弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由第五ないし第七点について
 所論は、要するに、第一審裁判所は、本件訴状を被告に送達しないまま、口頭弁
論を経ずに訴えを却下し、その判決正本をも被告に送達せず、また、原審裁判所も、
同様口頭弁論を経ずに控訴を棄却し、控訴状及び判決正本を被告に送達しなかつた
が、このような一、二審の判断及び措置は、民訴法一二五条、一九三条一項、二二
九条等の規定及び憲法七六条三項、八二条に違背するというのである。
 確かに、訴えが不適法な場合であつても、当事者の釈明によつては訴えを適法と
して審理を開始し得ることもあるから、そのような可能性のある場合に、当事者に
その機会を与えず直ちに民訴法二〇二条を適用して訴えを却下することは相当とは
いえない。しかしながら、裁判制度の趣旨からして、もはやそのような訴えの許さ
れないことが明らかであつて、当事者のその後の訴訟活動によつて訴えを適法とす
ることが全く期待できない場合には、被告に訴状の送達をするまでもなく口頭弁論
を経ずに訴え却下の判決をし、右判決正本を原告にのみ送達すれば足り、さらに、
控訴審も、これを相当として口頭弁論を経ずに控訴を棄却する場合には、右被告と
されている者に対し控訴状及び判決正本の送達をすることを要しないものと解する
のが相当である。けだし、そのような事件において、訴状や判決を相手方に送達す
ることは、訴訟の進行及び訴えに対する判断にとつて、何ら資するところがないか
らである。
 ところで、記録によれば、本件訴えは、上告人が、通算老齢年金の支給裁定の変
更を求めて提起した訴えについて、第一審裁判所が請求を棄却し、控訴裁判所が控
訴を棄却し、最高裁判所が上告を棄却する旨の判決をしたのに対し、国を被告とし
て、更に右判決の無効確認を求めるとともに、右裁定の変更を求めたものであるこ
とが明らかである。このように、最高裁判所まで争つて判決が確定した後、更に右
判決の無効確認を求める訴えは、民事訴訟法上予定されていない不適法な訴えであ
つて、補正の余地は全くないから、このような訴えにつき、訴状において被告とさ
れている者に対し、訴状を送達することなく口頭弁論を経ないで訴えを却下し、そ
の判決を右被告に送達しなかつた第一審裁判所の判断及び措置並びに同様に控訴状
の送達をせずに口頭弁論を経ないで控訴を棄却し、その判決を被控訴人とされてい
る者に送達しなかつた原審の判断及び措置は、いずれもこれを正当として是認する
ことができる。したがつて、右措置に、民訴法一二五条、二二九条及び一九三条一
項違背の違法はなく、右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、その前提
を欠く。また、右判断は、所論引用の判例に抵触するものではない。原判決及び一、
二審の訴訟手続にその余の所論の違法もなく、論旨は採用することができない。
 同第一ないし第四点について
 原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立つて
原審の法令の解釈適用の誤りをいうか、又は原審の判断と関係のない事項をあげて
原判決の不当をいうものにすぎず、採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    千   種   秀   夫
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    大   野   正   男
            裁判官    尾   崎   行   信

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