弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
原判決を破棄する。
被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
理由
上告代理人片岡義広ほかの上告受理申立て理由について
1原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)A社(以下「A社」という。)は,平成9年3月31日,上告人との間
で,B社が上告人に対して負担する一切の債務の担保として,C社(以下「C社」
という。)との間の継続的取引契約に基づく次のア及びイの債権(以下「本件目的
債権」という。)を上告人に譲渡する旨の債権譲渡担保契約(以下「本件契約」と
いう。)を締結した。なお,本件契約においては,約定の担保権実行の事由が生じ
たことに基づき,上告人がC社に対して担保権実行の通知をするまでは,A社がそ
の計算においてC社から本件目的債権につき弁済を受けることができるものとされ
ていた。
アA社がC社に対して平成9年3月31日現在有する商品売掛代金債権及び商
品販売受託手数料債権
イA社がC社に対して平成9年3月31日から1年の間に取得する商品売掛代
金債権及び商品販売受託手数料債権
(2)A社は,平成9年6月5日,C社に対し,同月4日付けの確定日付のある
内容証明郵便をもって,本件契約に係る債権譲渡担保の設定を通知した。
(3)A社が国税を滞納したため,A社に対する国税の滞納処分として,平成1
0年4月3日付け及び同月6日付けの債権差押通知書がC社に送達され,本件目的
債権のうち同年3月11日から同月20日までの間に発生したもの及び同月21日
から同月30日までの間に発生したもの(以下,これらを併せて「本件債権」とい
う。)が差し押さえられた。
(4)被上告人は,平成10年4月10日,A社が同日現在滞納していた国税の
うち本件債権の発生前に法定納期限等を徒過していた第1審判決添付別紙租税債権
目録1番号1ないし3記載の国税(これらの国税の法定納期限等は,同9年9月3
0日ないし同10年1月5日である。以下「本件国税」という。)について,国税
徴収法24条1項の規定により譲渡担保財産である本件債権から徴収するため,上
告人に対し,同条2項所定の告知をした。
(5)C社は,平成10年5月26日,本件債権について,債権者を確知するこ
とができないことを理由に,第1審判決添付別紙供託目録記載のとおり,被供託者
をA社又は上告人として合計2億8212万6823円を供託した。
(6)上告人は,平成10年5月27日,被上告人に対し,上告人が本件債権を
譲渡担保財産としたのは本件国税の法定納期限等以前である旨を述べた書面を提出
し,その提出に当たっては,上記(2)の内容証明郵便の原本を呈示するとともにそ
の写しを提出した。
(7)被上告人は,平成13年11月22日,国税徴収法24条3項の規定に基
づき,譲渡担保権者である上告人を第二次納税義務者とみなし,さいたま地方法務
局大宮支局供託官に債権差押通知書を送達して,上記(5)の供託金に係る還付請求
権を差し押さえた(以下,この差押えを「本件差押え」という。)。
2国税徴収法24条6項は,「譲渡担保権者が国税の法定納期限等以前に譲渡
担保財産となっている事実を,その財産の売却決定の前日までに,証明した場合」
等には,譲渡担保権者の物的納税責任について定めた同条1項の規定は適用しない
旨規定している。
本件は,上告人が,本件債権は本件国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産とな
っていたものであり,上告人は同条6項所定の証明をしたから,本件につき同条1
項の規定を適用することはできず,本件差押えは違法であるとして,その取消しを
求めている事案である。
3原審は,前記事実関係の下において,要旨次のとおり説示し,本件差押えに
違法はないと判断した。
(1)滞納者と譲渡担保権者が,既に発生した債権及び将来発生すべき債権を一
括して譲渡担保の目的とするいわゆる集合債権譲渡担保契約を締結し,その旨を第
三債務者に対し確定日付のある証書により通知して対抗要件を具備した場合であっ
ても,滞納者の滞納国税の法定納期限等が到来した後に発生した債権については,
当該債権の発生時に滞納者から譲渡担保権者に移転するものであるから,当該債権
はその発生時に譲渡担保財産となったものと解すべきである。
(2)本件債権は,本件国税の法定納期限等が到来した後に発生したものであっ
て,本件国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となっていたものではないから,
本件において,上告人が国税徴収法24条6項所定の証明をしたとはいえず,本件
差押えに違法はない。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
(1)将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約は,譲渡の目的とされる債
権が特定されている限り,原則として有効なものである(最高裁平成9年(オ)第
219号同11年1月29日第三小法廷判決・民集53巻1号151頁参照)。ま
た,将来発生すべき債権を目的とする譲渡担保契約が締結された場合には,債権譲
渡の効果の発生を留保する特段の付款のない限り,譲渡担保の目的とされた債権は
譲渡担保契約によって譲渡担保設定者から譲渡担保権者に確定的に譲渡されている
のであり,この場合において,譲渡担保の目的とされた債権が将来発生したときに
は,譲渡担保権者は,譲渡担保設定者の特段の行為を要することなく当然に,当該
債権を担保の目的で取得することができるものである。そして,前記の場合におい
て,譲渡担保契約に係る債権の譲渡については,指名債権譲渡の対抗要件(民法4
67条2項)の方法により第三者に対する対抗要件を具備することができるのであ
る(最高裁平成12年(受)第194号同13年11月22日第一小法廷判決・民
集55巻6号1056頁参照)。
以上のような将来発生すべき債権に係る譲渡担保権者の法的地位にかんがみれ
ば,国税徴収法24条6項の解釈においては,国税の法定納期限等以前に,将来発
生すべき債権を目的として,債権譲渡の効果の発生を留保する特段の付款のない譲
渡担保契約が締結され,その債権譲渡につき第三者に対する対抗要件が具備されて
いた場合には,譲渡担保の目的とされた債権が国税の法定納期限等の到来後に発生
したとしても,当該債権は「国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となってい
る」ものに該当すると解するのが相当である。
(2)前記事実関係によれば,本件契約においては,約定の担保権実行の事由が
生じたことに基づき,上告人がC社に対して担保権実行の通知をするまでは,A社
がその計算においてC社から本件目的債権につき弁済を受けることができるものと
されていたというのであるが,これをもって,本件契約による債権譲渡の効果の発
生を留保する付款であると解することはできない(前掲平成13年11月22日第
一小法廷判決参照)。そして,前記事実関係によれば,上告人は,前記1(6)のと
おり,本件差押えに先立ち,本件債権が本件国税の法定納期限等以前に譲渡担保財
産となっている事実を内容証明郵便によって証明したものということができるか
ら,本件について国税徴収法24条1項の規定を適用することはできないというべ
きである。
そうすると,被上告人が同条3項の規定に基づき上告人を第二次納税義務者とみ
なして行った本件差押えは違法というべきである。
5以上のとおりであるから,本件差押えに違法はないとした原審の判断には,
判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決
は破棄を免れない。そして,第1審判決が本件差押えの取消しを求める上告人の請
求を認容したのは正当であるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官
才口千晴)

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