弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
東京都新宿区建築主事がA株式会社及び株式会社Bに対して平成18
年7月31日付けでした建築確認処分(新都建(確)第×号)の効力は,
本案上告受理申立て事件の裁判があるまで,これを停止する。
理由
1申立ての趣旨及び理由
申立人らの申立ての趣旨及び理由は別紙1記載のとおりである(なお,建築確
認において処分の執行は観念できないから,申立人らは建築確認処分の効力の停
止を求めるものと理解される。)。要するに,申立人らは,当裁判所で東京都新
宿区建築主事がA株式会社及び株式会社Bに対して平成18年7月31日付けで
した別紙1の物件目録記載の建築物(以下「本件建築物」という。)に係る建築
確認処分(以下「本件処分」という。)を取り消すとの判決が言い渡されたが,
本件建築物が完成すると本件処分の取消しを求める訴えの利益がなくなるから,
本件処分により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるというものであ
る。
2相手方の意見
相手方の意見は別紙2記載のとおりであり,本件処分により申立人らが重大な
損害を被るおそれはないというものである。
3当裁判所の判断
(1)申立人らは,平成19年5月26日,本件処分等の取消しを求める訴えを
東京地方裁判所に提起したところ,平成20年4月18日,同裁判所は申立人
らの請求を棄却する旨の判決をした。これに対し,申立人らが控訴し,平成2
1年1月14日,当裁判所は,原判決を取り消すとともに,本件処分を取り消
す旨の判決をした。これに対し,相手方は同月27日に上告受理の申立てをし
たが,訴訟記録はなお当裁判所に存する。
(2)一件記録によれば,以下の事実が一応認められる。
ア本件建築物と申立人らの居住地及び申立人C所有に係る「α」との位置関
係は別紙図面のとおりである。したがって,申立人らは,火災その他の災害
時に,本件建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想さ
れる。
イ本件建築物の建築工事は,平成19年4月ころ着工され,現在は仕上工事
がされており,平成21年4月末に完了検査,同年5月末に引渡しが予定さ
れ,完了間近の段階にある。
(3)ア上記(2)アによると,申立人らは,本件処分の取消しを求める原告適格を
有するから,本件処分の効力の停止を求める申立人適格を有するというべき
である。
イ(ア)上記(2)アによると,このまま建築工事が続行され,本件建築物が完
成すると,本件建築物の倒壊,炎上等により,申立人らはその生命又は財
産等に重大な損害を被るおそれがあるということができる。
しかも,上記(2)イによれば,本件建築物の建築等の工事は完了間近で
あるところ,本件建築物の建築等の工事が完了すると,本件処分の取消し
を求める訴えの利益は失われるのである(最高裁昭和59年10月26日
第二小法廷判決・民集38巻10号1169頁参照)。そうすると,上告
審において本件処分の取消しを求める訴えは不適法なものとして却下され
ることになって,申立人らにおいて建築確認に係る本件建築物の倒壊,炎
上等により損害を被ることを防止することができなくなる(他の手段,例
えば民事訴訟により建築続行禁止の仮処分を求めることなども考えられな
いではないが,認容されるための要件が異なるのであり,建築確認取消訴
訟と同じように損害の防止を図ることが可能であるとは必ずしもいえない
ものである。)。このような事態は,法が,申立人らに対し,建築確認取
消訴訟の原告適格を認め,同人らが当該建築確認に係る建築物により損害
を被ることを防止する手段を与えていることと実質的に適合しない結果を
もたらすものである。
(イ)このような点を斟酌すると,申立人らは,本件処分により生ずる重大
な損害(本件処分に係る本件建築物の倒壊,炎上等による自己の生命,財
産等の侵害)を避けるため,本件処分の効力を停止する緊急の必要がある
と解するのが相当である。
ウ上記(1)によると,本件申立てが本案について理由がないとみえるときに
該当しないことは明らかである。
4結論
以上によれば,本件申立ては理由があるからこれを認容することとし,主文の
とおり決定する。
平成21年2月6日
東京高等裁判所第9民事部
裁判長裁判官大坪丘
裁判官宇田川基
裁判官足立哲

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