弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○主文
一本件控訴を棄却する。
二本件附帯控訴に基づき、附帯被控訴人(控訴人)は附帯控訴人(被控訴人)に対し金
一万円を支払え。
三附帯控訴人(被控訴人)のその余の請求を棄却する。
四控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の負担とし、附帯控訴費用はこれを一〇分し、そ
の一を附帯被控訴人(控訴人)の負担とし、その余を附帯控訴人(被控訴人)の負担とす
る。
○事実
一1控訴人(附帯被控訴人。以下「控訴人」という)は「原判決中、控訴人の敗訴。、

分を取り消す。被控訴人(附帯控訴人。以下「被控訴人」という)の請求を棄却する。。

訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、附帯控訴につき「本。、
件附帯控訴を棄却する。附帯控訴費用は被控訴人の負担とする」との判決を求めた。。
2被控訴人は、控訴棄却の判決を求め、附帯控訴につき「原判決を次のとおり変更す、
る。
控訴人は被控訴人に対し金一一〇万円及び内金五〇万円に対する昭和五九年五月四日から
支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。附帯控訴費用は控訴人の負担とする」。

の判決を求めた。
、(、二当事者双方の主張及び証拠の関係は次のとおり附加する外は原判決事実摘示但し
原判決四枚目表四行目の「違憲法」を「違憲性」と訂正する)並びに当審記録中の書証。

録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。
(控訴人の主張)
1監獄の長は、監獄の外にいる人間についての情報を十分に把握することができる立場
になく、個々の事案に応じて、その都度、幼年者と在監者との面接が当該幼年者の心情を
害する具体的危険を有するかどうかを判断することは、不可能又は極めて困難である。他
方、幼年者の心情の保護の要請は、それ自体として十分に尊重されなければならないので
あり、仮にもそれを害する具体的危険が判明していないからといつて在監者との接見を認
め、結果としてかかる重要な保護の要請を没却せしめるような事態(幼年者の心情を害す
る危険)を発生させることは避けなければならない。そこで監獄法は、幼年者の心情の保
護の要請を考慮しつつ、監獄の長において右心情を害する具体的危険の把握が実際には極
めて困難であることに鑑み「一四歳未満」という一定の年齢をもつて右心情を害する危、

がある場合を擬制し、
右客観的基準によつてこれを判断することを許容したものというべきである。ちなみに、
個々の具体的な事案に応じて若年者に対する具体的危険の有無、責任能力の存否等を判断
することが困難なことから一定の年齢で行為の制限、免責等を規定している法令は、刑法
四一条、一七六条、一七七条、未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法、児童福祉法三
四条等、枚挙にいとまがなく、かかる法令はいずれも合憲であることはいうまでもない。
、、したがつて監獄法施行規則一二四条の規定によつて監獄の長が裁量権を行使し得るのは
幼年者の心情を害する危険性が擬制されているとしてもなおかつ行刑施設において在監者
(受刑者のみならず被拘禁者を含む)の処遇(被拘禁者の取扱い全般を含む)を行つ。。

いくうえで面会を認めることが相当であると判断し得る積極的な理由がある場合又は乳児
との面会のごとく幼年者の心情を全く害さないことが一見して明白である場合に限られる
と解するのが相当である。右の面会を認めることが相当であると判断するに際しては、幼
年者の心情を害するかどうかについても、考慮することが可能な場合には考慮することに
なる。この場合、監獄の長が知り得た当該幼年者の生育歴、家族構成、現在の生活・教育
環境、在監者との関係、過去及び現在の交流状況や内容等、およそ幼年者の心情に影響を
与えるであろうと考えられる様々な要因が考慮の対象となり得るのである。
これに対し、幼年者の心情を害する具体的危険が判明していない限りは接見を認めなけれ
ばならないというように制限的に解するならば、規則一二〇条は、殆どの場合同一二四条
によつて解除されなければならない結果となろう。在監者と幼年者の親権者とが面会を望
んでいる場合には幼年者の心情に具体的な危険があるとはいえないという解釈もまた同様
である。かかる法令の適用は同規則の法意を全く無視したものであり、ひいては幼年者の
心情保護という法本来の目的までも没却せしめる極めて不当なものといわざるを得ない。
2本件においては、被控訴人が養子縁組を結んだ直接の相手はAであつて、被控訴人と
Bとの関係は義理の叔父・姪の関係にあるにすぎず、その関係が生じたのも本件不許可処
分当時で僅か一年ばかりのことである。もとより両者は実社会において生活を共にしてき
た事実もなく、
かえつてBにおいては本件面会申請の前後を通じて実の母親であるCのほかAら親族の庇
護のもとに平穏に暮らしてきており、右申請当時に至つてとりたてて被控訴人と直接面会
しなければ解決し難いような成育上ないし教育上の特段の支障が生じたとの事実は認めら
れない。他方、被控訴人においては、本件養子縁組は同人の判決確定後の外部交通の確保
を目的としてなされたものと認められる。以上の事実に照らせば、本件面会申請の当時、
これを認めることは、Bにとつて少なくともその心情を全く害さないことが一見して明白
であるとは到底いえない場合であり、被控訴人にとつてもその処遇上必要な積極的理由が
あるとも認められない場合であるから、規則一二〇条及び一二四条の法意を忠実に反映さ
せてこれを適用する限り、本件不許可処分が適法であることは明らかというべきである。
3東京拘置所長が規則一二四条を幼年者との面会に適用する際の基準として「実子であ
ること」を要件の一つとした理由は、幼年者の心情を害する虞があるかないかは、もとも
と監獄の長が把握している情報等からでは十分な判断が不可能であるから、そのような危
険の可能性は一定程度あるにしても、なお面会を認めなければならない在監者の処遇上等
の必要性というものを考えた場合に、単に当事者が心情の交流を望んでいるというだけで
は面会許否の判断基準として十分とはいえず、更に進んで成人と幼年者が直接会つて話を
することが両者の健全な関係を維持していくうえで必要不可欠であると考えられるような
場合でなければ面会を認めないとするのが規則一二〇条の趣旨にかなつていると考えるか
らである。そして、このような必要性が認められる場合を更に考察すると、両者が社会に
おいて生活を共にし、幼年者の養育について責任を負つている親権者あるいはこれに代わ
る者とその保護を受けて養育されていたものという、いわゆる「家族」の関係にあり、比
較的長期間会えないでおり、幼年者を養育していく者として面会するというような場合が
これに該当するといえる。
東京拘置所の基準である、勾留が長期にわたつている者であること、面会の相手がその者
の実子であること及び教育上・成育上の理由など特に事情があると認められることという
三要件の背景にも、このような考え方が存在しているのであり、
具体的な事案の判断に際して生まれた基準であることから「実子」という表現を用いてい
るものの、この要件は必ずしも生物学的な意味での血縁関係を問題としているわけではな
く、その実質は、幼年者を養育し、父性愛・母性愛をもつて幼年者と日常生活のなかで交
流していたことが推測される「親子関係」を表現したものである。したがつて、右の意味
での親子関係が認められる場合には、必ずしも生物学的な意味での実子でなくても、その
余の一定の要件を具備していることを前提に面会を認めることがあるが、その一方で、そ
れを狭い意味での「家族」の範疇からはみ出る、いわゆる「おい「めい」にまで拡大す」

ことは、多かれ少なかれ幼年者の心情を害するという危険を侵すことを考慮して、認めな
いとの運用を図つているものである「家族」の概念を狭く捉えた場合に「おい「めい」。」
といつた関係が原則として含まれないことは、たとえば民法において互助義務を負う者を
直系血族及び同居の親族に限定(民法七三〇条)し、扶養義務を負うものを原則として直
系血族と兄弟姉妹に限定(民法八七七条)していることからも容易に推認できるところで
ある。しかるに、被控訴人とBとは、義理の「おじ「めい」の関係にあるに過ぎず、実」

会において生活を共にしてきた事実もないのであるから、本件は、右に述べた三要件に該
当する東京拘置所での他の許可事例とは本質的に異なるものである。
4本件不許可処分当時、法五〇条及び規則一二〇条、一二四条について、原判決のよう
な制限的解釈をした裁判例や上級行政庁の例規は存在せず、監獄法令に関する学説におい
ても原判決のような解釈を明言したものは見当たらない。東京拘置所で行つてきた子供面
会に関する措置は、学説の対立すらないほど当然視されてきたものであり、もとより各監
獄の長も同様の見地から行刑実務を遂行してきたのである。
例えば監獄法令に関する代表的註釈書である「改訂監獄法(小野清一郎ほか)は「一」、

歳未満の者に接見が許されないのは、事物を弁別する能力の未発達な幼年の接見者の心情
を害さないという趣旨からである。したがつて、在監などといつた意味を全く知覚しない
乳児の場合を除いては、施行規則一二四条により処遇上の必要性を認めて親子の対面をさ
せることなども、在監者本人に良い影響を与えるとしても、接見者のためによほど慎重を
要するのである」とし、また、。
実務家によつて書かれた代表的な執務に関する手引書である「未決拘禁実務提要(玉井」

郎ほか)にも「拘禁施設という建物そのものから受ける影響等を考慮し、一四歳未満の、

供には教化上、不適当として接見することを許していない」と記載されているところで。

る。
ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立し、実務の取扱いも分かれていて、そ
のいずれについても相当の根拠が認められる場合に、公務員がその一方の見解を正当と解
して公務を執行したときは、後にその執行が違法と判断されたからといつて、直ちに右公
務員に過失があつたものとすることは相当でないと解されている。これを本件についてみ
るに、本件不許可処分にあたり東京拘置所長がとつた前記各法令の解釈適用に十分な合理
的根拠が存したことは前述のとおりであるから、仮に百歩譲つて、後に右解釈適用に誤り
が存したと評価される場合であつたとしても、そのことから直ちに同所長に国家賠償法一
条一項にいう過失があつたと認めることができないことは明らかである。
5被控訴人とその訴訟代理人弁護士らとの間における弁護士費用の支払に関する約定
は、
知らない。
(被控訴人の主張)
1規則一二〇条が、その制定当初に比して、著しくその合理性を欠く規定となつている
理由を、次のとおり補足する。
(一)東京拘置所長自身が、昭和五三年八月ないし一〇月ころまでは相当広範に幼年者
との面会を認めていた事実がある。
(二)小倉拘置所においては、今日においても、二年間に二四件の幼年者との面会が許
可された事例があり、近時の行刑実務の実情は相当広範に幼年者との面会を認めている。
(三)政府が昭和五七年四月二八日国会に上程したが昭和五八年一一月に一旦廃案とな
り、昭和六二年四月三〇日通常国会に再上程された刑事施設法案は、被拘禁者の一般面会
について年齢による制限をしていない。右法案は、現在のわが国の有力な法律学者の一般
的な見解を反映していると考えられる法制審議会の審議経過を受けて策定されているが、
同審議会の「監獄法改正の骨子となる要綱(昭和五五年一一月)においても、規則一二」

条のような面会の相手方の年齢による制限は意図されていないのである。
、。、2規則一二〇条の妥当性は行刑の国際的水準に照らしても正当化し得ないすなわち
被控訴人訴訟代理人らが世界の五〇か国の法務担当部局に問い合せたのに対し一八か国か
ら回答があつたが、それによれば、幼年者とその家族である在監者との面会は、原則とし
て自由とされる傾向にあり、制限するとしても成年者の同伴を要件とするにとどまる国が
殆どである。一定の具体的危険がある場合に制限するという原判決の立場自体が世界的傾
向から見ればむしろ少数派であるが、それにもまして東京拘置所のような実務運用を行つ
ているところは調査範囲内では発見できず、同所の運用は極めて特異な立場であるといわ
ざるを得ない。なお、一定の国において、子供の面会についてこれにふさわしい環境の準
備をすべき旨を定めていることは注目すべきである。
3以上のように、今日のわが国及び世界の行刑の実情からして未成年者の保護者の同意
、、ないし同伴のある場合にはその面会が幼年者の心情を害するような危険性は考えられず
幼年者と在監者との面会を原則として禁止する必要性・合理性は全くない。
4控訴人は、一定の年齢層について心情の危険等を擬制することは他の法令でも行われ
ていると主張するが、その例示にかかる刑法四一条、一七六条、一七七条、児童福祉法三
四条は、もつぱら少年の利益保護だけを目的としており、権利制限の側面は殆どないもの
である。未成年者飲酒禁止法と未成年者喫煙禁止法は、未成年者の権利制限の側面を持つ
が、未成年者自身を罰する規定はなく、未成年者に対する強制力は間接的なものにとどま
る。そして何よりも、これらはすべて法律であることに注目しなければならない。かかる
擬制を命令で規定することは、そのような年齢制限を行うべきことを明文で規定した法律
の委任がない限り許されないのである。
5東京拘置所長に過失がないとの控訴人の主張は争う。
(一)憲法上も、監獄法上も、監獄が外部の幼年者を教化の対象とすることは認められ
ていないことが明白であるから、実務家の手引書にこれを肯定するような記載があるとし
ても、東京拘置所長がこれにそのまま依拠したとすれば、そのこと自体に過失があつたと
いうべきである。
(二)被控訴人が前記1及び2で主張した諸事実について、東京拘置所長はこれを知り
又は知り得べき立場にあつた。
(三)従前、規則一二〇条の問題が学説上争点化されなかつたのは、同条がいわば建前
の規定であつて、実際には、
在監者と幼年者の双方が積極的に面会を希望するような事例では、当局が事実上面会を許
可してきたためである。したがつて、同条の解釈適用について判例や学説の対立が見られ
なかつたからといつて、東京拘置所長の措置が是認されることにはならないのである。む
しろ、原判決後の学説においては、原判決の法令解釈を支持しているところである。
(四)本件不許可処分は、精神的自由及び人身の自由に関わる重大な問題であり、これ
による精神的損害も軽微ではないのであるから、東京拘置所長は、法令の解釈適用につい
て厳しい注意義務を要求されるといわねばならない。そして、規則一二〇条が憲法の文言
に一義的に反しているとまでは言えなくても、健全な常識を有する一般人であれば幼年者
との面会を一律に禁止することの必要性・合理性について疑問を抱くことは容易であり、
まして刑政の専門家として、子供の心理についての通常の知識と未決囚の人権保護の重要
性の認識とを有している者が通常の注意を払つていれば、規則一二〇条について少なくと
も原判決が示したような限定解釈を行うことによつて、本件のような違法な処分を回避す
ることは十分に可能であつた。
6原判決は、本件不許可処分が違法であると判断しながら、被控訴人の被つた精神的損
害に対する慰謝料として五万円を認めたにとどまつたが、獄中に一〇年余にわたり身柄を
拘束され親族と直接面会して心情の交流を計りたい気持ちを抱き続けながらそれを果たし
得ていない者の苦痛を余りにも低くしか評価していない。原審以来の請求額である五〇万
円を全額認容すべきである。
7被控訴人は、本訴の訴状を提出した後、弁護士渡辺務、同海渡雄一の両名に原審の訴
訟代理人を依頼し、右両名はその依頼を受けて昭和五九年九月六日の第一回口頭弁論期日
から同六一年九月二五日の原判決言渡しまでの間、訴訟行為を追行した。本件控訴審につ
いても、被控訴人は昭和六二年一月二八日右両名に訴訟代理人としての訴訟行為の追行を
依頼し、右両名もこれを了承した。その際、被控訴人と右両名とは、口頭で、本件第一、
二審を通じての弁護士費用を、一名につき三〇万円、合計六〇万円とすることを約した。
被控訴人は、当審において、控訴人に対し右弁護士費用の支払の請求を追加する。
○理由
一当裁判所は、原審と同様に、規則一二〇条が法五〇条の委任を超えたものということ
はできず、
被控訴人の違憲の主張は失当であるが、本件不許可処分には東京拘置所長において規則一
二〇条及び一二四条の解釈並びにその適用についての裁量権の行使を誤つた違法があり、
これにつき同所長には国家賠償法一条一項にいう過失があると認定判断するが、その理由
は、次のとおり附加し訂正する外は、原判決理由一ないし四及び六に説示してあるとおり
であるから、ここにこれを引用する。
1(一)原判決二五枚目裏八行目の「同条の趣旨とするところは」の次に「事理の弁別
、、能力が未熟で監獄職員の指示を理解して秩序ある行動をとることの期待し難い幼年者が
在監者との面接を求めて単独で施設内を往来するような事態は避けるべきであるというよ
うな監獄の管理運営保持の目的の外」と(二)同二六枚目表二行目の「解されるが」、、

「(、、次に犯罪者をどのような施設でどのように処遇するかは一国の政策問題でありまた
犯罪ないし犯罪者あるいはその処遇施設について人々がどのような受け止め方をするか
は、
その国その時代における国民感情に関わる問題でもあるが、わが国における行刑施設の現
状からすれば、在監者との接見について幼年者の心情を害すべき危険がなお存在し得るこ
とは否定することができない。そして、幼年者をこのような危険から保護することは、親
権者ないしこれに準ずる保護者の責任であるが、親権の行使が必ずしも常に適切になされ
ているとは限らないことは暫らく措くとしても、監獄を設置管理する国が、その現状に通
暁する立場から、直接幼年者の心情の保護の役割を担うべきものとすることは、必要な事
柄であると言わざるを得ない」と(三)同四行目の「考えられるところである」の次。)、

「例えば、実子ないしこれに準ずる者に対する教育上・成育上の必要が肯定される場合(

多いであろう」と(四)同七行目の「解釈されるべきものである」の次に「控訴人。)、(

主張するように、幼年者の心情を害すべき抽象的・一般的な危険があるから原則的に接見
を禁ずることができるものと解釈することは、前記の法の趣旨に反することとなるのであ
る」と、それぞれ附加する。。)
2(一)原判決二七枚目表九行目の「認められる」の次に「なお、右証言及び本人尋。

の結果によれば、右養子縁組は、死刑廃止運動に協賛しているAが、死刑の宣告を受けて
上訴中の被控訴人と知り合い、
、、自己の養子にしたいと決意しCを介して被控訴人にその旨を申し入れたものであり他方
実方の親族との交流が希薄となつていた被控訴人も死刑確定後の外部との接見・文通の確
保を図ろうとしていた折から右申入れを受けてA及びCと文通や面会を重ねて相談したう
え、家族として一緒にやつていけるとの気持になつて、縁組の届出をしたものであると認
められ、被控訴人とD一家とは従前生活を共にしたことはなく、被控訴人の刑が確定すれ
ば将来も家族として実社会での生活を共にする機会は来ないこととなるが、それぞれの境
遇の下で可能な範囲・方法での接触を保つように尽力しているという実態に照らしても、
右養子縁組を俄に無効視することはできない」と附加し(二)同一〇行目の「証人E。)、

証言及び」を「原審における証人E及び当審における証人Fの各証言並びに」と訂正し、
(三)同裏初行の「広く認めていた」の次に「なお、控訴人は原審以来、東京拘置所に(

いて、現在に比べて広く幼年者との接見を認めていた時期があることを自認しているとこ
ろであると附加し四同四行目の排険するを排除すると同四行目の危。)」、()「」「」、「
険が生じた」から同五行目の「一二月一一日から」までを「危険が生じたことがあり、そ
のころから」と、それぞれ訂正し(五)同二八枚目裏初行の「認められる」の次に「ま、。
た、成立に争いのない甲第一ないし第三号証と原審における証人C、同Eの各証言及び被
控訴人本人尋問の結果によれば、被控訴人は昭和五八年四月上旬ころ、東京拘置所長に対
、、し本件の養子縁組届けに使用するためであることを示して自己の印の使用許可を申請し
その許可を得て縁組の届出書に署名捺印をして発送し、その届け出が完了した後である同
年四月二七日に同所長に対し、Bとの身分関係を記載した面会許可申請書を提出したが、
不許可の告知を受けたので、同年五月三〇日に不許可の取消しを求めて法務大臣に情願書
を提出したりなどした外、A、C及びBが東京拘置所長宛てに上申書を提出したりなどし
たことがあつた。したがつて、被控訴人が同所長に対し戸籍謄本を提出して正式に養子縁
、、、組をした旨の報告をしたのは後日のことになるが同所長は本件不許可処分の当時には
被控訴人とBとの身分関係や、Bに面会したい理由等を知つていたか、
少なくとも若干の補充的な調査さえすればこれを知り得たものであると認められる」と。

加する。
3(一)原判決二九枚目表六行目の「いうまでもない」を「いうまでもないし、幼年。

の心情を害する具体的な危険の有無の判断においても、監獄の長がすべての在監刑事被告
人の身上等を把握しているわけでない以上は、実際問題として、必要な資料に基づき必要
な範囲の調査をしたうえでこれを決することとする外はないが、そのような具体的危険の
存在しないことが判明しているときや、僅かな調査によつてそれが判明する場合であるの
に敢えてこれをしないで、幼年者との接見を拒否するのは、同条の解釈適用における裁量
判断を誤つたこととならざるを得ない」と(二)同三〇枚目表五行目の括孤内の「右。、

情を」の前に「被控訴人とBとが義理の叔父と姪の関係に過ぎないことや両者が家族とし
ての実生活を送つた経験のないことなどの前認定の事実も、本件の事実関係の下において
、」、、()は右の具体的危険の存在を窺わせるものとはいえないし他にとそれぞれ附加し三
同八行目の「のみならず」から同一〇行目の「拒否しているものであるが」までを「そう
すると、本件では東京拘置所長は、前認定の幼年者面会許可の諸条件のうちBが被控訴人
の実子でないことをいわば唯一の理由として面会を不許可としていることになるが」と訂
正し(四)同裏二行目の「面会を認めている」の次に「成立に争いのない乙第一号証、(

び前掲証人Eの証言によりその事実が認められる」と附加する。。)
4原判決三一枚目裏八行目の「いうべきであり」から同三二枚目表二行目までを「い、

べきである。そして、同所長は、在監の刑事被告人から幼年者との接見につき申請があつ
た場合に前記三、2に説示した制限条項に該当する事由があると認められたときには、こ
れを許さないことができ、その許否判断に当たり一定の裁量の余地があることも前記説示
のとおりである。しかしながら、被控訴人とBとが接見をすることについては、何ら右の
制限条項に該当する事由も認められず、却つて右両者が実親子ではないとの点を除けば従
来東京拘置所において幼年者との面会を許可する場合の諸条件を充たしており、その身分
関係の点も、やや特殊なものがあるとはいえ、これのみを捉えて接見を拒否するに足る実
質的な問題も見当たらない本件の事実関係の下において、
東京拘置所長が右の事実関係を事前に把握しており又は容易に把握し得たとの前認定の事
情を前提とする限り、同所長が本件不許可処分をしたことについては、その職務の執行上
に過失があつたものといわざるを得ない。従前、法及び規則の解釈適用に関して原判決及
び本判決のような立場を明らかにした判例・学説等がなく、また、刑事被告人と一四歳未
満の幼年者との接見の原則的禁止を当然とするような風潮があつたからといつて、右の過
失の存在が左右されるものではない」と改める。。
二被控訴人につき生じた損害について考えるに、当裁判所も、慰謝料としては、諸般の
事情を総合して金五万円が相当であると判断するが、その理由は、原判決理由五のとおり
である。また、被控訴人が原審及び当審において弁護士渡辺務及び同海渡雄一の両名に訴
訟代理人を依頼して訴訟行為を追行していることは、当裁判所に顕著であり、被控訴人と
右両弁護士との間において相当額の弁護士費用の支払い約束が成立していることは、弁論
の全趣旨により推認することができる。そして、本件の事案の性質及び被控訴人の境遇に
、、照らすと本件不許可処分と右弁護士費用の一部は相当因果関係があるというべきであり
その額は金一万円が相当である。
三以上のとおりで、本訴請求中、慰謝料金五万円及びこれに対する昭和五九年五月四日
から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の請求を認めた原判決は相当
であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、本件附帯控訴に基づき弁護士費用中金
一万円の請求を認容し、その余を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟
法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官森綱郎友納治夫清水信之)

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