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平成23年3月3日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成22年(行ケ)第10338号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成23年2月17日
判決
原告X
被告株式会社みずほ
フィナンシャルグループ
同代表者代表取締役塚本隆史
同訴訟代理人弁護士鳥海哲郎
大久保和樹
同弁理士小林彰治
廣中健
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2009−890119号事件について平成22年9月30日に
した審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,原告の下記1のとおりの本件商標に係る商標登録を無効にす
ることを求める被告の下記2の本件審判請求について,特許庁が同請求を認めた
別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記
4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1本件商標(甲1の1・2)
登録番号:登録第4930861号
登録出願日:平成17年5月12日
商標:「みずほ」の平仮名文字(標準文字)
指定役務:第42類「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務及
びこれに関する情報の提供,工業所有権に関する情報の提供,訴訟事件その他に
関する法律事務及びこれに関する情報の提供,訴訟に関する情報の提供,登記又
は供託に関する手続きの代理及びこれに関する情報の提供,登記又は供託に関す
る情報の提供,社会保険に関する手続の代理及びこれに関する情報の提供,社会
保険に関する情報の提供」(以下「本件指定役務」という。)
登録査定日:平成17年12月14日
設定登録日:平成18年2月24日
2特許庁における手続の経緯
(1)被告は,平成21年11月6日,原告の本件商標登録について,商標法
4条1項15号等に違反することを理由に,無効審判を請求した(甲49の1)。
なお,被告は,下記アないしウの引用商標1ないし3(以下,併せて「引用商
標」という。)を引用した。
ア引用商標1(甲2の1・2)
商標登録第4547241号
商標:「MIZUHO」
指定役務:第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
出願日:平成11年12月16日
設定登録日:平成14年3月1日
イ引用商標2(甲3の1・2)
商標登録第4613546号
商標:本件審決別掲のとおり
指定役務:第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
出願日:平成13年7月19日
設定登録日:平成14年10月18日
ウ引用商標3
被告及び被告を中心とする企業グループ(以下「被告グループ」という。)が
使用している以下の商標
商標:「みずほ」(平仮名文字)
役務:銀行業務,信託業務,証券業務,保険業務,シンクタンク,コンサルテ
ィング業務,べンチャーキャピタル業務,貸金業務,不動産仲介業務,事務受託
業務,事務代行,人材派遣業務,システム管理業務,企業財務アドバイザリー業
務,信用保証業務,年金及び資産運用の研究
(2)これに対し,特許庁は,被告の請求を無効2009−890119号事
件として審理し,平成22年9月30日に「本件商標登録を無効とする」旨の本
件審決をし,同年10月8日,その謄本は原告に送達された。
3本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,要するに,本件商標の登録は,商標法4条1項15号に該
当するものであり,同法46条1項の規定により,その登録を無効とすべきであ
る,というものである。
4取消事由
商標法4条1項15号該当性の判断の誤り
第3当事者の主張
〔原告の主張〕
(1)商標法4条1項15号について
本件商標は,原告が平成12年11月8日に出願した「MIZUHONE
T」商標(商標登録第4656131号)と類似の商標で,指定役務も同一又は
類似の役務を指定しているものである。
本件審決は,被告及び被告グループによる引用商標の使用を根拠に,商標法4
条1項15号に当たるとして,本件商標登録を無効としたが,被告及び被告グル
ープによる引用商標の使用は,原告の「MIZUHONET」商標の禁止権に
抵触しているものであって,同号違反を構成する事象として採用するべきではな
い。
(2)電気通信事業者の役務
原告は,将来電気通信事業を行う準備として,平成9年5月に「mizuho.
net」ドメイン名を取得し,これに基づき,「みずほねっと」,「MIZUH
ONET」,「MIZUHO.NET」,「みずほ」その他「みずほ」と電気
通信に関係する語を絡めた商標登録出願を行っている。被告の金融グループ「み
ずほ」の名が公になる2年以上前である平成9年から,「みずほねっと」など
「みずほ」に絡む商標登録出願をしており,「電子計算機端末による通信ネット
ワークへの接続の提供」という電気通信,広告,商品の販売に関する情報の各役
務を指定役務としている。
本件指定役務が「電気通信事業者の役務」とは関連しない役務であるとする本
件審決の判断は,失当である
(3)「みずほ/MIZUHO」のとらえ方の違い
商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,
商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきである
が,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によ
って取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきものであ
り,複数の構成部分を組み合わせた結合商標について,構成部分の一部を抽出し,
この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断するのは,原則
として許されない。
知的財産高等裁判所は,平成19年9月13日,被告の「MIZUHO」商標
(商標登録第4457746号,第4474912号及び第4478383号)
についての無効審判請求事件の審決取消訴訟において,原告の「みずほねっと」
商標(商標登録第4246220号)の「みずほ」部分が自他商品識別機能を有
しないとして,両者が類似しないと判断した(平成19年(行ケ)第10046
号,平成19年(行ケ)第10047号,平成19年(行ケ)第10114号)。
他方,同裁判所は,平成21年1月28日,原告の出願した「MIZUHO.
NET」は,被告の「MIZUHO」商標が役務の出所識別標識として強く支配
的な印象を与えるとして,類似すると判断し(平成20年(行ケ)第10258
号),両者の判断は異なっている。
〔被告の主張〕
(1)引用商標の著名性
被告は,株式会社第一勧業銀行,株式会社富士銀行及び株式会社日本興業銀行
の3行が統合して創設された企業グループである「みずほフィナンシャルグルー
プ」(英文名称「MizuhoFinancialGroup」)を名称とし,
株式会社みずほ銀行,株式会社みずほコーポレート銀行,みずほ信託銀行株式会
社,みずほ証券株式会社及びみずほインベスターズ証券株式会社の各子会社を傘
下に持つ金融持株会社であり,上記子会社が有する本支店は,全国に607店,
出張所は100店,代理店は23店あり,銀行業,証券業等の事業を展開してい
る。被告グループには,平成17年3月末時点において,国内78社,海外70
社等が属している。
平成11年12月22日に上記3行の統合が公表された当時から,被告グルー
プが「みずほ」の名称を使用することが大きく報道された。その後も,本件商標
の出願日及び登録日の前後を通じて,様々な媒体において,被告の企業活動が,
「みずほ」の名称や,引用商標1及び2とともに大きく報道された。
また,「MIZUHO」の文字からなる商標が,被告グループの取扱いに係る
銀行業務及び証券業務の役務に使用されて,取引者,需要者間において広く認識
されていることは,原告が提起した過去の裁判における判決でも認定されている。
よって,引用商標が,被告及び被告グループを表示するものとして我が国にお
いて広く知られており,その状態が本件商標の出願時及び査定時はもとより,現
在においても継続していることは明らかである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標は,「みずほ」の文字を標準文字により表したものであり,これが引
用商標に類似するものであることは,明らかである。
(3)被告の事業と本件指定役務の関連性
被告及び被告グループの業務である銀行業,証券業の分野においては,業務の
一環として,知的財産権を対象とする信託業務を行ったり,大学の持つ特許等の
知的財産に関する情報を取引先に提供したり,遺言状の作成・遺産相続等の法律
相談,年金等社会保険に関する相談業務等も行っていることからすると,被告及
び被告グループの業務と本件指定役務とは密接な関連性を有する。
(4)出所混同のおそれ
以上のとおり,引用商標が,被告及び被告グループの業務について使用された
結果,極めて高い著名性を有する商標であること,本件商標が引用商標と同一な
いし極めて類似するものであること,本件指定役務と被告及び被告グループの業
務に係る役務が密接な関連性を有するものであることを総合すれば,原告が本件
商標を本件指定役務に使用した場合には,その需要者,取引者において,原告の
役務が,被告又は被告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に
係る役務であると誤認し,役務の出所につき混同を生ずるおそれが極めて高い。
よって,本件商標が商標法4条1項15号に該当することは,明らかである。
第4当裁判所の判断
1商標法4条1項15号について
(1)商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を
生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定役務に使用したときに,当
該指定役務が他人の役務に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみな
らず,当該指定役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な
営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にあ
る営業主の業務に係る役務であると誤信される,広義の混同を生ずるおそれがあ
る商標を含むものと解するのが相当である。そして,「混同を生ずるおそれ」の
有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び
独創性の程度や,当該商標の指定役務と他人の業務に係る役務との間の性質,用
途又は目的における関連性の程度並びに役務の取引者及び需要者の共通性その他
取引の実情などに照らし,当該商標の指定役務の取引者及び需要者において普通
に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最高裁平成1
0年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号18
48頁参照)。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
引用商標1は,「MIZUHO」の欧文字を標準文字により横書きしたもので
あるところ,同商標からは,「ミズホ」の称呼,「瑞々しい稲の穂」の観念を生
じるとともに,後記(3)のとおり,被告グループに属する企業が統一して使用す
る商標として周知著名なものとなっていることから,「みずほフィナンシャルグ
ループ」の観念も生じる。
引用商標2は,「MIZUHO」の欧文字を図案化したものであり,引用商標
1と同様に,「ミズホ」の称呼,「瑞々しい稲の穂」の観念を生じるとともに,
著名な「みずほフィナンシャルグループ」の観念も生じる。
引用商標3は,「みずほ」の平仮名文字からなるところ,「ミズホ」の称呼,
「瑞々しい稲の穂」の観念を生じるとともに,著名な「みずほフィナンシャルグ
ループ」の観念も生じる。
本件商標は,「みずほ」の平仮名文字からなる商標であり,引用商標1及び2
に極めて類似する商標であって,引用商標3とは,称呼,外観及び観念ともに同
一の商標である。
(3)引用商標の周知著名性及び独創性の程度
ア引用商標に係る「みずほ」は,もともと「瑞々しい稲の穂」の意味を有す
る普通名詞である。
イ平成12年9月29日,第一勧業銀行,富士銀行及び日本興業銀行の3行
が株式移転により経営統合し,株式会社みずほホールディングスが設立された
(甲6の4,甲7,甲9の2∼13)。
平成14年4月に上記3行が会社分割及び合併により,みずほ銀行及びみずほ
コーポレート銀行に統合,再編され,みずほ証券及びみずほ信託銀行がみずほホ
ールディングスの100%子会社となり,さらに,持株会社となったみずほホー
ルディングスの資産を引き継いで,平成15年1月8日に被告が設立された(甲
10の2,甲11,弁論の全趣旨)。
ウ被告グループには,本件商標登録出願前の平成17年3月末時点で,国内
78社,海外70社が属し,それらの企業が提供する役務には,銀行業務,信託
業務,証券業務,保険業務,シンクタンク,コンサルティング業務,ベンチャー
キャピタル業務,貸金業務,不動産仲介業務,事務受託業務,事務代行,人材派
遣業務,システム管理業務,企業財務アドバイザリー業務,信用保証業務,年金
及び資産運用の研究等が含まれる(甲6の2)。
そして,平成16年の時点において,被告グループに属するみずほ銀行及びみ
ずほコーポレート銀行の総資産合計は,世界第2位の137兆円に上り,日本国
内においては,上場企業の4割が主要取引銀行として,7割が取引銀行として被
告グループに属する銀行を利用しており,被告グループは,貸出金平均残高,居
住用住宅ローン残高,預金平均残高及び遺言信託受託件数のいずれにおいても邦
銀中1位であった(甲6の1,甲12の1・14)。
エ被告及び被告グループは,引用商標1ないし3を,全国各地の本支店の店
頭,新聞・雑誌・テレビコマーシャル等各種の媒体を通じた広告やホームページ
において大々的に使用してきた(甲13の2∼23)。
なお,平成11年12月22日の3行統合のプレスリリース以降,新聞,雑誌
等やテレビ,ラジオ,インターネット等のニュースにおいて被告グループに関す
るニュースが頻繁に登場し,引用商標が使用された(甲8の1∼10,甲9の1
∼16,甲10の1∼20,甲12の1∼50)。
オ以上によれば,「みずほ」,「MIZUHO」は,いずれも原告の本件商
標の出願前には著名となっていて,今日に至るまで,被告及び被告グループに属
する企業を表示するものとして著名なものである。
(4)本件指定役務と引用商標に係る役務との間の関連性の程度
ア本件指定役務は,①工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務
及びこれに関する情報の提供,工業所有権に関する情報の提供,②訴訟事件その
他に関する法律事務及びこれに関する情報の提供,訴訟に関する情報の提供,③
登記又は供託に関する手続きの代理及びこれに関する情報の提供,登記又は供託
に関する情報の提供,④社会保険に関する手続の代理及びこれに関する情報の提
供,社会保険に関する情報の提供である。
イ他方,被告グループには,銀行や証券会社を含む金融機関が属していると
ころ,みずほ信託銀行は,テレビアニメの著作権信託を行い(甲14の19),
著作権投資スキームを紹介し(甲6の2),音楽著作権キャッシュフローをベー
スにした事業資金の融資を行ったりして(甲15の1),知的財産権を活用した
資金調達への取組を強化している(甲15の2)。
また,メガバンクグループが,特許権など知的財産分野で新たなビジネスを展
開し,金融機関が,大学等と連携して「技術相談,知的財産相談」を提供してい
るほか,信託業法改正により知的財産信託には大きな注目と期待の目が向けられ
ている(甲14の11・12・17・18・20・21)。
ウさらに,金融機関においては,弁護士紹介サービス・法律相談・法律に関
する情報の提供等が行われている(甲14の3・16・17・21・22・25,
甲16)。みずほ信託銀行では,遅くとも前身の安田信託銀行時代の昭和54年
以来,遺言執行引受予諾業務を行っており,遺言書作成の相談,遺言書作成の援
助,遺言書の保管,遺言の執行に関わる法律業務を提供しており,遺言信託の受
託件数においては各金融機関中第1位である。他の大手金融機関においても,同
様に遺言の管理及び執行に関わる法律業務を提供することが一般的に行われてい
る(甲12の5,甲17の1・2)。
エまた,金融機関は,年金推進班や社会保険労務士や年金アドバイザーを配
属した「お客様営業部」を設置したり,年金無料相談会を開催したり,年金受給
手続の代行をしている(甲14の1・2・5∼8・13∼15・23・24・2
7∼42,甲18の1∼12)。
オ以上のとおり,金融機関においては,法人顧客を対象として特許権や著作
権等の知的財産権を対象とする信託業務を行ったり,大学の持つ特許などの知的
財産に関する情報を取引先に提供したり,事業の開始に必要な資金を調達・融資
するなどの事業を行い,知的財産信託において,特許料の納付,実施権の付与,
侵害などへの対応の役務を提供している。
また,金融機関は,様々な経営リスクを抱える法人や個人の顧客を対象として
法律相談・コンサルティング,法律に関する情報の提供や弁護士紹介サービスを
行っている。信託銀行においては,遺言執行引受予諾業務の一環として遺言に関
わる一連の法律業務を提供することが一般的に行われており,現に被告グループ
は,遺言信託受託件数において金融機関中第1位の実績を誇っている。
さらに,金融機関においては,顧客や潜在的顧客を対象とした年金相談等,社
会保険に関する相談会を行うことが広く一般的に行われている。
金融機関の行うこれらの役務は,本件指定役務と関連性を有し,同一の者によ
って提供されることの多い役務であって,取引者,需要者も共通するものであり,
密接な関連性を有するものということができる。
(5)出所の混同のおそれ
以上のとおり,①本件商標が引用商標と同一ないし極めて類似する商標である
こと,②引用商標は,もとは普通名詞であるが,被告及び被告グループにより使
用された結果,全国的に極めて高い著名性を有する商標であること,③本件指定
役務と被告又は被告グループが使用する役務とが密接な関連性を有するものであ
ることを総合勘案すれば,原告が,被告及び被告グループを表示するものとして
著名な引用商標と同一ないし極めて類似する本件商標を,被告又は被告グループ
が使用する役務と密接な関連性を有する本件指定役務について使用した場合,そ
の需要者及び取引者において,本件商標の下で提供される原告の役務が,例えば,
被告グループに属する者,被告から引用商標の使用許諾を受けた者によるなど,
被告又は被告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務
であると誤認し,役務の出所につきいわゆる広義の混同を生ずるおそれは極めて
高いといわなければならない。
したがって,本件商標は,被告及び被告グループの業務に係る役務と混同を生
ずるおそれがある商標であるから,商標法4条1項15号に該当する。
(6)原告の主張について
ア原告は,被告による引用商標の使用は,そもそも原告の「MIZUHO
NET」商標の禁止権に抵触しているものであって,商標法4条1項15号違反
を構成する事象として採用するべきではないと主張する。
しかし,原告の「MIZUHONET」商標(商標登録第4656131号。
甲54)は,指定役務を第35類から第42類として平成12年11月8日出願
されたものであって,引用商標1の出願日(平成11年12月16日)に後れる
ものである。また,原告の「みずほねっと」商標(商標登録第4246220号。
甲33の1・2)は,指定役務を第35類及び第38類とするものであるところ,
「みずほねっと」は,平仮名文字が,同書・同大・同間隔で一連にまとまりよく
表記されている結合商標であり,これを分離観察することができないから,「み
ずほ」と類似とはいえない。なお,原告が商標登録出願した「MIZUHO.N
ET」商標は,拒絶査定を受け,不服審判請求が成り立たないとする審決に対す
る訴えが棄却されて,登録査定されていない(甲21,45)。
以上によれば,被告による引用商標「MIZUHO」「みずほ」の使用が,原
告の登録商標の禁止権に抵触するとの原告の主張は,採用することができない。
イ原告は,本件指定役務が「電気通信事業者の役務」とは関連しない役務で
あるとする本件審決の判断は失当であると主張する。
しかし,本件商標が商標法4条1項15号に該当するか否かの判断に当たり,
本件指定役務と,引用商標が使用される被告の業務に係る役務との関連性は問題
となるが,本件指定役務と,「電気通信事業者の役務」との関連性は直接問題と
ならないから,原告の上記主張は理由がない。
ウさらに,原告は,「みずほ」部分が自他商品識別機能を有しないとする裁
判所の判断と,「MIZUHO」商標が役務の出所識別標識として強く支配的な
印象を与えるとする裁判所の判断とが矛盾するかのような主張をする。
しかし,本件において問題となるのは,「みずほ」なる本件商標と,「MIZ
UHO」又は「みずほ」なる引用商標との類似性であって,原告の主張する上記
裁判所の判断のいかんは,本件に関係しないから,原告の上記主張も理由がない。
(7)小括
したがって,原告主張の取消事由は,理由がない。
2結論
以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官滝澤孝臣
裁判官高部眞規子
裁判官井上泰人

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