弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人浜田博の上告理由について
 原審は、本件事故現場附近の道路は南北に通ずる直線道路であるが、直線部分は
約一〇〇メートルで(原判決引用の第一審判決添付図面(縮尺五〇〇分の一のもの)
によれば、約一五〇メートルがほぼ直線状となつており、本件事故車が転落した地
点はそのほぼ中間点である。)、その南方及び北方はいずれも西側にゆるやかなカ
ーブをしており、右カーブの部分にはガードレールが設置されていても、直線部分
にはその設置がなく、路面がいわゆるかまぼこ型の構造をしていて、特に道路東側
のa川に沿つた路肩への傾斜が大きく、薄暮時ないし夜間における降雨時には、路
面を打つ水飛沫やa川から立ち上るもやのため、道路とa川との境が定かでなく、
その見分けがつきにくい状態となることがあり、薄暮時ないし夜間における降雨時
に本件道路を通行する車両が、道路とa川との境を見誤つて、その進路を誤り、ま
た路面を滑行してa川へ転落する危険性があつたとの事実を確定して、本件道路の
管理者である上告人としては、本件道路のa川に沿つた直線部分にもガードレール、
視線誘導標識あるいは夜間の照明設備を設置して、a川の存在ないし道路とa川と
の境の位置の識別に資するとともに、進行車両が誤つてa川に転落することのない
よう防護の措置を講ずべきであり、ガードレールその他なんらの防護施設も設置し
ないままに放置されていた本件道路は、道路として具有すべき安全性を欠いており、
その設置ないし管理に瑕疵があつたとしたうえ、訴外Dは、昭和四六年一〇月一日
午後七時三〇分ころ、本件事故車を運転して本件道路を時速約四〇キロメートルで
南進中、本件事故現場に至つて、前方がカーブしていることに気付き急制動をかけ
たところ、路面が東側のa川へ向つて大きく傾斜したかまぼこ状をなしており、か
つ、激しい雨で滑り易くなつていたため、右措置も及ばず滑行し、東側の路肩にガ
ードレールの設置がなかつたため、道路上において停止することができず、a川に
転落したとの事実を確定して、本件事故は本件道路の設置ないし管理の瑕疵に基因
するものと認め、Dにも前方不注視及び安全運転義務違背の過失があるとして八〇
パーセントの過失相殺をしたうえ、被上告人の本訴請求の一部を認容した。
 しかしながら、本件事故は、本件道路とa川との境を見誤つて走行したためa川
に転落したというのではなく、訴外Dが進路前方のカーブに気づいて急制動の措置
をとつたところ、降雨中で路面が滑り易くなつており、かつ、路面がa川に向つて
傾斜したかまぼこ状をなしていたため、滑行して右a川に転落したというものであ
るから、原判示指摘の安全施設のうち視線誘導標識や夜間の照明設備の存否は、右
事故の発生とはなんらの関係がなく、本件事故との関係で問題となりうる本件道路
の瑕疵は、専らa川沿いの道路傍にガードレールの設置を欠いた点にこれを求める
ほかはないと考えられる。ところで、本件道路の安全性のために右のようなガード
レールの設置が必要とされるかどうかを考えるのに、薄暮時ないし夜間における降
雨時に本件道路とa川との境の見分けがつかないために走行する自動車が運転を誤
る危険に対する安全の確保という点だけからは、前記のような視線誘導標識ないし
夜間の照明設備の設置だけで足り、それに加えてガードレールの設置まで必要であ
るとは考えられないから、これが肯定されるためには、更に別段の事情が存在しな
ければならないというべきところ、原判決は、このような事情として、前記のよう
に本件道路がa川に向つて大きく傾斜しているかまぼこ状をなし、降雨のため路面
がぬれているような場合には走行自動車が路面を滑行してa川に転落する危険性が
あつたとの事情を挙げている。そうすると、本件における問題は、本件道路とa川
との境が不明確なため自動車の運転を誤つた場合であると否とにかかわらず、降雨
中に本件道路を走行する自動車につき生ずべき滑行事故による転落の危険にそなえ
てガードレールを設置する必要があつたかどうかに帰着するものといわなければな
らない。
 そこで、右の点について検討するのに、原審は、本件道路は路面がいわゆるかま
ぼこ型の構造をなし、特にa川に沿つた路肩への傾斜が大きいことを認定してはい
るが、原判決が本件事故現場の模様の概略を示すものとして引用する第一審判決末
尾添付図面(縮尺二〇〇分の一のもの)には、幅員四・五メートルの本件道路のほ
ぼ中央からa川沿いの路面の端までの高低差は〇・〇九六メートルと記載されてお
り、右記載によればその平均勾配は約四・二六パーセントであることが計算上明ら
かである。また、原審は、薄暮時ないし夜間における降雨時に本件道路を通行する
車両が路面を滑行してa川へ転落する危険性があり、以前にも本件と同様の転落事
故が一、二件あつたとも認定しているが、車両がどのような走行状態にあるときに
路面を滑行する危険があるのか、薄暮時ないし夜間であることと路面が傾斜してい
るために生ずる滑行との間にどのような関係があるのか、以前に発生した同様の事
故が道路とa川との境を見誤つて進路を誤つたことによるものか、あるいは路面の
傾斜のために滑行したことによるものかなどの点についてはこれを明確にしていな
い。原審の認定した事実のみをもつてしては、道路がかまぼこ型でa川の側に傾斜
していることから、ガードレールを設置しないことが道路として通常有すべき安全
性を欠くことになり、道路の設置ないし管理の瑕疵にあたるとすることは困難であ
り、この点に関する原判決の理由説示には不備があるものといわなければならない。
 結局、原判決には、道路の設置又は管理の瑕疵に関する法令の解釈適用の誤り、
ひいては理由不備の違法があり、この違法が原判決に影響を及ぼすことは明らかで
あるから、原判決は破棄を免れず、論旨は、その余の点について判断するまでもな
く、理由がある。そして、本件は、本件道路がかまぼこ型でa川の側に傾斜してい
ることとの関係でガードレールを設置しないことが道路として通常有すべき安全性
を欠くことになるかどうかの点について更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻
すのが相当である。
 よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    本   山       亨
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    中   村   治   朗
            裁判官    谷   口   正   孝

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