弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 本件上告理由は添付の別紙記載のとおりである。
 上告理由第一点及び第二点について。
 論旨は、訴外Dが公平委員会の委員でありながら、退職しないままで本件村長選
挙に立候補したのは、公職選挙法八九条に違背し、その立候補届は無効であり、そ
して、立候補届期間内に届出た候補者は他に訴外Eたゞ一人であつたから、本件の
場合は同法八六条四項にいわゆる「第一項及び第二項の期間内に届出のあつた候補
者が二人以上ある場合」に該当しないと主張するに帰する。
 公職選挙法八六条一項又は二項の届出に際し、届出にかゝる候補者が、同法八九
条に違反する場合の生ずることは、勿論予想し得るところであるが、選挙法上いか
ように取扱うべきものであろうか。かゝる場合において、同法は、このような違反
の有無をいかなる機関によつて判断せしめることに定めているか、また、かゝる違
反によつて生ずる法律上の効果をいかように定めているかについて、考えてみなけ
ればならない。同法六八条一項二号は、同法八九条の規定により候補者となること
ができない者の氏名を記載した投票を無効とすることとしている。そして、同法六
七条はすべて投票の効力は、開票立会人の意見を聴き、開票管理者が決定すること
としている。すなわち、同法八九条違反の有無は、開票の際開票管理者が判定すべ
きものであり、言いかえれば、選挙長は、立候補届又は推薦届受理に際しては、同
条違反を実質的に審査して届出を却下する権限を有せず、またその義務もないもの
と言わなければならない。もし所論のように、選挙長が届出受理に際し、実質上か
かる規定違反の有無を審査する義務があるものとすれば、ひとたびこの判断を誤る
ことは選挙の規定に違反することとなり、かつかかる者を候補者として選挙を行う
ことは選挙の結果に異動を及ぼす虞のあることも明白であるから、かかる選挙は常
に全部に亘つてこれを無効としなければならないこととなる。果してしからば、同
法六八条においてかかる同法八九条違反者に対する投票を無効とする旨を定めた規
定は、これを適用すべき余地がなくなり、全く意味をなさないものとなつてしまう。
だからいやしくも同条を有意義に解するものとすれば、選挙長としては、このよう
に八九条違反の届出があつても、これを受理し、その者を候補者として選挙を行い、
その結果開票の際には、かかる者に対する投票を無効とし、従つてこれを当選者と
しないことが、法の本旨であると認めなければならない。それ故、原判決が、選挙
長は立候補届受理に際し、八九条違反の有無について、実質上審査権を有しないと
したのは結局正当である。
 さて、本件において、訴外Dの立候補届が同法八九条に違反しているとしても、
選挙長としては一応有効な届出として受理するが当然である。そして、その他に訴
外Eの立候補届がある以上同法八六条四項にいわゆる候補者が二人以上ある場合に
該当するものであるから、この点に関する選挙長のとつた措置は違法とすべき何等
の理由がない。また、法の趣旨が以上説明のとおりである以上右の違法が訴訟上争
われたからと言つて、裁判所がDの立候補届を当初に遡つて無効と判断すべきもの
でないことも明白である。論旨はすべて理由がない。
 同第三点及第四点について。
 論旨は、訴外Dは、立候補届出期間後立候補を辞退した者であるから、同法八六
条四項により補充候補者となることはできないと主張するのであるが、右のように、
ひとたび候補者を辞退した者が補充候補者となることを制限ないし禁止する趣旨の
規定もなく、またかゝる制限ないし禁止を必要とするほどの必要もなく、むしろ選
挙においては補充立候補又は推薦は、なるべく自由ならしめるのがよいのである。
しかのみならず、同法八六条五項では地方公共団体の長の選挙については、特に選
挙の期日を延期してまで補充候補者を許しているところから見れば、法律の趣旨は
なるべく同法一〇〇条による無投票当選を避ける趣旨と考えられ、本件のような補
充候補者もこれを正当のものと解すべきであつて、論旨は理由がない。
 以上説明のとおり論旨はすべて理由がないから、本件上告はこれを棄却すること
とし、民訴四〇一条、八九条、九五条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとお
り判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    入   江   俊   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛