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裁判例


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平成11年(行ケ)第421号審決取消請求事件
平成12年5月9日口頭弁論終結
判決
原      告株式会社ゴールドウイン
代表者代表取締役【A】
訴訟代理人弁理士【B】
同【C】
同【D】
同【E】
被      告特許庁長官 【F】
指定代理人【G】
同【H】
主文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
 特許庁が平成10年審判第14917号事件について平成11年11月2日
にした審決を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
 主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 原告は、「EX-TECH」との欧文字を横書きして成り、第18類「かば
ん類、袋物、携帯用化粧道具入れ」を指定商品とする商標(以下「本願商標」とい
う。)について、平成9年1月24日、商標登録出願をしたが、平成10年7月1
6日、拒絶査定を受けたので、同年9月22日、拒絶査定不服の審判を請求した。
特許庁は、これを平成10年審判第14917号事件として審理した結果、平成1
1年11月2日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、平成11
年11月22日、その謄本を原告に送達した。
2 審決の理由
 審決の理由は、別紙審決書の理由の写しのとおりである。要するに、本願商
標は、全体として「イーエックステック」又は「エックステック」の称呼を生ずる
ほか、単に「テック」の称呼をも生ずるものであり、他方、「TECH」との欧文
字を横書きして成り、旧第21類「装身具、かばん類、袋物、宝玉およびその模造
品、造花」を指定商品とする登録第672177号商標(昭和38年2月19日出
願、昭和40年4月5日登録、昭和51年、昭和60年及び平成7年にそれぞれ更
新登録。以下「引用商標」という。)もまた、その構成文字に相応して「テック」
の称呼を生ずるものであるから、本願商標と引用商標とは、それぞれから生ずる
「テック」の称呼を共通にする類似の商標であると認定し、これを前提として、本
願商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似のものを含むから、本願
商標は商標法4条1項11号に該当する、とするものである。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
 審決の理由中、1(本願商標)及び2(原査定の引用商標)は認め、3(当
審の判断)は争う。
 審決は、本願商標の不可分一体性を看過し(取消事由1)、本願商標と引用
商標との類否の判断を誤り(取消事由2)、その結果、本願商標は商標法4条1項
11号に該当する、との誤った結論を導いたものであり、違法であるから、取り消
されるべきである。
1 取消事由1(本願商標の不可分一体性の看過)
 審決は、本願商標について、簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては「TEC
H」の部分が自他商品の識別標識としての機能を果たし、これより生ずると認めら
れる「テック」の称呼をもって取引に資される場合が少なくないと認定し、これを
前提に、本願商標は、全体として「イーエックステック」又は「エックステック」
の称呼を生ずるほか、単に「テック」の称呼をも生ずる旨認定した。しかし、この
認定は、本願商標の不可分一体性を看過しているものであって、前提において既に
誤っている。
 本願商標は、「EX」と「TECH」をハイフンで結合した結合商標である
から、全体としてまとまりよく一つの商標を形成している。「EX」と「TEC
H」の間にハイフンを配しているのは、取引者、需要者に対して、「EX」の文字
を強調し、正しく「エックステック」又は「イーエックステック」と称呼させるた
めに普通に用いられる手法である。本願商標の語頭の「EX」の文字を省略して
は、本願商標としての価値がなくなり、出願人の商品を識別する標識たり得なくな
るのである。本願商標は、「EX-TECH」の全体が不可分一体の商標であり、
単に「テック」とのみ称呼されることはあり得ない。
 2語を結合して一つの商標を構成する場合、それが一体となっていることを
示すためにハイフンをもって結合することは、商標造語における常套手段である。
そして、この状況下で、本願商標の場合に特に「EX」と「TECH」に分離して
判断しなければならない格別の理由はないのである。
2 取消事由2(類否判断の誤り)
 審決は、本願商標と引用商標とは、外観において相違し、かつ、観念上比較
すべくもないものであるとしても、それぞれから生ずる「テック」の称呼を共通に
する類似の商標といわなければならないとし、これを理由に、直ちに、本願商標は
商標法4条1項11号に該当すると判断した。しかし、審決のこの判断は、誤って
いる。
(1) 商標が類似のものであるかどうかは、「その商標をある商品につき使用し
た場合に商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認められるものであ
るかどうか」ということにより判定すべきものであり(最高裁昭和36年6月27
日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)、ある商品にその商標を使用
した場合に、商品の出所について誤認混同が生ずるおそれがあるか否かは、商標が
取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商
品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべ
きものであり(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号39
9頁参照)、具体的な判断をなすに当っては、商標自体のほか、なお諸般の事情を
参酌してなすべきである(大審院昭和6年5月15日判決・新聞3276号16頁
参照)。
(2) 本願商標が使用される指定商品「かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ」
又は類似の商品の分野では、①「ノース テック NORTH-TECH」(登録
第1869323号商標)、② 「PSY-TECH サイテック」(登録第22
17684号商標)、③「ガムテック Gum-tech」(登録第270212
4号商標)、④「メンズ テック MEN’S-TECH」(登録第263515
3号商標)、⑤「HI-TEC」(登録第2701976号商標)、⑥「SPAC
E TECH」(登録第1787055号商標)、⑦「AUTOTECH」(登録
第2035933号商標)、⑧「HYPER TECH」(登録第2211012
号商標)、⑨「Flight Tech フライト・テック」(登録第22219
58号商標)、⑩「トーホーテック TOHO TECH」(登録第225895
2号商標)、⑪「TAMATECH」(登録第2679564号商標)など、「T
ECH」の語と他の文字と組み合わされた商標(上記⑤は欧文字と図形とからな
る。)が多数存在する。これらの多数の登録商標によると、本願商標の指定商品又
は類似の商品の分野においては、「TECH」の語を、他の語と「ハイフン」を介
して又は一文字分の間隔をおいて結合した商標は、互いに混同を生じないものとし
て使用され、登録されていることが分かる。
 また、「TEK」(登録第2710771号商標)についても、「TEC
H」と同一称呼が生ずるものであるにもかかわらず、類似する商品を指定商品とし
て商標登録がなされている。
 このように互いに類似する要素のある商標が多数共存し、それらが混同を
生ずることなく使用されている商品分野においては、それらの商標は、互いに影響
し合って個々の保護範囲はそれぞれ縮減されるに至っていると考えるべきであり、
これが、登録商標の類似、非類似の範囲を判断する際の普通の考え方である。この
ことは、例えば、「筑後の寒梅」等の「寒梅」の文字を構成要素とする多数の商標
が登録され使用されているとき、「寒梅」の文字のみからなる先行商標の効力が、
「寒梅」の語にのみ縮減され、寒梅と他の文字との結合商標には及ばないされてい
ることからも裏付けられるものである。
 商標が広く保護されるのは、商標権者が最大限の保護を得るべくあらゆる
努力を重ね、その結果、商標が独自性を保っている限りにおいてのことであること
は、例えば周知商標の保護に関する商標法4条1項19号の趣旨にも見られるとこ
ろである。このような努力を怠っている商標権者は、類似商標の出現により、自分
の商標の独自性が侵食され、保護範囲が縮小されるのを黙認していることにほかな
らないから、その限りにおいて自らの権利を放棄したものとみなされるべきであ
り、このように考えるのが、国際社会の常識でもある。
 より具体的にいうと、アメリカでは、商標法(ランハム法)が1946年
に施行されたとき、既に「『黙認』とは、登録商標所有者が自己の権利を保護する
ことを怠けていて長い間第三者の本来不正行為であるべき行為を見逃していたこと
により、自分の権利が浪費されてしまったことを意味する。登録商標の所有者が、
知っていながら他人による継続した永続的な且つ有害な商標の使用を見逃していた
ときは、当該商標を放棄する意思を示す証拠となることは確立されている。ランハ
ム法では、放棄されたとみなされるとしている。黙認、放棄及び禁反言は特許庁の
手続でも主張することができる。」と考えられており、この考えは、1989年の
法改正においても引き継がれている。イギリスでは、1994年施行の改正商標法
において、黙認は同意を推定すると考えられており、同法48条(1)(b)について、
他人による(侵害と考えられる)商標の使用を知っていたにもかかわらず、5年間
継続して黙認していた先行商標の所有者は後行商標の使用に異議を唱える資格がな
くなると解されている。その他ヨーロッパ共同体商標規則、ドイツ商標法、フラン
ス商標法も、「黙認による制限」の規定を設けており、これら欧米諸国における先
行商標権者の「黙認」による権利制限の考え方は、広く世界的にも認められている
趨勢にあり、我が国商標登録審査の実務においても適用し得るものである。
 ところが、引用商標の商標権者は、上記各商標が設定登録されていること
に対し、これを知りながら又は知り得る状況にありながら、永年にわたって何らの
対抗手段もとることなく放置し、黙認してきたのであるから、その限りにおいて自
らの権利を放棄したものとみなされるべきであり、引用商標の保護範囲はその分だ
け減縮されて、「TECH」の文字自体のみに制限され、他の語と結合した商標に
対してまでは及ばないというべきであり、したがって、他の語と結合した後願商標
と引用商標とは類似しないと判断すべきである。
第4 被告の反論の要点
 審決の認定判断は、いずれも正当であり、審決を取り消すべき理由はない。
1 取消事由1(本願商標の不可分一体性の看過)について
 本願商標は、「EX」の文字と「TECH」の文字がハイフンで結合されて
いるとしても、ハイフンの両側に間隙があり、「EX」の文字と「TECH」の文
字とが離れた印象を与えるものであって、構成全体をみた場合に、両文字部分が視
覚上分離して看取されるのに加え、全体として特定の意味合いを有する一語を表し
たものともいえないから、常に一体不可分にのみ認識されるものとすることはでき
ない。
 また、簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては、商標は、その各構成部分が、
それぞれを分離して観察することを取引の実情に照らして不自然であると考えさせ
るほどに不可分的に結合しているものでない限り、常に必ず構成部分の全体が一体
として称呼、観念されるというわけのものではなく、1個の商標から2個以上の称
呼、観念が生ずることもあり得るのである(最高裁昭和38年12月5日第一小法
廷判決判例時報366号26頁参照)。このような取引の実情からして、本願商標
の構成要素である「EX-」と「TECH」との間に上記一体不可分性が認められ
ない限り、本願商標がその指定商品に使用された場合、これに接する取引者、需要
者は、その語頭部分の「EX-」は、「TECH」の一類型を示したものであるか
のように考え、ありふれた商品の記号、符号の一つとして認識するというのが自然
であるから、「EX-」は自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと
いうべきである。
 ところが、本願商標には、一体不可分のものとしてのみ使用されて取引者、
需要者間に広く知られているという取引の実情はなく、他にも一体不可分に認識さ
れて常に一連一体にのみ称呼されるとすべき特段の理由は見出せない。
2 取消事由2(類否判断の誤り)について
 商標の類否判断に当たっては、当該商標が結合商標であるときは全体観察の
みならず、その構成文字についての識別性の有無等を検討し、商標の要部を抽出し
て、当該商標の要部と対比される商標とを比較して類否を判断すべきである。この
場合、本願商標は、その語頭の「EX-」の部分が商品の型番、規格、品番等を表
示するための記号、符号として類型的に使用されるローマ字の2字の範疇に属する
ものであって、それ自体、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないもので
ある以上、「EX-」と「TECH」とに分離して、その要部である「TECH」
の文字部分をもって商標の類否を判断すべきである。
 原告が掲げる登録商標は、いずれも、引用商標との関係において、本願商標
の場合とは事案を異にするものである。すなわち、これらの登録商標は、いずれ
も、一連一体の別異のものであって、引用商標と類似するものではないとして、又
は、指定商品が抵触しないとして、登録されているものであるから、これらの登録
例があるからといって、「TECH」の語の独占性が稀釈化されていることにはな
らず、引用商標の効力の範囲はそれ自体に限定されるということにもならないので
ある。
 なお、原告が掲げる「寒梅」の商標については、併存する「越乃寒梅」等の
登録商標は、いずれも、全体が一つのまとまりのある標章として認識されるものと
されているのに加え、日本酒という商品の取引の特殊性が考慮されているものであ
るから、取引の実情の異なる本願商標について同列に論ずることはできない。
 また、原告は、アメリカを初めとする各国の商標法の規定を引用したうえ、
永年にわたって黙認してきた引用商標の保護範囲は、「TECH」の文字自体に制
限され、他の語と結合した商標に対してまでは及ばないと主張している。
 しかしながら、引用商標と当該12の登録商標とは、上記のとおり、類似す
ることのない別異の商標であることのゆえに、引用商標の商標権者は権利行使をし
なかったと考えられるのであり、決して、権利行使をしなかったことによって自ら
の権利を放棄したりしたことになるものではない。しかも、我が国の商標法には、
アメリカその他の国の法制のような商標権者の「黙認」による制限を定めた規定は
存在せず、また、工業所有権の保護に関するパリ条約6条は、商標の保護が、他国
の影響を受けず独立であることを明らかにしているのである。
 したがって、たといアメリカその他の国に上記規定があるとしても、我が国
における商標登録出願は、我が国商標法に基づき審査、審判の審理が行われるので
あって、原告が主張する商標権者の「黙認」による制限は、本件に妥当するもので
はなく、原告の主張は失当である。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(本願商標の不可分一体性の看過)について
(1) 本願商標が、「EX-TECH」との欧文字を横書きしてなり、第18類
「かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ」を指定商品とする商標であることは、当
事者間に争いがない。
(2) 本願商標の「EX-TECH」の欧文字が、「EX」及び「TECH」と
いう二つの欧文字をハイフンで結合した結合商標であることは明らかである。
 本願商標である「EX-TECH」は、「EX」及び「TECH」という
二つの欧文字の構成部分をハイフンで結合しているものであり、「EX」と「TE
CH」との間には、明確にハイフンが存在するのであるから、視覚上、本願商標が
ハイフンの前後で「EX」と「TECH」に分離して看取されることは、構成自体
で明らかというべきである。
 そして、ハイフンは、言語表記の補助符号として使用され、英文などで、
完全な複合語をなすには至らない2語の連結、1語が行末までに収まりきれず2行
にまたがる時のつなぎ、又は、1語内の要素の区切りを示すのに使われるものであ
ることは、当裁判所に顕著である(広辞苑第4版参照)。
 次に、本願商標を構成する「EX-TECH」の欧文字が一体のものとし
て、どのような意味内容を有する語であるかが、一般の取引者、需要者に知られて
いるものと認めるに足りる証拠はなく、他にも、上記欧文字が全体としてみて一体
不可分のものとしてのみ理解されると認めさせる証拠は、本件全証拠を検討しても
見出すことができない。
 そうすると、本願商標に接する一般の取引者、需要者は、これを分離して
把握し、認識し、称呼することが十分にあり得るものであって、本願商標からは、
全体として「EX-TECH」の文字部分に相応する称呼が生ずるとともに、「T
ECH」の文字部分に相応する称呼をも生じ得るものと認められる。
 したがって、本願商標は、全体として「イーエックステック」又は「エッ
クステック」の称呼を生ずるほか、単に「テック」の称呼をも生ずるとした審決の
認定に誤りはない。
(3) 原告は、本願商標が不可分一体である根拠として、本願商標は、「EX」
と「TECH」をハイフンで結合した結合商標であるから、全体としてまとまりよ
く一つの商標を形成しているとか、本願商標の語頭の「EX」の文字を省略して
は、本願商標としての価値がなくなり、出願人の商品を識別する標識たり得なくな
るとか主張する。
 しかしながら、本願商標が結合商標として全体としてまとまりよく一つの
商標を形成しているとしても、ハイフンによって結合されていること自体、本願商
標が完全な複合語をなすに至っていないことを示しているということができ、その
他、本件全証拠によっても、本願商標が、ハイフンで結合したことによって、「E
X」と「TECH」とを分離して観察することが取引の実情に照らして不自然であ
ると思われるほど不可分一体に結合していると認めさせる事実は、見出すことがで
きない。
 また、商標の類否は、客観的な観察によってなされるべきものであるか
ら、出願人が本願商標を造語した意図は問題になり得ない。
 原告の上記主張は、採用の限りでない。
2 取消事由2(類否判断の誤り)について
(1) 本願商標が、「EX-TECH」との欧文字を横書きして成り、第18類
「かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ」を指定商品とする商標であることは前記
のとおりであり、また、引用商標が、「TECH」との欧文字を横書きして成り、
旧第21類「装身具、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花」を指定商品
とする登録商標であることは、当事者間に争いがない。
(2) 商標が類似するかどうかは、最終的には、対比される両商標が同一又は類
似の商品に使用された場合に、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるか否か
によって決すべきものであり、具体的にその類否判断をするに当たっては、両商標
の外観、観念、称呼を観察し、それらが取引者に与える印象、記憶、連想等を総合
して全体的に考察すべきであって、決して上記3要素の特定の一つの対比のみによ
ってなされるべきものではないが、少なくともその一つが類似している場合には、
当該具体的な取引の実情の下では商品の出所の混同を生ずるおそれはないと考えさ
せる特別の事情が認められる場合を除いて、出所の混同を生ずるおそれがあると認
めるのが相当である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2
号399頁参照)。
 本件についてみると、本願商標は、前述のとおり結合商標であり、全体が
不可分一体のものとはいえないから、外観上の観察において、「EX-TECH」
という形象を認識させ得るほか、「TECH」という形象をも認識させ得るもので
あり、また、「EX-TECH」の構成に相応して「イーエックステック」又は
「エックステック」の称呼を生じ得るほか、「TECH」の構成に相応して「テッ
ク」の称呼をも生じ得るものということができる。
 他方、引用商標は、「TECH」との欧文字を横書きして成るものである
から、当然に、外観上の観察において「TECH」という形象を認識されるもので
あり、また、「TECH」の構成に応じて「テック」の称呼を生ずるものである。
 そうすると、本願商標と引用商標とは、少なくとも外観、称呼において共
通しているから、当該指定商品について商品の出所の混同をきたすおそれはないと
考えさせる特別の事情が存在すると認められる場合を除いて、出所の混同を生ずる
おそれがあるものと認めるべきである。ところが、本件全証拠によっても上記特別
の事情を認めることができない。のみならず、本願商標の指定商品が一般に陳列、
展示されて取引される性質のものであることは、当裁判所に顕著であるから、この
ような性質の商品に、それぞれ本願商標、引用商標を付したならば、一般消費者の
間で出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかというべきである。
 このように、本願商標と引用商標とは出所の混同を生ずるおそれがあるか
ら、両商標は、類似するものと認められる。
(3) 原告は、商標登録第1869323号「ノーステック NORTH-TE
CH」他11の登録商標を挙げて、本願商標がその指定商品について使用されたと
しても、引用商標との間に出所の混同は生じ得ず、本願商標は引用商標に類似しな
い旨主張する。
 原告が挙げる商標登録第1869323号「ノーステック NORTH-
TECH」他11の登録商標は、いずれも、その構成中に「TECH」(又は「T
EC」、「TEK」)、「テック」の語を含むものではあるものの、原告は、これ
らが商標登録の実務において登録されたとして、ただそれらを列挙しただけであっ
て、これらが本願商標の指定商品に係る取引社会において現実に使用されているか
どうか、使用されているとして、どのようにして使用され、その結果いかなる状況
となっているかなどについては、何らの立証もしておらず、これらのことは一切不
明であるから、このような登録商標を挙げても、上記特別の事情となり得ないこと
は自明である。
 また、原告は、類似商標が多数共存し、それらが混同を生ずることなく使
用されている商品分野においては、それら類似商標は、互いに影響し合って個々の
商標の保護範囲はそれぞれ縮減されていると考えるべきであり、これが登録商標の
類似、非類似の範囲を判断する際の普通の考え方であるとも主張する。
 しかしながら、原告の主張は、原告が挙げる商標登録第1869323号
「ノーステック NORTH-TECH」他11の登録商標が存在することから、
直ちに、過去において混同を生ずることなく使用されてきている、さらには、将来
にわたって混同を生ずるおそれもないとの結論に結び付けている点で論理の飛躍が
あり、失当である。また、原告主張のように考えるのが普通であるとは、本件全証
拠によっても認めることができない。
 原告の主張は、採用できない。
 原告は、上記主張を裏付けるものとして「寒梅」の文字を構成要素とする
登録商標を例に挙げている。しかし、原告主張の事例は、日本酒の商標に関するも
のであって、本件とは事案を異にし、また、日本酒という特定の商品における扱い
を一般原則の一適用例とすべき根拠も認めることができない。
 また、原告は、欧米諸国における、先行商標権者の「黙認」による権利制
限の理論や規定を根拠に、引用商標の商標権者は、上記各商標が設定登録されてい
ることに対し、これを知りながら又は知り得る状況にありながら、永年にわたって
何らの対抗手段もとることなく、放置、黙認してきたのであるから、その限りにお
いて自らの権利を放棄したものとみなされるべきであり、引用商標の保護範囲はそ
の分だけ減縮されて、「TECH」の文字自体のみに制限され、他の語と結合した
商標に対してまでは及ばない旨主張する。しかし、我が国の商標法の商標登録の可
否に関する規定の解釈において、原告主張の上記「黙認」による権利制限の理論を
認め得る余地がないことは、明らかというべきである。
3 以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由は、いずれも理由がな
く、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
 よって、原告の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事
件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所第6民事部
  裁判長裁判官山  下  和  明
       裁判官宍  戸     充
       裁判官阿  部  正  幸

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