弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主主主主文文文文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及事実及事実及事実及びびびび理理理理由由由由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2大阪市が平成18年10月19日付けで控訴人に対してした介護給付費支給
決定を取り消す。
3大阪市は,控訴人に対し,重度訪問介護の支給量を1か月592時間とす
る介護給付費支給決定をせよ。
第2事案の概要
1事案の要旨
(1)本件は,被控訴人兼処分行政庁(以下,単に「被控訴人」という。)か
ら,障害者自立支援法19条1項,22条1項,4項に基づき重度訪問介護
の支給量を1か月当たり318時間とする介護給付費支給決定(以下「本件
支給決定」という。)を受けた控訴人が,本件支給決定において定められた
上記支給量を不服として,被控訴人に対し,本件支給決定の取消しを求める
とともに,重度訪問介護の支給量を1か月592時間とする介護給付費支給
決定をすることの義務付けを求める事案である。
(2)原審は,本件訴えのうち,介護給付費支給決定の義務付け請求に係る部
分を却下し,控訴人のその余の請求を棄却した。
(3)控訴人は,それを不服とし,原判決の取消しと,請求の全部認容を求め
て,控訴した。
2前提事実
原判決第2の3に記載のとおりである。
3主たる争点についての当事者の主張
控訴人の当審主張を補充するほかは,原判決第2の5に記載のとおりであ
る。
(控訴人の当審主張)
自立支援法は,身体障害者が施設を出て地域住民と共に生活することを支援
するとの趣旨の下に制度設計されたものである。控訴人は,○のためいつ嘔吐
するかもしれず,それが深夜であった場合,控訴人は寝た状態から自力で起き
上がることができないから,嘔吐したときに介護者がいなければ,嘔吐物が気
管に入ることにより窒息死するおそれがある。それ故,控訴人が介護施設を出
て自立支援法の趣旨に基づいて地域社会内で生活するには,夜間の付きっ切り
の見守り介護が必要である。確かに,緊急通報システムが存在するが,同シス
テムによっても一分一秒を争う緊急事態に対応することができるとは限らない
し,そもそも控訴人が同システムを作動できない状況に陥ることもあるから,
同システムの存在は,夜間の付きっ切りの見守り介護の必要性を判断する際の
要因の一つとすることはできない。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,本件訴えのうち,介護給付費支給決定の義務付け請求に係る部
分を却下し,控訴人のその余の請求を棄却すべきものと判断するが,その理由
は,次に補正するほかは,原判決の「第3当裁判所の判断」欄に記載のとお
りである。
(1)原判決14頁15行目冒頭から23行目末尾までを,次のとおり改め
る。
「イ緊急通報システムの利用者は,ハンズフリー通話機能を備えた通報装置
及び無線式ペンダント型通報装置が貸与され,緊急時に利用者が上記通報
装置の緊急ボタンを押すと,24時間体制の大阪市社会福祉研修・情報セ
ンターの緊急通報受信室(現受信センター)に自動的に通報され,当該通
報を受けた受信システム画面上には,利用者の氏名,住所,年齢等利用者
の個人情報が即時にかつ自動的に表示される。そして,同通報を受けた緊
急通報受信室において,通報装置のスピーカーを介して直接利用者本人に
状況を確認したり,事前に利用者により登録されている利用者宅の近隣に
所在する協力者に状況確認等の協力依頼をする。利用者本人による通報時
に,利用者が受信センターの担当者の呼びかけに応答しないなど救急車の
出動要請が必要であると判断された場合には,協力者へ状況確認を依頼す
ることなく,利用者の個人情報が受信センターから利用者の住所の最寄り
の消防署に直ちに通報され,救急車の出動要請がされることとなってい
る。」
(2)原判決33頁14行目から15行目の「連絡がつかないような場合」を
「連絡がつかず,救急車の出動要請が必要な場合」に改める。
(3)原判決34頁7行目の次に,行を改めて,次のとおり加える。
「控訴人は,当審において,緊急通報システムの利用においては,一分一秒
を争う緊急事態に対応することができるとは限らないし,そもそも控訴人が
同システムを作動できない状況に陥ることもあるから,同システムの存在
は,夜間の付きっ切りの見守り介護の必要性を判断する際の要因の一つとす
ることはできない旨主張する。
確かに,緊急隊員が控訴人の枕元に到着するのに時間を要することもあり
得ないことではなく,救急搬送に要する時間が近年増加傾向にあり約36分
を要するとの新聞記事(甲27)もある。しかし,緊急通報システムにより
通報が行われ救急車の出動要請が必要であると判断された場合,当該通報を
受けた受信センターから利用者の住所の最寄りの消防署に,利用者の氏名,
住所,年齢,病状等該当者に係る特記事項などの個人情報が通報され,救急
車が出動する体制が整えられている。ちなみに,控訴人の自宅から最寄りの
消防署までは約1.5㎞であり,救急車で3分程度の距離である(弁論の全
趣旨)。緊急通報システムを利用すると極めて短時間で到着することが可能
であるから,上記の一般的な危惧をもって緊急通報システムでは対応し得な
いとすることはできない。なお,緊急通報システムには,あらかじめ登録さ
れた協力者に電話で救急車が必要か否かを問い合わせるという手続が存する
が,前記(原判決第3の1(2),上記(1)附加部分を含む。)のとおり必ず協
力者の回答を得た上でなければ出動することができないというシステムでは
なく,臨機応変に対応し出動するシステムであるから,協力者の回答いかん
によって控訴人の生命の危険が左右されることはおよそ考えられない。
また,緊急通報装置は,固定式通報装置のほか,持ち運べる無線式ペンダ
ント型通報装置もあり,常に控訴人の手の届く範囲に置いておくことがで
き,ブザーを押せばよいだけで,通報者が自ら声を発する必要もないこと
(乙12の2,乙13),介助者がいる場合でも介助者は隣室で仮眠してお
り,同様にブザーを押して知らせることになること(証人A)からすると,
控訴人が緊急通報システムを作動させることができないかもしれないとの危
惧をもって同システムの有効性を否定することはできない。」
2以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却
することとし,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官小島浩
裁判官井戸謙一
裁判官山本善彦

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