弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人蓬田武の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを
引用する。
 一、 控訴趣意第一点、第二点および第三点について、
 所論は、まづ、被告人の本件関税法違反の犯意の点について、原判決は事実を誤
認し、法令の解釈適用を誤り、また、その判示理由にくいちがいがあると主張する
のである。すなわち、原判決が本件関税法違反の罪について被告人にその犯意あり
と認定したのは事実の誤認であり、また、原判決が関税法違反罪の犯意としては、
本件乾燥脱脂ミルクが関税定率法附則第八項所定の物品であることの認識があれば
足り、必ずしもそれが免税品で学校給食以外の用途に供するため譲渡することが禁
止されていることの認識を必要としないと解釈しているのは法令の誤りである。更
に関税定率法附則第八項所定の物品ということは、とりもなおさず学童給食用の乾
燥脱脂ミルクで、昭和三十四年三月三十一日までに輸入され、法令によつて関税を
免除された物品である。然るに原判決は右附則第八項所定の物品であることを認識
すれば足るといいながら、必ずしも法令によつて関税を免除された物品であること
の認識を必要としないと補足説明しているのは理由にくいちがいがある、というの
である。
 よつて記録を精査し、原判決およびその挙示する証拠を仔細に検討し、更に当裁
判所においても重ねて事実の取調べをして右所論指摘の点について考察するのに、
まづ、事実誤認の点については、原判決が被告人に本件関税法違反の罪についてそ
の犯意ありと認定していることは所論のとおりであるが、本件学童用脱脂ミルクが
免税品であることを被告人が認識していたという事実を認定し、これを前提として
関税法違反罪の犯意ありとしているわけではない。むしろ、原判決は、仮に被告人
が免税品であることの認識がなかつたとしても犯意を阻却しないと判示して、被告
人が免税品であることを認識していたか否かの事実は、犯意の認定に必ずしも重要
でないことを示唆しているのである。所論が原判決に事実誤認ありと主張するとこ
ろは畢竟被告人は免税品であることを知らなかつたという事実を主張し、この点に
おいて原判決は事実を誤認しているとするものであるが、原判決は右の事実を前提
として被告人の関税法違反罪の犯意を認定しているものではないこと前段に説明し
たとおりであるから、右事実誤認を主張する論旨は採るを得ない。
 次に関税法違反罪の犯意ありとするには、どの程度の事実認識を必要とするかに
ついて考察する。関税定率法附則第八項および第九項の趣旨は、学童給食の用に供
するために昭和三十四年三月末までに輸入される乾燥脱脂ミルクは、政令で定める
ところによつてその関税を免除するが、その関税を免除するのは、学童給食という
その用途の特殊的公共性に由来するのだから、何人もこれを右用途以外に供するた
め譲渡したり、譲受けてはならない。ただ変質等やむを得ない理由がある場合に
は、政令の定めるところによつて税関長の承認を受ければ右禁制が解かれるという
もので、これを要約すると学童給食用の輸入乾燥脱脂ミルクは関税を免除するが、
これを学童給食用以外の用途に供するため譲渡譲受するには、どのような事情があ
つても税関長の承認を要するということである。このような法律の規定の趣旨内容
は、何人も常にこれを知悉しているとは限らないので、その容器に右法規の趣旨を
要約して、この品物は免税品であるから学童給食用以外に横流ししてはならないと
いう意味の禁制事項が書かれているのである。ただ被告人が扱つた輸入脱脂ミルク
の容器には、その全部にわたつて漏れなく右注意事項が書いてなかつたようであ
り、被告人は仮にそれが書いてあつたとしても見たことがなく、そのため右注意事
項を知らなかつたというのであるが仮にそれを知らなかつたとしても免税品だから
横流しをしてはならぬということは法律の規定であつて、被告人がこれを知らなか
つたことは法律の不知である。更に再言すれば、学童給食用輸入脱脂ミルクは、関
税を免除されたものであるから、税関長の承認を得ない限り、何人も、如何なる事
情があつても、これを学童給食用以外の用途に供するため譲渡したり譲受<要旨>け
てはならぬということは、すべて法律上の知識であつて、これを知らないのは法律
の不知である。したがつて、学童給食用の輸入脱脂ミルクであることを知つ
て、これを学童給食用以外に横流しをすればそれだけで関税法違反罪の犯意が成立
するのであつて、それが免税品であるから税関長の承認を受けないで横流ししては
ならぬという法律の規定を知らなかつたとしてもそれは法律の不知であつて犯意を
阻却しないのである。原判決の法律見解も右と同一であつて、この点所論の如き法
令の解釈に誤りはない。
 右の説明でほぼ明らかなように、関税定率法附則第八項所定の物品というのは、
学童給食用の輸入脱脂ミルクを指すのである。原判決が右法条所定の物品であるこ
との認識あれば足り、それが関税を免除された物品であることの認識を必要としな
いと判示説明しているのは、決して矛盾ではなく、所論の如き理由にくいちがいの
あるものでもない。
 (その余の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 兼平慶之助 判事 斎藤孝次 判事 関谷六郎)

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