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平成14年(行ケ)第89号 審決取消請求事件
平成15年4月24日判決言渡,平成15年4月17日口頭弁論終結
     判    決
 原     告   株式会社ゴール
 訴訟代理人弁護士  村林隆一,松本司,岩坪哲,井上裕史,弁理士 玉利冨二

 被     告   美和ロック株式会社
 訴訟代理人弁護士  小杉丈夫,内田公志,鮫島正洋,弁理士 宮口聡
     主    文
 特許庁が無効2000-35617号事件について平成14年1月15日にした
審決を取り消す。
 訴訟費用は各自の負担とする。
     事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
 主文第1項と同旨の判決。
第2 事案の概要
 1 特許庁における手続の経緯
(1) 本件考案
  実用新案権者    原告
  名称        「扉錠」
  実用新案登録出願日 昭和58年11月9日(実願昭58-173884号)
  設定登録日     平成4年9月9日
  登録番号      第1928926号
 (2) 本件手続
  無効審判請求日   平成12年11月10日(無効2000-35617
号)
  審決日       平成14年1月15日
  審決の結論     「登録第1928926号の実用新案登録を無効とす
る。」
  審決謄本送達日   平成14年1月25日(原告に対し)
 (3) 本訴提起後の訂正審判
  訂正審判請求日   平成14年12月1日(訂正2002-39258号)
   (本件考案につき,実用新案登録請求の範囲の減縮等を目的とするもの。)
  訂正審決日     平成15年3月6日
  審決の結論    「実用新案登録第1928926号に係る明細書及び図面
           を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとお
り訂正することを認める。」
  審決謄本送達日  平成15年3月18日(原告に対し)
 2 上記1(3)の訂正審決による訂正前の本件考案の要旨
「本施錠用の受孔32を形成した受部材30と,用心錠用の係合孔41を形成した
規制部材35と,2段階に突出できる錠杆3を出没自在に嵌装した錠ケース1とを
備え,前記錠杆3の最小突出時にはその係止部3aを規制部材35の用心錠用の係
合孔41に係合して扉の一定角度の開放を可能とし,錠杆3の最大突出時には受部
材30の本施錠用の受孔32に係合して本施錠されるようにした扉錠において,前
記受部材30は,扉枠ロの正面側の前部から後部に向けて埋設するとともに,前面
には規制部材35収納用の収納凹部31を,下部には錠杆3の係止部3a係合用の
前記受孔32を形成し,規制部材35は,上端部を枢支するとともに下端部に前記
係合孔41を形成し,錠ケース1は扉イの正面側の前部から後部に向けて埋設して
なることを特徴とする扉錠。」
 3 上記1(3)の訂正審決による訂正後の本件考案の要旨(下線部が訂正部分)
「本施錠用の受孔(32)を形成した受部材(30)と,用心錠用の係合孔(4
1)を形成した規制部材(35)と,2段階に突出できる錠杆(3)を出没自在に
嵌装した錠ケース(1)とを備え,前記錠杆(3)の最小突出時にはその係止部
(3a)を規制部材(35)の用心錠用の係合孔(41)に係合して扉の一定角度
の開放を可能とし,錠杆(3)の最大突出時には受部材(30)の本施錠用の受孔
(32)に係合して本施錠されるようにした扉錠において,前記受部材(30)
は,扉枠(ロ)の正面側の前部から後部に向けて埋設するとともに,前面には閉扉
時に規制部材(35)の全部を収納する収納凹部(31)を,下部には錠杆(3)
の係止部(3a)係合用の前記受孔(32)を形成し,規制部材(35)は,上端
部を受部材(30)に枢支するとともに下端部に前記係合孔(41)を形成し,更
に,規制部材(35)は,枢軸(36)で受部材(30)に枢着した第1部材(3
5a)と,該第1部材(35a)に摺動自在とした第2部材(35b)と,第2部
材(35b)と前記枢軸(36)間に取付けて第2部材(35b)を常時第1部材
(35a)と第2部材(35b)とが互に一体化される方向に付勢するようにした
ばね(40)とからなり,又は,規制部材(35)の上端を取着した枢軸(49)
を受部材(30)の上端部に穿った摺動長孔(48)に摺動自在に挿通するととも
に,規制部材(35)を閉鎖位置に復帰させるように付勢したバネ(51)を備え
てなり,錠ケース(1)は扉(イ)の正面側の前部から後部に向けて埋設してなる
ことを特徴とする扉錠。」
 4 審決の理由の要点
 本件考案は,引用例1,引用例2及び周知技術に記載された考案に基づいて,当
業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり,本件実用新案登録は,
実用新案法3条2項の規定に違反してなされたものであるので,無効とすべきもの
である。
 5 原告主張の審決取消事由
 審決は,上記2に記載の訂正前の本件考案の要旨を認定し,これに基づき,4の
とおり,本件考案は,引用例1,引用例2及び周知技術に記載された考案に基づい
て,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり,本件実用新案登
録は,実用新案法3条2項の規定に違反してなされたものであるので,無効とすべ
きものであるとしているが,上記1(3)のとおり実用新案登録請求の範囲の減縮等を
目的とする訂正を認める審決が確定し,本件考案の要旨が3のとおり訂正されたこ
とにより,審決は,結果的に本件考案の要旨の認定を誤ったことになり,瑕疵があ
るものとして取消しを免れない。
第3 当裁判所の判断
 第2の1ないし4に記載の各事実関係は,本件証拠及び弁論の全趣旨により認め
ることができ,これらの事実関係に照らせば,審決は,第2の5記載の原告主張の
事由により取り消されるべきものであり,本訴請求は理由がある。
 よって,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法62条を適用して,主文のと
おり判決する。
東京高等裁判所第18民事部
   裁判長裁判官   塚  原  朋  一
         裁判官   古  城  春  実
         裁判官   田  中  昌  利

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