弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告はこれを棄却する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 抗告人は、原決定を取消す、本件異議申立を棄却するとの裁判を求め、抗告理由
は左記の通りである。
 原決定は本件差押に係る動産が相手方会社の占有に属し、且つ債務者A以外の者
 (第三者)の所有に属することを、相手方提出の証拠により認め、本件異議申立
を認容した。しかし、
 第一、 差押物件が第三者の所有又は占有に属すという理由に基き、強制執行の
排除を求めんとせば、宜しく第三者異議の訴を提起すべきであつて、強制執行の方
法に関する異議の申立をなすべきではない。
 かかる申立をなすことにより強制執行の排除を求めることはできない。
 第二、 別紙目録の動産は、債務者Aの占有し且つ所有するものである。
 第三、 原決定は、冒頭記載の事実は相手方提出の証拠により、これを認めるこ
とができると判示しているが、その援用した証拠が何であるかを個別的に挙示して
いないのは理由不備の違法がある。
 よつて審按するに、本件記録によれば別紙目録記載の物件は、抗告人が執行債務
者Aに対する東京法務局所属公証人B作成第十二万二百四十八号金銭消費貸借公正
証書の執行力ある正本に基き、東京地方裁判所執行吏Cに委任し、昭和二十四年七
月十六日、東京都千代田区a町b丁目c番地倉庫において差押えたものであるとこ
ろ、記録中の疏第一乃至第六号証によれば、右差押物件所在の建物は昭和二十三年
十二月二十七日相手方が右執行債務者から賃借してその階下を倉庫として使用して
いたものであつて、別<要旨>紙目録記載の物件は総て相手方が第三者から預つて右
階下の倉庫に保管して占有していたものであることが認められる。従つて執
行吏がAに対する強制執行として同人の占有にあるものとしこれが差押をしたのは
違法で、この場合相手方は右差押の排除を求めるため執行の方法に関する異議の申
立をなし得ることは勿論であるから(民事訴訟法第五四四条、第五六六条第一項参
照)、本件異議申立は正当なりとして是認されなければならない。
 抗告人の主張は、要するに、右と法律上の見解を異にし(抗告理由第一)或は右
に認定した事実と相容れない事実を主張し(同上第二)また或は原決定の理由にお
いて採用した証拠を個別的に挙示しないのは違法であると主張するもので(同上第
三)、その総てが採用に値しないものであることは前段の説明によつて明らかであ
る。従つて、原決定は相当で本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用の
負担については民事訴訟法第八十九条第九十五条の各規定により主文の通り決定す
る。
 (裁判長判事 玉井忠一郎 判事 薄根正男 判事 山口嘉夫)

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