弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     一 原判決を次のとおり変更する。
     1 控訴人協同組合北見専門店会は、被控訴人に対し、金七万五〇〇〇
円及びこれに対する平成元年六月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を
支払え。
     2 控訴人Aは、被控訴人に対し、金四万円及びこれに対する平成元年
六月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
     3 控訴人国は、被控訴人に対し、金四万円及びこれに対する平成元年
六月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
     4 被控訴人の控訴人らに対するその余の請求を棄却する。
     二 訴訟費用は、第一、二審を通じ、控訴人協同組合北見専門店会と被
控訴人との間に生じたものはこれを一〇分し、その一を同控訴人の、その余を被控
訴人の各負担とし、その余の控訴人らと被控訴人との間に生じたものはそれぞれこ
れを一五分し、その一をそれぞれ右控訴人らの、その余をそれぞれ被控訴人の各負
担とする。
     三 この判決は、被控訴人勝訴部分に限り、仮に執行することができ
る。
         事    実
 一 当事者の求めた裁判
 (平成五年(ネ)第一九〇号事件)
 1 控訴人国
 (一) 原判決中控訴人国敗訴部分を取り消す。
 (二) 被控訴人の控訴人国に対する請求を棄却する。
 (三) 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
 2 被控訴人
 (一) 本件控訴を棄却する。
 (二) 控訴費用は控訴人国の負担とする。
 (平成五年(ネ)第二〇九号事件)
 1 控訴人協同組合北見専門店会、同A
 (一) 原判決中右控訴人両名敗訴部分を取り消す。
 (二) 被控訴人の右控訴人両名に対する請求を棄却する。
 (三) 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
 2 被控訴人
 (一) 本件控訴をいずれも棄却する。
 (二) 控訴費用は右控訴人両名の負担とする。
 二 当事者の主張
 次のとおり付加、訂正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを
引用する。
 1 原判決二枚目表九行目の「は、」の次に「組合員の取扱品の共同販売・共同
購買・共同保管、」を、同裏二行目の「クレジットカード」の次に「(名称・Bカ
ード)」を、同七枚目表五行目の「残額」の前に「将来の利息を含む」をそれぞれ
加え、同裏八行目の「原告や」から一〇行目末尾までを「本件公正証書を作成する
に際し、被控訴人に対して公正証書を作成する旨の説明をせず、被控訴人との間に
有効な代理人選任依頼契約もないのに、被控訴人の代理人を選任して本件公正証書
を作成させた。」と改める。
 2 同九枚目裏一〇行目の「被告A」の前及び同一一枚目裏七行目の「Cは、」
の次にそれぞれ「控訴人組合は、いわゆるクレジット業務を推進し、Bカードを発
行して、クレジットカードによるショッピングサービス(総合割賦購入あっせん業
務)及び極めて高利のキャッシングサービス(貸金業務)を営んでいることは、北
見地方に居住している者には公知の事実であり、」を、同一〇枚目表二行目末尾に
「なお、控訴人Aは、昭和六〇年ころ、準消費貸借契約公正証書を継続的に作成す
るための定型委任状につき控訴人組合から相談を受け、Cと相談して右委任状の文
言を定めた。」をそれぞれ加え、同裏五行目の「有する」を「負う」と改め、同一
一枚目裏七行目末尾に「、昭和六〇年ころ、」を、同一二枚目表一〇行目の「受け
たため、」の次に「控訴人組合を被告として、」をそれぞれ加え、末行の各「当
庁」を「釧路地方裁判所」とそれぞれ改め、同裏三行目末尾に「なお、控訴人組合
は、右請求異議事件について約一年間の審理を経た後の平成元年四月一八日、被控
訴人の請求を認諾した。」を、同一三枚目表六行目の「慰謝料」の前に「苦痛を償
うべき」をそれぞれ加える。
 3 同一六枚目表二行目の次に行を改め「準消費貸借契約公正証書を作成するに
当たり、原債務をどの程度まで証書に表示すべきかについては定説がなく、一般的
にいえば、数口の債務を一口にまとめて消費貸借の目的とした場合には、一個の準
消費貸借契約上の債務が成立するだけであるから、原債務を遂一表示する必要はな
く、公正証書における請求権の表示としては、一定金額の記載のほか、請求権の発
生原因である準消費貸借契約の同一性を他と識別可能な程度に特定しうる事項が記
載されていれば足りるというべきであって、準消費貸借契約の同一性を特定するた
めには、契約の締結年月日、原債務の合計金額のほかに代表的な原債務の種類を表
示すれば十分であり、この場合、原債務の種類の表示に誤りがあっても、それが重
大かつ本質的な誤りでないときは、請求権の同一性は害されないものと解するのが
相当である。したがつて、本件公正証書の請求権の表示が同一性を欠くとまではい
えない。」を加え、向裏五行目の「せしむべき」を「させる」と改める。
 4 同一八枚目表一行目の次に行を改め「また、法律解釈につき異なる見解が対
立し、実務上の取扱いも分かれていて、そのいずれについても相当の根拠が認めら
れる場合に、公務員がその一方の見解を正当と解しこれに立脚して公務を執行した
ときは、のちにその執行が違法と判断されたからといつて、ただちに公務員に過失
があったものとすることは相当ではないとされているところ、Cが本件公正証書を
作成した当時はもとより、現在においてさえ、割賦販売法三〇条の三の規制が準消
費貸借契約にも適用されるかについては議論がされており、肯定説、否定説、いず
れの見解が相当かについて確立した判例があったとは解されないから、否定説に従
ったCに過失はなかったというべきである。」を加え、一〇行目の「(1)」を削
り、同一九枚目表七行目の「ある」を「あり、また、割賦販売法三〇条の三の規制
が準消費貸借契約にも適用されるかについて、否定説に従ったCに過失のなかった
ことは、前記6(三)(原判決引用)で述べたとおりである」と改める。
 5 同一九枚目表八行目の次に行を改め次のとおり加える。
 「仮に、被控訴人に本件公正証書作成を嘱託する意思がなかったとすれば、被控
訴人主張の請求異議訴訟については、被控訴人に公正証書作成嘱託の意思がなかっ
たという全部無効事由についての審理、判断を行えば、割賦販売法違反や利息制限
法違反の一部無効事由についての審理、判断を行うまでもなく、右訴訟は全部認容
されて終了したはずであるから、被控訴人が損害として主張する訴訟費用・弁護士
費用のうち、割賦販売法違反や利息制限法違反の一部無効事由についての審理、判
断に要した部分は存在しなかったというべきである。さらに、もともと訴訟費用
は、当該訴訟における訴訟費用負担の裁判ないし訴訟費用額確定決定に基づいて償
還されるべきものであり、別訴で損害賠償請求をすることはできないものとされて
いる。したがって、仮に、Cに割賦販売法違反や利息制限法違反を看過した点に過
失があったとしても、その過失と右訴訟に要した訴訟費用・弁護士費用相当額の損
害との間には、因果関係がないというべきである。」
 6 同四三枚目表二行目及び同四四枚目表一行目の各「分割回数」の次に「(月
賦)」をそれぞれ加える。
 三 証拠関係(省略)
         理    由
 一 当裁判所の認定及び判断は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由
説示のとおりであるから、これを引用する。
 1 原判決二〇枚目裏四行目の「乙」の前に「甲第三号証、」を加え、七行目の
括弧書内部分を「乙ロ第三号証、原審における被控訴人本人尋問の結果。被控訴人
と控訴人組合及び同Aとの間では争いがない。」と、末行の「第一、四、五」を
「第一、二、四、五、一〇」とそれぞれ改め、同二一枚目表五行目の「うかがわれ
るが、」の次に「右申込書の連帯保証人欄の被控訴人名下の印影が、右(二)の契
約書における印影と異なり、申込人であるDの印影と同一と思われること(乙ロ第
三、五号証)及び乙ロ第一、二号証の各記載内容に照らすと、」を加え、同二二枚
目表二行目の「金額等が既に記載された本件」を「控訴人AをD、E及び被控訴人
の各代理人として請求原因2(原判決引用)の内容の公正証書作成を委嘱する旨記
載された」と改め、三行目の「確認書」の前に「右債務額及び支払方法の記載され
た」を、八行目の「Fは、」の次に「右担当者から、」をそれぞれ加え、九行目の
「言われたと証言しており」を「言われ、各連帯保証人の署名捺印を得るため右
(原判決引用)記載のある委任状を預かり、その内容を確認する機会を与えられた
ことが認められるから」と、一〇行目の「認められる」を「推認することができ
る」とそれぞれ改める。
 2 同二二枚目裏四行目の「した上、」の次に「Fから」を、一〇行目の「乙ロ
第一」の次に「、二」を、同二三枚目裏七行目の「本件公正証書」の前に「債権を
有するとして、」をそれぞれ加え、八行目の「六、七、一〇号証の一、二、一一」
を「一三」と、末行の「事務員」を「事務長」と、同二四枚目裏六行目の「被告組
合による立替金債権か又は譲受債権」を「昭和六二年三月二四日現在における控訴
人組合の立替金債権ないし譲受債権の総額」とそれぞれ改め、八行目末尾に「しか
し、原債務のうちBカード利用による貸金債務及び遅延損害金は、右に表示された
債務との間に同一性を欠くことは明らかである。」を加え、九行目の「利息制限
法」から同行末尾までを「債権額に関して、前記1(八)(原判決引用)のとお
り、既払分について利息制限法違反部分の元本充当計算を行わず、また、将来分に
ついて同法に違反する重利を付した部分は、違法であり効力を生じない。」と、一
〇行目の「割賦販売法に関しては」を「さらに債権額に関して、控訴人組合は商法
上の商人には当たらないものの、付随的に営む割賦購入あっせん業務の面では商人
性を有するから、割賦販売法三〇条の三により、」とそれぞれ改め、末行の「わた
り」の次に「かつ」を加え、同二五枚目表一行目の括弧書部分を削る。
 3 同二五枚目表八行目冒頭から同裏五行目末尾までを次のとおり改める。
 「1 前示(原判決引用)のとおり、本件公正証書の被控訴人に関する部分は控
訴人Aが被控訴人の代理人として公証人に嘱託して作成されたものであるところ、
被控訴人名義の控訴人Aを代理人として本件公正証書の作成を委嘱する旨の委任状
は偽造によるものであるから、右作成嘱託は無効というべきであるが、控訴人組合
担当者Gは、あらかじめ右委任事項を記載した委任状に、Fを通じa町に居住する
同人の舅である被控訴人の署名捺印を求めるに当たり、Fに対し、被控訴人本人か
ら右委任状に作成名義人として署名捺印をしてもらった上、被控訴人の印鑑登録証
明書を添付してもらうよう指示していたところ、Fからそれらの提出があり、被控
訴人は既にマイカーローン分についても連帯保証しており、当時控訴人組合におい
て右委任状が偽造されたことを疑うべき相当の事情があったことを認めるに足りる
証拠もないことからすれば、控訴人組合が右委任状を有効なものと信じ、右委任事
項に従い控訴人Aを被控訴人の代理人として本件公正証書の作成嘱託をし、これに
基づき強制執行をしたことに過失があったとはいえない。また、本件公正証書の表
示された債権と現実の債権との同一性に問題があるとしても、そのこと自体による
不利益は債権者である控訴人組合に帰するものであるから、被控訴人に対する関係
で不法行為が成立する余地はない。」
 4 同二五枚目裏七行目の「である」の次に「上、昭和六二年三月には弁護士今
瞭美から請求原因6(二)(2)(原判決引用)のとおり警告を受けていた(当事
者間に争いがない。)」を加え、同行の「いわばシステムとして」を、九行目の
「今瞭美弁護士」から一〇行目の「までもなく、」までをそれぞれ削り、同二六枚
目表四行目の「H」の次に「H(以下『H』という。)」を、同裏七行目の「考
え、」の次に「右各当事者になんらの確認もせず、」をそれぞれ加え、同二七枚目
表三行目の「一時期」を「昭和五〇年ころまでの間」と、四行目の「されていた」
を「されたことがあった」とそれぞれ改め、七行目の「により、」の次に「顧客が
支払を遅滞した場合に、」を、九行目の「に対し、」の次に「そのため控訴人組合
に常備して使用する」を、一〇行目の「被告Aは、」の次に「控訴人組合が持参し
た原稿に手を入れ、自らを債務者と連帯保証人の代理人とする」を、同裏一行目の
「それ以後、」の次に「顧客が支払を遅滞し公正証書を作成すべきものと判断した
ときには、割賦購入あっせん、貸金のいずれかを問わず、右の経緯で定型用紙とし
て印刷し事務所に常備する」を、二行目の「使用して」の次に「公正証書の作成を
嘱託して」を、三行目の「乙」の前に「甲第六、一一号証、」を、六行目の「作成
嘱託を」の次に「Cに対し」を、同二八枚目裏三行目の「記載上は」の次に「執行
認諾条項を含め」をそれぞれ加える。
 <要旨第一>5 同二八枚目裏八行目の「しかしながら」から九行目の「知ってお
り」までを「控訴人Aは、その職務上控訴人組合の業務内容を認識して
いたところ、右1(五)の事実(原判決引用)によれば、控訴人Aは、昭和六〇年
ころ控訴人組合の依頼により、Cと検討した上本件公正証書作成嘱託の際にも使用
された委任状の定型用紙の内容を定めたが、その前後の事情からすると、控訴人A
は、控訴人組合から右依頼を受けた時点で、控訴人組合から作成依頼された委任状
の定型用紙は、控訴人組合が支払を遅滞した顧客との間に準消費貸借契約を締結
し、それに基づく約定について、控訴人A及びその従業員が控訴人組合及びその顧
客のそれぞれを代理してCに債務名義となる公正証書の作成を嘱託するためのもの
であり、控訴人組合は右定型用紙の委任状を印刷して今後継続的に控訴人Aに公正
証書の作成嘱託を依頼する意向であることを認識していたものと推認することがで
きる。そして、控訴人組合の準消費貸借契約の目的となる『債権者の加盟店から買
受けた衣類等の買掛代金』で表示される原債権は、多数の顧客に対する割賦購入あ
っせんにより生じた立替金債権であるが、従前その遅滞に対し高率の損害金支払約
定がなされていた弊害を排除するために、この暫く前に割賦販売法が改正されたの
であり」と、同二九枚目表四行目の「ことは」から五行目の「以上」までを「こと
は否定できないが、前記(原判決引用)のように、控訴人Aは、控訴人組合から依
頼を受けて司法書士の立場から定型用紙の内容の確定に関与し、以後これを利用し
て多量の公正証書の作成嘱託業務を処理していたのであるから、このような場合に
は、その処理に当たっての注意義務もより高度のものが要求されるというべきであ
り」とそれぞれ改める。
 6 同二九枚目表八行目冒頭から同三〇枚目表二行目末尾までを次のとおり改め
る。
 「(四) しかし、利息制限法違反の公正証書作成を嘱託した過失についてはこ
れを認めることはできない。
 すなわち、前記定型委任状用紙及びこれに基づく公正証書には、準消費貸借の原
債務としては『債権者の加盟店から買受けた衣類等の買掛代金』と印刷されてお
り、貸金債権がこれに含まれないことは文言上明らかであるところ、控訴人組合が
前記定型委任状の作成を控訴人Aに依頼した際の具体的状況は証拠上必ずしも詳ら
かでなく、原審証人Iの証言によっても、控訴人組合ではかねて顧客に債務の遅滞
があったときは債務承認弁済契約公正証書を作成していたが、他地の専門店会やそ
の連合体で用いられていた書式を取り寄せたりして、控訴人組合の債権処理に合っ
たものを作成するということで控訴人Aに相談したという程度の事実しか認められ
ないことからして、未だ、控訴人組合が同組合の行っている貸金業務によって生じ
た債権も原債務に入れるということを明示して右依頼を行ったとまで認めること
は、右の文言からして困難である。ただ、甲第六、第七号証、弁論の全趣旨によれ
ば、控訴人組合は、定型委任状が作成された後において、本件公正証書の他にも、
この委任状を用いて訴外Jとの間で貸金債権について準消費貸借契約公正証書を作
成していることが認められることからすると、控訴人組合としては、右依頼に際し
て貸金債務についても準消費貸借の目的とする意図であったことは明らかである
が、同控訴人が、この意図を明確に説明しているのに、あるいは、説明がなくても
控訴人Aが当然のこととしてこれを認識していたにもかかわらず、同控訴人があえ
て控訴人組合の意図を覆い隠すような『買受けた衣類等の買掛代金』という明らか
に貸金債権を含まない虚偽の文言を用いたとまでは認めるべき証拠はないところで
ある。控訴人Aは、従前から職務上控訴人組合が貸金業務を行っていることを知つ
ていたことは前記(原判決引用)のとおりであるが、依頼の状況が右のようなもの
であったと認めざるをえない以上、同控訴人に、原債務には控訴人組合の行ってい
る貸金業務から生じた債権があるのではないかとか、その中に利息制限法に違反す
る利息が含まれてはいないかなどと確認する義務もないと言わざるをえないところ
である。」
 7 同三〇枚目表三行目の「右」の次に「(三)」を加え、九行目の「所属」を
「執務」と改め、同裏五行目の「し、」の次に「各代理人及び当事者になんらの確
認もせず、」を加え、同三一枚目表二行目の「被告組合」から「検討し、」までを
削り、五行目末尾に「本件公正証書も右用紙を使用して作成されたものである。」
を加え、六行目の「甲第一三号証、」を削り、末行の「いたのであり」から同裏二
行目末尾までを「おり、Bカード会員入会申込書(同号証)裏面のBカード会員規
約には、さらに具体的にそれらの契約の性質や利息ないし手数料、遅延損害金の年
率等が記載されていた。」と改め、同三二枚目表三行目の「解する」の次に「(公
証人法二六条、同法施行規則一三条一項)」を加え、四行目冒頭から一〇行目末尾
までを次のとおり改める。
 「右のとおり公証人は公証人法及び同法施行規則において、公正証書作成にあた
り作成嘱託が本人の意思に基づくものか、原因となる法律行為が有効であるかな
ど、一定の事項、範囲について審査する義務を負っているのであるが、積極的な調
査権限についての定めを置いていないこれらの規定の上からは、この審査は基本的
には形式的審査の限度に止まるべきものと解される。これは、簡易迅速に既判力を
伴わない債務名義を作成するという要請と同時に嘱託者自身が承諾している事項に
ついては、一般的に違法無効な瑕疵は少ないと考えられるし、万一違法無効な公正
証書が作成されても、その効力を排除する法的手続が存することなどの実質的理由
からも裏付けられるところである。しかし、形式的審査とはいえ、聴取した陳述を
この陳述それ自体や嘱託者から提出された関係書類のみから審査すれば足りるとい
うものではなく、前記(原判決引用)のとおり、公証人が当該嘱託に先立つ時点に
おいて職務上知った事実、事例によってはこの過程において知るべき義務のあった
事実等もこの審査における資料とすべき場合もあり、このように解することが、前
記公証人法及び同法施行規則が各規定するところを超える義務を公証人に課するこ
とになるものと解することはできない。」
 8 同三二枚目裏七行目冒頭から同三三枚目表六行目末尾までを次のとおり改め
る。
 <要旨第二>「(三) しかしながら、原審における証人Cの証言によれば、C
は、控訴人組合が割賦購入あっせんを業としていることを知っていたこ
とが認められるところ、前記五の1及び六の一の事実(原判決引用)によれば、C
は、昭和六〇年ころ控訴人Aから相談を受け、同控訴人と検討した上、本件公正証
書作成嘱託の際にも使用された委任状の定型用紙の内容を定めたが、その前後の事
情からすると、Cは、控訴人Aから右相談を受けた時点で、右委任状の定型用紙
は、控訴人組合が支払を遅滞した顧客との間に準消費貸借契約を締結し、それに基
づく約定について、控訴人A及びその従業員が控訴人組合及びその顧客のそれぞれ
を代理してCに債務名義となる公正証書の作成を嘱託するためのものであり、右委
任状の形式が確定し次第、右定型用紙の委任状を印刷し、これを使用して今後継続
的に控訴人Aに公正証書の作成嘱託を依頼し、同控訴人はCにその作成を依頼する
意向であることを認識していたものと推認することができる。ところで、準消費貸
借契約公正証書は、準消費貸借の目的となった債権が他の請求と識別できる程度に
具体的に特定して表示されることが必要であるから、Cとしては、右委任状の定型
用紙の内容を定めるに当たり、控訴人組合担当者から前記入会案内書や入会申込書
等の資料を提出させるなどして控訴人組合の顧客との取引の形態を把握する義務が
あり(なお、厳密にはこの義務自体は、個別の公正証書作成の際に求められる審査
義務の問題ではなく、公証人が公正証書作成という固有の事務を遂行するにつき、
これに関連して行う周辺業務における注意義務である。)、かつ、そのこと自体極
めて容易なことであったところ、Cが右義務を履行していたとすれば、その過程で
控訴人が割賦購入あっせん業務の内容をより明確に把握することができ、本件委任
状に記載された『債権者の加盟店から買受けた衣類等の買掛代金』に割賦販売法三
〇条の三の規制を受ける立替金が含まれているかを確認することにより、割賦販売
法に違反する公正証書が作成されることを避けることができたものというべく、こ
の点において過失を免れない。
 なお、Cは、本件公正証書の作成当時、準消費貸借契約が結ばれれば年六パーセ
ントの規制は及ばなくなると考えた旨供述する。しかしながら、強行法規違反によ
り無効な債務について準消費貸借が成立しないことは、実務上ほぼ確定的な解釈な
いし取扱いであり、右供述のような考え方が相当の根拠をもって主張されていたと
認めるに足りる的確な証拠はない。
 9 同三三枚目表七行目冒頭から同裏末行末尾までを次のとおり改める。
 「(四) 次に、利息制限法違反の公正証書作成の点であるが、前記(原判決引
用)のとおり、Cは控訴人組合の依頼による定型委任状の作成につき控訴人Aとと
もに相談にあずかって若干の意見も述べ、更に新たに作成された定型委任状に合わ
せた公正証書用紙を印刷したのであるが、控訴人組合がこの依頼に際し、同組合の
行っている貸金業務によって生じた債権も原債務に入れるということを明示して右
依頼を行ったとまで認められないことは、控訴人Aの責任判断の項で判示したとお
りである。なお、原審における証人Cの証言によると、Cは控訴人組合が貸金業務
を行っていたことは知らなかったというのであり、また右証言及び前掲控訴人A本
人尋問の結果によれば、Cは右依頼の際に控訴人組合の入会案内書や入会申込書を
見たとは認められないところ、Cは右委任状の定型用紙の内容を定めるに当たり、
控訴人組合担当者から前記入会案内書や入会申込書等の資料を提出させる等して控
訴人組合の顧客との取引の形態を把握する義務のあったことは前示のとおりである
が、控訴人組合からの定型委任状作成依頼の経緯が前記のようなものであったとし
か認めがたい以上、職務上の経験も審査の資料になる場合があるとはいえ、前記説
示の公証人の審査権限に照らし、Cにおいて、この買掛代金の中に貸金債権が含ま
れていないか否かを積極的に控訴人組合に確認する義務はないと解すべきであ
る。」
 10 同三四枚目表一行目の「右過失行為」を「右(三)の過失」と、六行目の
「当庁」を「釧路地方裁判所」と、九行目の「原告は」を「被控訴人とD及びEの
三名は」と、一〇行目の「した」を「したが、被控訴人の負担分はその三分の一の
八万三三三三円であると認められる」と、同三五枚目表七行目の「下旬」を「中
旬」と、同裏一〇行目から末行にかけての「弁護士費用等のうち五万円を損害と認
めるのが相当である。」を「弁護士に対する着手金のうち四万五〇〇〇円を右不法
行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である(被控訴人は、右訴訟にお
いて、第一次的には公正証書作成嘱託の音思がなかったと全部無効事由を主張し、
右訴訟は控訴人組合の請求認諾により終了しているが(前段は弁論の全趣旨により
認められ、後段は当事者間に争いがない。)、異議事由は同時主張を要する上、前
示のとおり(原判決引用)右事件について全部無効事由の認められることが明らか
に予測できたとはいえないことを考慮すると、着手金について右限度での因果関係
を認めるのが相当である。なお、右訴訟の貼用印紙代は、民事訴訟法一〇四条によ
り償還請求することができるから、これとは別に損害賠償として請求することはで
きない)。」と、同三六枚目表八行目の「原告が」から同裏三行目末尾までを「右
両名は、控訴人組合との共同不法行為により、被控訴人に前記弁護士に対する着手
金のうち三万円相当の損害を被らせ(なお、前記貼用印紙代については、控訴人組
合からの回収が不能とは認められないから、別途損害賠償請求し得る余地はな
い。)、かつ、過大な債権による差押えにより慰謝料額として一万円相当の精神的
苦痛を被らせたことが認められる。」と、四行目の「五万円」を「四万円」と、七
行目の「八万円」を「七万五〇〇〇円」と、八行目の各「五万円」を「四万円」と
それぞれ改める。
 一一 よって、右とその趣旨を一部異にする原判決を右のとおり変更することと
し、訴訟費用の負担について民事訴訟法九六条、八九条、九二条、九三条を適用し
て、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 宮本増 裁判官 河合治夫 裁判官 高野伸)

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応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛