弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする
         理    由
 上告代理人真木桓及び同勅旨河原直三郎各提出の本件上告理由は末尾添付の「上
告理由書」記載のとおりである。
 真木代理人の上告理由第一点及び勅使河原代理人の同上第一点について、
 原審で当事者双方から申出でた証人Aの尋問は、原審昭和二十四年八月二十二日
の口頭弁論において上告人(控訴人)の訴訟復代理人もこれを抛棄する旨陳述した
ことは右期日の口頭弁論調書により明白である。論旨採用に値しない。
 勅使河原代理人の上告理由第二点について。
 被上告人は第一審以来本件係争地を含む宅地百三十四坪四合七勺は訴外Bの所有
であつて、被上告人先代は昭和十年五月中Bから右土地を賃借したと主張し、この
事実は上告人もこれを認めたところであり、しかも上告人は第一審以来右の争ない
事実を基礎として、Bと被上告人等の賃貸借が期間の経過により終了したので、B
は本件係争地を含む右宅地の一部を被上告人先代から返還を受け、これを上告人に
賃貸したとの事実を主張しこれを以て被上告人の本訴土地明渡請求を拒否する理由
としたことは、原判決の引用<要旨>した第一審判決の事実摘示により明白である。
然らば係争地がBの所有であり同人が被上告人に対して前記土地を賃貸した
との被上告人主張の事実は被上告人の攻撃方法であると同時に、右の事実を認めて
これを自己の防禦方法の基礎とした上告人にも利益な事実にあたるものといわなけ
ればならない。従つて既に上告人が右のような主張をした後に、被上告人において
前記主張を変更しこれと相容れない事実を主張することは自白の取消に外ならない
ものというべきであるからして、被上告人といえども恣に右主張を変更することは
許されないものといわなければならない。然るに被上告人は控訴審の中途におい
て、前記宅地は被上告人先代の賃借当時訴外Cの所有であり現在は同人の家督相続
人Aの所有であつて、BはCの代理人としてこれを被上告人先代に賃貸したもので
あると前記主張を変更したことは記録上明らかであつて、右は前叙の理由により自
白の取消にあたるものというべきであるが、この自白の取消につき、被上告人にお
いて前示変更前の主張が真実に合わないこと及びそれが錯誤によるものであること
を主張立証した形跡はないのみならず、上告人において被上告人の右主張の変更に
同意した形跡も認められない本件にあつては、被上告人の前記主張の変更による自
白の取消はその効力がないものといわざるを得ない。されば原審は被上告人の右主
張の変更にかかわらず、係争地を含む前記宅地が訴外Bの所有であり被上告人先代
に対して右土地を賃貸したのも同人であるとの当事者間に争のない事実を基礎とし
て審理裁判すべきであるのに、被上告人の主張変更の結果争あるものとして証拠に
より右に関する事実を認定したことは違法たるを免れない。しかし原審が証拠によ
り認定した結果は被上告人の右主張変更前における当事者間の争のない事実と一致
すること原判文上明らかであるから、右の違法は原判決の主文に影響を及ぼすもの
ではない。のみならず上告人は前記のように係争地が訴外Bの所有であつて被上告
人も同訴外人からこれを賃借したものであるとの事実を認めこれを基盤として自己
の防禦方法を構成しているにかかわらず、上告人の認めた右事実に符合するとの原
審の認定を目し当事者の主張しない事実を認定したとか、或は証拠関係からみて右
の認定が不法であると攻撃する所論は、畢竟自家撞着のそしりを免れず、いずれに
しても論旨は結局採用し得ない。
 真木代理人の上告理由第二点及び勅使河原代理人の同上第三点について。
 原判決が当事者間に争のないところとしたのは、訴外Dが本件係争地を含む宅地
百三十四坪四合七勺の地上に、木造瓦葺平家建居宅一棟建坪十四坪―木造瓦葺平家
建工場一棟建坪二十四坪五合を所有し、これを一画の宅地として使用居住していた
というのであつて、つまり右Dの右宅地の事実上の使用状態を指したものに外なら
ず、右宅地賃貸借契約において定められた土地使用の目的が宅地全部につき建物所
有のためであつたということまでも当事者間に争なしとしたものでないことは原判
文上明らかである。而して原審が当事者間に争のないものとした右事実を上告人に
おいて認めたことは原判決及びこれに引用する第一審判決の事実摘示により明らか
であつてこの事実はBが右宅地を賃貸するに当り係争地を含む一部を特に建物所有
以外の目的で賃貸したものであるとの上告人の主張と何等矛盾するものではない。
所論は原判決の趣旨を正解しないによるもので採用し得ない
 真木代理人の上告理由第三点について。
 原判決はその拳示する証拠により、Bは前記宅地百三十四坪四合七勺をDに賃貸
する前に瓦製造業を営むEに賃貸したのであるが、その際にも建物敷地と粘土の干
場とを区別しないで一区画の宅地として貸したものであり、Dから前示二棟の建物
を買受けた被上告人先代も建物所有の目的で右宅地全部を賃借したものと認定した
のである。
 所論は要するに原判決の認めない事実に基いて原判決を論難するもので到底採用
に値しない。
 真木代理人の上告理由第四点及び勅使河原代理人の同上第四点について。
 被上告人が本訴で主張するところは、被上告人先代Fは昭和十年五月中地主Bの
仲介で前記二棟の建物をその所有者Dから買受け所有権を取得すると同時にその敷
地である前記宅地百三十四坪四合七勺を目的としてBとの間に期間十年(昭和二十
年五月末日まで)貸料一年につき金四十七円と定めて賃貸借契約を結んだというの
であつてその趣旨は右建物の前所有者と地主との賃貸借関係にかかわることなく新
に地主Bと賃貸借契約を締結したというに外ならないこと、そして上告人も第一審
以来右の趣旨において被上告人主張の右事実を認めると述べたものであることは、
原判決引用の第一審判決及び第一審口頭弁論調書によりこれを領するに十分であ
る。而して上告人は本訴の当初から、被上告人先代の賃借した右土地のうち係争地
を含む一部は建物の所有を目的としたものではなく、従つてこの部分の賃貸借につ
いては借地法の適用がないと主張してきたのであるが、更に第一審の終局に近づい
た昭和二十二年五月二十七日の口頭弁論で、同日附の準備書面により、被上告人先
代は前記建物の前所有者Dの土地賃借権を承継したもので、この承継した賃貸借の
残存期間を昭和二十年五月末日までと定めたのであり、Dの賃借した時から起算す
れば右昭和二十年五月末日までの期間は二十年以上となるから、被上告人先代とB
との間の賃貸借は右昭和二十年五月末日限り終了したものであるとの主張を附加す
るに至つたことも記録上明らかである。而して上告人の右主張は上告人が前に認め
た被上告人主張の事実と相容れないものを含むことはいうまでもないところであつ
て、その相容れない限度においては前の自白を取消す趣旨と解し得られないではな
いが、しかし既に勅使河原代理人の論旨第二点について述べたように、自白の取消
は自由自在にこれを許されるものではないからして特にそれが取消の要件を具備し
て適法になされた形跡の認められない本件においては取消の効力を生じないものと
いわなければならない。されば原審が上告人において右のような主張をしたにかか
わらず、前示土地につき昭和十年五月中被上告人先代とBとの間に賃貸借が成立し
たことは当事者間に争のない事実とし、これを判断の基礎としたことは違法とはい
えない。所論は以上と異る見地に立つて原判決を論難するもので採用できない。
 真木代理人の上告理由第五点及び勅使河原代理人の同上第五点について。
 原判決は被上告人先代においてその賃借地中上告人が新にBから賃借したと主張
する部分についても、その賃貸借を賃貸人との合意により解約したことは勿論、こ
の部分を返還した事実も認められないとした趣旨であることは原判文上これを領し
得られなくはないから、本論旨も亦理由がない。
 以上の次第で本件上告は理由がないから民事訴訟法第四百一条、第九十五条、第
八十九条に則り主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 谷本仙一郎 判事 村木達夫 判事 猪狩真泰)

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