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判決 平成14年9月17日 神戸地方裁判所 平成13年(ワ)第258号 貸金
請求事件
            主    文
   一 原告の請求を棄却する。
   二 訴訟費用は原告の負担とする。
            事実及び争点
第一申立
 一 被告は原告に対し,金1234万6000円及びこれに対する平成13年2
月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 二 仮執行の宣言
第二 事案の概要
   本件は,原告が被告に対し,前後63回にわたり金銭を貸し付けたとして,
その返還及び訴状送達の日の翌日以降の遅延損害金の支払を求めた事案である。
 一 主張
 (請求原因)
  1 被告は,平成12年7月頃まで,神戸三宮において,「甲」という屋号の
和風スナック(以下、「本件店舗」という。)を営業していた。
    原告は,本件店舗に客として出入りしていた。
  2 原告は被告に対し,被告の生活資金,本件店舗の運転資金,被告のサラ金
等からの借入金の返済資金などとして,平成11年7月28日から平成12年4月
14日までの間,別紙貸付金一覧表(以下,「別表」という。<略>)記載のとお
り,前後63回にわたり,利息及び弁済期限を定めず,合計金1234万6000
円を貸し付けた。
 (請求原因に対する認否)
  1 請求原因1の事実は認める。
  2 同2の事実中別表番号1の貸付を受けたこと及び別表番号30の金銭の交
付を受けたことは認めるが,その余は否認する。
 (抗弁)
  1(弁済)
    被告は原告に対し,平成11年9月,別表番号1の23万円を弁済した。
  2(相殺)
    原告は,平成11年9月1日から平成12年4月30日までの間,本件店
舗で飲食したが,その飲食代金の合計は220万2000円である。
    よって,上記飲食代金債権でもって,本訴請求債権と対等額で相殺する旨
の意思表示を,被告は原告に対し,原告代理人が平成14年2月8日に受領した準
備書面によりなした。
   (抗弁に対する認否)
  1 抗弁1の事実は否認する。
  2 抗弁2の事実中,原告が平成11年9月以降本件店舗で飲食し,基本的に
その代金を支払っていないことは認める。しかし,当時原告はほぼ毎日本件店舗に
出向いていたが,請求書(乙1)を見ると,原告が勤務先の会社の仕事で出張中の
日も本件店舗で飲食したとされていたり,当初1本4000円とされていたボトル
キープ代が1本5000円とされていたり,また,現金で支払ったのに支払ってい
ないとされている分もある。原告の計算では未払飲食代金は160万円程度であ
る。
 二 争点
  1 貸付の有無
  2 弁済の成否
  3 飲食代金の金額
理由
一 被告が某所において平成12年7月まで本件店舗を営業しており,原告が本件
店舗に客として出入りしていたこと,原告が被告に対し別表番号1の貸付をしたこ
と及び番号30の金銭を交付したこと並びに原告が平成11年9月以降本件店舗で
飲食したが,基本的にその代金を支払っておらず,少なくとも160万円の未払飲
食代金があることは当事者間に争いがなく,証拠(甲1ないし10,乙2,乙,丙
株式会社,丁株式会社及び戊に対する調査嘱託の結果,原告本人,被告本人)によ
れば,以下の事実が認められ,乙2と被告本人中以下の認定に反する部分は,他の
証拠に照らして採用できない。
 1 原告は己社に勤務していたが,平成11年7月頃からは出向で庚協会で運転
手の仕事をし,平成12年秋頃に退職後も同じ仕事をしている。平成7年9月に妻
が死去した後は,単身で生活をしている。
 2 被告は,平成5年10月頃から本件店舗を営業しているが,平成11年春頃
から原告が本件店舗に客として来店するようになり,同年7月頃からは頻繁に来店
するようになり,同年9月頃からはほとんど毎日のように来店するようになり,そ
の頃から飲食代金をほとんど支払わなくなった。しかし,全く支払わなかった訳で
はなく,1万円程度の金額を時々は支払っていた。
 3 平成11年7月末頃,被告は原告に対し,財布を紛失したので3万円を貸し
てほしいと金銭の借用を申込み,原告はこれを承諾して3万円を被告に貸し付け,
その数日後に本件店舗家賃支払のために,同じく20万円を貸し付けた。この際,
被告は自発的に借用書を作成して原告に交付した(別表番号1)。本件店舗の経営
状態は悪く,同年9月頃からは月額22万5000円の家賃の滞納が目立ち始め,
家主側は新たな連帯保証人を立てることを被告に申し入れ,同年10月には原告が
家主に対し連帯保証した。
 4 その後も,原告は被告に対し,被告から借金支払,本件店舗家賃支払,本件
店舗の運転資金等のため必要であるといわれるごとに,これに応じて,ほぼ別表記
載のとおり,金銭を交付してきた。その資金は,預金等の取崩し,サラ金等からの
借入,兄からの借入等によった。(但し,原告の手帳である甲8,9中の金銭出納
の記載と別表が一致しない点があること,甲4によっても兄からの借入金の金額が
明らかにされていないこと及び被告に対する金銭交付について被告作成に係る文書
は残されていないこと等から,別表のすべての金銭交付が認められるとまではいえ
ない。)
   別表番号15の平成11年10月15日の150万円は,原告が同日に辛株
式会社から借り入れた200万円を原資とするものであり,別表番号63の平成1
2年4月14日の315万円は,原告が同日にアイフル株式会社から借り入れた6
00万円を原資とするものである。また,原告は,平成12年1月に兄から金銭を
借り入れ,これを原告に交付したこともある。被告は,これらの借入のことは知っ
ていた。
 5 被告は,平成11年9月頃,貸金業者壬から原告の連帯保証の下に50万円
を借り入れた。別表30の金銭交付は,この貸金返済のためになされたものであ
る。
 6 原告は被告に好意を寄せており,「一緒になってくれるんやったらお金を段
取りしてあげる。」といって金銭を交付したりしていた。これに対し,被告は,明
確な返事はしなかった。原告と被告間には男女関係もなかった。平成12年2月頃
からは原告と被告の関係は悪化しており,別表番号63の同年4月14日頃には,
双方の関係は終焉に近かったが,原告は終わりになってしまうくらいならば,いっ
そお金を渡そうと思って315万円を被告に交付した。原告は,同日までの間,被
告に借用書を要求したこともないし,交付した金銭の返還を要求したこともなかっ
た。被告から返済を約束したことも,別表番号1を除いてはなかった。
 7 原告に対し,平成12年10月には退職金が支払われる予定であり,被告は
原告からこのことを聞かされていた。
 8 被告は,平成11年9月以降の原告の本件店舗における飲食代金について,
請求しなかった。乙1の請求書は,被告の記憶により後に作成したもので,明確な
根拠に基づいて作成されたものではない。
二 貸付の有無
  一の認定事実によれば,被告が貸金であることを認めており,当時自発的に借
用書を作成・交付した別表番号1を除いては,被告が原告に返還約束をした事実を
認めることはできないというべきである。
  数万円程度の細かな金銭交付についてはもちろん(甲9によれば,原告の手帳
には,別表番号43の1万円について,「ボトル1本1万円置く」と記載されてお
り,飲食代金支払に充てたものではないかと疑われる。),10万円あるいは10
0万円以上の大きな金額の交付についても,原告は,被告との交際の継続の対価で
あるような発言をした上している場合が多かったものと推認され,しかも,原告か
ら借用証の交付を要求したり,過去に交付した金銭の返還を要求することは,別表
番号63の金銭交付の時までなかったというのであるから,被告が貸付ではないと
考えたとしても不思議ではない。被告は,原告が多額の金銭を借り入れてこれを被
告に交付したことを知っていたものであるが,平成12年10月には退職金が支払
われる予定であることも知っており,この退職金により借金の返済が可能であると
考えていたと推認され,そうとすれば,原告が返済しなくてもよい金銭を好意を寄
せている自分に交付するつもりであると被告は考えていたと推測され,黙示的にせ
よ,返還約束があったものとも認め難い。
三 弁済の成否
  原告が別表番号1に係る借用書(甲1)を所持していること及び原告本人に照
らすと,別表番号1に係る貸金を弁済したとする被告本人の供述は採用できない。
四 飲食代金の金額
  前記一の2,8の認定によれば,乙1は採用できず,飲食代金の金額について
は,原告の認める160万円の限度でしか認めることはできない。
  原告代理人が平成14年2月8日に受領した準備書面により,被告が原告に対
し,上記飲食代金債権でもって,本訴請求債権と対等額で相殺する旨の意思表示を
したことは,本件記録上明らかである。そうすると,別表番号1に係る貸金23万
円の債権は全額消滅する。
五 結論
  以上の次第で,原告の請求は理由がない。
     神戸地方裁判所第5民事部
          裁判官   前   坂   光   雄

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