弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○主文
原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
○事実
第一当事者の求めた裁判
一請求の趣旨
(原告A及び原告B)
1被告は、別表1記載の<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略
>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地
名略>及び<地名略>の住区住民会議に対し、同表委託事業欄記載の委託事業(ただし、
※印に対応するものを除く)につき、委託料の支出を行つてはならない。。
(原告C及び原告D)
、、(、2被告は別表1記載の住区住民会議に対し同表補助事業欄記載の補助事業ただし
※印に対応するものを除く)につき、補助金の交付をしてはならない。。
(原告ら)
3訴訟費用は被告の負担とする。
二請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二当事者の主張
一請求原因
1原告らは東京都目黒区(以下、単に「区」という)の住民であり、被告は目黒区長。

職にある者である。
2目黒区内の住区住民会議は、区の住民の第一次生活圏域である小学校通学区域を基礎
として区内を二二の区域に分けた各「住区」に一つずつ設立されたとする組織であり、そ
の住区住民会議名及び設立年月日は別表1記載のとおりである(同表記載の住区住民会議
を「本件各住区住民会議」と総称する。。)
3被告は、別表1記載の<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略
>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地
名略>及び<地名略>の住区住民会議に対し、同表記載の委託事業(ただし、※印に対応
するものを除くを委託し昭和六〇年度については別表2記載のとおり委託料公。)、、、(
金)を支出した。
4被告は、本件各住区住民会議に対し、別表1記載の補助事業(ただし、※印に対応す
るものを除く)を補助し、昭和六〇年度については、別表2記載のとおり、補助金(公。
金)
を交付した。なお、<地名略>住区住民会議に対する補助金の交付は、昭和六一年度から
である。
5区が昭和六〇年一〇月に策定した「東京都目黒区基本計画・第二次総合十か年計画」
によれば、昭和六二年度ないし同七〇年度においても、本件各住区住民会議に対する右委
託事業及び補助事業の実施が計画されており、被告が、右各年度において、従前どおり、
右各事業につき前記の委託料及び補助金(以下、両者を併せて「本件公金」という)を。

出することは確実である。
6しかしながら、
被告の本件公金の支出は、次のとおり、違法である。
(一)本件各住区住民会議は、それぞれ規約を有するが、その規約中に構成員に関する
規定を置いているのは、<地名略>及び<地名略>の住区住民会議だけである。しかも、
右両住区住民会議の右規定も、<地名略>住区住民会議のそれは「住民会議は、烏森小、

校通学区域内に居住する住民および働く人びと・・・・・・をもつて組織する、<地。」

略>住区住民会議のそれは「この会は、東京都目黒区<地名略>住区・・・・・・内に、

、。」所自営の店舗またはこれに準ずる生活の本拠をもつ者・・・・・・をもつて組織する
というものであつて、個々の住民の意思にかかわりなく、地域内に居住するすべての者又
は一定資格を有するすべての者を、当然にその構成員とすると読める規定となつている。
しかし、住民らについてその同意を得ることなしに、これをすべて構成員とする規定は、
不当かつ不適当なものであつて、構成員につき全く規定がないというべきか、又は無限定
であるというべきかである。
(二)右(一)の両住区住民会議以外の住区住民会議のうち、多くのものは、その規約
中の総会に関する規定の中に「総会は成年に達した全住民をもつて構成する」などとい。

た趣旨の規定を置いているに過ぎず、右のような規定すら置いていないものもある。
右の総会に関する規定では、住区住民会議自体の構成員は明らかではなく、仮に右規定を
もつて構成員を住民ら全員としているとみられるというのであれば、右(一)に述べたと
同様、右規定は不当かつ不適当なものである。
また、右の総会に関する規定は、総会の成立に関する定足数の定めやその議決に関する定
めを伴つておらず、総会の構成員に関する規定としてみても全く無意味、無価値であると
いうべきであるから、右の総会に関する規定をもつて、住区住民会議の構成員の規定に代
えることはできるはずがない。
なお、規約中に構成員に関する規定もなく、総会の構成員に関する規定すらない住区住民
会議については、何人をその構成員としているかが不明なことはいうまでもない。
(三)更に、実際問題として、本件各住区住民会議は、その地域住民らがその構成員と
なることについて、個々の住民らから同意を得るといつた措置もとつてはいない。
()、、、四被告が前記3記載の住区住民会議に対して委託した事業すなわち住区会議室
談話コーナー等の区の施設の管理、使用料の収納その他の事務は、実際には、区の職員に
よつて行われている。
(五)以上(一)ないし(四)のとおり、本件各住区住民会議は、構成員が不存在又は
不明確な団体であり、また、その活動の実態からみても、実体のない名称だけのものであ
つて、法人格がないことはもとより、いわゆる法人格のない社団にも該当しないから、こ
のような実体のない団体に対する本件公金の支出は違法である。
(六)また、別表1記載の公の施設(住区会議室、談話コーナー、老人いこいの家、児
童館)の管理委託は、公共団体又は公共的団体に対してしなければならないが(地方自治
)、、、法二四四条の二第三項本件各住区住民会議はそもそも団体としての実体がないから
これに対する右の施設の管理委託は違法である。したがつて、被告が前記3記載の住区住
民会議に対してする右の施設の管理委託に係る委託料の支出は違法である。
7原告A、原告Bは、昭和五八年九月八日付けで、被告の本件各住区住民会議に対する
別表1記載の委託事業の委託及び右委託に係る公金の支出につき、原告C及び原告Dは、
同日付けで、被告の本件各住区住民会議に対する交通安全事業など各種事業の委託及び右
委託に係る公金の支出につき(なお、昭和五九年度からは、右事業と同種の事業は補助事
業となり、補助に係る公金が支出されることとなつた、いずれも違法であるとして、。)

監査委員に対し、住民監査請求をしたが、右監査委員は、同年一一月一日付けで、当該原
告らに対し、それぞれ理由がない旨の監査結果を通知した。
8よつて、原告らは、請求の趣旨1及び2のとおり、被告に対し、地方自治法二四二条
の二第一項一号に基づき、本件公金の支出の差止めを求める。
二請求原因に対する被告の認否
1請求原因1ないし5、7の事実は認める。
2同6の冒頭の主張は争う。同6(一)のうち、<地名略>及び<地名略>の住区住民
、。会議の規約中に原告ら主張のとおりの構成員に関する規定があることは認め主張は争う
同6(二)のうち、原告ら主張のような総会に関する規定を置く規約があること、総会に
関する規定のうちに定足数の定めがない規約が存在することは認め、その余の事実は否認
し、主張は争う。同6(三)ないし(六)の事実は否認する。
3同8は争う。
三被告の主張
1住区成立の経緯
(一)区は「明るい豊かな人間のまち」の実現を期し、昭和四六年二月、東京都目黒、

基本計画(以下「旧基本計画」という)を策定し、昭和六〇年を目途として区のあるべ。

姿を描いてその実現手段をまとめた。旧基本計画においては、都市基盤整備を重視し、合
理的かつ人間的な都市の間取りとこれに付随する区域内の住区、地区などの生活圏域、オ
ープンスペース、緑を中心とする自然環境等を確保することが課題とされ、これを具体化
する施策の体系の一環として生活圏域(往区・地区)の整備が掲げられている。
すなわち、旧基本計画によれば、主として小学校児童の生活領域に相当し、近隣社会とし
てのまとまりを保持することが可能であるとともに、私用頻度の高いコミユニテイ施設を
中心に構成される区域を第一次生活圏域としての単位住区とし、主として一般人の徒歩に
よる生活行動の領域に相当し、買物、通学、レクリエーシヨンその他日常生活がその中で
充足され、共通の地域的性格を保持して、単位住区相互間の連帯を可能にする区域を第二
次生活圏域としての地区に生活区域を分けて相互の関連をはかりながら整備するものと
し、
暫定的に、単位住区を二二住区に、地区を五区画に設定した。
(二)旧基本計画を推進していくうえで、被告は、昭和四七年六月、生活圏域の設定に
ついて区都市計画審議会にその具体的な方策について諮問し、昭和四八年五月に答申を受
けた。右答申は、旧基本計画における生活圏域の区画設定の趣旨及び二二住区五地区の具
体的な設定を是認しつつも、個々の区域の規模・形状等の特性を考慮して、住区の複合化
や再編成について、また、施設計画を中心にした地区のレベルアツプについて示唆してい
る。同年一一月、区長期計画推進会議は、これを受けて調査研究を重ね、而後の生活圏域
関連施策の基本方針を「生活圏域整備計画書」にまとめ、この計画は、昭和四九年四月か
ら実施されている。
(三)区は、昭和五二年四月、旧基本計画を策定して以来、区民生活や区政をとりまく
諸情勢が大きく変わつてきたことに鑑み、まちづくりの基本的考え方や方策を改定し、新
たに東京都目黒区基本計画(以下「新基本計画」という)を策定した。。
新基本計画においては、生活圏域として二二住区五地区が設定されている点で旧基本計画
と変わりはないが、条件が一層具体的になり、
小学校の通学区域に相当する人口八〇〇〇人から二万人の範囲を標準として二二の住区を
定め、各住区の区域を定めている。この住区を基礎に最大半径一五〇〇メートルの面積と
人口五万人から七万人の範囲を標準として区の全域を五つの地区に区分し、それぞれの地
区には、四ないし五の住区が包括されている。そして、住区に必要な施設として、小学校
、、、、、、、のほか公園児童遊園保育所学童保育クラブ老人いこいの家行政サービス拠点
住区集会所等が考慮されている。
また、新基本計画は「住民参加によるコミユニテイの形成を通じてのまちづくり」を志、

することを明確に打ちだしており、具体的には、各住区の住民及び町会、自治会、商店会
等の自主的な団体のほか、PTA、婦人団体、青年団体、防犯、消防、交通安全、防災な
どの公共的団体や、老人クラブ、こども会などの目的をもつた組織、更には、民生委員や
青少年委員、保護司等公的な役割を担う人々の集りがあげられている。
(四)区は、新基本計画を策定する過程で昭和五一年一〇月一日、東京都目黒区立住区
センターの設置および管理の基本に関する条例(同年条例三六号。以下「住区センター条
例」という)を制定し、その二条で住区を「日常生活に密着した基本的な区域であり、。

として小学校児童の生活領域に相当し、近隣社会としてのまとまりを保持することが可能
な区域」と、コミユニテイを「区民が日常生活の場を通して、その地域の共通の目標を持
ち、自らの役割を認識し、連帯感に支えられて明るい豊かなまちづくりをめざすまとまり
のある地域社会」とそれぞれ定義し、三条及び四条で、住区におけるコミユニテイの形成
に資するために「住区の区民が、相互に交流する場および区が住区の区民に対して行政、

ービスを提供する場」としての住区会議室及び「区が区民に対して提供する行政サービス
の一部を行う事務室」としての住区サービスコーナー等の施設をもつて構成される住区セ
ンターを設置する規定を置いている。右規定に基づき、昭和六一年四月一日現在、別表1
記載のとおり、一三の住区センター(一五施設)が設置されている。
また、住区センターに包容される施設について、区は、昭和五一年一〇月一日、東京都目
黒区住区会議室条例(同年条例第三七号。以下「住区会議室条例」という)を、同年一。

月一五日、同条例施行規則(同年規則第五八号、)
東京都目黒区住区サービスコーナー設置規則(同年規則第六〇号)及び東京都目黒区住区
サービスコーナー処務規程(同年訓令甲第一一号。以下「処務規程」という)をそれぞ。

制定している。
2住区住民会議成立の経緯
区は、コミユニテイ形成の主体が住民であることに留意し、住民が行政とともに考え、行
動することを通して自治意識を醸成するという観点から、住区について住区住民会議の組
織化を勧めているが、その組織化は、地域における自主的、自発的なコミユニテイ集団の
形成であり、区が右組織化そのものに積極的に関与するということはない。住区住民会議
が成立する一般的な手順は次のとおりであり、本件各住区住民会議は、このような手順で
組織化され設立されたものである。
()、、、、一区は住区住民会議の組織化について理解を求めるため住区内の町会自治会
、、、、、、商店会PTA婦人団体青年団体老人クラブこども会等の関係団体及び民生委員
青少年委員、保護司等の役割を担つている住民らに幅広く働きかけ、説明会を開催する。
(二)その後、住区内の住民の中から世話人が選任され、世話人が中心となつて世話人
会及び準備会(以下「準備会等」という)をつくり、住民会議の組織、規約、活動方針。

を検討し、設立の準備を進める。その際、設立準備の一環として、住区住民会議が成立後
すぐに活動できるように住区内の住民から実行委員、運営委員、理事、委員等(以下「実
行委員等」という)の候補者を推薦してもらうのであるが、右推薦の手順は、次のとお。

である。
()、、、、、、、、1準備会等は町会自治会商店会PTA婦人団体青年団体老人クラブ
子供会等の関係団体及び民生委員、青少年委員、保護司等の役割りを担つている住民に幅
広く働きかけ、実行委員等の推薦を依頼する。
(2)依頼を受けた各町会(当該住区の住民は、原則としていずれかの町会に属してい
る)は、役員会を開き、町会員に対し、口頭及び町会の広報等を通じて住区住民会議へ。

参加を呼びかけ、実行委員等の候補者を募集する。
()、、3町会は住民から推薦された候補者及び自ら個人参加を申し出た候補者を集約し
各候補者に実行委員等として住区住民会議に参加する意思があることを確認した後、会議
を開いて町会として推薦する。
(4)町会以外の関係団体も右に述べたところと同様に会議を開いて実行委員等の候補
者を推薦する。
(5)世話人の多くはそのまま実行委員等として推薦され、役員に就任している。この
場合、世話人が右(1)ないし(4)の手続により改めて実行委員等の候補者として推薦
されることもあるが、それ以外は世話人が当然に住民会議の実行委員等に就任することを
前提として町会をはじめとした関係団体が世話人の選任をする際に、世話人として選任す
ると同時に、実行委員等としても推薦している。
(三)住区住民会議の設立総会の開催日は、予めチラシ、掲示板等によつて住区内の住
民に周知され、右設立総会には個人としての住民及び住区内の町会をはじめとした関係団
体から百数十名の出席者があり、右総会において住区住民会議の規約、活動方針が承認さ
れ、実行委員等の選任が行われる。
推薦された実行委員等の候補者は右総会の指名により選任され、役員に就任することにな
る。
3住区住民会議の活動状況
(一)住区住民会議の活動は二つに区分することができる。一つは、区との間の委託契
約に基づく別表1記載の委託事業の実施であり、他の一つは、規約に定める設置目的及び
事業の各規定に則り、区から支出される補助金その他の収入金による別表1記載の補助事
業の計画、実施である。
(二)委託事業についてみると、住区住民会議は、委託契約及びそれに基づく仕様書に
定められた内容の委託事務を処理している。すなわち、日曜日及び祝日の午前八時三〇分
から午後一〇時まで、平日の午後四時三〇分から午後一〇時まで及び土曜日の午後〇時か
ら午後一〇時までの間(ただし、上目黒住区住民会議のみは、日曜日及び祝日につき午前
九時から、平日につき午後五時から及び土曜日につき午後〇時三〇分からである、住。)

住民会議の構成員が住区センターに赴き、委託された管理事務を次のような方法で処理し
ている。
(1)住区会議室の利用を承認したときは利用承認書を、住区会議室使用料を受領した
ときは領収書を、住区住民会議の代表者名で発行する。
(2)使用料を領収したときは、区の指定した様式による払込書を住区住民会議の代表
者名で作成して指定金融機関等に払い込み、また、収納金収入報告書を住区住民会議の代
表者名で毎月作或し、翌月五日までに収入役に報告する。
(3)毎日の管理事務が終了したときは管理日誌(又は業務日誌)を担当の構成員が作
成し、管理した事務の内容について住区サービスコーナーの職員の確認を受ける。
(三)住区住民会議は、規約に基づいて設置された住区住民会議の機関である各種の専
門部会(一部の住区住民会議では、各種の実行委員会。以下この(三)においてこれを含
めて「部会「○○部会」という)が中心となつて分担した事業について補助事業を、」、。

のような方法で計画、実施している。
(1)青少年育成部会、交通部会、防災部会等の部会ごとに年間の事業計画をたて、住
区住民会議の事業計画案としてまとめたものを毎年定例的に開催されている総会にかけ
る。
(2)総会で審議、決定された事業計画を受けて、各部会の役員が中心となつてそれぞ
れの事業について準備し、部会ごとに実施する。
()、、、、3右事業の計画を周知させるため住区ニユースパンフレツトチラシ等を作成
発行し、家庭への配布、学校を通じての児童への配布及び区の掲示板に掲示すること等を
行つている。
(4)実施された事業は、次の年度に開催される総会に報告される。
(5)住区住民会議が実施している具体的な事業の内容は、別表1記載のとおりである
が、主に、左記の点を目的とした公共的事業を実施している。

(1)地域の生活環境の整備、改善を図る。
(2)明るく住みよいまちづくりを推進する。
(3)構成員の連帯意識を増進する。
(4)構成員の福祉増進に役立つ。
4本件各住区住民会議が実体を有していることについて
(一)本件各住区住民会議は、当該住区内に居住する特定地域の住民により、自主的に
当該住区内における生活環境の整備、改善を図るとともに、明るく住みよいまちづくりを
推進することを目的として任意に結成された団体であり、いずれも、それぞれの規約の定
めるもころにより、当該住区内に居住する住民及び関係団体等を構成員として設立総会に
より設立され、存続しているものであり、構成員の変更によつて消滅することはない。
(二)本件各住区住民会議はそれぞれ規約を有し、右規約には、その役員として、代表
者(会長、代表又は委員長がこれに当たる、運営及び担当任務に当たる者(副会長、。)

記、常任委員、実行委員、運営委員、常任理事、理事会がこれに当たる。以下「運営担当
役員」という。
)、(、、。「」及び財産の管理経理を司る者会計監事監査等がこれに当たる以下会計役員
という)が定められ、それぞれの役員の選出方法も定められている。すなわち、右規約。

定めによれば、総会によつて実行委員等が指名され、その中から代表者、運営担当役貝、
会計役員が互選されることになつており、現に、右規定に則り、本件各住区住民会議の代
表者をはじめ、その他の役員が選出されている。
(三)本件各住区住民会議の有する規約には、次のとおり、設置すべき機関及びその運
営に関する定めがあり、右規約に則つて総会及び運営委員会、実行委員会、理事会等の機
関が置かれ、運営されている。
(1)総会は、当該年度の事業計画、予算等の住区住民会議の運営に関する基本的事項
を審議、決定する機関として規約に規定され、代表者の招集により規約に定められた時期
に毎年一回は定例的に開催されており、右審議事項は、多数の出席者を得て過半数の原則
により、出席者の過半数で決定されている。
(2)その他の機関も、それぞれの担任事務について審議、決定する機関として規約に
規定され、代表者の招集により、必要の都度、開催されており、そこでも審議事項は出席
者の過半数により決定されている。
(四)本件各住区住民会議の構成員は、その規約によれば、各住区内の住民とされてお
り、右住民は、その設立総会への参加及び実行委員等への就任により直接的に、また、実
行委員等を推薦すること、又は、本件各住区住民会議が実施する事業活動であることの認
識を持つて右活動に参加することにより間接的に、本件各住区住民会議に参加する意思を
表明している。
仮に、本件各住区住民会議が右規約で定められたとおり当該住区内の住民によつて組織さ
れているとはいえないとしても、その設立総会に参加し、参加意思を表明した当該住区内
の相当数の住民(一〇〇名ないし二〇〇名)を構成員として組織されたものというべきで
ある。
(五)本件各住区住民会議は、総会及びその他の機関の決定したところに基づいて、当
該住区の構成員の福祉を増進するため、前記3記載のとおり、別表1記載の各事業を自主
的に行つている。
(六)本件各住区住民会議は、諸事業の遂行に必要なカメラ、複写機、ハンドマイク等
を財産として所有するとともに構成員からの拠出金、寄付金並びに区からの補助金及び委
託料を収入としており、
これらの財産及び収入金を管理するため、会計役員が規約に基づき財産の管理に当たつて
いる。
(七)本件各住区住民会議の昭和六〇年一二月三一日現在における、その事務所の所在
地、規約の有無、構成員に関する規定の有無、代表者名等の詳細は別表3記載のとおりで
ある。
(八)以上のとおり、本件各住区住民会議は、いずれも、当該住区内に居住する住民及
び関係団体を構成員としてその福祉増進のため各般の事業を営むことを目的として結成さ
れた任意団体であつて、代表者、運営担当役員、会計役員の選出、総会及びその他の機関
の運営、財産及び収入金の管理、事業の内容等につき規約を有し、これに基づき存続し、
活動しているのであるから、法人格のない社団としての実体を有しているものというべき
である。
5本件各住区住民会議への事務委託
(一)区は、住区センターを構成する公の施設である住区会議室や老人いこいの家及び
児童館の管理について、これをコミユニテイ形成の主体的役割を担う住区住民会議に委託
することが右施設設置の目的を達成するうえで効果的であると判断し、右管理事務を、地
方自治法二四四条の二第三項、住区センター条例五条二号、住区会議室条例一六条の定め
に則り、請求原因3記載の住区住民会議に対し委託している。
更に、区は、地方自治法施行令一五八条一項一号及び東京都目黒区会計事務規則(昭和三
九年規則五号。以下「会計事務規則」という)四一条の規定に基づき、住区会議室使用。

の収納事務を右各住区住民会議に委託している。
なお、住区サービスコーナーについては、住区センターの窓口に相当するので、区は区の
職員を配置して処務規程に即した事務に従事させており、住区住民会議にその管理を委託
していない。
(二)公の施設の管理委託先は公共団体又は公共的団体でなければならないとされてい
るが(地方自治法二四二条の二第三項、右の公共的団体とは、公共的な活動を営む者で)

る以上、法人であると否とを問わないとするのが行政実例である。本件各住区住民会議が
公共的活動を行つていること、法人格のない社団とみるべき実体があることは前記のとお
りであるから、本件各住区住民会議は右の公共的団体に該当する。
6本件各住区住民会議への補助金の交付
(一)区は、公益上必要がある場合、法人格を有しない団体に対しても、
東京都目黒区補助金等交付規則(昭和四三年規則六号。以下「交付規則」という)に基。

き補助金を交付している。本件各住区住民会議も交付規則に基づき、区から別表1記載の
補助事業について補助金の交付を受けている。
(二)交付規則六条によれば、補助金等交付申請を行う場合には、所定の事項を記載し
た補助金等交付申請書を、所定の添付書類とともに、被告に対し、提出しなければならな
。、いとされている右規定が要求している申請書の記載事項及び添付書類の内容からみると
補助金交付の対象となる団体は(1)定款、規約等を備え、右規約に、目的、名称、事、

所、資産に関する事項及び代表者の任免に関する事項が記載されていること(2)現に、

務所を有し、代表者が存在していること(3)各構成員の生活活動から独立した社会活、

をすることができる組織及び財政が確立していること(4)自ら経理する会計機構を有、

ることが要件として要求されていることが理解できる。しかるところ、本件各住区住民会
、()、、、、()議は1規約を備え現に名称事務所代表者及び会計機構を有していること2
規約の中で補助事業の目的、性格を明らかにしていること(3)総会で前年度の収支決、

及び翌年度の予算を審議決定し、財政及び予算の細部を明らかにしていること(4)総、

で翌年度の事業計画を審議決定し、補助事業の執行計画を明らかにしていること(5)、

助金等交付申請書でも、補助事業の執行計画を明らかにしていることから、補助金交付の
対象となる団体としての実体を備えているものというべきである。
7請求原因6(一)及び(二)について
本件各住区住民会議はそれぞれ規約を有し、右規約中に表現は異なるが住区内の住民をも
つて構成員とする旨の規定があり、原告ら主張のように構成員に関する規定が全く存在し
ない規約及び不十分な規約はない。
仮に規約に構成員に関する規定がないとしても、前記のとおり、住民会議の設立総会に参
加した者等の構成員によつて、団体としての管理、運営が行われている以上、本件各住区
住民会議は、実体のある団体である。
本件各住区住民会議は、それぞれの規約中に議決に関する規定を置いている。すなわち、
原町及び大岡山西の住区住民会議以外の本件各住区住民会議は、規約の中に「出席者の過
半数をもつて決定する」旨の規定を置いている。右の二つの住民会議は、。
このような直接的な規定は置いていないが、規約中に「この規約に定めるもののほか、、

民会議の運営に必要な事項は、常任委員会にはかつて会長が別に定める」との規定があ。
り、
会長が、右規定に従つて、総会の度に、議決に関する事項を常任委員会に諮つて別途定め
ており、それによると「出席者の過半数をもつて決定する」とされている。したがつ、。
て、
規約中に議決に関する規定がないとする原告らの主張は理由がない。
仮に、規約に定足数及び議決に関する規定がないとしても、そのことをもつて、本件各住
区住民会議が実体のない団体であるとはいえない。すなわち、本件各住区住民会議の総会
は一〇〇名前後の出席者があり、多いときは一二〇名位になるから、民法上の社団法人の
定款に定足数及び議決に関する規定がない場合の総会の運営に準じて議事を開き、議決を
することになるだけであつて、そのことにより、団体としての実体を具備していないとい
うことにはならない。
8請求原因6(三)について
本件各住区住民会議の構成員である各住区住内の住民が、直接的に又は間接的に、本件各
住区住民会議への参加意思を表明していることは、前話4の(四)記載のとおりである。
9請求原因6(四)について
本件各住区住民会議は、前記3の(二)記載のとおり、委託された事務については、役員
及び自主的に参加する住民を住区センターに赴かせ、自己の名により、それを処理してい
るのであつて、右事務が区の職員により行われているということはない。
ただ、前記5の(一)記載のとおり、住区サービスコーナーについては区の職員を配置し
ており、右職員が住区住民会議等住民活動の育成援助に関する事務を分掌しているところ
から(処務規程一条、委託事務を支援するということはある。しかし、この場合でも、)

託事務を実施する主体は住区住民会議であつて、区職員は住区住民会議を援助する立場か
ら事務を処理しているにすぎない。
四被告の主張に対する原告の認否
1被告の主張1の事実は認める。
2同2、3の事実は否認し、主張は争う。
3同4の事実は否認し、主張は争う。ただし、同4の(七)の別表3記載の事項につい
ては、同表の「構成員に関する規定の有無」欄に、本件各住区住民会議につき「有」とあ
る点を争い「代表者名」欄「運営担当役員数(会計役員を除く。、、
」欄及び「会計役員数」欄の記載はいずれも不知、その余の欄の記載は認める。)
4同5は、区が請求原因3記載の住区住民会議に対し、住区会議室、老人いこいの家及
び児童館の管理を委託していることは認め、その余は争う。
5同6は、区が本件各住区住民会議に対し、別表1記載の補助事業につき補助金を交付
していることは認め、その余は争う。
6同7は、本件各住区住民会議がそれぞれ規約を有すること、<地名略>及び<地名略
>の住区住民会議以外の本件各住区住民会議は、規約の中に議決に関する規定を置いてい
ることは認め、その余は争う。
7同8、9は争う。
五原告らの反論
1地域住民の全部又は大多数を構成員とする地域団体が法人格のない社団と認められる
ためには、右地域団体がその地域住民の全部又は大多数の共同体として存続し、活動して
きたこと、及び右地域住民が右地域団体を、自らの属する共同体として認識してきたこと
が必要である。しかるに、本件各住区住民会議は、市町村制施行以前の村落共同体であつ
た「部落」を承継したというような歴史や伝統もなく、行政によつて、住民の意思とは離
、、れたところで作為的に作り出されたものであり地域住民の意識の中にも定着しておらず
しかも、その自主的、独自的運営や活動を可能とするに足りる資産もない(本件各住区住
民会議の活動は殆どすべて区の委託料及び補助金で賄われている。したがつて、本件。)

住区住民会議は、実体のない名称だけの存在であり、いわゆる法人格のない社団には該当
しない。
2また、法人格のない社団が成立したと判断するには、その構成員自格が明確なもので
なければならないが、本件各住区住民会議の構成員に関する規約の定めをみると、規定の
上では、地域内に居住する全住民を構成員としておきながら、構成員となるための入会、
退会の手続、入会の意思の確認についての規定は全くない。右の地域内の全住民を構成員
とする旨の規定は、構成貝資格が無限定というに等しく、不明確なものであるから、この
ような無限定かつ不明確な構成員資格についての定めしか持たない本件各住区住民会議
は、
これを法人格のない社団とみることはできない。
3被告は、住区の住民及び町合等の関係団体が当該住区の住民会議の実行委員等を推薦
することによつて、右住民会議への参加意思を表明したものである旨主張する。しかしな
がら、
ある団体の役員を推薦することと、推薦者がその団体に加盟したこととは全く別のことで
ある。仮に、誰かがある団体の会長や理事長を推薦したとしても、その者がその団体の一
員として参加したことにはならないし、その団体の維持、経営等に責任を負うことにはな
らない。したがつて、住民及び住民の属する町会等の関係団体が住区住民会議に参加する
ためには、住民及び町会等の関係団体の参加の意思決定が必要であるが、本件において、
本件各住区住民会議への住民及び町会等の関係団体の参加の意思決定が行われた形跡はな
い。右参加の意思決定がない以上、住民及び関係団体が、本件各住区住民会議の構成員に
なつたものとはいえない。
六原告らの反論に対する被告の認否
原告らの反論はすべて争う。
第三証拠関係(省略)
○理由
一請求原因1ないし5、7の事実、同6(一)のうち、<地名略>及び<地名略>の住
区住民会議の規約中に原告ら主張のとおりの構成員に関する規定があること、同6(二)
のうち、原告ら主張のような総会に関する規定を置く規約があること、総会に関する規定
のうちに定足数の定めがない規約が存在すること、及び被告の主張1の事実、同4(七)
、、、、、のうち本件各住区住民会議についてその設立年月日規約の有無目的・名称の有無
事務所の所在地、規約中の代表者の任免に関する規定の有無、昭和六〇年度定期総会開催
日、総会定足数規定の有無、総会の決定事項、財産の有無が、別表3の該当欄記載のとお
りであることは、いずれも当事者間に争いがない。
二原告らは、本件各住区住民会議は構成員が不存在又は不明確な団体であり、また、そ
の活動の実態からみても実体のない名称だけのものであるから、このような実体のない団
(()())、体に対する本件公金の支出は違法である旨主張するので請求原因6の一ないし五
検討する。
1まず、本件各住区住民会議成立の経緯についてみるに、成立に争いのない甲第一、第
四号証、乙第一五ないし第一七号証、第六〇号証、第六一号証の一、二、第六二、第六三
号証、第六七ないし第六九号証、証人Eの証言により真正な成立を認め得る乙第四一号証
の二、三、証人Fの証言により真正な成立を認め得る乙第五四号証の二ないし四、弁論の
全趣旨により成立を認め得る乙第一九号証の一ないし三、第三八号証の一、二、第三九号
証の一ないし三、第四〇号証の一、二、
、、、、、第四一号証の一第四二号証の一ないし三第四三第四四号証の各一ないし四第四五
第四六号証の各一、二、第四七号証の一ないし三、第四八、第四九号証の各一ないし五、
第五〇、第五一号証の各一ないし三、第五二号証の一、二、第五三号証の一ないし三、第
五四号証の一、第五五号証の一、二、右各証言、証人Gの証言及び前記一の当事者間に争
いのない事実を総合すると、以下の事実が認められる。
すなわち、区は、昭和四六年以降、区の基本構想に基づき総合的なまちづくりを推進する
ための総合計画として基本計画、生活圏域整備計画等を策定するなどして区民の生活圏域
の整備を図つてきたのであるが、昭和四六年二月の旧基本計画及び昭和五二年四月の新基
本計画によれば、小学校の通学区域に相当する人口八〇〇〇人から二万人までの範囲を標
準として区全域を二二の区域に分けてこれを住区とし、この住区を基礎に最大半径一五〇
〇メートルの面積と人口五万人から七万人までの範囲を標準として区の全域を五つの区域
に分けてこれを地区とし、それぞれの生活圏域に対応した生活環境条件の整備を図ること
としている。また、区は、その基本目標である「明るい豊かな人間のまち」を実現するた
め、右生活圏域、とりわけ区民の基本的な生活圏である住区を単位としたコミユニテイの
形成を促し、その組織化を助長することとしているが、コミユニテイ形成の主体は住民で
あるとして、住民による自主的、自発的なコミユニテイ形成に留意することとしている。
住区を単位とした住民の自主的な組織であるコミユニテイとしての住区住民会議の結成、
組織化の具体的な手順は、およそ次のとおりであり、本件各住区住民会議は、このような
過程を経て設立されたものである。
(一)まず、区が、住区住民会議の組織化について区民の理解を求めるため、住区内の
町会、自治会、商店会、PTA、婦人団体、青年団体、老人クラブ、こども会等の団体及
び民生委員、青少年委員、保護司等の役割を担つている住民らに幅広く働きかけ、住区住
民会議についての説明会を実施した。
(二)区による右働きかけに呼応し、その趣旨に賛同した各住区内の住民の中から世話
人が選任され、それ以後は、世話人が中心となつて準備会等をつくり、住区住民会議の組
織、規約、活動方針等を検討し、設立の準備を進め、その際、設立準備の一環として、
住区住民会議が成立して以後すぐに活動できるように住区内の住民の中から実行委員等の
候補者が推薦された。
(三)住区住民会議の設立総会の開催日は、予めチラシ、掲示板等によつて住区内の住
民に周知され、右設立総会には、概して、一〇〇名程度の住区内の住民(その主体は世話
人である)が出席し、右総会において、住区住民会議の規約、活動方針が承認され、代。

者、運営担当役貝、会計役員の選任が行われた。
区の二二の住区に対応する本件各住区住民会議は、いずれも、右のような過程を経た上、
モデル住区として選定された<地名略>及び<地名略>の住区住民会議が設立された昭和
四九年一〇月から八雲住区住民会議が設立された昭和六〇年一二月までの間の別表3の設
立年月日欄記載の各期日に次々と設立された。
以上の認定に反する証拠はない。
、、、、2次に本件各住区住民会議の組織等についてみるに前掲甲第一号証乙第六〇号証
成立に争いのない乙第六六号証、前掲F証言により真正な成立を認め得る乙第二〇号証の
一七、第三一号証の九、弁論の全趣旨により真正な成立を認め得る乙第二〇号証の一ない
し一六一八第二七号証の二第二九号証の一ないし二〇第三一号証の一ないし八第、、、、(
三一号証の二の原本の存在については争いがない、右証言、前掲E証言及び弁論の全。)

旨並びに前記一の当事者間に争いのない事実を総合すると、以下の事実が認められる。
すなわち、本件各住区住民会議は、いずれも、それぞれの規約を有し、右各規約には、そ
の役員として、代表者(会長、代表、委員長、住民会議の運営及び担当任務に当たる、)

(副会長、副代表又は副委員長、書記、常任委員、運営委員、実行委員、常任理事、理事
等の運営担当役員)及び財産の管理、経理を司る者(会計、監事、監査等の会計役員)が
規定されている。また、右各役員の選出方法、任期等も右各規約に定められており、その
定めによれば、総会によつて実行委員等が指名され、その中から代表者、運営担当役員、
会計役員が互選されることになつており、現に、右各規約の定めに則り、本件各住区住民
会議の代表者、その他の役員が選出、改選されている。本件各住区住民会議に参画し、中
心となつて事業活動を行つている右の代表者、運営担当役員、会計役員については、それ
ぞれの住区住民会議において、役員名簿が作成され、その特定が図られている。
また、
本件各住区住民会議の有する各規約には、次のとおり、設置すべき機関及びその運営に関
する定めがあり、右各規約の定めに則つて総会及び役員によつて構成される運営委員会、
実行委員会、理事会等の合議機関が置かれ、運営されている。
すなわち、本件各住区住民会議に設置される総会は、当該年度の事業計画及び予算等の住
区住民会議の運営に関する基本的事項を審議決定する機関として右各規約に規定され、代
表者の招集により少なくとも毎年一回は定例的に開催されており(もつとも、その出席者
は役員が中心であつて、おおむね五〇名ないし一〇〇名程度である、右審議事項は、。)

会出席者の過半数により決定されている(実際には、ほとんど出席者による全会一致であ
る。役員により構成されるその他の合議機関も、それぞれの担任事務について審議、。)

定する機関として右各規約に規定され、代表者の招集により、必要の都度、開催されてお
り、そこでも審議事項は出席者の過半数により決定されている。
以上認定に反する証拠はない。
ところで、本件各住区住民会議の各規約中の構成員に関する定めをみると、前掲乙第六〇
号証によれば、本件各住区住民会議のうち、<地名略>、<地名略>、<地名略>及び<
地名略>の住区住民会議の規約中には、その構成員についても、その総会の構成員につい
ても明確な定めがなく、設置目的の定めの中で、当該住区内の居住者及び関係団体等が地
域内のまちづくりを推進する組織として住区住民会議を設ける旨の定めがあるに過ぎない
こと、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>、<地名略>及び
<地名略>の住区住民会議の規約中には、その構成員という形での明確な定めは置かれて
おらず、その機関である総会につき、当該住区内の住民(ただし、<地名略>及び<地名
、)、略>については当該住区内の成年に達した住民をもつて構成する旨の定めがあること
そのほかの一一の住区住民会議の規約中には「小学校区域内に居住する住民(<地名、」

>「住区で生活し働いている人びと(<地名略>「小学校区域内の住民および関係、」)、

団体等(<地名略>。同種のもの、<地名略>、<地名略>「小学校通学区域内に居」)、

する住民および働く人々(<地名略>「住区内に居住する者および生活の本拠を持つ」)、
者(<地名略>、<地名略>、<地名略>。同種のもの<地名略>「住区内に住所、」)、

営の店舗またはこれに準ずる生活の本拠を持つ者(<地名略>)等、その表現は異なる」
が、
住区内の住民を構成員とする趣旨の規定があり、更に、<地名略>及び<地名略>を除く
九の住区住民会議については、総会につき、当該住区内の住民(ただし、<地名略>、<
地名略>及び<地名略>については、当該住区内の成年に達した住民)をもつて構成する
旨の規定があることが認められ、右認定に反する証拠はない。
右のような、住区内の住民(そのほか、働く人々、店舗を持つ者、関係諸団体等を構成員
に加えるかの如き規定もあるが、その場合でも、中心を占める者が住区内の住民であるこ
とに変わりはない。そこで以下では「住区内の住民」とのみ称する)を住区住民会議の。

成員とするかの如き規定が設けられた趣旨及びその意味内容をみると、成立に争いのない
、、、、乙第六五号証前掲GF及びEの各証言並びに弁論の全趣旨によれば自治省行政課が
昭和四六年九月に、コミユニテイ施設の運営、管理を行う住民組織の備えるべき要件に関
する一般原則を提言したが、その一つに、コミユニテイ地区のすべての住民にとつて開放
的な住民組織であることの要件があること、右提言を参考にして、前記のとおり、相当数
の住区住民会議の規約中に住区内の住民を構成員とする趣旨の規定が置かれたのである
が、
その趣旨は、原告ら主張の如く、住区内の全住民を、その意思にかかわりなく、住民会議
の組織に組み込むというのではなく、住区内の住民であれば誰でも、その希望により当該
住区住民会議に参加し得ること、すなわち、参加資格を定めたものであり、住区住民会議
、「」、が住区内の全住民に対して開かれた組織であることを明らかにしたものであること
規約中に、総会は当該住区内の住民をもつて構成する旨を定めたものも、また、構成員に
ついても、総会の構成員についても明確な定めのないものも、右と同様、住区住民会議の
参加資格を住区内の住民とするものであること、しかして、住区内の住民は、その希望に
より参加した者であつても、役員とならない限り、当該住区住民会議に対しても、格別の
義務を負うものではないことが認められ、右認定に反する証拠はない。
3更に、本件各住区住民会議の活動状況についてみるに、前掲甲第一号証、乙第二九号
証の一ないし二〇、第六〇号証、成立に争いのない甲第二号証、乙第一二号証、第一八号
証の二ないし四、第三六号証、前掲E証言により真正な成立を認め得る乙二一号証の四、
前掲F証言により真正な成立を認め得る乙第二二号証の一七、右証言及び前掲G証言によ
り成立を認め得る乙第三二号証の一〇、一一、右F証言及び弁論の全趣旨により成立を認
め得る乙第二一号証の一七、第三三ないし第三五号証、右G証言により真正な成立を認め
得る乙第三二号証の一ないし九、一二、弁論の全趣旨により成立を認め得る乙第二一号証
、、、、、、の一ないし三五ないし一六一八第二二号証の一ないし一六一八第二七号証の三
右各証言及び弁論の全趣旨並びに前記一の当事者間に争いのない事実を総合すると、以下
の事実が認められる。
(一)区は、昭和五一年一〇月一日、住区センター条例を制定し、住区におけるコミユ
ニテイの形成に資するため、各住区に住区センターを設置することとし、昭和六一年四月
一日現在、右条例に基づき、別表1記載のとおり、一三の住区センター(一五施設)が設
置されている。住区センターは、住区の住民が相互に交流する場であるとともに区が住区
の住民に対して行政サービスを提供する場でもある住区会議室及び区が住民に対して提供
する行政サービスの一部を行う事務室である住区サービスコーナー(ただし、昭和六〇年
六月一七日以降、右住区サービスコーナーは廃止され、住区におけるコミユニテイの形成
の支援を行い、区長の権限に属する事務を行う事務所である住区サービス事務所へと改組
された、談話コーナー、老人いこいの家、児童館等をもつて構成されており、区は、。)

方自治法二四四条の二第三項、住区センター条例五条二号、住区会議室条例一六条の規定
に基づき、右住区会議室、談話コーナー、老人いこいの家、児童館等(住区サービスコー
ナーないし住区サービス事務所を除く)の管理を、請求原因3記載の住区住民会議に委。

し、また、地方自治法二四三条、同法施行令一五八条一項一号、会計事務規則四一条に基
づき、住区会議室使用料の収納事務も、右各住区住民会議に委託している。右各住区住民
会議は、それぞれ区との間で、右各委託事務につき委託契約を締結し、右契約に基づき、
日曜日及び祝日の午前八時三〇分から午後一〇時まで、平日の午後四時三〇分から午後一
〇時まで及び土曜日の午後〇時から午後一〇時までの間、右各住区住民会議は、その役員
又は自主的に参加する住区内の住民を担当者として住区センターに赴かせ、次のような方
法で、右各委託事務を処理している(ただし、
自由が丘住区センターと同センター宮前分室の住区会議室は、日曜日、祝日が休館、東根
住区センターの住区会議室は日曜日が休館、上目黒住区センターは、日曜日及び祝日につ
いては午前九時から、平日については午後五時から、土曜日については午後〇時三〇分か
ら、右委託事務を処理している。。)
(1)住区会議室の利用を承認したときは利用承認書を、住区会議室使用料を受領した
ときは担当者が領収書を、当該住区住民会議の代表者名で発行する。
(2)使用料を領収したときは、区の指定した様式による払込書を当該住区住民会議の
代表者名で作成して指定金融機関等に払い込み、また、収納金収入報告書を当該住区住民
会議の代表者名で毎月作成し、翌月五日までに収入役に報告する。
()、()、3毎日の管理事務が終了したときは管理日誌又は業務日誌を担当者が作成し
管理した事務の内容について住区サービスコーナーないし住区サービス事務所の職員の確
認を受ける。
(二)次に、本件各住区住民会議は、別表1記載の各種の補助事業(ただし、※印に対
応するものを除く)を、その実行委員会、運営委員会及び理事会の事務を分担する機関。

して設立された各種の専門部会(<地名略>及び<地名略>の住区住民会議では、各種の
実行委員会。以下(二)においてこれも含めて「部会「○○部会」という)が中心と」、。

つて、次のような方法で計画、実施している。
(1)青少年育成部会、交通部会、防災部会等の部会ごとに年間の事業計画をたて、住
区住民会議の事業計画案としてまとめたものを毎年定例的に開催されている総会にかけ
る。
(2)総会で審議、決定された事業計画を受けて、各部会の役員が中心となつてそれぞ
れの事業について準備し、部会ごとに実施する。
()、、、、3右事業の計画を周知させるため住区ニユースパンフレツトチラシ等を作成
発行し、家庭への配布、学校を通じての児童への配布及び区の掲示板に掲示すること等を
行つている。
(4)実施された事業は、次の年度に開催される総会に報告される。
(三)本件各住区住民会議が行つている前記補助事業の内容は、次のとおりである。
(1)まちづくり推進事業
地域の創意と工夫による、
コミユニテイ形成を通じてのまちづくり推進を目的とする事業
(ア)コミユニテイ意識の啓発
(イ)地域における諸活動の調整
(ウ)まちづくりを推進するための組織活動
(エ)その他まちづくり推進に関する活動
(2)交通安全推進事業
地域の創意と工夫による、交通安全思想の普及と交通災害の防止を目的とする事業
(ア)交通安全意識の啓発普及
(イ)道路交通環境の点検
(ウ)交通安全指導及び交通安全教室の開催
(エ)その他交通安全の推進に関する活動
(3)青少年健全育成事業
地域の創意と工夫による、青少年の健全な育成を目的とする事業
(ア)青少年の余暇指導
(イ)社会環境の浄化
(ウ)家庭に対する啓発普及活動
(エ)その他青少年健全育成に関する活動
(4)社会教育推進事業
地域の創意と工夫による、住民の主体的意思形成とコミユニテイ意識の高揚を図ることを
目的とする事業
(ア)地域活動計画及び地域活動の啓発
(イ)学習活動による相互交流と連帯意識の醸成
(ウ)地域リーダーの育成
(エ)その他コミユニテイ推進に関する活動
(5)子ども会育成事業
子ども会の相互交流を通じて、活動内容の充実を図り、併せて地域の子どもの健全育成機
能を高めることを目的とする事業
(ア)育成者の資質向上
(イ)ジユニアリーダーの育成
(ウ)子どものスポーツ、レクリエーシヨン、文化、創作活動
(エ)その他子ども会育成に関する活動
(6)スポーツ振興事業
スポーツ、レクリエーシヨン活動を通じて、地域住民の健康の維持、増進を図ることを目
的とする事業
(ア)地域リーダーの育成
(イ)地域のスポーツクラブの育成
(ウ)初心者教室の実施
(エ)その他スポーツ振興に関する活動
(7)防災区民組織育成事業
防災区民組織の活動内容の充実を図ることを目的とする事業
(ア)防災訓練の実施
(イ)防災教室等の実施
(ウ)防災資器材等の備蓄
(エ)その他防災区民組織に関する活動
(四)以上(一)ないし(三)のとおり、請求原因3記載の住区住民会議は、前記各委
託事務を処理し、前記各委託契約に基づき、区から委託料の支払を受け、また、本件各住
区住民会議は、右各補助事業を行い、交付規則に則り、区長の交付決定を経た上、区から
補助金の交付を受けており、区が、昭和六〇年度において、
本件各住区住民会議に対して支出した委託料、補助金の各事業ごとの明細は、別表2記載
のとおりである(なお、<地名略>住区住民会議に対する補助金の支出は昭和六一年度か
らである。。)
以上の認定に反する証拠はない。
4以上1ないし3の事実関係によれば、本件各住区住民会議は、主として当該住区内に
、、()、居住する住民の有志が区からの働きかけに呼応して当該住区にかかわる前記3の二
()、、、三の各事業を行うことを目的として自主的に結成した団体であり法人格はないが
いずれも規約を有し、右規約に基づき代表者、運営担当役員、会計役貝が選出されるとと
もに、総会及び役員により構成されるその他の合議機関が設置されており、団体としての
組織を備えていること、規約上、その構成員となり得る資格を住区内の住民と定めている
ものが多いが、右は、住区住民会議が、住区内の住民であれば誰でも、希望によりそこに
参加し得るという開かれた組織であることを担保する趣旨の定めであること、もつとも、
、、、現実に本件各住区住民会議に参画し中心となつて事業活動を行つている者は右代表者
運営担当役員、会計役員及びこれら役員によつて構成される合議機関であり、これら役員
については、それぞれの住区住民会議において、役員名簿等を作成し、その特定が図られ
ていること、総会その他の合議機関においては、多数決の原則が行われ、右の役員の変更
にかかわらず団体が同一性を保つて存続することが明らかである。右の諸点に鑑みると、
本件各住区住民会議は、法人格のないことは明らかであるが、住区内の住民全員に開かれ
た組織であり、法的にみた構成員を、その意思により参加した住区内の住民と考えるにせ
よ、その役員のみと考えるにせよ、実体として、いわゆる法人格のない社団又はそれに等
しいと評価し得る団体とみるのが相当であり、本件各住区住民会議が実体のない名称だけ
の団体であることを前提とする原告らの主張は、到底採用することができない。
、、、、なお原告らは被告が請求原因3記載の住区住民会議に対して委託した事業すなわち
、、、、住区会議室談話コーナー等の区の施設の管理使用料の収納その他の事務は実際には
区の職員によつて行われている旨主張するが(請求原因6の(四、前記3の(一)の))

おり、右委託事務については、右各住区住民会議が、その役員等担当者を住区センターに
赴かせ、
主体的に右事務を処理していることが明らかであるから、右主張は採用できない。
三原告らは、別表1記載の公の施設の管理委託は、公共団体又は公共的団体に対してし
なければならない(地方自治法二四四条の二第三項)が、本件各住区住民会議はこれに該
当しないので、右施設の管理委託は違法である旨主張する(請求原因6の(六。))
しかしながら、同法二四四条の二第三項所定の公共的団体とは、公共的な活動を営む団体
といい得るものであれば足り、法人であると否とは問わないものと解すべきところ、本件
各住区住民会議がまちづくり推進事業、交通安全推進事業、青少年健全育成事業等といつ
た公共的な活動を行つていること、法人格のない社団又はそれに等しいと評価し得る団体
であることは、前記二の3の(二(三)及び4のとおりであるから、本件各住区住民)、

、。議は右公共的団体に該当するものと認めるのが相当であり原告らの右主張は採用し難い
四以上二及び三によれば、本件各住区住民会議に対する本件公金の支出が違法である旨
の原告らの主張はすべて理由がなく、また、他に、本件公金支出を違法とする根拠は見い
だし難い。
五よつて、原告らの本訴請求は、その理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費
用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民訴法八九条、九三条一項本文を適用して、主文
のとおり判決する。
(裁判官鈴木康之高橋利文青野洋士)
別表3(省略)

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