弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
     前項の部分につき本件を広島高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人西田秀史、同西田三千代の上告理由について
 一 原審の確定した事実関係は、次のとおりである。
 1 被上告人B株式会社(以下「被上告会社」という。)は、販売店である訴外
株式会社D(以下「訴外会社」という。)から手作りソフト付きのコンピューター
(以下「本件コンピューター」という。)を導入するにつき、昭和五九年九月一九
日、リース業者である上告人との間でリース契約(以下「本件リース契約」という。)
を締結した。
 2 被上告会社は、そのころ、右ソフトが未完成であって、本件コンピューター
が納入されず、訴外会社の事務所に置かれたままであるにもかかわらず、訴外会社
の資金繰りに協力するため、これが納入されたように装って、その引渡しを受けた
旨の受領書を上告人に交付した。そこで、上告人は、右同日、訴外会社に対して本
件コンピューターの売買代金を支払った。
 3 被上告会社は、訴外会社から本件コンピューターの引渡しを受けないまま、
上告人に対し、昭和五九年九月分以降同六一年九月分までの月々のリース料(毎月
七日払い)を支払ったが、同年一〇月分以降のリース料については、リース物件の
引渡しを受けていないことを理由にその支払を拒絶するに至った。
 4 他方、上告人は、昭和六一年九月三〇日頃、訴外会社の経営不振のため必要
があると主張して、被上告会社に無断で、訴外会社から本件コンピューターを引き
揚げ、これを保管するに至ったが、同年一〇月二九日、被上告会社の右リース料の
不払を理由に本件リース契約を解除する旨の意思表示をした。
 二 上告人は、被上告会社及びその連帯保証人であるその余の被上告人らに対し、
本件リース契約の解除を理由に残リース料に相当する五一四万五〇〇〇円の約定損
害金及びこれに対する延滞リース料の支払猶予期間満了の日の翌日である昭和六一
年一二月二日から支払済みまで約定の年一四・六パーセントの割合による遅延損害
金の支払を求めるところ、原審は、上告人が本件コンピューターを一方的に引き揚
げ、被上告会社の使用不可能な状態を作出したのであるから、被上告会社としては、
昭和六一年一〇月分以降のリース料の支払を拒絶することができ、前記解除は無効
であるとして、上告人の請求を認容した第一審判決を取り消した上、上告人の右請
求をいずれも棄却すべきものとした。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 1 前示事実関係、とりわけ本件リース目的物の種類・性質、本件リース契約締
結に至る経緯等によると、本件リース契約はいわゆるファイナンス・リース契約で
あると解することができるところ、ファイナンス・リース契約は、物件の購入を希
望するユーザーに代わって、リース業者が販売業者から物件を購入のうえ、ユーザ
ーに長期間これを使用させ、右購入代金に金利等の諸経費を加えたものをリース料
として回収する制度であり、その実体はユーザーに対する金融上の便宜を付与する
ものであるから、リース料の支払債務は契約の締結と同時にその全額について発生
し、ユーザーに対して月々のリース料の支払という方式による期限の利益を与える
ものにすぎず、また、リース物件の使用とリース料の支払とは対価関係に立つもの
ではないというべきである。したがって、ユーザーによるリース物件の使用が不可
能になったとしても、これがリース業者の責めに帰すべき事由によるものでないと
きは、ユーザーにおいて月々のリース料の支払を免れるものではないと解すべきで
ある。
 2 前示事実関係によると、被上告会社は訴外会社から手作りソフト付きコンピ
ューターの引渡しを受けた旨の受領書を上告人に交付したものの、実際には右引渡
しを受けていないというのであるから、被上告会社は、少なくとも上告人との関係
においては、自ら本件コンピューターを占有使用することなく、あえて訴外会社に
保管させたものとして、自らこれを占有すべき本件リース契約上の義務に違反した
ものとみられてもやむを得ない立場にあるとみることができる。そして、本件コン
ピューターが訴外会社の下にあることを知った上告人が訴外会社の経営不振を理由
にこれを引き揚げたことには、無理からぬものがあるということができるから、そ
の後、被上告会社において積極的にその引渡しを求めたのに、上告人がこれを拒絶
したような事情でもあれば格別、そうでなければ、右引揚げの結果生じた被上告会
社の本件コンピューターの使用不能の状態は、むしろ被上告会社の前記本件リース
契約上の義務違反に起因するものであって、上告人の責めに帰すべきものというこ
とはできない。
 3 そうだとすれば、上告人が訴外会社の下から本件コンピューターを引き揚げ
たことのみから、上告人が被上告会社においてこれを使用できない状態を作出した
ものとして、被上告会社に昭和六一年一〇月分以降のリース料の支払義務はないと
した原審の判断は、リース契約に関する法令の解釈適用を誤り、ひいては審理不尽、
理由不備の違法があるものというべきであり、その違法が原判決中上告人敗訴部分
に影響を及ぼすことは明らかである。これと同旨をいう論旨は理由があり、原判決
は破棄を免れない。そして、本件については、以上に説示したところに従い更に審
理を尽くさせる必要があるから、これを原審に差し戻すのが相当である。
 四 よって、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    味   村       治
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    三   好       達
            裁判官    大   白       勝

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛