弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,被控訴人補助参加人に対し,2632万3362円及びこれに
対する平成21年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求
せよ。
3訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,仙台市の住民により構成される権利能力なき社団である控訴人が,
仙台市が被控訴人補助参加人(以下「補助参加人」又は「国」という。)に納
付した平成20年度の国直轄道路事業負担金のうち,国土交通省東北地方整備
局A河川国道事務所(以下「A河川国道事務所」という。)庁舎を移転するた
めの敷地取得費用分に相当する2632万3362円(以下「本件負担金」と
いう。)は,法令上,国が地方公共団体に負担を求めることができないもので
あるから,本件負担金の支出は違法,無効であるなどと主張して,地方自治法
242条の2第1項4号本文に基づき,仙台市の長である被控訴人に対し,不
当利得返還請求又は国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として,補助参
加人に本件負担金相当額及びこれに対する本件負担金の納付後である平成2
1年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の
支払を請求するよう求めた住民訴訟である。
原判決は,控訴人の請求を棄却した。
2本件における前提事実,本件に関連する法令の定め等,争点及び争点に関す
る当事者の主張は,次のとおり改め,後記3において当審における控訴人の補
充の主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要等」
の2~5のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決2頁1行目の「争いがない事実並びに後掲証拠等により認められる
事実」を「各事実毎に掲記した証拠等によって容易に認めることができる。
証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。」と改める。
(2)原判決2頁10行目~13行目の「地方整備局組織規則・・・行うとされ
ていたものである。」を「平成21年国土交通省令第19号による改正前の地
方整備局組織規則(平成13年国土交通省令第21号)140条,別表第4
により,①α川及びβ川下流(いずれも所定区域を除く区間)の改良工事,
維持修繕その他の管理,洪水予報及び水防警報,②γ山の砂防工事に関する
調査(火山噴火対策に資するものに限る。),③宮城県δ湾沿岸の海岸保全施
設(港湾に係るものを除く。)に関する工事,④一般国道×号,×号,×号,
×号,×号及び×号の改築及び修繕工事,維持その他の管理を所掌事務とし
ていたものである。」と,同頁15行目の「築約45年」を「建築後約45年」
と,同頁17行目~18行目の「12街区①-1,①-2画地4093.0
6㎡(以下,これらの土地を「本件敷地」と総称する。)」を「12街区①-
1,①-2画地面積合計4093.06㎡(以下,この両画地を併せて「本
件敷地」という。)」と,同頁19行目の「甲3,弁論の全趣旨」を「甲3,
丙8,弁論の全趣旨」と,同頁22行目~3頁1行目の「国に納付したとこ
ろ,上記負担金には,・・・含まれていた。」を「国に納付した。他方,国は,
平成20年度に,A河川国道事務所の事務所庁舎や出張所庁舎等の移転,建
替等の費用を含む費目(営繕宿舎費)の一部として,A河川国道事務所庁舎
の移転用地である本件敷地を購入する費用の同年度分支出額5億3820万
円を支出したところ,仙台市が国に納付した上記平成20年度国直轄道路事
業負担金合計28億4545万2115円には,上記本件敷地購入費用の同
年度分支出額5億3820万円のうちの仙台市負担分2632万3362円
(本件負担金)が含まれていた。」とそれぞれ改める。
(3)原判決3頁3行目~4行目の「後記3「本件に関連する法令の定め等(本
件負担金支出の根拠規定)」のとおりであり,」を「訂正して引用する原判決
「事実及び理由」欄の「第2事案の概要等」の「3本件に関連する法令
の定め等」の(本件負担金支出の根拠規定)のとおりであり,」と,同頁4行
目~5行目の「別紙2のとおりである」を「原判決添付別紙2(以下単に「別
紙2」という。)のとおりである」とそれぞれ改めた上,別紙2(原判決22
頁~24頁)のうち,原判決22頁26行目の「別紙3のとおりである。」を
「原判決添付別紙3(以下単に「別紙3」という。)のとおりである。」と,
23頁17行目の「別紙4のとおり,」を「原判決添付別紙4(以下単に「別
紙4」という。)のとおり,」とそれぞれ改める。
(4)原判決3頁5行目の「A河川道路事務所は,河川事業及び道路事業に関す
る」を「A河川国道事務所は,道路事業のほか河川事業等に関する」と改め
る。
(5)原判決3頁10行目の「本件負担金の支出について住民監査請求をした。」
を「本件負担金のうち2600万円について国に対して支払を請求するなど
の適切な措置をとることを求める住民監査請求をした。」と,同頁15行目の
「顕著な事実」を「記録上明らかである。」とそれぞれ改める。
(6)原判決3頁18行目~19行目の「平成22年法律第20号」を「国の直
轄事業に係る都道府県等の維持管理負担金の廃止等のための関係法律の整備
に関する法律(平成22年法律第20号。以下「整備法」という。)」と,同
頁21行目の「同一の規定」を「上記各改正前の規定」と,同頁22行目~
23行目の「費用と負担割合について規定している」を「費用の種別毎に国
と指定市の負担割合について定めている」と,同頁25行目の「道路法50
条1項,2項及び同法施行令1条の6第1項」を「道路法17条5項,同法
施行令1条の6第1項により読み替え後の同法50条1,2項」と,4頁6
行目の「道路法13条1項にいう指定区間(以下「指定区間」という。)内の」
を「道路法13条1項にいう政令で指定する区間(以下「指定区間」という。)
内の」と,同頁7行目及び12行目の「維持,修繕等」をいずれも「維持,
修繕その他の管理に要する費用」と,同頁10行目~11行目の「当該都道
府県又は指定市」を「当該指定市」と,5頁8行目~9行目の「事業に要す
る費用」を「事業で政令で定めるものに要する費用」とそれぞれ改める。
(7)原判決5頁15行目の「関する経費等」を「要する経費等」と,同頁19
行目~20行目の「同法12条1項,同法17条の2第1項に定める法律又
は政令に当たるものである。」を「同法12条1項又は同法17条の2第1項
所定の「法律又は政令」に当たるものである。」とそれぞれ改める。
(8)原判決6頁3行目の「該当しないことから,」を「該当しないため,本件負
担金の支出が」と改める。
(9)原判決6頁8行目の「本件負担金が本件各根拠規定の定める費用に」を「本
件負担金の支出が本件各根拠規定の定める費用の支出に」と,同頁14行目
の「実施するため人件費,」を「実施するために直接に必要とする人件費,」
と,同頁17行目の「しかるに,」を「しかるところ,」と,同頁20行目~
21行目の「本件負担金は,本件各根拠規定の定める費用には」を「本件負
担金の支出は本件各根拠規定の定める費用の支出には」と,同頁26行目の
「都道府県等が行った国道の新設等に関する国庫補助事業では,」を「都道府
県等が国道の新設や改築を行った場合には,道路法50条1項によりその費
用の2分の1を国が負担することとなるが,この国の負担分は補助金の形で
都道府県等の申請に応じて支払われるものとされているところ,かかる国庫
補助事業では,」と,7頁3行目の「庁舎については除外されている」を「庁
舎については補助金の対象から除外されている」とそれぞれ改め,同頁4行
目の「A河川国道事務所」の次に「の庁舎」を加える。
(10)原判決8頁6行目の「しかるに,」を「しかるところ,」と,同頁25行目
の「負担すべき部分を」を「負担すべき部分の」と,9頁4行目の「算出し
(6.7%),」を「6.7%と算出し,」と,同頁7行目の「上記のような」
を「上記のように」とそれぞれ改める。
3当審における控訴人の補充の主張
(1)本件各根拠規定のいう国道又は国道附属施設等の新設,改築及び維持,修
繕その他の管理に要する費用とは,具体的に実施される事業,業務,事務に
要する費用を指すというのが通常の文理解釈であり,これに事業,業務,事
務を行うための恒常的な組織の設置,維持,運営に要する費用まで含まれる
とする原判決の解釈は,通常の用語法に反するものである。
(2)原判決は,国直轄事業負担金の支出を地方公共団体に負担させるためには
支出の目的,効果と受益との関連性,費用負担の方法,金額の相当性等の見
地から当該支出が不合理と認められないことを要するという判断基準を示し
ている。しかし,地方財政法12条1項が国の事務経費を地方公共団体に負
担させることを原則的に禁止した趣旨からすれば,その例外を法令によって
定める場合には地方公共団体に負担させる旨が明文で定められていることを
要するところ,本件各根拠規定にはこのような明文はないのであるから,原
判決のような判断基準により費用負担の範囲を拡大するのは同条項の趣旨に
反し,不合理である。
(3)原判決は,国庫補助事業により国が地方公共団体に対して負担する費用の
対象は,国道又は国道附属施設等の新設又は改築のみで,いわば限定的なイ
ンフラ整備等を目的とする事業に関するものであるとした上,国直轄道路事
業とは対象を異にするから,両制度間で費用負担の不均衡があったとしても,
違法ということはできないとする。しかし,このような原判決の論理は,道
路法50条1,2項という同じ条文中の「費用」という文言を分担金の受領
主体が国か地方公共団体かによって別個に解釈するものであり,破綻してい
る。
(4)国は,全国知事会の申合せ(甲7)を受けて,平成21年度分以降の国直
轄道路事業負担金から本件負担金などの営繕宿舎費を除いて請求していると
ころ,このことは従前の運用が誤りであったことを国(補助参加人)が暗黙
裏に自認したものに他ならない。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,本件負担金の支出は地方財政法12条1項や同法4条の5に違
反するものではなく,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,
次のとおり改め,後記2において当審における控訴人の補充の主張に対する判
断を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の
とおりであるから,これを引用する。
(1)原判決10頁10行目の「本件負担金が本件各根拠規定の定める費用に」
を「本件負担金の支出が本件各根拠規定の定める費用の支出に」と,同頁1
2行目~13行目の「本件負担金は,・・・本件各根拠規定の定める費用には」
を「本件負担金の支出は本件各根拠規定の定める費用の支出には」と,11
頁9行目の「本件各根拠規定には,上記文言のほかに」を「本件各根拠規定
は,上記のとおり,単に,建設,改築,維持管理ないし道路標識等の設定に
関する事業に「要する費用」と規定するにとどまり,当該文言のほかに」と,
同頁22行目~26行目の「なお,・・・行うものとしている。」を「なお,
ここにいう道路管理者について,同法12条は,国道の新設又は改築は原則
として国土交通大臣が行う旨を,また,同法13条は,国道の修繕,維持,
災害復旧その他の管理は,指定区間内については国土交通大臣が行い,その
他の部分については都道府県がその路線の当該都道府県の区域内に存する部
分について行う旨を定めるが,同法17条1項は,上記にいうその他の部分
のうち,指定市の区域内に存する部分の管理は当該指定市が行うものとして
いる。」と,12頁2行目~3行目の「一定の負担割合を定めたもの」を「一
律の基準を定めたもの」とそれぞれ改める。
(2)原判決12頁10行目~11行目の「通知することとされているものの,」
の次に「地方公共団体が負担金の予定額に不服があるときは,総務大臣を経
由して,内閣に対して意見を申し出ることができるとされているにとどま
り,」を加え,同頁23行目~24行目の「地方公共団体に対して生じること
が想定される受益」を「地方公共団体に生ずるものと想定される受益」と改
める。
(3)原判決13頁4行目の「本件根拠法令」を「本件各根拠規定」と改め,同
頁9行目~10行目の「A河川国道事務所の」の次に「庁舎」を加え,同頁
15行目~17行目の「国庫補助事業により・・・改築のみで(道路法56
条,」を「国庫補助事業により国が国道又は国道附属施設の新設,改築又は維
持管理に関して地方公共団体に対して補助する費用の対象は,道路法13条
2項所定の政令の定めのない場合に限って指定区間内の国道に係る維持,修
繕その他の管理の費用も対象となるものの,それ以外は,都道府県等が国道
の新設又は改築を行う場合の費用,本件各根拠規定により国が費用負担をし
ないものとされている指定区間外の国道の修繕に要する費用及び指定区間外
の国道附属施設等の建設(新設)及び改築に要する費用とされていて(道路
法50条1,2項,56条,」と改める。
(4)原判決13頁24行目の「前記(1)で示した」を「訂正して引用した原判決
「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」1(1)(以下「上記(1)」と
いう。)で示した」と,同頁26行目~14頁1行目の「国道を」を「国道の」
と,14頁2行目~3行目の「当該国道の安全かつ円滑な往来可能な状態を」
を「当該国道につき安全かつ円滑な往来が可能となる状態を」とそれぞれ改
めた上,同頁6行目冒頭~11行目末尾を次のとおり改める。
「次いで,A河川国道事務所の所掌事務は,訂正して引用した原判決「事
実及び理由」欄の「第2事案の概要等」の2(2)アのとおりであって,そ
のうちでも対象河川の改修,維持管理及び対象国道の道路整備,維持管理
等が主たる業務であるところ,対象国道のうち×号,×号及び×号の各区
間の一部は仙台市の市域内にある。(乙1,弁論の全趣旨)」
(5)原判決14頁13行目の「現場監督,」の次に「共同溝・電線共同溝工事,」
を加え,同頁14行目~15行目の「道路パトロールによって」を「道路パ
トロールによる」と改め,同頁17行目の「-被告の主張に対して原告が明
らかに争わない。」を削り,同頁26行目~15頁1行目の「A河川道路事務
所は,国道の新設,改築のみでなく,」を「A河川国道事務所の庁舎は,」と,
15頁2行目の「拠点となる」を「拠点ともなる」と,同頁2行目~3行目
の「本件おいて,」を「本件において,」とそれぞれ改め,同頁3行目及び同
頁4行目~5行目の各「A河川国道事務所」の次にそれぞれ「の庁舎」を加
え,同頁5行目の「費用の支出は,」を「費用の支出が,」と改める。
(6)原判決15頁8行目冒頭~16行目末尾を次のとおり改める。
「イもっとも,A河川国道事務所の庁舎を移転するための費用として,国
が所有権を取得するに至る本件敷地の購入費用(その一部)まで仙台市
に負担させることが不合理といえないかどうかについては,更に検討す
る必要がある。
まず,先にみたA河川国道事務所の業務の広範性及び継続性に加え,
その業務のうち,特に緊急災害時における国道又は国道附属施設等の維
持,管理(復旧作業及びその前提となる情報収集を含む。)に関する業務
が住民の生命,身体,財産等に直接的に関係することに照らして,A河
川国道事務所における事務の停滞はできる限り回避する必要があり,ひ
いて当該業務を行うための拠点となる庁舎の敷地の継続的利用も確保さ
れなければならないところ,かかる敷地の継続的利用の必要性や,法的
に権利関係を安定させる必要性等に鑑みれば,国においてA河川国道事
務所の庁舎移転用地として本件敷地の所有権を取得することが不合理と
いうことはできない。」
(7)原判決15頁17行目の「賃貸した場合」を「賃借した場合」と,同頁1
8行目~19行目の「賃貸期間」を「賃借期間」と,同頁21行目~23行
目の「A河川国道事務所が旧敷地上に・・・これを覆すに足りる事実,証拠
はない。)」を「A河川国道事務所の旧庁舎がその敷地上に約45年間設置さ
れていたこと(いずれの事実も弁論の全趣旨によって認めることができる。)」
とそれぞれ改め,同頁23行目~24行目の「A河川国道事務所」の次に「の
庁舎」を,同頁25行目の「高いといえるから,」の次に「国において」をそ
れぞれ加え,16頁1行目冒頭~4行目末尾を次のとおり改める。
「そして,このように,国がA河川国道事務所の庁舎移転用地として本件
敷地を購入し,その所有権を取得することが不合理とはいえないことに加
え,その理由である庁舎敷地の継続的利用は,仙台市を含む地方公共団体
ないしその住民の受益に直接関わるものでもあること等に鑑みれば,仙台
市が,A河川国道事務所の庁舎の所在地を移転するための費用として,本
件敷地の購入費用の一部を負担することが,支出の目的,効果と仙台市に
対して生じることが想定される受益との関連性という見地から,それ自体
として直ちに不合理であるということはできない。」
(8)原判決16頁5行目~6行目の「前記前提事実(2)エ」を「訂正して引用し
た原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要等」の「2前提事実」
(2)エ」と,同頁24行目~25行目の「確かに簡便かつ明瞭であるといえる
が,」を「一見簡便かつ明瞭のように見えるが,」とそれぞれ改める。
(9)原判決18頁1行目の「平成22年法律第20号」を「整備法(平成22
年4月1日施行)」と,同頁3行目~8行目の「認められるところ,・・・と
はいえない。」を「認められるものの,整備法には,上記改正後の道路法50
条2項その他上記改正に係る本件各根拠規定について,本件負担金の決定な
いし納付時に遡って適用する旨の規定はないばかりか,かえって,整備法に
よる改正後の道路法,共同溝の整備等に関する特別措置法及び電線共同溝の
整備等に関する特別措置法の適用は,平成22年度以降の年度の予算に係る
国の負担に限られている上,さらに同年度以降の年度に支出され,又は支出
すべきものであっても,平成21年度以前の年度における事務又は事業の実
施によるものや,同年度以前の国庫債務負担行為に基づくものについては,
なお従前の例によるとされていること(整備法附則2条柱書,1号ロ,2号
ロ,ハ,3号ロ)に照らすと,整備法により上記改正がなされたからといっ
て,当該改正前においても本件各根拠規定が改正後と同様に解釈されており,
上記改正が単にこの解釈を明文化したにすぎないなどということはできない
から,上記改正が行われたことをもって,本件負担金の支出が法令上の根拠
を欠くものであったということはできない。」とそれぞれ改める。
(10)原判決18頁19行目の「上記1で」を「訂正して引用した原判決「事実
及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1において」と改める。
2当審における控訴人の補充の主張に対する判断
(1)控訴人は,本件各根拠規定のいう国道又は国道附属施設等の新設,改築及
び維持,修繕その他の管理に要する費用とは,具体的に実施される事業,業
務,事務に要する費用を指すというのが通常の文理解釈であり,これに事業,
業務,事務を行うための恒常的な組織の設置,維持,運営に要する費用まで
含まれるとする原判決の解釈は,通常の用語法に反するものであると主張す
る。
しかしながら,訂正して引用した原判決「事実及び理由」欄の「第3当
裁判所の判断」の1(1)~(3)で説示したとおり,国道や国道附属施設等の建
設,改築や維持管理に関する業務や道路標識等の設定に関する事業を継続的
かつ安定的に行うためには,そのための拠点となる物的施設が必要となるか
ら,かかる施設の取得に要する費用も,上記業務や事業に「要する費用」に
該当するというべきであって,控訴人が主張するように業務や事業等に直接
に要する費用に限定して解釈すべき根拠はなく,原判決のような解釈が通常
の用語法に反するとはいえないのであって,控訴人の主張は理由がない。
(2)控訴人は,原判決が,費用の支出の目的,効果とこれによって地方公共団
体に生じる受益との関連性並びに費用負担の方法及び金額の相当性の見地か
らみて,当該支出が合理的と認められるか否かを基準として本件各根拠規定
に該当する費用の支出か否かを判断した点につき,地方財政法12条1項の
例外を定める場合にはその旨の明文を要し,かかる明文がない以上,上記判
断基準により費用負担の範囲を拡大させることは同条項の趣旨に反し,不合
理であると主張する。
しかしながら,訂正して引用した原判決「事実及び理由」欄の「第3当
裁判所の判断」の1(1)のとおり,本件各根拠規定の文言からは費用負担が認
められる範囲(外延)が必ずしも明確でないために,本件負担金が本件各根
拠規定の定める費用に含まれるか否かについては,本件各根拠規定の文言の
みによってこれを決することができず,地方財政法12条1項の規定の趣旨
や国の直轄事業負担金の制度趣旨に基づいてこれを判断すべきであり,この
見地から上記判断基準を採用することが相当であるものというべきであって,
原判決もかかる判断をしたものである。
控訴人の主張は,畢竟,本件各根拠規定によっては本件負担金を仙台市に
負担させることができないという解釈を前提として原判決を非難するものに
すぎず,原判決を正解したものではないから,到底採用することができない。
(3)控訴人は,原判決が道路法50条1,2項の「費用」という同一文言を分
担金の受領主体が国か地方公共団体かによって別個に解釈しているなどとし
て,原判決の論理は破綻していると主張する。
しかし,訂正して引用した原判決「事実及び理由」欄の「第3当裁判所
の判断」の1(2)イのとおり,国直轄道路事業に係る負担金については,整備
法による道路法の改正前は,国道の新設又は改築に要する費用だけでなく,
国道の維持,修繕その他の管理に要する費用も一般的に含まれていたのに対
し,国道に関する国の補助金の対象は,主にその新設又は改築に要する費用
や指定区間外の国道の修繕に要する費用に限られていたのであって,対象と
なる事業の範囲が同一でない以上,これに「要する費用」の範囲が異なった
としても,何ら異とするに足りるものではない。控訴人の主張は,採用する
ことができない。
(4)控訴人は,補助参加人が平成21年度分以降の国直轄道路事業負担金から
営繕宿舎費を除いて請求していることは,従前の運用が誤りであったことを
暗黙裏に自認したものであると主張する。
しかるところ,証拠(甲7~10)及び弁論の全趣旨を総合すると,平成
21年7月14日の全国知事会で,国庫補助事業では恒久的な庁舎等に係る
建設費は認められていないのに,国直轄事業負担金にはこのような経費も含
まれていることにつき,国直轄事業負担金の対象範囲も国庫補助事業と同様
とし,直轄事業の実施に直接要する経費とすることを基本的な考え方として
見直すべきであるとした上で,平成21年度分から上記のような建設費等は
負担金の対象範囲から除外し,平成22年度分からは維持管理に要する費用
に係る負担金の制度自体も廃止するよう求め,国がこれに対応しない限り,
平成21年度分の負担金の支払はできない旨の申合せをしたこと,これに応
えた見直しの一環として,平成21年度以降は,国直轄事業負担金につき,
恒久的な事務所の建設費等は除外して請求する運用に改められ,さらに整備
法により道路法など本件各根拠規定の改正が行われたことが認められる。
しかしながら,全国知事会の上記申合せは,必ずしも恒久的な庁舎の建設
費用等を国直轄事業負担金の対象範囲とすることが違法であると主張するも
のではなく,むしろ,国と地方公共団体の役割の見直しといった政策提言の
一環として行われたものとうかがわれる上,訂正して引用した原判決「事実
及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1(4)のとおり,整備法は,改正
の効果が既往に遡らない旨を明定しているのであるから,上記のような運用
の変更や改正があったことをもって,従前の運用が誤りであったことを国が
暗黙裏に認めたなどということはできず,控訴人の主張は理由がない。
3以上によれば,本件負担金の支出が法令上の根拠を欠き,又は地方財政法4
条の5に違反して,違法,無効であるとはいえないから,仙台市は,補助参加
人に対し,本件負担金の全部又は一部につき,不当利得返還請求権及び国家賠
償法1条1項に基づく損害賠償請求権を有するものではない。したがって,仙
台市がこのような請求権を有することを前提に,被控訴人に対し,これに基づ
く支払を補助参加人に請求するよう求める控訴人の本件請求は理由がない。
よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却するこ
ととして,主文のとおり判決する。
仙台高等裁判所第3民事部
裁判長裁判官石原直樹
裁判官瀬戸口壯夫
裁判官中島朋宏

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