弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人我妻源二郎作成名義の控訴趣意書記載の通りであるか
ら、これを引用し、右につき当裁判所は次の如く判断する。
 控訴趣意第一点について
 次に弁護人は「本件各詐欺の事実につき原判決は被告人が被害者から受領した金
員又は小切手の全額につき詐欺罪の成立を認めているが、被告人が権利者から委託
を受けて請求した部分については、権利の実行として正当視さるべきであるからこ
の部分については詐欺罪の成立はなく、唯水増請求した部分についてのみ所謂差額
詐欺として詐欺罪の成立を認むべきに拘らず、全額について犯罪の成立を認めたの
は事実誤認乃至法令の適用を誤つた違法を犯したものである」と主張する。
 よつて案ずるに、原判決の認定する本件各詐欺の犯罪事実は被告人はA振興会の
相談役であつて、理事長の諮問に応ずべき職責を有し、本来理事者の如く振興会の
ため何等業者と取引契約を締結する等の権限を有するものではないが、同会の業務
に明るいところから事実上同会の指導権を握り業務の広範囲に亘つて采配を振い、
本件の何れの取引においても予め自己と取引関係のある業者等と、同会の備品或は
必要品の買入れについての売買契約又は同会の建物、設備の改修に関する請負契約
を締結し、該契約を権限ある理事長等をして承認せざるを得ない状態に作為して結
局承認せしめ、自己が業者のため同会に対し売買乃至請負代金を請求して受領の上
業者に交付する了解の下に、水増請求するの情を秘して業者から予め未完成の見積
書用紙や代金請求書用紙或は領収書用紙を入手しておき、右用紙に適宜水増して金
額を記入し虚偽の請求書等を作成し、これを振興会の経理課係員に提出して、同係
員及び理事者等を欺罔し、係員から殆んどが真実の代金を著しく超過(超過額は少
ないものでも真実の代金の二割に該当し数千円の水増額となつている)する現金又
は小切手を交付せしめてこれを騙取したという事実であつて、これらの事実は原判
決の挙示する対応証拠によつて明瞭である。
 <要旨>上記の如き事実関係の下においては、同振興会の経理課係員等は、若し被
告人が水増請求する事実を了知したならば、通常請求金額の支払を拒否する
ものであるから、然らざる特別の事情を認め難い本件においては、被告人が正当に
取立委任を受けた金額については権利を行使する意思であつたとしても、被告人が
振興会から水増請求の欺罔手段を使用して現金又は小切手を受領した行為は、売主
又は請負人の委任に基づく権利行使の手段として社会通念上許容される範囲を逸脱
し、権利の濫用であつて、欺罔手段及び現金又は小切手の受領即ち所持の侵害を含
む行為全体として違法性を帯びるものと認むべく、従つて被告人が取得した現金又
は小切手の全額につき詐欺罪の成立を肯定するを正当とする。右現金又は小切手の
騙取に伴う民法上の効果即ち権利者に対する弁済として有効であるか否かの如き問
題は些かも右見解を左右することではなく、又騙取物件の可分、不可分の性質は詐
欺罪成立の範囲に何等影響を及ぼす事柄ではない。故に原判決が本件各水増詐欺の
事実において、被告人が取得した現金又は小切手の全部につき詐欺罪の成立を認め
たのは正当であつて、これに反する見解に立脚し、水増部分以外については詐欺罪
の成立を否定する弁護人の所論は採用し難く、所論引用の大正二年一二月二三日言
渡の大正二年(れ)第一二一一号大審院刑事聯合部判例はその後の判例により自ら
変更されたものと云うべく、本件につき今これを引用することは適切でない。叙上
の如くであるから、原判決には何等所論の如き事実誤認乃至法令の適用を誤つた過
誤あることなく、論旨第一点はすべて理由がない。
 (その余の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 尾後貫荘太郎 判事 鈴木良一 判事 飯守重任)

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