弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原許可の決定中Aに関する部分を取消す。
     本件を東京地方裁判所に差戻す。
         理    由
 抗告人らは主文第一項同旨並に相手方の本件許可申請(Aに関する部分)を却下
するとの裁判を求め、別紙抗告理由のとおり主張した。
 案ずるに、記録に徴すると、債権者A外一名対債務者医療法人社団馬込病院外三
名間の東京地方裁判所昭和三十六年(ヨ)第二、〇二四号職務執行停止仮処分申請
事件は民事訴訟法第七六〇条にもとずき右債権者らより申立られ裁判所は右申請を
理由ありと認め債務者法人の理事たる抗告人B、同Cの職務を停止し相手方Dを右
法人の理事長職務代行者に選任する旨の決定をしたこと、竝に右理事長の職務代行
者として選任せられた相手方Dが右昭和三六年(ヨ)第二〇二四号事件に附随して
「借入金ならびにAを相談役に就任せしめ、給与を給する件に関する許可申請」を
仮処分を為した裁判所と同一の東京地方裁判所民事第八部に申立てその許可の決定
を得たことが夫々明らかである。
 <要旨第一>(一) 商法第二七〇条には株式会社の取締役の選任決議の無効若は
取消又は取締役の解任の訴の提起ありたる場合に仮処分を以て取締役の
職務の執行を停止し又は之を代行する者を選任することを得る旨を規定し、同法第
二七一条は右の職務代行者は仮処分命令に特別の定のある場合を除く外会社の常務
に属しない行為を為すことを得ず但し特に本案の管轄裁判所の許可を得た場合は此
の限りに非ずと規定し、この許可は非訟事件手続法によらしめているものである
(非訟法第一三二条ノ五)。そして右商法第二七一条、非訟法第一三二条ノ五等の
規定は、株式会社の場合に特に定めた規定であつて、その規定を特に準用する旨の
定のある場合(例、商法第四三〇条第二項、有限会社法第三二条、第七五条第二
項、保険業法第六〇条、第七七条等)を除き、これを一般<要旨第二>的な原則とし
て適用すべき性質のものではないと解するを相当とする。本件馬込中央病院は医療
法にもとずき設立せられた社団法人であつて右医療法中には右商法の規
定をこれに準用すべき何らの規定なくまたその性質上からも株式会社に関する右商
法第二七一条、非訟法第一三二条ノ五の規定は本件医療法人に準用さるべきもので
はない。
 (二) また民事訴訟法の規定の中には本件の場合の如く基本たる仮処分の決定
があつた場合に仮処分により選任された者が自ら申立人となつて、これに附随して
右の如き裁判所は許可を求める申立を許容するような規定はどこにも存しないし、
仮処分の裁判に於いて裁判所は斯る権限を予め規定し得ると解しても、原審のなし
た本件職務執行停止、代行者選任の仮処分決定中には右の如き相談役就任に関する
許可の申立を可能ならしめるような条項は明示的には勿論のこと黙示的にもこれを
包含しているものとは全く認められない。
 (三) そうすると相手方が本件Aを相談役(抗告人たる医療法人の定款(疏第
五号証)には斯る役員を置くことについては何等規定がない。而して通常の語義に
於ても本件に於て月額五万円の給与を決定している点からするも所謂相談役とは抗
告法人組織に於ける役員と解すべく、従つて之を置くためには定款の変更を要する
ものと解すべきである。)に就任せしめこれに給与を給することの許可を申請した
のは商法第二七一条、非訟事件手続法第一三二条ノ五によつたものであり原審も亦
右各法条の準用によつて許可の裁判を為したものと推測するのが最も自然である
が、これら規定が商法特別規定であつて何れも本件医療法人に準用され得ないこと
は既に述べたところにより明白である。従つて右申請は不適法なものと言はざるを
得ない。
 (四) なお本件申請竝に之に対する裁判が仮処分として為したものと解し難い
ことは既述の通りであるが、本件申請については原審は特に非訟事件として立件し
た形跡はなく、基本たる昭和三六年(ヨ)第二〇二四号事件の一部分として之に附
随する事件として取り扱つていることは記録上明らかであるから、或は原審の真意
は之を仮処分として為したものと想像され得ないでもない。然し果して仮処分決定
として為したものか(然りとすれば之に対する不服は異議の申立によるべきが本来
である)、又は商法第二七一条、非訟法第一三二条ノ五の準用によつて為したもの
か(然りとすれば之に対する不服は即時抗告によるべきである)は、その理由附け
を全く欠く原決定については当事者は不服申立の方法の選択に迷うことは必至であ
り、このことは当事者に対して裁判所に勝る明察を要求する結果となり、民訴法第
四一一条の趣旨に反すること明らかであろう。
 また商法第二七〇条、第二七一条又は此等の準用のある場合は別として、一般に
仮処分の裁判を以つて法人の代表者の職務の執行を停止し之に代る代行者を選任す
る場合は、仮処分の裁判自体に何等の制限を附さない限り(本件仮処分は此の場合
に属する)寧ろ当該代行者は本来の代表者と同一の権限を有するものと解するを相
当とする(民法第五六条、非訟法第三五条第一項により選任された仮理事の権限の
同様であることが参考となる)。但し此の場合と雖も代行者は必ずしも常にあらゆ
る行為を単独にて為し得るといふのではなく、商法第二七一条によつて裁判所の許
可を得た場合と同様、当該代行者がその行為を単独で為し得るか或は法律定款等の
規定による各種の制約の下に之を為すべきかは夫々具体的の場合によつて異なるの
である。此の観点に立つときは原審の許可の裁判は或は無用のことを敢て為したこ
とに帰するが(従つて之に対する不服申立は対象を欠くことになろう)、原審が斯
る無用のことを意識して敢てしたものか又は前示の如く商法第二七一条、非訟法第
一三二条ノ五によつたものか乃至は仮処分の裁判として為したものかは竟に原決定
によつて之を適確に窺知することを得ず、当事者をして不服申立の方法に戸迷いさ
せる結果は既に説示した場合と同様である。
 (五) 以上の通りであるから原決定は結局その拠つて立つ所の法律上の理由を
全く示さないか又はその趣旨不明のものと謂うべきであるから、此の決定に対して
為した即時抗告は民訴法第四一一条に準じ適法というべく、原決定中抗告の対象と
なつた部分は取消を免れない(なお原裁判が商法第二七一条、非訟法第一三二条ノ
五によつたものとするも将又仮処分たる性質を有するとするも、抗告人Bは基本の
仮処分決定によつて職務執行停止を受けた理事長であり、抗告人医療法人病院はB
によつて代表されるものであり、また抗告人Cは同病院の理事であるから、何れも
原審の為した許可の裁判に対して法律上利害関係を有し抗告人たる適格を有するも
のと謂うべきである)。然し原審はなお相手方の申立が果して何に基くかを審査し
て之に対する応答を為すべきであるから、民訴法第四一四条、第三八九条第一項に
より本件を原審に差戻すべきものとして主文の如く決定した。
 (裁判長判事 鈴木忠一 判事 谷口茂栄 判事 宮崎富哉)

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