弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はこれを棄却する。
     当審における未決勾留日数中百五拾日を原判決の刑に算入する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、被告人の弁護人中沢守正名義の控訴趣意書記載のとおりであ
るから、これを、ここに引用する。
 控訴趣意第一点について。
 所論は要するに原判示第一の麻薬粉末約一九二・五〇三八瓦の輸入の所為の内に
は、その後その所持を継続する事実も包含しているので、原判示第二の所持の所為
は当然第一の輸入に包含せられ、原判示の如く別個の犯罪を構成するものではない
といつて、その理由につき縷述するのである。よつて記録を調査するに、被告人は
Aと共謀の上、原判示第一記載の如く東京国際空港において麻薬粉末約一九二・五
〇三八瓦を密輸入したこと、その後殆どAが横浜において右麻薬を所持しており、
被告人はその売渡先を探していたこと、同月十九日に至り買受希望者があり、取引
量、価格も決つたので、被告人がその売買実行のためこれを所持していたAから、
右麻薬を小分した一部である原判示第二の麻薬二十一包を受け取り、判示場所に臨
み取引せんとしたところを逮捕せられたことが認められ、原判示第二の事実は、被
告人が右の取引をせんとした場合の所持を判示していることは明らかである。なる
ほど原判示第一の輸入に当然伴う所<要旨>持行為はこれに吸収せられ、特に所論の
如く所持罪として処罰の対象とはならないものと解するとしても、本件にお
ける如く、密輸入による麻薬を一括所持中、売買のために小分けした一部である二
十一包を売却するために特に原判示第二の日時、場所において所持することは、時
間的関係、場所的関係も、また所持の形態、目的の点においても推移変動があつ
て、当初の一括所持とは全く別個独立の所持と認めることができるので、これを以
て当初の輸入行為に包括せられるものと認むべきでないことは明らかである。然ら
ば原判決にはこの点において何等法令違反の廉は存在せず、所論は独自の見解に基
くものであつて、これを採用することはできない。(尚原判示第二の事実には営利
の目的でなした所為である旨の記載はないけれども、昭和三十七年七月十一日付の
本件起訴状には営利の目的でなされたものである旨記載せられており、原判決もま
た本件犯罪の罪数について説明するに当り、原判示第二の麻薬二十一包を営利目的
で所持していたものであることが明白であると判示し且つ法律を適用するに当つて
も麻薬取締法第六十六条を摘示していることに徴すると、原判示第二については単
に営利の目的でなされた所為であることを書き漏したものであると認める。)
 (その余の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 三宅富士郎 判事 東亮明 判事 井波七郎)

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