弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はいずれも之を棄却する。
     当審における訴訟費用のうち国選弁護人高橋萬五郎に支給した分は被告
人A、同袴田重司に支給した分は被告人Bの負担とする。
         理    由
 弁護人高橋万五郎の陳述した被告人Aに対する同被告人名義及び同弁護人名義の
控訴趣意並に弁護人袴田重司の被告人Bに対する控訴趣意はそれぞれ別紙記載のと
おりである
 被告人Aの控訴趣意について
 しかし記録を精査し原判決挙示の証拠を綜合すれば、原判示事実は優に認定する
ことかできるのであつて、記録を精査するも原判決の事実認定に誤りがあるとは認
められないから論旨は理由がない。
 弁護人高橋万五郎の被告人Aに対する控訴趣意第一点及弁護人袴田重司の被告人
Bに対する控訴趣意第二点について
 刑法第二百三十八条の脅迫は、他人を畏怖せしむるの目的で之に対し言論若くは
身体の動作によつて被害者の身体又は意思を抑圧して其の反抗を抑圧するに足る程
度の害悪を告知するを以て足り加害者が現実に其の害悪を加うるの能力を具有する
や否やは勿論其の結果として必ずしも被告知者をして畏怖の念を生ぜしめたる事実
あることを要するものではない。原判決挙示の証拠を綜合すれば、被告人等は共謀
の上窃盗の目的で、C方屋内に優人し金品を窃取した際C夫妻に発見され、その逮
捕を免がれようとして被告人Bは拳銃(証第一号)をCに、被告人Aは、所携の日
本刀を同人妻Dに、それぞれ擬して危害を加えるような態度を示して同人等を脅迫
した事実を認めることができるばかりでなく、互に右脅迫の事実を認識して居たこ
とが認められるのであつて右拳銃が使用出来ないものであり、日本刀が竹製の玩具
であつたとしても前記所為は被害者の反抗を抑圧するに足る程度の害悪の告知にあ
たると認めるを相当とすべきであるから原審が被告人等の右所為に対し刑法第六十
条、第二百三十八条に間擬したことは洵に相当で、原判決には各所論のような事実
誤認や法令の適用を誤つた違法があるとは認められない。其の他記録を精査するも
原判決には事実誤認を窺うべき事由は存しない。論旨は理由がない。
 弁護人袴田重司の被告人Bに対する控訴趣意第一点について
 <要旨>原判決挙示の証拠のうち証人C、同Dに対する昭和二十五年七月二十五日
附各証人尋問調書を査閲するに、同日いずれも同一場所である検証現場にお
いて尋問しながら後に尋問すべき証人のいない所で尋問した旨の記載のないことは
所論のとおりである。しかしながら刑事訴訟規則第百二十三条は訓示的規定に属す
るものであるから仮に右規則に違背して尋問が行われたとしても、その供述を無効
となすものではない。故にその供述記載を罪証に供したからとて原判決に違法があ
るとは言い得ない。論旨は採用の限りでない。
 弁護人高橋万五郎の被告人Aに対する控訴趣意第三点及び弁護人袴田重司の被告
人Bに対する控訴趣意第三点について
 各所論の事情を参酌し記録を精査し、本件犯行の動機態様、被告人等の身分、経
歴その他諸般の事情を総合して考察するも原審の各被告人に対して科した刑が重き
に過ぎるものとは認められないから、いずれも論旨は理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条に従い、本件控訴はいずれも之を棄却すべく、
当審における訴訟費用は、同法第百八十一条第一項により主文第二項掲記の如く各
被告人に、それぞれ負担せしむることとし主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 大野正太郎 裁判官 松村美佐男 裁判官 蓮見重治)

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