弁護士法人ITJ法律事務所

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    主    文
1 原判決を次のとおり変更する。
 (1) 控訴人は,被控訴人に対し,408万9488円及びこれに対す
る平成14年7月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
 (2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,第1,2審を通じて5分し,その2を控訴人の,その余
を被控訴人の負担とする。
3 第1項(1)は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要等
 1(1) 本件は,被控訴人が,自動車損害賠償保障法3条本文に基づき,加害二
輪車の保有者である控訴人に対し,後記する本件事故により被った損害の
うち一部965万2890円(平成16年3月31日までに発生した損
害。後遺障害分は含まない。)及びこれから支払済みの自賠責保険金を控
除した残額に対する本件事故日である平成14年7月18日から支払済み
まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求したものであ
る。
  (2) 事案の概要は,次のとおり原判決を補正し,次項2のとおり当審におけ
る主張を補足するほか,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概
要」欄(1頁末行から5頁8行目まで)に記載のとおりであるから,これ
を引用する。
   ア 2頁11行目の「加害車両(」の次に「ホンダNC31,排気量39
0cc。」を加える。
   イ 「A」をすべて「A’」に改める。
   ウ 3頁14行目の「甲11の1,2」の次に「,18の1から5」を,
16行目の「通誠会博愛病院」の次に「(甲19の1,2,5,6)」
を,それぞれ加え,17行目の「同3日」を「同7日」に改める。
   エ 4頁17行目から19行目までを「① 治療費 合計285万361
0円」に,5頁4行目の「997万5355円」を「900万2267
円」に,5行目の「120万円」を「22万6912円」に,それぞれ
改める。
  (3) 原審は,
   ア 控訴人が加害二輪車の運行供用者であることを認めた上,
   イ 平成16年3月31日までの治療費,入院雑費,付添看護費,通院交
通費,入通院慰謝料,装具代として912万5355円の損害を認定
し,
   ウ 被控訴人の過失相殺による減額は認めず,
   自賠責保険からの既払額120万円を控除した792万5355円及び弁
護士費用79万円,以上合計871万5355円及びこれに対する本件事
故日である平成14年7月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金の限度で,被控訴人の請求を認容した。
(4) そこで,これを不服とした控訴人が,第1のとおり控訴したものであ
る。
2 当審における補足主張(過失相殺について)
 (控訴人)
  原審は,被控訴人がA’の無免許を知っていたとは認められないとして,
全く過失相殺をしなかったが,被控訴人,A’,B及びCの4人は,仲が良
く毎日顔を合わせており,自動二輪車の免許を持っているのはBだけであ
り,他の三人は免許を持っていないことを互いに熟知していた。仮に,被控
訴人がA’の無免許を知らなかったとしても,互いに高校を卒業して大学に
入ったばかりの未成年者である上,校則も自動二輪車の使用を禁止している
のであるから,免許を持っていないのが通常であり,被控訴人はA’に免許
の有無を尋ねるべき注意義務があったというべきである。
  本件事故は,A’の無免許による運転操作の不慣れが原因で発生したもの
である。控訴人は,加害二輪車の保有者というだけであって,被控訴人ら4
人組が企画・実行した深夜の無免許で無謀なツーリングには何ら関与してい
ないものである。
  したがって,大幅な過失相殺をすべきである。
 (被控訴人)
  被控訴人のみならず,BもA’が無免許かどうか知らなかったと証言して
おり,4人が互いに免許の有無を知っていたということはない。また,校則
で禁止されているのは,自動二輪車を寮に持ってくることだけである。控訴
人は「無謀」なツーリングというが,被控訴人はA’が時速100キロメー
トル以上で運転することは事前に知り得なかった。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原審の判断(上記第2の1(3))のうち,ア(運行供用者責
任)は相当であるが,イ(損害額の認定)の一部及びウ(過失相殺)は相当
でなく,認定された被控訴人の損害について4割の過失相殺をすべきである
から,主文記載の限度で請求を認容すべきであると判断する。その理由は以
下のとおりである。
2 控訴人の運行供用者責任について
  原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「第3 争点に対する判断」
欄の1(5頁10行目から7頁6行目まで)に記載のとおり(ただし,
「A」を「A’」に改める。)であるから,これを引用する。
 (1) 5頁11行目の「甲」の次に「1,」を加え,「15,」の次に「乙
3,」を加える。
 (2) 同15行目の「原告」の次に「(昭和59年2月6日生。当時18
歳)」を,「A」の次に「(昭和58年9月22日生。当時18歳)」を
それぞれ加える。
 (3) 同18行目の「Bは,」の次に「普通自動車及び自動二輪車の運転免
許を有しており,」を,同21行目の末尾に「なお,A’は,普通自動車
の運転免許を有しており,自動二輪車の免許は持っていなかったものの,
自動二輪車の運転はできると話していたことから,2台の自動二輪車を借
りて,BとA’が運転し,運転できない被控訴人とCが同乗することにな
ったものである。」を,それぞれ加える。
 (4) 同23行目の「BもしくはAが被告の部屋から同人の承諾を得て」を
「BとA’は控訴人の部屋を訪れて」に改める。
 (5) 6頁7行目末尾に「事故後,転倒していた被控訴人の頭部にはヘルメ
ットが装着されておらず,ヘルメットは事故現場に転がっていた。」を加
える。
 (6) 同13行目から16行目にかけての括弧書き部分を「(Bは,控訴人
からバイクの鍵を借りるため,A’と二人で控訴人の部屋を訪れ,中に入
ったが,A’が寝ていた控訴人に声をかけたところで,自分は着替えのた
めに隣室の自分の部屋に戻ったため,控訴人から鍵を受け取ったのはA’
である旨証言し,他方,控訴人は,寝ていたところBから起こされてバイ
クの鍵を同人に貸した旨供述している。これらの証言・供述の信用性を検
討するに,Bは前にも控訴人から加害二輪車を借りたことがあったことか
ら,今回も鍵を借りるためにA’とともに控訴人の部屋に行き,部屋の中
に入ったのに,控訴人に鍵を貸してくれと声もかけずに直ちに自分の部屋
に着替えのために戻ったというのは,行動の流れが不自然である。他方,
寝ているところを起こされたとはいえ,控訴人はBが鍵を借りに来たので
Bに貸したと明言していることなどを総合すると,Bが単独かA’ととも
に控訴人から加害二輪車の鍵を借りたものである可能性が高いというべき
である。)」に改める。
 (7) 同22行目から7頁6行目までを削る。
3 過失相殺について
 (1) 引用にかかる原判決認定の事実(当審で補正後のもの)によれば,以
下の事情が認められる。
   加害二輪車を運転していたA’は,自動二輪車の免許は持っていなかっ
たところ,被控訴人は,A’が自動二輪車の免許を持っているかどうか確
認することなくA’が運転する加害二輪車の後部座席に同乗したものであ
るが,A’は当時18歳で大学に入学したばかりであり,加害二輪車の所
有者でもないことを認識していたから,A’が自動二輪車の運転免許を持
っていると考える根拠はなく,むしろ,自動二輪車の免許は持っていない
と考える方が通常であるのに,免許の有無を確認することなく(A’の免
許の有無に関心を払っていたことを窺うことはできない。),しかも危険
性が高くなる二人乗りで同乗し,その結果,A’の運転技術の未熟さと思
われる原因で道路脇の車庫の鉄柱に加害二輪車を衝突させるという事故を
惹起させたものであって,被控訴人自ら危険に接近し,かつ,危険を拡大
させたものであることが認められる。また,被控訴人は,本件事故により
外傷性頭蓋内出血,脳挫傷の傷害を負っているが,ヘルメットを被っては
いたものの,あごひもを確実に絞めて正しく装着することはしていなかっ
たことが窺われる。他方,控訴人は,BかA’に加害二輪車を一時貸与し
たにすぎず,本件事故には全く関与していない者である。
   なお,控訴人は,被控訴人らは無謀なツーリングを行ったのであるから
過失相殺において考慮すべきであると主張するので検討するに,確かに,
A’が本件事故現場直前の直線道路で高速運転を始めたことは認められる
が,それまでも高速運転等無謀な運転をしていたことは認められないので
あって,急にA’が高速運転を始めたことについて,後部座席に同乗して
いたにすぎない被控訴人を非難することは相当でない。
   以上のような事情を総合考慮すると,損害の公平な分担という視点から
過失相殺の規定を類推適用し,被控訴人が控訴人に対し請求できる損害額
は,弁護士費用を除いた全損害額から4割を減じた金額とするのが相当で
ある。
 (2) なお,控訴人は,被控訴人は危険を承知で加害二輪車に同乗し,その
予見範囲内の事故にあったのであるから,信義則上,控訴人に対し損害賠
償請求できないとも主張するが,控訴人指摘の事情は,上記のとおり,過
失相殺の事情として考慮することができるにとどまり,損害賠償請求自体
を許すべきでないとはいえない。
4 被控訴人の損害について
 (1) 治療費その他    合計814万9147円
   被控訴人の治療費,入院雑費,付添看護費,通院交通費,入通院慰謝
料,装具代については,次のとおり原判決を補正するほか,原判決の「第
3 争点に対する判断」欄の3の(1)から(7)(7頁16行目から8頁8行
目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
ア 7頁17行目から21行目までを次のとおり改める。
「(1) 治療費 合計285万0490円
 証拠(甲4,5の1から4,6の1から17,8,9,10の1から
5,11の1から3,17の1の1,2,17の2の1,2,17の
3の1から3,17の4,5,17の6の1,2,17の7の1,
2,17の8の1,2,17の9,17の10の1,2,18の1か
ら5,19の1から9)によれば,被控訴人主張の治療費285万3
610円のうち285万0490円を認めることができる(被控訴人
は謙誠会博愛病院の治療費として2万9640円を請求するが,平成
15年12月1日支払分の3120円(甲19の1)が重複して請求
されているので,これを減じた。)」
イ 8頁8行目の「小計 912万5355円」を「小計 814万91
47円」に改める。
 (2) 過失相殺その他
   上記(1)の金額について,4割の過失相殺をすると,488万9488
円(円未満切り捨て)になるところ,自賠責保険から120万円(甲1
3)が支払われているので,これを控除すると368万9488円にな
る。
   本件訴訟経過,認容額等を考慮すると,控訴人が負担すべき弁護士費用
としては40万円が相当である。
   以上によれば,被控訴人の請求は,408万9488円及びこれに対す
る本件事故日である平成14年7月18日から支払済みまで民法所定の年
5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
 5 よって,上記判断と一部異なる原判決は相当でないから,主文のとおり判
決する。
 福岡高等裁判所第1民事部
          裁判長裁判官  簑   田   孝   行
             裁判官  駒   谷   孝   雄
             裁判官  岸 和 田   羊   一

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