弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を罰金三千圓に処する。
     右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間
被告人を労役場に留置する。
     押収にかかる日本刀九口(証第一号乃至第九号)は之を没収する。
     訴訟費用(原審における証人Aに昭和二十五年十二月七日支給した分を
除く)は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人引地寅治郎の控訴趣意は別紙記載のとおりである。
 弁護人の控訴趣意一について
 原判示事実は、その挙示する証拠を綜合すれば優に認定することができる。弁護
人は被告人には本件刀剣の<要旨>所持の意思がなかつたと主張するが、銃砲等所持
禁止令にいう所持とは銃砲等を自己の事実支配におくことをいい、自らその
事実支配を始めたことを認識した以上これが客観的に自己の事実支配を脱しない限
り、依然その所持を継続しているものと解するのが相当である。然るに、原審第一
回公判調書中被告人の供述として「刀を無届で所持していると進駐軍から厳重処分
されると云う事を聞いて居たので、家は村でも旧家であり、日本刀等を発見されて
は大変だと思つて若し家に刀等があつたら届出るか、家に置かない様に処分するこ
とを二男Bに話したが処分の結果は聞かなかつた、Bもまた何も話さなかつた」と
の記載と、原審裁判官の証人Bに対する尋問調書中「私が中学四年頃(昭和二十一
年四月頃)刀を持つて居ると処分を受けると云うので、父から面倒くさいから処分
してしまえと云われたので、その箱を刀の入つたまま天井裏に上げて置きました、
その事は誰にも話さなかつた」旨の供述記載とを綜合すると、被告人は同家に刀剣
の存在することを認識し当時二男Bにその処分を命じたが、その結果については何
等確めなかつたこと及び其の後依然として右刀剣が被告人方に存したことは明らか
である。されば銃砲等所持禁止令並びに同令施行規則による届出義務は所持者自身
が、これを負うのであるから被告人が一旦所持を開始し発覚に至るまで事実上本件
銃砲等が被告人方に蔵置されていた本件においては、その事実支配を喪失していな
い限り依然被告人の所持は継続し、仮に刀剣は既に処分され同家に存在しないと信
じたとしても、それだけで所持の認識を欠き犯意を阻却するものと断じ難いから原
判決に事実誤認の違法があるとは認められない。其の他記録を精査するも原判決に
は事実誤認を窺うべき事由はない。論旨は理由がない。
 同上二について
 所論は被告人がその二男Bに本件刀剣の処分を命じたことによつて、その占有権
が被告人からBに移転したのであるから被告人には所持の意思がないと謂うに帰す
るのであるが、右主張はその理申のないこと前段説明の通りであつて原判決には何
等法令の解釈を誤つた違法があるとは認められない。論旨は理由がない。
 更に職権を以て原判決の法令の適用の当否につき検討するに原判示所為につき昭
和二十五年十一月十五日政令第三百三十四号銃砲刀剣所持取締令及び同令附則第3
項により行為当時の銃砲等所持禁止令第一条第二条を適用しているけれども右法令
中には選択刑として懲役、禁錮、罰金が存しその行為は昭和二十四年五月二十日の
犯行であるから罰金等臨時措置法第二条をも併せて適用しなければならない。けだ
し罰金等臨時措置法は同法第一条によつて明かな様に刑法等の臨時特例であつて、
これが改正ではないから前記法令を掲げるだけでは罰金等臨時措置法による引上げ
を受けない罰金の額に準拠したものというの外はない。しかして罰金の額の如何は
法定刑の選択に影響を及ぼすのであるから右法令の適用の誤は判決に影響を及ぼす
こと明かであるといわなければならない。よつて原判決は刑事訴訟法第三百九十二
条第二項第三百八十条第三百九十七条により破棄すべきものである。
 しかるに本件は直ちに判決をすることができるものであるから刑事訴訟法第四百
条但書により当裁判所において更に判決を為すべきものである
 原判決の確定した事実に法令を適用すると被告人の原判示所為は昭和二十五年十
一月十五日政令第三百三十四号銃砲刀剣頻等所持取締令附則3項銃砲等所持禁止令
第一条第二条同令施行規則第一条第三号、罰金等臨時措置法第二条に該当するとこ
ろ所定刑中罰金刑を選択しその金額の範囲内において被告人を罰金三千円に処し、
右罰金を完納することができないときは刑法第十八条により金二百円を一日に換算
した期間被告人を労役場に留置すべく押収に係る日本刀九口(証第一号乃至第九
号)は本件犯行の組成物件であるから同法第十九条第一項第一号第二項により之を
没収することとし、訴訟費用のうち原審における証人Aに昭和二十五年十二月七日
支給した分を除き其の余は刑事訴訟法第百八十一条第一項により全部被告人に負担
せしむべきものである。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 大野正太郎 裁判官 松村美佐男 裁判官 蓮見重治)

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