場合は,国土交通大臣が空港等の設置者又は航空保安施設の設置者に
対し,相当の期間を定めて,当該施設を申請書に記載した計画若しくは39条1項
1号の基準に適合させるための措置をとるべきこと又は当該施設を47条1項の保
安上の基準に従って管理すべきことを命じ,その期間内に空港等の設置者又は航空
保安施設の設置者が,その命令に従わなかった場合に限る。
ア1号
正当な理由がないのに41条1項の規定により工事を完成しなければならない期
日(同条2項の規定により期日を変更したときは,その期日)までに工事を完成し
ないとき。
イ2号
42条1項(43条2項において準用する場合を含む。)の検査の結果,当該施
設が申請書に記載した設置又は変更の計画に適合していないと認めるとき。
ウ3号
44条5項又は45条2項において準用する42条1項の検査の結果,当該施設
がこれらの申請に係る申請書に記載した計画に適合していないと認めるとき。
エ4号
空港等又は航空保安施設の管理が47条1項の保安上の基準に従って行われてい
ないと認めるとき。
オ5号
空港等の位置,構造等が39条1項1号の基準に適合しなくなったとき。
カ6号
許可に付した条件に違反したとき。」
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人らの訴えはいずれも不適法であって却下を免れないもの
と判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第
3に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決9頁16行目の「航空保安施設」を「空港等」に改める。
(2)原判決12頁26行目末尾の次に行を改めて次のとおり加え,13頁1行目
行頭の「イ」を「ウ」に改める。
「イ控訴人らは,空港完成検査(航空法42条1項)における審査事項に「滑
走路(陸上空港等及び陸上ヘリポートにあっては,基礎地盤を含む。)の強度」(規
則76条1項5号)が含まれる以上,同検査では,空港利用者の生命・身体利益の
考慮(本件空港においては,着陸の際に滑走路地盤の陥没等により直接的かつ重大
な被害が生じる可能性がある。)が不可欠であって,この利益は人格的利益の中核
として公益に吸収解消しえない性質を持つから,同検査においては,空港利用者の
生命・身体利益が個々人の個別的利益として保護されていると解すべきであるとも
主張する。
しかし,空港の完成検査合格処分は,当該完成した空港がその設定の計画に適合
するものであることを確認することによって,航空機の航行の安全及び航空機の航
行に起因する障害の防止を図るものであることは上記判示のとおりであるところ
((2)ア),完成検査合格処分の目的が上記のようなものであることに加え,空港利
用者としては日本に居住する者,海外からの旅行者などが想定され,その属性が限
定されていないことに鑑みると,同処分は,これを通じて,空港利用者という不特
定多数の者の生命・身体の安全の確保という公益の実現を図っているものと解する
のが相当であり,空港利用者の生命・身体利益が公益に吸収し得ない性格を持つこ
とを前提とする控訴人らの上記主張は採用することができない。」
(3)原判決13頁8行目の「,便宜上」を削除する。
(4)原判決13頁24行目の「認められない。」を「認められないし,本件処分
は,これを受けなければ本件空港の供用を開始することができないという法的効果
を付与されているにすぎないものであり(後記2参照),これが取り消されたから
といって上記共有持分権者の権利が直ちに回復されるということもない。」に改め
る。
(5)原判決14頁18行目から21行目までを次のとおり改める。
「なお,弁論の全趣旨によれば,本件空港は既に供用が開始されたことが認めら
れる。そこで,本件処分における訴えの利益について判断するに,空港の完成検査
について,航空法42条2項は,「国土交通大臣は,前項の検査の結果当該施設が
申請書に記載した設置の計画に適合していると認めるときは,これを合格としなけ
ればならない。」と定め,同条3項は,「空港等の設置者又は航空保安施設の設置
者は,1項の検査の合格があったときは,遅滞なく,供用開始の期日を定めて,こ
れを国土交通大臣に届け出なければならない。」と定め,同条4項は「空港等の設
置者又は航空保安施設の設置者は,前項の規定により届け出た供用開始の期日以後
でなければ,当該施設を供用してはならない。」と定めている。こうした規定から
すれば,同条2項の完成検査合格処分は,これを受けなければ空港の供用を開始す
ることができないという法的効果を付与されているにすぎず,当該空港の供用が開
始されれば,完成検査合格処分の有する上記法的効果は消滅するものというべきで
ある。そして,国土交通大臣は,供用開始後においても,所定の場合には空港等の
設置許可の取消しや空港等の供用の停止を命ずることができるとされているところ
(同法48条),完成検査合格処分が有効なものとして存在することが上記取消し
や停止を命ずる上で法的障害となるとは認め難い。したがって,当該空港の供用が
開始された後においては,完成検査合格処分の取消しを求める訴えの利益は失われ
るものというべきであり,本件処分の取消しを求める訴えの利益は既に失われてい
るものと解される。」
2よって,以上と同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,こ
れをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第20民事部
裁判長裁判官山田俊雄
裁判官納谷肇
裁判官内田博久

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