弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人児玉正勝の上告趣意(後記)について。
 上告趣意冒頭の記載は要するに、上告裁判所は刑事訴訟法四〇五条に規定する事
由の外同法四一一条の各号にあたる事由をも上告理由として認めるべきであつて、
これを上告裁判所が職権をもつて原判決を破棄し得る事由を定めたものとする解釈
は憲法三二条及び三七条に違反するというにある。しかしながら、刑事訴訟法が上
告の理由として認めたのは同法四〇五条各号の事由に限り、同法四一一条各号の場
合を含まないことは同条の規定に徴して明らかであるところ、上告裁判所が如何な
る事由をもつて上告の理由とするか、又職権調査の範囲を如何に定めるかは立法上
の問題であり、憲法八一条の外には何等これを制限した規定は存しないのであるか
ら、刑事訴訟法が四〇五条各号に規定する事由だけを上告申立の理由とし、同法四
一一条各号に規定する事由を上告審の職権による破棄事由としながら、これを当事
者からの上告申立の理由とすることを許さなかつたからといつて、憲法三七条に反
するものでないことは当裁判所の判例(昭和二五年(あ)一四一七号、同年九月一
九日第三小法廷判決)とするところであり、又憲法三二条は、何人も裁判所におい
て裁判を受ける権利あることを保障したものであつて、裁判所の組織、権限等につ
いては憲法八一条の制限に服する外、すべて法律において諸般の事情を勘案して決
定すべき立法政策の問題であり、上告審を純然たる法律審とするか、量刑不当乃至
事実誤認の上告理由をも認めて事実審理をも行うものとするかは、立法をもつて適
当に決定すべき事項に属するとすることもまた当裁判所の判例(昭和二四年(れ)
二八一号、同二五年二月一日大法廷判決)とするところである。それゆえ右の論旨
はいずれも理由がない。すでに右前提にして理由がない以上、同趣意第一点は単な
る事実誤認の主張であり、同趣意第二点は単なる量刑不当の主張であつて、ともに
上告適法の理由にならない。その他記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべきも
のとは認められない。
 よつて同四〇八条、一八一条により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決
する。
  昭和二七年七月一五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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