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平成26年2月7日宣告裁判所書記官
平成25年第627号,第700号
判決
主文
被告人を懲役18年に処する。
未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,
第1固定資産税等を滞納したことにより,A市から被告人名義の預金債権の差押
えを受けたことに不満を持ち,平成24年11月5日午後1時20分頃から同
日午後1時30分頃までの間,兵庫県a市b町c番d号のA市役所1階B部C
課のカウンター前で,市税の徴収等の職務の執行として被告人に応対した同課
職員のD及びEに対し,「差押えをしたのはお前らか。俺は1回死んだ。俺よ
りももっとひどい目にあわせたるからな。お前らの家族も覚えとけよ。」など
と言うとともに,Dらの顔を携帯電話機で撮影するなどして,同人らに危害を
加える旨告知して脅迫し,同人らの職務の執行を妨害した。
第2平成25年6月30日頃,債権回収会社から自己が居住するマンションのロ
ーンの一括返済を求める催告書を受け取ったところ,このようになったのは上
記預金債権の差押えが原因であるなどと考えて,A市役所に対する前記の不満
を一層募らせた末,同市役所庁舎に放火して,多数の職員及び来訪者が現在し,
同市長Fが看守する前記A市役所庁舎を焼損しようと企て,同年7月12日午
前9時30分頃,同庁舎(鉄骨鉄筋コンクリート造,地上6階地下1階建,総
床面積約2万6877㎡)にガソリンを入れたワインボトル3本及びポリタン
ク2個在中のかばんを持って立ち入った上,その頃,同庁舎1階フロアの一角
に設けられた前記A市役所B部C課のカウンター前で,上記のガソリンを使っ
てG,前記D,Hら同課職員多数が在勤している同課室内及びその周辺に放火
すれば,Gらが焼死する危険性が高いことを認識しながら,これに構うことな
く,上記のワインボトルの注ぎ口付近にライターの火を近づけ,気化したガソ
リンに着火させるなどした後,これらを同カウンター内にいるG,Dらの周辺
に投げ入れてDの直ぐ近くで炎上させるなどしたり,上記のポリタンク等の中
に入ったガソリンを同カウンター周辺にまき散らすなどして火を放ち,その結
果その火を同所の床等に燃え移らせて炎を燃え上がらせ,更に同課室内及びそ
の周辺に黒煙等を充満させ,よって,同課室内の床等約19.4㎡を焼損する
とともに,ワインボトルが当たったGに全治約7日間を要する右側頭部打撲・
皮下血腫の,消火しようとして炎上場所に近付いたHに全治約15日間を要す
る気道熱傷等の各傷害を負わせたが,その後G,D及びHが同課室内から退避
したため,これら3名を殺害するに至らなかった。
(証拠の標目)
省略
(争点に対する判断)
弁護人らは,判示第2の各殺人未遂の犯行における被告人の殺意を否定し,被告
人もこれに沿う供述をするところ,被告人が上記の犯行に使用したガソリンの引火
性や燃焼力が極めて高いことは衆知の事実である上,上記犯行の際に750㎖入り
のワインボトル3本と18~20ℓ入りのポリタンク2個に入っていたガソリンの
総量が大量であったことなどに照らすと,ガソリン入りのワインボトルに点火して
これを多数の職員が在勤している前記C課室内に投げ入れたり,ポリタンク等の中
に入ったガソリンをその周辺にまき散らすなどした被告人の一連の行為は,同課職
員らが火の点いたガソリンを浴びて火だるまとなったり,ガソリンに点いた火が同
課全体に急速に燃え広がるなどして,同課職員らを死亡させる危険性が高い行為で
あることが明らかである。そして,ワインボトルを投げ入れた同課内に多数の職員
が在勤していたことを被告人が認識していたことは,被告人自身が認めていること
などを考えあわせれば,被告人が自らの上記一連の行為の危険性を認識していたこ
とも認められる。
そうすると,上記の犯行の際,被告人に殺意があったことは十分に認められる。
なお,証拠上,被告人が,特定の人物を目掛けてワインボトルを投げ入れた事実
まで認めることはできないが,このことは上記の殺意の認定に影響しない。
(法令の適用)
省略
(量刑の理由)
判示第2の現住建造物等放火などの事実について,犯行時,被告人が追い詰めら
れた心境にあったとしても,その経緯や動機はまことに身勝手で理不尽というほか
ない。大量のガソリンを使用し不特定多数の市民らも出入りする市役所の業務時間
内に放火に及んだ被告人の行為は,多数の職員や一般来庁者の生命や身体に重大な
危害を加える危険性が高く,建造物侵入及び3名の職員に対する殺人未遂とも評価
されるものであって,その犯行態様は極めて衝撃的で悪質である。高く大きく燃え
広がった炎や大量の黒煙等により,市役所の建物や備品などに合計2億5700万
円余りの甚大な財産的被害が発生したほか,C課の一時移転や書類の焼失など,市
役所や市民に有形無形の損害が生じており,焼損面積が大きいとはいえないことを
量刑上さほど考慮することはできない。
そうすると,本件は同種の放火事案の中でも特に重い部類に属するというべきで
あるが,他方,幸いにも,本件で重篤な傷害を負った被害者がいなかったことを考
慮すると,公務執行妨害罪の刑をあわせても,現住建造物等放火罪の有期懲役刑の
上限である20年をやや下回る程度の刑をもって臨むのが相当である。
その上でその他の一般情状についてみると,本件が社会に与えた恐怖感や不安感
が大きいと考えられること,被告人に反省の態度が見られないこと,市職員らの処
罰感情が厳しいことなどの事情がある一方,被告人が長年一流の製缶工として働き,
平穏な社会生活を送ってきたこと,現在64歳とやや高齢であることなどの被告人
のために酌むべき事情もあるので,これらを考慮して,主文のとおりの刑に処する
のが相当であると判断した。
(求刑懲役21年)
平成26年2月7日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官細井正弘
裁判官小林礼子
裁判官尾島祐太郎

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