弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中、上告人敗訴の部分を破棄する。
     前項の部分につき、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人伊丹経治の上告理由第一について
 一 本件訴訟のうち、上告人の所有権確認請求に関する部分の経過及び第一、二
審判決の概要は、次のとおりである。
 1 上告人は、第一審判決別紙図面のイ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ′、ト、チ、リ、
ヌ、ル、ヲ、イ′、イの各点を順次直線で結んだ範囲の土地部分(以下「上告人耕
作地」という。)が自己の所有する八千代市a町字bc番の土地及び同町字de番
の土地(以下、合わせて「本件(一)土地」という。)に属するとして、被上告人に
対し、その所有権の確認を求めた。
 2 これに対し、被上告人は、上告人耕作地のうち右図面のA、B、ハ、ニ、ホ、
ヘ′、ト、チ、リ、ヌ、Aの各点を順次直線で結んだ範囲の土地部分(以下「本件
係争部分」という。)は、被上告人が平成元年八月二五日にD外一名から買い受け
た同町字df番の土地(以下「本件(二)土地」という。)に属すると主張していた。
 3 第一審は、上告人耕作地が本件(一)土地に該当するものと判断し、上告人の
本件所有権確認請求をすべて認容した。
 4 被上告人が第一審判決に対して控訴を提起したところ、上告人は、原審第一
回口頭弁論期日において、所有権確認を求める範囲を本件係争部分に減縮した。
 5 上告人は、原審第二回口頭弁論期日において、予備的に、上告人及びその先
代は、昭和四九年一月一日以降、所有の意思をもって平穏公然に本件係争部分を耕
作占有してきたものであるから、平成五年一二月三一日をもって取得時効が完成し
ていると主張し、これを援用する旨の意思表示をした。
 6 しかし、上告人は、原審第三回口頭弁論期日において、「右主張には錯誤が
あった」として、右5の取得時効の主張を撤回し、原審は右期日に弁論を終結した。
 7 原審は、上告人及びその先代が、上告人耕作地は一体として本件(一)土地で
あるとの認識の下に、長年にわたりこれを畑として平穏に耕作占有してきた事実を
認定した。
 8 しかし、原審は、公図の記載等にかんがみると、本件(二)土地の全部又はそ
の一部が上告人耕作地内に存在するのではないかとの疑問を払拭することができず、
これを排して、本件係争部分がすべて本件(一)土地に含まれるものとはにわかに認
め難いとして、第一審判決を取り消し、上告人の本件所有権確認請求を棄却した。
 二 論旨は、要するに、上告人は原審でいったん提出した取得時効の予備的主張
を撤回したものであるが、本件は、上告人が右主張を維持していれば、立証活動を
追加するまでもなく、取得時効に基づき上告人の本件係争部分の所有権確認請求が
認容された事案であるから、原審としては、第一審判決を取り消すのであれば、上
告人に対し、取得時効の主張の撤回につき再考を促すよう示唆をする義務があった
のであり、これをしなかった原審の措置には、釈明義務違背、審理不尽の違法があ
る、というのである。
 三 そこで、検討するのに、本件においては、公図の記載等によれば、本件係争
部分がすべて上告人所有の本件(一)土地に該当するとの上告人の主位的主張を認め
ることは困難であるとしても、上告人及びその先代が、上告人耕作地は一体として
本件(一)土地であるとの認識の下に、長年にわたりこれを平穏に占有してきたこと
は原審の認定するところであって、上告人が前記予備的主張を維持していれば、上
告人が時効により本件係争部分の所有権を取得したとして、本件所有権確認請求が
認容されることも十分に考えられる(ちなみに、被上告人がD外一名から本件(二)
土地を買い受けたのが右時効完成後であるとしても、原審の認定によれば、同土地
が本件係争部分に含まれるか否かもまた確定し得ないことになるから、必ずしも上
告人が本件係争部分の時効取得を被上告人に対抗し得ないことになるものではない。)。
 そうすると、上告人がいったん取得時効の予備的主張を提出しながら、次回の口
頭弁論期日に至ってこれを撤回したのは、上告人の誤解ないし不注意に基づくもの
とみられるのであって、原審としては、右撤回について上告人の真意を釈明し、そ
の結果、上告人が右予備的主張を維持するというのであれば、その主張に係る取得
時効の成否について更に審理を尽くした上、本件係争部分の所有権の帰属について
判断すべきものである。
 したがって、原審が、右のような措置に出ることなく上告人の本件所有権確認請
求を棄却したのは、釈明権の行使を怠り、ひいては審理不尽、理由不備の違法を犯
したものといわなければならず、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明
らかである。これと同旨をいう論旨は理由があり、その余の論旨について判断する
までもなく、原判決中上告人敗訴の部分は破棄を免れない。そこで、本件について
は、右部分について更に審理を尽くさせるため、これを原審に差し戻すこととする。
 四 よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとお
り判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    尾   崎   行   信
            裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    大   野   正   男
            裁判官    千   種   秀   夫

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛