弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
       事実及び理由
第一 当事者の求める裁判
一 原告
 埼玉県総務部県政情報センター所長が、原告に対し、平成九年七月二四日付けで
した行政情報の一部非公開決定処分のうち、講師の報償金額と講師名にかかわる行
政情報を非公開とした部分を取り消す。
二 被告
 主文と同旨
第二 事案の概要
 本件は、原告が、埼玉県行政情報公開条例(以下「本件条例」という。)に基づ
いて、「彩の国さいたま 国際平和フォーラム’96」(以下「国際平和フォーラ
ム」という。)に出演した三名の講師ら(以下「本件講師」という。)に対して支
払われた報償金(以下「本件報償金」という。)に関する行政情報の文書(別紙目
録一記載一ないし四の文書(以下「本件申請文書」という。))の公開を求めたと
ころ、埼玉県総務部県政情報センター所長(以下「県政情報センター所長」とい
う。)は、本件申請文書のうち国際平和フォーラム出演の講師の報償金額と講師名
にかかわる行政情報である別紙目録二記載一ないし四の各文書(以下「本件非公開
文書」という。)を非公開とする処分(以下「本件処分」という。)をしたので、
原告が、本件処分の取消しを求めるものである。
一 当事者
1 原告は、埼玉県に住所を有する埼玉県民である。
2 県政情報センター所長は、埼玉県本庁事務の委任及び決裁に関する規則(昭和
四五年埼玉県規則第一号)により、埼玉県知事から行政情報の公開・非公開を決定
する権限が委任され、平成九年七月二四日当時、埼玉県行政情報公開条例(以下
「本件条例」という。)の実施機関であったものであるが、同年一〇月一日、右規
則の改正規定が施行されたことにより、行政情報の公開・非公開を決定する権限が
県政情報センター所長から被告に移管され、被告が本件訴訟の被告の地位を承継し
た。
二 原告の情報公開請求
 原告は、埼玉県が平成八年一一月一七日に開催した国際平和フォーラムは、埼玉
県民が納付した税金により開催されたものであり、埼玉県民である原告は右イベン
トのスポンサーの一人としての立場にあるというべきであるから、スポンサーとし
て国際平和フォーラムに出演した三名の本件講師に対して支払われた本件報償金が
妥当な予算の範囲内で、すなわち高額すぎない相当な報償金額であったか否かを検
討する必要があるとして、平成九年七月一〇日、県政情報センター所長に対し、本
件条例第五条第一項に基づき、国際平和フォーラムに出演した本件講師に対して支
払われた本件報償金に関する行政情報として本件申請文書の公開請求をした(以下
「本件公開請求」という。)。
三 県政情報センター所長の非公開決定処分
 県政情報センター所長は、平成九年七月二四日、原告が公開を求めた本件申請文
書のうち本件非公開文書部分には、国際平和フォーラムに出演した本件講師に支払
った報償金額そのもの、あるいは既に公開されている他の文書の記載と併せるとこ
れを推認できる行政情報が記載されているところ、右行政情報は、いずれも個人に
関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別されうる情報であるとし
て、これを非公開とする本件処分をした。
第三 争点
一 被告の本件処分に関する主張
 原告が公開を求める本件申請文書の中には、個人に関する情報の記載があり、こ
れを公開すると国際平和フォーラムに出演した講師名及び本件講師に対する報償金
額が明らかとなり、本件講師の収入が明らかとなるので、県政情報センター所長
は、右行政情報は、本件条例第六条第一項第一号本文に定める個人に関する情報で
あり、特定の個人が識別され、又は識別されうるものであるし、同条第一項ただし
書イあるいはハに該当すると認めることもできないとして本件処分をしたのである
から、本件処分は、違法ではない。
二 原告の本件処分に関する主張
 被告は、本件非公開文書は、個人の情報であって、特定の個人が識別され、識別
されうる情報が記載されているものであるので、本件条例第六条第一項第一号本文
に該当するとして、これを非公開とする旨の本件処分をしたが、本件決定は、次の
とおり違法であるから、取り消されるべきである。
 すなわち、原告は、埼玉県民として住民税等を納付している者であるところ、埼
玉県は県民が納付した税金によって国際平和フォーラムを開催し、これに出演した
本件講師に本件報償金を支払ったのであるから、原告は、右イベントのスポンサー
としての立場にあるというべきであるので、右イベントのスポンサーとして、本件
講師に対して支払われた本件報償金が、高すぎない妥当なものであるか否かスポン
サーとしてチェックし、本件報償金について、適切な助言をし、公のイベントに支
出される血税を極力少なくすることが必要であるから、本件講師に支払われた本件
報償金に関する行政情報が記載された本件申請文書は、当然に公開されなければな
らない。したがって、住民の県政参加の推進を目的とする旨の本件条例第一条は、
本件条例第六条第一項第一号本文に優先するというべきであり、また、憲法第二一
条第一項に基づいて、住民は行政情報の内容を知る権利が保障されているのである
から、本件処分は、本件条例第一条ないし憲法第二一条第一項に反し、違法であ
る。
第四 争点に対する判断
一 証拠(乙第一ないし第八号証及び弁論の全趣旨)によると、次の事実が認めら
れる。
1 埼玉県は、平和主義と国際協調主義を基本原理とする日本国憲法の公布五〇年
を記念して、県民とともに国際的な視点から平和について考えるために、平成八年
一一月一七日、彩の国さいたま芸術劇場で国際平和フォーラムを開催し、これに出
演した元英日議員連盟会長A卿、旧東ドイツ元首相B博士及びジャーナリストCに
対して、本件報償金を支払った。
2 国際平和フォーラムは、原告ら県民が納付した住民税等の血税によって実施さ
れたのであるから、そのスポンサーとしての立場にあるというべきであるところ、
原告は、公のイベントに支出される血税を極力少なくすることが必要であるという
ことを意識し、スポンサーの一人として、本件報償金が高くなく妥当な金額であっ
たか否かを調査する必要があるとして、平成九年七月一〇日、県政情報センター所
長に対し、本件申請文書の公開を求めたが、同所長は、同月二四日、本件非公開文
書につき、これを公開しない旨の本件処分をした。
3 原告の本件公開請求にかかる別紙目録一記載一のうち、支払負担行為兼支出命
令書は、国際平和フォーラムの出演者一名の謝礼金を報償費として支出する旨を決
定した文書であり、報償金として一五〇万円を県民総務課資金前途担当者に支出す
ることが記載されており(乙第三号証の二)、別紙目録二記載一1の受領書は、右
謝礼金の支払を受けた者が作成する書類の様式が記載された文書であり、国際平和
フォーラムの出演者一名が講師謝金として一五〇万円を受領したこと、右受領した
日付及び報酬額を受ける者の署名が記載されており、同目録記載一2の起案書(写
し)は、国際平和フォーラムの講師及び出演者の謝金決定の起案書であり、国際平
和フォーラムのオープニング及び講演に出演した出演者の名称・氏名、謝金の支払
額及び内訳が記載されているところ(乙第三号証の三)、県政情報センター所長
は、別紙目録一記載一の文書のうち、講師名及び講師を特定し得る部分である別紙
目録二記載一1及び2の文書部分については、個人に関する情報であって、特定の
個人が識別され、又は識別される得るものであり、本件条例第六条第一項第一号本
文に該当するとして非公開とした。
4 本件公開請求にかかる別紙目録一記載二のうち、別紙目録二記載二1の支出負
担行為兼支出命令書は、国際平和フォーラムの出演者一名の謝礼金を報償費として
支出する旨を決定した文書であり、報償金として五七万二二二一円を債権者に支出
すること、債権者の住所、氏名、謝礼金の振込先等が記載されており(乙第四号証
の二)、同目録記載二2の請求書は、債権者の講師派遣経費の請求書であり、講師
名、請求金額、振込先等が記載されており、また、同目録記載二3の起案書(写
し)は、国際平和フォーラムの講師及び出演者の謝金決定の起案書であり、国際平
和フォーラムのオープニング及び講演に出演した出演者の名称・氏名、謝金の支払
額及び内訳が記載されているところ(乙第四号証の三)、県政情報センター所長
は、別紙目録一記載二の文書のうち、講師名及び講師を特定し得る部分である別紙
目録二記載二1ないし3の文書部分については、個人に関する情報であって、特定
の個人が識別され、又は識別され得るものであり、本件条例第六条第一項第一号本
文に該当するとして、また、振込先については、特定の法人の取引内容に関する事
項であって、公開することにより当該法人に著しい不利益を与えることが明らかな
情報であり、本件条例第六条第一項第二号に該当するとして、それぞれ非公開とし
た。
5 本件公開請求にかかる別紙目録一記載三のうち、別紙目録二記載三1の支出負
担行為決議書は、国際平和フォーラムの主演者招聘業務委託費を支出することを決
定した文書であり、委託業務の内容、委託料として七二九万七二一〇円を債権者株
式会社サムライに支出すること等が記載されており、同目録記載三2の右議決書付
属の起案書表書の件名欄には、国際平和フォーラムの特定の講師に関する業務委託
契約の内容が記載されており(乙第五号証の二)、同目録記載三3の文書入力票
は、国際平和フォーラム委託契約書について電子計算機に入力し、記録する事項が
記載された文書であり、文書の件名、契約の相手方、契約金額等が記載されており
(乙第五号証の三)、同目録記載三4の起案理由書は、国際平和フォーラム委託契
約締結の理由等を記載した文書であり、契約の相手方、契約金額、委託業務の内
容、契約の方法、委託先の選定理由等が記載されており(乙第五号証の四)、同目
録記載三5の委託契約書は、株式会社サムライに対する国際平和フォーラムに関す
る業務委託契約書であり、特定の講師に関する業務を委託する旨、業務委託契約に
関する契約条項及び委託業務の詳細(特記仕様書、同目録記載三6)が記載された
文書であり(乙第五号証の五)、同目録記載三7の予定価格調書は、予定価格、給
付の価格、数量、参考価格が記載された文書であり(乙第五号証の六)、封筒は、
予定価格調書を封入していた封筒であり(乙第五号証の七)、同目録記載三8の見
積書は、株式会社サムライが作成した国際平和フォーラム委託費の見積書であり、
件名(特定の出演者及び講師に関する委託業務が記載されている。)、委託費の項
目(講師謝金に相当する出演料に項目を含む。)、数量・単価及び金額並びに債権
者の印影等が記載されている文書であるところ、県政情報センター所長は、別紙目
録一記載三の文書のうち、講師名及び講師を特定し得る部分である別紙目録二記載
三1ないし8の文書部分については、個人に関する情報であって、特定の個人が識
別され、又は識別され得るものであり、本件条例第六条第一項第一号本文に該当す
るとして、予定価格調査書のうち予定価格及び参考価格については、公開すること
により競争入札を実施する目的の達成を著しく困難にするとともに今後行われる同
種の契約事務の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生ずることが明らかな情報であ
り、本件条例第六条第一項第五号に該当するとして、見積書のうち、印影について
は、法人の対外活動において重要な意義を有するものであって、公開することによ
り当該法人に著しい不利益を与えることが明らかな情報であり、本件条例第六条第
一項第二号に該当するとして、それぞれ非公開とした。
6 本件公開請求にかかる別紙目録一記載四のうち、支出負担行為決議書は、国際
平和フォーラムの開催業務委託費を支出することを決定した文書であり、委託料と
して七九四万二一〇〇円を債権者株式会社サムライに支出すること等が記載されて
おり(乙第六号証の二)、文書入力票は、国際平和フォーラム開催業務委託契約書
について電子計算機に入力し、記録する事項が記載された文書であり、文書の件
名、契約の相手方、契約金額等が記載されており(乙第六号証の三)、別紙目録二
記載四1の起案理由書は、国際平和フォーラム開催業務委託契約締結の理由等を記
載した文書であり、契約の相手方、契約金額、委託業務の内容、契約の方法、委託
先の選定理由等が記載されており(乙第六号証の四)、国際平和フォーラム開催業
務委託契約書は、株式会社サムライに対する国際平和フォーラムに関する業務委託
契約書であり、右業務委託契約に関する契約条項及び委託業務の詳細(特記仕様
書。同目録記載四2)が記載されており(乙第六号証の五)、予定価格調書は、右
国際平和フォーラム開催業務委託費の予定価格及び参考価格が記載されている文書
であり(乙第六号証の六)、封筒は、予定価格調書を封入していた封筒であり(乙
第六号証の七)、同目録記載四3の見積書は、株式会社サムライが作成した国際平
和フォーラム開催業務委託費の見積書であり、委託費の項目、数量・単価及び金額
が記載されているところ、県政情報センター所長は、別紙目録一記載四の文書のう
ち、講師名及び講師を特定し得る部分である別紙目録二記載四1ないし3の文書部
分については、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され
得るものであり、本件条例第六条第一項第一号本文に該当するとして、予定価格調
査書のうち予定価格及び参考価格については、公開することにより競争入札を実施
する目的の達成を著しく困難にするとともに今後行われる同種の契約事務の公正か
つ円滑な執行に著しい支障が生ずることが明らかな情報であり、本件条例第六条第
一項第五号に該当するとして、見積書のうち印影については、法人の対外活動にお
いて重要な意義を有するものであって、公開することにより当該法人に著しい不利
益を与えることが明らかな情報であり、本件条例第六条第一項第二号に該当すると
して、それぞれ非公開とした。
二 被告の本件処分に関する主張について
1 被告は、原告から公開を求められた本件申請文書のうち、本件非公開文書は、
本件条例第六条第一項第一号本文において公開することができない個人に関する情
報に該当するとして、これを非公開とする本件処分をした。
 埼玉県は、行政情報公開制度を制定し、県民に行政情報の公開を求める権利を保
障するとともに、県民から右行政情報の公開を求める請求があった場合には、実施
機関は、原則として、当該行政情報を公開しなければならないとした。しかし、個
人に関する情報については、個人の尊厳を尊重するという憲法の理念に基づき、個
人に関する情報が十分保護されるように配慮するものとし(本件条例第三条第二
項)、さらに、個人に関する行政情報であって、特定の個人が識別され、又は識別
され得るものについては、個人のプライバシー保護の観点から、本件条例第六条第
一項第一号ただし書に該当するものを除き、原則として非公開とすることができる
旨を定め(本件条例第六条第一項第一号本文)、県民からの行政情報の公開請求に
対し、実施機関が当該請求にかかる行政情報を公開しないことができる権限及び公
開しないことができる行政情報の範囲を定めた。
 ところで、国際平和フォーラムに出演した本件講師ら三名の氏名は既に明らかと
なっており、原告が公開を求める行政情報は、国際平和フォーラムに出演した三名
の講師のうち報償金額の明らかにされていない一名の講師の報償金額と各報償金額
ごとの三名の講師名に関する行政情報であるので、これが公開された場合には、本
件講師が支払を受けた具体的な報酬額が明らかとなり、本件講師の収入がつまびら
かとなるものであるから、個人の収入に関する情報に該当するというべきである。
したがって、右行政情報は、個人のプライバシーに属する行政情報として、本件条
例第六条第一項第一号本文により、公開しないことができる範囲のものというべき
である。そして、被告が、公開することができないとした本件非公開文書には、文
書の様式、内容、記載形式等に照らすと、いずれも、国際平和フォーラムに出演
し、当該報償金の支払を受けた本件講師の氏名あるいは本件講師に対して支払われ
た具体的な報償金額が記載されていると推認されるので、右行政情報は、前示のと
おり、いずれも個人の収入に関する情報であって、既に公表されている部分の行政
情報と結び付けると特定の講師らに支払われた報償金額が明らかとなるから、本件
条例第六条第一項第一号本文が定める個人に関する情報であって、個人が識別さ
れ、又は識別され得る行政情報に該当すると認めるのが相当である。
2 ところで、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され
得るものであっても、法令又は条例の規定により、何人でも閲覧をすることができ
る情報については、公開しなければならないが(本件条例第六条第一項第一号ただ
し書イ)、埼玉県が施行した記念行事等に出演した講師に対して支払われた報償金
額について、これを公開できるとした法令又は条例の定めはないので、本件非公開
文書に記載された行政情報が、これに該当するものでないことは明らかである。
 本件非公開文書は、前記のとおり、国際平和フォーラムに出演した本件講師に対
して支払われた報償金額に関する行政情報が記載されたものであるが、本件非公開
文書は、国際平和フォーラムに出演した講師らに対して報償金を支出することの可
否及び右支出を議決し、右報償金の支払を実行するために作成された文書であるか
ら、これが当初から公表することを目的として作成し、又は入手した情報でないこ
とは明らかであり(同号ただし書ロ)、また、法令等の規定に基づく許可、免許、
届出等の際に作成し、又は入手した情報で、公開することが公益上必要であると認
められる情報でないことも明らかである(同号ただし書ハ)。
3 したがって、原告が公開を求めた本件申請文書のうち、被告が公開することが
できないとした本件非公開文書にかかる行政情報は、いずれも本件条例第六条第一
項第一号本文に該当する個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は
識別され得る情報であり、同号ただし書に該当する情報でないから、県政情報セン
ター所長が、本件非公開文書が本件条例第六条第一項第一号本文に該当する行政情
報に該当するとして、これらを非公開とした本件処分は適法であり、被告の前記主
張は、理由がある。
三 原告の本件処分に関する主張について
 原告は、埼玉県が開催した国際平和フォーラムのスポンサーとしての立場にある
から、国際平和フォーラムに出演した本件講師に対し妥当な報償金が支払われたか
否かをチエックするために、本件条例第六条第一項第一号本文の規定に該当する行
政文書であっても、本件条例第一条あるいは憲法第二一条第一項に基づいて本件非
公開文書の公開を求めることができると主張する。
 本件条例第一条は、県民の行政情報の公開を求める権利を保障することにより、
県政の公正な執行と県民の信頼の確保を図るとともに、県民の県政参加を一層推進
し、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的とする旨本件
条例の目的を明らかにし、本件条例第三条の規定と併せて本件条例の解釈、運用の
指針を定めた一般規定であり、行政情報公開請求の根拠規定とはなり得ないから、
県民がスポンサーであることを理由として講師らに支払われた報償金に関する行政
情報の公開を求める場合には、本件条例第六条第一項第一号本文にもかかわらず、
本件条例第一条が優先するというべきであるという原告の前記主張は、採用するこ
とはできない。ところで、原告は、本件において、本件条例第五条第一項に基づい
て国際平和フォーラムに出演した本件講師に対して支払われた報償金に関する行政
情報の公開を求めているところ、本件条例自体が、前記のとおり、個人の尊厳とい
う憲法の理念に従ってプライバシーを保護すべきであるとの見地から、個人に関す
る情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るものについては、本件
条例第六条第一項第一号ただし書に該当する情報を除いて非公開として取り扱うべ
きことを定め、実施機関が公開しないことができる行政情報の範囲等を定めている
以上、公開を求める行政情報が、公開しないことができる行政情報の範囲に属する
ものである場合に、実施機関が、これを非公開とする旨の処分をすることができる
ことは、当然である。
 また、原告は、憲法第二一条第一項に基づいて、住民は、行政情報の内容を知る
権利が保障されているのであるから、本件条例第六条第一項第一号本文に該当する
として非公開とされた本件非公開文書であっても、憲法第二一条第一項により公開
することを求めることができると主張する。原告の主張する右権利が憲法第二一条
第一項に由来するとしても、同条は、一般原理を抽象的に定めるにとどまり、実施
機関に対して行政情報公開を求める権利は、本件条例によって創設されたというべ
きであるから、本件条例により公開しないことができる行政情報を、憲法第二一条
第一項の規定に基づいて直接実施機関に対し行政情報の公開を求めることができる
とする原告の前記主張も、理由がない。
四 よって、原告の本件請求は、いずれも理由がないので、これを棄却することと
し、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第六一条を適用し
て、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成一○年七月六日)
浦和地方裁判所第四民事部
裁判長裁判官 星野雅紀
裁判官 小島浩
裁判官 桧山麻子
別紙目録一
以下の各文書(但しいずれも添付書類を含む。)
一 埼玉県の支出負担行為兼支出命令書(平成八年一一月一四日決裁)(支出負担
行為番号○〇三五一)のうち、講師謝金に係る部分
二 同支出負担行為兼支出命令書(平成八年一一月二六日決裁)(支出負担行為番
号〇〇三七九)のうち、講師謝金に係る部分
三 同支出負担行為決議書(平成八年一一月八日決裁)(支出負担行為番号〇〇三
八三)
四 同支出負担行為決議書(平成八年一〇月一一日決裁)(支出負担行為番号〇〇
三八二)
別紙目録二
一 埼玉県の支出負担行為兼支出命令書(平成八年一一月一四日決裁)(支出負担
行為番号〇〇三五一)
1 受領証の様式書の非公開部分
 全部
2 起案書の写しの非公開部分
 講演出演者謝金の項の「出演者氏名」欄、「支払金額の内訳」欄
二 埼玉県の支出負担行為兼支出命令書(平成八年一一月二六日決裁)(支出負担
行為番号〇〇三七九)
1 支出負担行為兼支出命令書の非公開部分
 債権者の住所、氏名
2 請求書の非公開部分
 全部(振込先を除く。)
3 起案書の写しの非公開部分
 出演者氏名、支払金額の内訳
三 埼玉県の支出負担行為決議書(平成八年一一月八日決裁)
(支出負担行為番号○〇三八三)
1 支出負担行為決議書の非公開部分
 「摘要」欄
2 起案書表書の非公開部分
 件名の一部
3 文書入力票の非公開部分
 「件名」欄、「抄録」欄、入力事項の一部
4 起案理由書の非公開部分
 本文の一部、「委託業務の内容」欄
5 委託契約書の非公開部分
 契約名の一部、契約前文の一部、第一条(1)、(2)
6 特記仕様書の非公開部分
 全部
7 予定価格調書の非公開部分
 契約名の一部
8 見積書の非公開部分
 全部(印影を除く。)
四 埼玉県の支出負担行為決議書(平成八年一〇月一日決裁)
(支出負担行為番号〇〇三八二)
1 起案理由書の非公開部分
 「3 委託業務の内容(1)」の欄
2 特記仕様書の非公開部分
 「2 委託業務の内容(2)」の欄
3 見積書の非公開部分
 全部(印影を除く。)

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