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平成25年3月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(ワ)第34497号損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日平成25年1月24日
判決
東京都新宿区<以下略>
原告株式会社ゼネシス
訴訟代理人弁護士高橋達朗
同井上康知
同山崎真紀
同森下真佐哉
同瀬間健治
同三浦謙一郎
同中井宏平
同柴山将一
同篠原秀太
千葉県浦安市<以下略>
被告B
訴訟代理人弁護士戸田綾美
主文
1被告は,第三者に対し,次の事実を文書,口頭又は通信により告知
又は流布してはならない。
(1)原告が保健所から商品の回収命令があった事実を隠蔽したこと
(2)原告が通関書類において商品の原料の産地を偽装したこと
(3)ユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山は,米国の「採掘特
許権(PatentedMiningClaim)」が設定されていないがゆえに有
用な鉱物を含んでおらず,無価値であること
(4)ユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山は十数メートルしか
採掘されていないこと
2被告は,原告に対し,220万円及びこれに対する平成21年1
1月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,これを10分し,その3を被告の負担とし,その余
を原告の負担とする。
5この判決の第1項及び第2項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告は,別紙目録記載の事実を記載した文書を,第三者に対し,配布,送
付,提示し,口頭や通信でその記載内容を伝達,表示,流布してはならな
い。
2被告は,原告に対し,1100万円及びこれに対する平成21年11月2
7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,健康食品の製造,販売及び輸出入等を業とする原告が,原告の元
従業員であり,原告を退職後に原告と競争関係にある会社の取締役を務めて
いた被告に対し,被告が原告の顧客等に対し別紙目録記載の各事実を記載し
た文書を配布し,又は口頭でその記載内容を告げた行為が,原告の営業上の
信用を害する虚偽の事実の告知又は流布(不正競争防止法2条1項14号)
に当たる旨主張して,不正競争防止法3条1項に基づき,被告の上記行為等
の差止めを求めるとともに,同法4条に基づき,損害賠償を求める事案であ
る。
2当事者の主張
(1)請求原因
ア当事者
(ア)原告は,健康食品の製造,販売,輸出入等を目的とする株式会社
である。
原告は,特定商取引に関する法律33条1項所定の連鎖販売取引に
よって,原告の顧客(会員)に対し,植物ミネラルを含有する清涼飲
料水等の商品を販売している。
(イ)被告は,原告の元従業員であり,平成19年8月に原告を退職し
た後,平成21年1月10日,食料品,清涼飲料水の製造及び販売等
を目的とする株式会社LEJ管理本部(以下「LEJ」という。)の
取締役に就任した。
その後,被告は,遅くとも平成23年10月18日までにLEJを
退職し,そのころから,LEJとは別会社において,業として清涼飲
料水の販売を行っている。
イ被告による不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為
(ア)被告は,平成21年1月から2月ころにかけて,原告の会員らに
対し,次の各文書を配布するとともに,口頭でその記載内容を伝達し
た。
a2009年(平成21年)1月25日付けの原告代表者Aに宛て
た3枚にわたる文書(甲2。以下「甲2文書」という。)
b「大切なあなただから…本物を届けたい…」との記載から始まる
2枚にわたる文書(甲5。以下「甲5文書」という。)
c「●すべての始まり」との記載から始まる5頁にわたる文書(甲
6。以下「甲6文書」という。)
(イ)甲2文書,甲5文書及び甲6文書(以下,これらを併せて「本件
各文書」という。)には,次のような記載がある。
a「原告が保健所から商品の回収命令があった事実を隠蔽したこ
と」に係る記載
(a)本件各文書の記載事項
①甲5文書の1枚目下段の「国内販売」の項目
「ゼネシス社(A)」,「※汚染商品で販売停止処分ロッ
トNo.告示せず(隠ぺい?)」
②甲6文書の2頁9行~16行
「すぐに日本でも汚染商品問題が発生しました。黒かびはじ
めバクテリア(バクテリア名ロードテリウム)によると思われ
るピンク色の商品など様々なものが出回りました。…汚染商品
は福岡の保健所から新宿保健所に連絡がありゼネシス社は販売
停止処分を受けました(新宿保健所に記録あり)。そのロット
商品は回収せず,事実を告知せず隠ぺいしたのは明白です。」
(b)前記(a)の各記載が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実
であること
前記(a)の各記載は,原告が,その販売する商品について汚染
問題を理由として販売停止処分を受けたにもかかわらず,そのよ
うな汚染された商品を回収せずに,その事実を隠蔽したことを述
べるものである。
しかしながら,原告が,黒かびをはじめバクテリア等の汚染商
品問題を理由として,新宿区保健所から商品の販売停止処分を受
けた事実は一切存在しないし,また,原告は,カドミウムの問題
で,新宿区保健所からロット番号2185Cの商品の回収指示を
受けたことがあるものの,その問題については,原告の会員に対
し,保健所の上記指示に従う旨を伝えた上で回収を実行してお
り,それらの事実を隠蔽したことはない(甲17の1ないし
3)。
したがって,前記(a)の各記載は,いずれも原告の営業上の信
用を害する虚偽の事実である。
b「原告が通関書類において商品の産地を偽装したこと」に係る記

(a)本件各文書の記載事項
①甲5文書の1枚目下段の「国内販売」の項目
「ゼネシス社(A)」,「※通関書類にロックランド鉱山か
ら供給と表記(偽造/違法?)」
②甲6文書の2頁2行~7行
「この時期にCとゼネシス社との取引が始まりました。ゼネ
シス社が輸入の際に検疫所から許可をいただくために製造工程
表を提出したのですが,「ロックランド鉱山よりヒューミック
シェールを採鉱する」表記しました…。しかしこの時点でゼネ
シス社には,「ロックランド鉱山ではなくTRC鉱山から供給
する」とCから説明を受けていました。ゼネシス社が意図的に
「ロックランド鉱山」と表記したかどうかは分かりませんが,
事実とは異なり,Dは産地偽造の違法行為であると認識してい
ます。」
(b)前記(a)の各記載が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実
であること
前記(a)の各記載は,通関書類として添付された「ユタ・プラ
ント・ディライブド・ミネラル製造工程」と題した原告の販売す
る商品の製造工程に関する書面(乙7)に「Rockland鉱山よりヒ
ューミックシェール(HumicShale:腐食泥板岩のようなもの)を
採鉱する。」との記載があることを捉えて,あたかも原告が通関
書類において原料の産地偽装をしているかのごとく述べるもので
ある。
しかしながら,原告が最初に通関書類を提出した平成14年こ
ろにおいて,原告の販売する商品の製造元(供給元)であった米
国のロックランド社(TheRocklandCorporation)は,「ロック
ランド鉱山」という名称の鉱山からヒューミックシェール(植物
ミネラルを抽出する元となる泥版岩の一種)を採鉱しており,そ
もそも,その当時,「TRC鉱山」という名称の鉱山は存在しな
いことから,ロックランド社のCが,「ロックランド鉱山ではな
くTRC鉱山から供給する」などと原告に説明することはあり得
ない。また,ロックランド社が採鉱していた鉱山の名称が「ロッ
クランド鉱山」から「TRC鉱山」へと変更されたのは,米国の
ミラクル・ロック・マイニング&リサーチ社(以下「MR社」と
いう。)が,2005年(平成17年)8月に,「THEROCKLAND
MINE」(ロックランド鉱山)の商標を商標登録した後であるか
ら,それ以前に作成された通関書類に「ロックランド鉱山」から
採鉱している旨を記載することは,産地偽装行為に当たらない。
さらには,原告は,商品の原料の採鉱場所について,「ロックラ
ンド鉱山」との名称を使用することができなくなったことを知っ
てからは,通関書類に添付する製造工程に係る文書(甲26)に
も「TRC鉱山」という名称を用いているし,そもそもそのよう
な通関書類に添付する製造工程に係る文書は,製造工程に係る安
全性を確認するためのものであって,採掘鉱山の名称の正誤によ
って産地偽装が問題とされるべき類の書類ではない。
それにもかかわらず,前記(a)の各記載は,あたかも原告が通
関書類において原料の産地偽装をしているかのごとく述べるもの
であり,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実に当たる。
c「ユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山は無価値であるこ
と」に係る記載
(a)本件各文書の記載事項
①甲5文書の1枚目上段の「採掘特許」欄
「20年前にミラクル・ロック・マイニング&リサーチ社が
調査済(評価:価値無し)」
②甲6文書の3頁22行~27行
「採掘権(MiningClaim)は,ほとんどの場所で取得でき,重
要鉱物の有無には全く関係ありません。…採掘特許権
(PatentedMiningClaim)は合衆国大統領宣誓証言による確かな
有用鉱石が存在する証です。ユナイテッド・ミネラル社(ゼネ
シス代表者代表)は,採掘権を取得したのみです。有用鉱物の
証明は何もなされていません。その土地は20年前にミラク
ル・ロック・マイニング&リサーチ社が調査しヒューミックシ
ェールが存在しないため採掘権すら取らなかった場所です
…。」
(b)前記(a)の各記載が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実
であること
前記(a)の各記載は,米国において「採掘特許権」(Patented
MiningClaim)を保有していることが有用な鉱物(鉱石)を採掘
していることの証になるとの前提に立った上で,原告の子会社で
あり,原告の商品の製造元(供給元)である米国法人のユナイテ
ッドミネラルズ社(2008年(平成20年)にユタ州で設立さ
れ,ロックランド社の資産を全て買収し,同社に代わり,原告の
商品の製造元(供給元)となった。)が「採掘特許権」を保有し
ていないことから,ユナイテッドミネラルズ社の鉱山からは有用
な鉱物が採掘されておらず,原告の商品に価値がない旨を述べる
ものである。
しかしながら,「採掘特許権」(PatentedMiningClaim)と
は,その土地の譲渡権を付与された採掘権,公有地譲渡証明書と
いう意味にすぎず,その土地に存在する鉱物の品質等を保証する
ものではないから(米国政府の土地管理局発行のパンフレット
(甲27の資料①)等参照),前記(a)の各記載は,その前提か
ら虚偽の事実である。また,ロックランド社が作成した「採掘作
業に関する年次報告書」(「ANNUALREPORTOFMINING
OPERATIONS」(甲15の1の1,15の2の1))及び「ミネラ
ルの製造と収入申告書」(「MineralProductionandRevenue
Report」(甲14))等によれば,原告の商品の原料を採掘する
鉱山からヒューミックシェールが採掘されていることは明らかで
あるから,前記(a)の各記載は,原告の商品の価値を不当に貶め
る内容であって,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実に当た
る。
d「ユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山は十数メートルしか
採掘されていないこと」に係る記載
(a)本件各文書の記載事項
①甲5文書の1枚目上段の「採掘状況」欄
「坑内掘り6年で(高さ2m×幅3m×深さ10数m)程
の穴が2つ6年で約200m3

②甲6文書の4頁21行~23行
「逆にTRC鉱山の採掘量の状況を考えると,わずか10数
メートル×2の坑内掘りで8年間の間に,何をどれだけ供給し
たのでしょうか?」
(b)前記(a)の各記載が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実
であること
前記(a)の各記載は,原告の商品の製造元(供給元)のロック
ランド社又はユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山につい
て,8年に及ぶ期間で,ほとんど採掘がされていない旨を述べる
もので,原告が販売する商品につき不信を抱かせる内容となって
いる。
しかしながら,ロックランド社又はユナイテッドミネラルズ社
は,2002年(平成14年)からの6年間で,坑内総距離にし
て1000メートル以上,総量にして少なくとも3万トン以上も
のヒューミックシェールを採掘していることからすると(甲1
4),前記(a)の各記載は,原告の営業上の信用を害する虚偽の
事実に当たる。
e「ユナイテッドミネラルズ社は冷水処理をしていないこと」に係
る記載
(a)本件各文書の記載事項
①甲2文書の1枚目24行~25行
「現在ではTRC鉱山の採掘量から冷水処理が本当になされ
ているのか不信を抱いています。」
②甲2文書の2枚目6行~8行
「さらに調べ,また最近の貴殿の様々な発言により,現在の
ゼネシス商品は,いったい,いつ?どこで?何から作られた何
なのか?何を混ぜているのか?貴殿自体責任あるものとしてど
こまで把握しているのか?非常に不明瞭であり大きな不信にな
りました。」
③甲5文書の1枚目下段
「ロックランド鉱山」の「抽出方法」欄に「冷水抽出方
法」,「TRC鉱山」の「抽出方法」欄に「?」
④甲6文書の3頁34行~4頁5行
「本当にミネラルが冷水処理で抽出できるのでしょうか?…
本当にTRC鉱山からとった素材で液体ミネラルは冷水で抽出
できるのでしょうか?謎は深まるばかりです。」
(b)前記(a)の各記載が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実
であること
前記(a)の各記載は,前記d(b)のとおり,原告の商品の製造
元(供給元)のロックランド社又はユナイテッドミネラルズ社が
保有する鉱山の採掘量が少ないという根拠のない憶測をもとに,
より少ないヒューミックシェールで多くのミネラルを抽出するた
めには,原告において薬品を使用した抽出方法を用いたに違いな
いという憶測を重ねた結果として,「冷水処理が本当になされて
いるのか」という誤った疑問を呈したものと考えられる。
しかしながら,前記d(b)のとおり,ロックランド社又はユナ
イテッドミネラルズ社による採掘量は相当程度にのぼるもので
(甲14),前記(a)の各記載はその前提から虚偽の事実である
し,ロックランド社又はユナイテッドミネラルズ社は,商品を製
造するに当たって冷水処理をしているから(甲11の1,2,3
5),前記(a)の各記載は,原告の営業上の信用を害する虚偽の
事実に当たる。
(ウ)したがって,被告が原告の会員らに対し本件各文書を配布し,又
は口頭でその記載内容を伝達した行為は,不正競争防止法2条1項1
4号の不正競争行為に該当するというべきである。
ウ被告の損害賠償責任
(ア)被告は,次のとおり,本件各文書の前記各記載事項が虚偽の事実
であることを知っていたか,あるいは容易に知り得たものである。
a「原告が保健所から商品の回収命令があった事実を隠蔽したこ
と」に係る記載について
被告は,原告が新宿区保健所から商品の回収指示を受けた平成1
5年5月当時,原告の副社長の地位にあったもので,原告が新宿保
健所からいかなる理由で,どの商品について回収指示を受けたかを
把握していたにもかかわらず,前記イ(イ)aのとおり,本件各文書
に真実に反する虚偽の事実を記載したものである。
b「原告が通関書類を偽装したこと」に係る記載について
乙7の通関書類を作成した当時,そもそも「TRC鉱山」という
名称の鉱山は存在しなかったものであり(ロックランド社が「ロッ
クランド鉱山」という名称を使用することにつき法律上の問題が生
じてからその名称が「TRC鉱山」に変更された。),ロックラン
ド社のCが,「ロックランド鉱山ではなくTRC鉱山から供給す
る」などと原告に説明することはあり得ないにもかかわらず,被告
は,前記イ(イ)bのとおり,本件各文書に真実に反する虚偽の事実
を記載したものである。
c「ユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山は無価値であるこ
と」に係る記載について
被告は,原告の商品の原料を採掘する鉱山が無価値であることを
自ら調査しておらず,単に原告の商品の製造元(供給元)であるロ
ックランド社又はユナイテッドミネラルズ社の競業会社であるMR
社のDから伝え聞いた話を鵜呑みにして,その裏付けを取ることな
く,吹聴したにすぎない。
d「ユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山は十数メートルしか
採掘されていないこと」に係る記載について
被告は,原告の商品の原料を採掘する鉱山を何度も訪れているの
であるから,その採掘状況を知っていたはずであり,また確認する
ことができたものである。
e「ユナイテッドミネラルズ社は冷水処理をしていないこと」に係
る記載について
被告は,原告の商品が冷水処理されたものではないことについ
て,その裏付けを一切提出しておらず,また,これについても,前
記cと同様に,MR社のDから伝え聞いた話を鵜呑みにしたにすぎ
ない。
(イ)被告は,LEJの取締役に就任した平成21年1月ころから,本
件各文書を作成して,原告の会員に対する配布等を始めたもので,甲
5文書の冒頭に「大切なあなただから…本物を届けたい…」との記載
があることからも明らかなように,原告の信用を毀損して,その会員
をLEJのために奪う意図があった。
(ウ)以上のとおり,被告は,本件各文書の前記各記載事項が虚偽の事
実であることを知っていたか,あるいは容易に知り得たにもかかわら
ず,原告の信用を毀損して,その会員を競業会社のために奪う目的
で,前記イの不正競争行為に及んだのであるから,被告には,故意又
は過失がある。
したがって,被告は,故意又は過失により,上記不正競争行為によ
って原告の営業上の利益を侵害したものといえるから,原告に対し,
不正競争防止法4条に基づく損害賠償義務を負う。
エ原告の損害額
(ア)信用毀損による損害額
本件各文書の前記イの各記載事項は,その記載自体が原告及び原告
の販売する商品の信用を大きく低下させる内容であり,これについて
原告の会員から原告に対する問合せが少なからずあったこと,本件各
文書が出回った直後である平成21年2月から3月ころに原告の会員
を辞める者が集中し(甲28ないし31),その時期に原告からLE
Jに移行した会員が約500人いたことなどに鑑みれば,被告の前記
不正競争行為により,原告は,その営業上の信用を毀損され,損害を
被った。
原告の上記信用毀損による損害額(慰謝料額)は,1000万円を
下らない。
(イ)弁護士費用
被告の前記不正競争行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用相
当の損害額は,100万円を下らない。
オまとめ
よって,原告は,被告に対し,不正競争防止法3条1項に基づき,別
紙目録記載の事実を記載した文書の配布,送付及び提示,口頭又は通信
による上記事実の伝達,表示及び流布の差止めを求めるとともに,同法
4条に基づく損害賠償として1100万円及びこれに対する平成21年
11月27日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5
分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2)請求原因に対する認否
ア請求原因アの事実は,認める。
イ(ア)請求原因イ(ア)のうち,甲2文書については,被告が原告を退社
した理由を尋ねてきた原告の会員である被告の友人や知人数名に,そ
の経緯を説明するために配布したことは認めるが,多数の人に送りつ
けたことはない。
また,甲5文書及び甲6文書については,被告が平成21年1月こ
ろに5,6名に配布したことは認めるが,誰に配布したかまでは覚え
ていない。
(イ)a(a)請求原因イ(イ)a(a)の事実は認める。
(b)同(b)は争う。その理由は,以下のとおりである。
①甲5文書の記載事項について
平成15年5月に福岡市城南区保健所にロット番号2185
Bの原告の商品に健康被害の苦情が寄せられた際,原告は,同
ロット番号の商品が完売済みであったとの理由で,新宿区保健
所に対し,ロット番号2185Cの商品を参考品として提出
し,その後同番号の商品につき,回収及び廃棄を行っているよ
うであるが,苦情があったロット番号2185Bの商品につい
ては,回収も検査もされていないこと,原告の会員に上記のよ
うな問題のあった商品のロット番号が開示されていないことは
事実であるから,甲5文書における「ロット番号を告示せずに
隠蔽した」旨の記載は,虚偽の事実ではない。
②甲6文書の記載事項について
甲6文書の2頁の記載は,平成15年春ころに,原告の商品
に,黒い藻や白い浮遊物が混入していたり,ピンクに変色して
いたり,開封直後に異物が確認されたり,異臭がしたりするな
どの異変が生じており,これに対して原告の会員から苦情が殺
到しているにもかかわらず,原告が適切な対応をしていないこ
とを指摘したもので,その内容は全て真実であって,虚偽の事
実ではない。
b(a)請求原因イ(イ)b(a)の事実は認める。
(b)同(b)は争う。その理由は,以下のとおりである。
①甲5文書の記載事項について
被告は,甲5文書に「違法?」と記載したように,感想を表
明したにすぎない。
②甲5文書及び甲6文書の記載事項について
原告は,MR社が米国で「THEROCKLANDMINE」(ロックラン
ド鉱山)を2005年(平成17年)8月に商標登録して,ロ
ックランド社がその名称を使用することができなくなり,同社
が保有する鉱山の名称が「TRC鉱山」に変更されたにもかか
わらず,2008年(平成20年)8月1日付けの通関書類
(甲26)で鉱山名の表記を訂正するまでの間,通関書類に
「ロックランド鉱山」との誤った記載をしていたことに違いは
ないのであるから,甲5文書及び甲6文書の通関書類に関わる
各記載は,虚偽の事実ではない。
c(a)請求原因イ(イ)c(a)の事実は認める。
(b)同(b)は争う。その理由は,以下のとおりである。
①甲5文書の記載事項について
甲5文書には,そもそもMR社がTRC鉱山について価値が
ないと判断したというMR社の主観的な評価が記載されている
にすぎない。
②甲6文書の記載事項について
甲6文書の原告が摘示する記載箇所は,原告の商品の評価に
直接関わらない記述であり,この部分が真実であるかどうかは
原告の社会的評価に何ら関係しない。
また,「採掘特許権」を設定されていることが,有用な鉱物
が存在する証であることは,「PatentedMiningProperties」
と題されたウェブサイト上の記述(乙8の1,2)から明らか
である。
d(a)請求原因イ(イ)d(a)の事実は認める。
(b)同(b)は争う。
被告は,平成14年ころから,何回もTRC鉱山を訪れていた
が,採掘口は2箇所で,採掘状況は入り口からわずか十数メート
ルの場所までしか目視できなかったのであるから(乙6),TR
C鉱山の採掘状況に関する甲5文書及び甲6文書の各記載は,虚
偽の事実ではない。
e(a)請求原因イ(イ)e(a)の事実は認める。
(b)同(b)は争う。
本件各文書の原告が摘示する記載箇所には,「冷水処理をして
いない」という記述はなく,単に被告が疑問を投げかけたり,感
想を述べたりしているにすぎない。
ウ(ア)請求原因ウ(ア)の事実は否認する。
(イ)請求原因ウ(イ)の事実は否認する。
被告は,原告にきちんとした仕事を行って欲しいという気持ちから
甲2文書を作成し,平成21年1月ころに原告代表者Aに送付したの
であり,被告の知人や友人数名にそれを配布したのは,被告が原告を
退社した理由を尋ねられ,その経緯を説明するために行ったにすぎな
い。
また,甲5文書及び甲6文書は,同様に,被告が原告を退社した理
由を尋ねてきた者に対して,その経緯を説明する資料として作成した
にすぎない。
(ウ)請求原因ウ(ウ)は争う。
エ(ア)請求原因エ(ア)は争う。
本件各文書の記載内容はいずれも真実であり,それらによって,原
告の社会的評価が不当に低下し,原告が被害を被ったという事実はな
い。
また,原告の会員が減少したのは,平成15年ころからの不良商品
の発生に原告が適切な説明と対応をしなかったことに端を発するもの
であり,もともと原告の会員の出入りは激しく,会員を辞める理由も
様々で,一定の長期間にわたって会員であり続ける者は多くないので
あり,被告が本件各文書を配布したことと原告の会員の減少との間に
は因果関係はない。
(イ)請求原因エ(イ)は争う。
第3当裁判所の判断
1不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為の成否(請求原因イ関係)
(1)前提事実
請求原因ア,イ(イ)a(a),b(a),c(a),d(a)及びe(a)の各事
実は,当事者間に争いがない。
上記争いのない事実と証拠(甲1ないし7,10ないし17,19,2
6,27,33,41ないし45,乙7,11,17,19(枝番のある
ものは枝番を含む。),証人E,原告代表者A,被告本人)及び弁論の全
趣旨を総合すれば,本件の経過等として,以下の事実が認められる。
ア(ア)Dは,米国ユタ州で古代植物堆積層(ヒューミックシェール)か
ら植物ミネラルの原料を採掘することを業とする米国法人のMR社
(MiracleRockMiningandResearchL.L.C)と,その原料から植物
ミネラルを抽出(製造)し,販売することを業とする米国法人のライ
ブ・アース社(LiveEarthProducts,Inc.)を経営している。
(イ)Cが経営する米国法人のロックランド社(TheRockland
Corporation)は,1986年(昭和61年),MR社との間で,ヒュ
ーミックシェールの採掘と植物ミネラルの抽出に関する契約を締結
し,ロックランド社が採掘・抽出の費用を負担し,MR社が採掘し,
ライブ・アース社が抽出した植物ミネラルを,ロックランド社におい
て独占販売するようになった。
また,MR社が採掘する鉱山は,ロックランド社(TheRockland
Corporation)の名称にちなんで,「THEROCKLANDMINE」(ロックラ
ンド鉱山)と称されるようになった。
その後,MR社とロックランド社との間で,MR社が採掘する鉱山
のリース権が,MR社からロックランド社に譲渡されたかどうかが訴
訟で争いとなり,2000年(平成12年)ころ,同鉱山のリース権
は,MR社が保有する旨の裁判所の判断がされた。
これを受けてロックランド社は,2002年(平成14年),同社
がユタ州からリースを受けていた別の鉱山を「THEROCKLANDMINE」
(ロックランド鉱山)と名付け,その鉱山から植物ミネラルの原料の
採掘を開始した。
Cは,同年,ロックランド社のオクラホマ州タルサ所在のボトリン
グ工場及び本社機能を受け継ぐ形でTRCニュートリショナルラボラ
トリーズ社(TRCNutritionalLaboratories)を,また,ロックラン
ド社のユタ州エミリー所在の採掘現場及び抽出工場を受け継ぐ形でT
RCミネラルズ社(TRCMinerals,Inc.)をそれぞれ設立した(以
下,ロックランド社,TRCニュートリショナルラボラトリーズ社及
びTRCミネラルズ社を「TRC社」と総称する。)。
イ(ア)原告の創業者で,代表取締役社長のFは,平成14年8月ころ,
TRC社から,同社が採掘及び抽出した植物ミネラルを含有する清涼
飲料水,化粧品等の商品を直接輸入し,これを原告の会員組織に登録
した会員に販売する連鎖販売取引を開始した。原告の会員組織は,会
員が原告の商品を購入する新たな会員を原告に紹介することにより拡
大する形態をとり,紹介された会員は,紹介をした会員の直下の会員
に位置付けられ,更に当該会員が新たな会員を原告に紹介すると,紹
介された会員は,当該会員の直下の会員に位置付けられ,これを繰り
返すことにより会員の裾野が拡がるピラミッド型の仕組みを取ってい
る。
すなわち,原告の会員は,8ランクで構成され,最初は最下位のラ
ンクから出発し,紹介実績,購入実績等の一定の条件を満たすごとに
ランクが上位に上がり,会員は,自己を基点とする下位会員(直下会
員である必要はない。)が原告から商品を購入すると,その購入代金
から原告の定めた計算方法により算出された「ボーナス(報酬)」
(特定利益)の支給を受ける。このような特定利益を得られることが
誘因となって会員による新しい会員の勧誘が行われ,原告の会員組織
が拡大するとともに,原告の商品販売による収益も上がる仕組みとな
っている。
(イ)Fは,原告における植物ミネラルを含有する商品の販売事業を開
業するに当たり,かつて同じ企業で共に仕事をしていた被告に原告の
事業に参加するよう要請した。被告は,平成14年,原告との間で,
コンサルタント契約を締結し,原告の副社長に就任した。以後,被告
は,原告の営業責任者として,原告の会員の獲得,育成等のために,
全国各地で,原告の商品,報酬制度の説明などを行うようになった。
ウ原告がTRC社から植物ミネラルを含有する商品を輸入するに当たり
厚生労働省検疫所に提出した食品衛生法に基づく食品等輸入届出書に添
付の「ユタ・プラント・ディライブド・ミネラル製造工程」と題する書
面(乙7)には,「TheRocklandCorporation(以下「TRC」とす
る。)におけるユタ・プラント・ミネラルの製造およびボトリング工程
の概要は,以下に示す通りである。」,「我々はアメリカ合衆国ユタ州
エマリーにあるRockland鉱山よりヒューミックシェール(HumicShale:
腐食泥板岩のようなもの)を採鉱する。」,「ステップ1ピートモス
(注釈:泥炭を形成するコケ類のこと)のように見えるヒューミックシ
ェールは,ユタ州エマリーのRockland鉱山より採鉱される。…」,「ス
テップ2ミネラル製造施設では,採鉱したヒューミックシェールを大
きなタンクに入れ,精製水に浸すことによってプラント・ミネラルを抽
出する。ミネラル抽出の際,溶剤・酸,あるいは他の化学物質は一切使
用しておらず,冷水のみ使用している。このように,精製された冷水の
みを使用することにより水溶性のミネラルだけを抽出することができ
る。」,「ステップ3水溶性のプラント・ミネラルが水に溶解した
後,その水を他のタンクに移し,非植物ミネラルの固体を沈殿させ除去
する。数回の沈殿・除去作業の後…ろ過されたミネラル水は,アメリカ
合衆国オクラホマ州タルサにある我々の本社・パッケージ工場に輸送す
る。…」,「ステップ4ボトリング開始前に,ユタ・プラント・ミネ
ラルの品質,およびその他すべてのパッケージ機材が使用可能であるこ
とを確認し,すべての機材を消毒する。…」,「ステップ5ユタ・プ
ラント・ミネラルは,無菌となるようボトリングする。…」,「ステッ
プ6ボトルの中に適量を注入し,さらに新鮮さを保つために上部に窒
素を充填後,封をする。…」,「ステップ7完成品の中からサンプル
テストを実施し,製品の微生物チェックをする。」,「ステップ8製
品内の微生物等が許容範囲内であることを確認後,製品を発送す
る。」,「上記工程は,それぞれのステップにおいて厳密に監視され,
記録される。すべての完成品は,固有のロット番号と有効期限がコード
する。」などの記載がある。
エ(ア)平成15年5月16日,原告の販売する植物ミネラル水(清涼飲
料水)(ロット番号2185B,同年4月3日ロックランド社から輸
入)について,福岡市城南区保健所に健康被害(下痢)の苦情が寄せ
られた。
新宿区保健所は,上記苦情を端緒として調査を開始し,同年5月2
7日,原告から,ロット番号2185Bの植物ミネラル水と同日にロ
ックランド社から輸入したロット番号2185Cの植物ミネラル水に
ついて成分規格及び細菌検査を実施するため,そのサンプルを収去し
た。その際,原告は,ロット番号2185Bの植物ミネラル水は既に
完売済みである旨説明した。
新宿区保健所は,東京都健康安全研究センターが行った上記ロット
番号2185Cの植物ミネラル水の検査の結果,カドミウムが0.2
ppm検出されたことから(基準は,「検出しない(検出限界:0.
1ppm以下)」),同年6月20日,上記ロット番号2185Cの
植物ミネラル水が平成17年法律第42号による改正前の食品衛生法
(以下「旧食品衛生法」という。)7条2項に違反するとの認定を
し,その旨を原告に連絡した。
(イ)a原告は,平成15年7月31日付けで,新宿区保健所長に対
し,旧食品衛生法7条2項違反の指摘のあったロット番号2185
Cの植物ミネラル水の在庫を確認し,同在庫については同保健所か
らの指示があるまで保管することとし,販売済みの商品(ロット番
号2185Cの植物ミネラル水)については自主回収することとし
たこと,今後ロット番号2185C以外の国内在庫品を販売する場
合,ロット番号ごとに成分が完全に均一化されているものでなく,
成分に誤差があることを考慮して,原液を「10倍程度希釈」とい
う飲み方についての注意書きを記載した訂正シールを商品に貼付し
てから販売することにしたこと,今後輸入するものについては,飲
み方と関係法令に抵触した部分を訂正した原版を新たに作成し,貼
付してから販売することしたことなどを記載した答申書(甲17の
1)を提出した。
b原告がその会員に宛てて送付した平成15年7月16日付け「商
品回収のお願い」と題する書面(甲17の2)には,次のような記
載がある。
「先だっては,お忙しい最中にもかかわらず,在庫本数の確認作業
をご協力くださり誠にありがとうございました。さらに昨日保健所
より,現在皆様のお手持ちで未開封弊社商品の回収指示がございま
した。以下の方法にて回収させていただきたいと存じますのでよろ
しくお願い申し上げます。
1.既に開封および未開封の製品の本数をご連絡いただいておりま
す。前回すでに所有本数をご報告いただいているにもかかわらず
再度,在庫の内訳をご連絡いただくのは大変心苦しいのですが,
同封のハガキにて再度ご協力よろしくお願い申し上げます。な
お,締め切りは今年の7月末日とさせていただきます。
2.返送いただいた1.のハガキの内容にもとづき,弊社が依頼し
ました宅配業者が引き取り先へ出向きまして以下のようにさせて
いただきます。
(1)未開封商品は代替の商品と交換させていただきます。
(2)既に開封してある商品は適正に記載された飲み方のラベルに
もとづいてご愛飲願います。また宅配業者がお持ちする商品に
同封した適正に記載されたラベルシールを今までのラベルの上
にお貼り付け願います。」
(ウ)a原告は,平成15年12月16日,新宿区保健所の食品衛生監
視員の立会いの下,旧食品衛生法7条2項違反との認定を受けた植
物ミネラル水96本(1本1リットル,合成樹脂製容器詰)を任意
に廃棄した。
bその間の平成15年10月ころ,原告は,原告の会員から,原告
の販売するロット番号3109Aの植物ミネラル水について,開封
した後あまり時間が経過しないうちに,黒い浮遊物や濁りが出てく
るという問合せを受けた。
原告が,商品の製造元に確認をしたところ,それは酵母のような
ものであるとの説明であったので,原告は,上記問合せをしてきた
会員に対し,その旨の回答をした。また,原告が何回かにわたって
原因を調査したところ,かびが検出されたこともあったので,原告
は,原告の上位ランクの会員に対し,その旨を伝えた。
しかし,この問題について,原告が,保健所から行政指導や行政
処分を受けたことはなかった。
オ平成16年6月22日,Fが死亡し,同月28日,Fの子の原告代表
者Aが,原告の代表取締役社長に就任した。
カ(ア)MR社は,2005年(平成17年)8月2日,「THEROCKLAND
MINE」の商標について,指定商品を「ヒューミックシェール及びその
派生物」,指定役務を「ヒューミックシェール及びその派生物の調整
及び精製」として,米国特許商標庁から,商標権の設定登録(登録番
号・2980363)(甲16)を受けた。
(イ)TRC社とMR社は,2006年(平成18年)3月28日,同
年4月30日をもって,TRC社が,MR社の保有する「THE
ROCKLANDMINE」(ロックランド鉱山)の登録商標と同一又は類似する
標章を使用しないこと等を内容とする和解をした。
TRC社は,同社が採鉱する鉱山の名称を「TRCMINE」(TRC鉱
山)と変更した。
キ(ア)被告は,平成19年8月,原告代表者Aに対する不信等を理由
に,原告の副社長を退任し,原告と被告間のコンサルタント契約は解
除された。
(イ)原告は,2008年(平成20年)に,原告の100%子会社と
して,米国ユタ州で米国法人のユナイテッドミネラルズ社(United
Minerals)を設立した。そのころ,ユナイテッドミネラルズ社は,T
RC社の資産を全て買収して,原告の販売する商品の植物ミネラルの
採掘及び抽出を開始するようになった。
ク(ア)被告は,平成20年5月ころ,知人の紹介で,食料品,清涼飲料
水の製造及び販売等を目的とするLEJの代表取締役であるGと面会
した。
(イ)被告は,平成20年夏ころ,植物ミネラルについての調査をする
ために渡米して,MR社のDと面会し,MR社の製造する植物ミネラ
ルとTRC社が製造する植物ミネラルに関する説明を受けた。
その後,被告は,Gに対し,LEJがMR社から植物ミネラルを含
有する商品を輸入し,これを日本国内で販売をする取引を持ちかけ,
平成21年1月10日,LEJとの間でコンサルタント契約を締結し
た。また,被告は,同日,LEJの取締役に就任した。
ケ(ア)被告は,原告と被告間の前記キ(ア)のコンサルタント契約の解除
後も,原告から,被告の下位会員の購入実績等に応じてボーナスの支
給を受けていたが,平成21年1月22日,原告代表者Aから,上記
ボーナスの支給を停止する旨の書簡の送付を受けた。
被告は,同月25日,甲2文書を作成し,原告代表者Aに送付し,
また,そのころ,甲2文書を数名の原告の会員組織の上位ランクの会
員に配布した。
さらに,被告は,同じ時期に,甲5文書及び甲6文書を作成し,数
名の原告の上位ランクの会員に配布し,その記載内容について説明し
た。例えば,原告の最上位ランクの会員であるEは,同月22日,被
告の要請を受けて,被告と面会し,甲5文書及び甲6文書を見せら
れ,その記載内容について説明を受けた。なお,被告は,甲6文書の
内容を補足する関連図として甲5文書を位置付けており,会員に説明
する際には,常に甲5文書と甲6文書をセットとして示して,その記
載内容を説明した。
(イ)原告の代理人弁護士は,平成21年2月14日到達の内容証明郵
便で,被告に対し,本件各文書に記載された内容が,原告の商品にあ
たかも瑕疵が存し,原告が虚偽の事実を公表し,真実を隠蔽している
かのような印象をその会員らに与え,原告の商品及び会社自体の信用
を著しく低下される効果をもたらすものにほかならないなどとして,
被告の行為によって,原告に損害の発生が確認された場合には,不正
競争防止法あるいは不法行為規定その他関係法令に基づき,被告に対
して損害賠償請求を行う考えがある旨を通知(甲3)した。
(ウ)原告は,平成21年9月29日,被告及びLEJに対し,本件訴
訟を提起した。
(エ)LEJは,平成23年4月に,被告とのコンサルタント契約を解
除し,その後,被告は,同年7月ころ,LEJの取締役を退任した。
この間の同年5月12日,原告は,本件訴訟のうちLEJに係る部
分の訴えを取り下げ,LEJはこれに同意した。
(2)「営業上の信用を害する虚偽の事実」該当性
被告が原告の上位ランクの会員に対して本件各文書を配布し,その記載
内容を説明したことは,前記(1)ケ(ア)認定のとおりである。
そこで,本件各文書の記載事項(請求原因イ(イ)a(a),b(a),c
(a),d(a)及びe(a))が原告が主張する原告の「営業上の信用を害す
る虚偽の事実」(不正競争防止法2条1項14号)に該当するかどうか
(同イ(イ)a(b),b(b),c(b),d(b)及びe(b))について順次判
断する。
ア「原告が保健所からの回収命令の事実を隠蔽したこと」に係る記載
(請求原因イ(イ)a)について
(ア)甲5文書の1枚目下段には,「国内販売」として,「ゼネシス社
(A)」,「※汚染商品で販売停止処分ロットNo.告示せず(隠
ぺい?)」との記載がある。
また,甲6文書の2頁8行~21行には,「●日本国内汚染商品大
量流出すぐに日本でも汚染商品問題が発生しました。黒かびはじめ
バクテリア(バクテリア名ロードテリウム)によると思われるピンク
色の商品など様々なものが出回りました。食品製造業界では考えられ
ない大問題です。役所へ提出した製造工程表に記された低温殺菌など
が行われず,出荷前の検査もなされていないという「ずさんな管理体
制」というのが業界専門家の見解です。しかし当時ゼネシス社現代表
者は「タルサ工場を訪問するたびに施設は新しくなり,ますます発展
している」という情報のみをディストリビューターのリーダーに語っ
ていました。汚染商品は福岡の保健所から新宿保健所に連絡がありゼ
ネシス社は販売停止処分を受けました(新宿保健所に記録あり)。そ
のロット商品は回収せず,事実を告知せず隠ぺいしたのは明白です。
その後しばらく汚染商品の指摘は続きましたが,そのたびに酵母と説
明し,カビやバクテリアという見解を明白にすることはありませんで
した。ゼネシス社代表者は今年(2009年)の新年のあいさつでも
ディストリビューターのリーダーに,「これまで(創業以来)の商品
はすべてロットで検査しているからそのような問題(汚染商品)は無
い」と,その事実をいっさい告げず,最近の商品にいたっては,黒か
びはお客さんの保存に問題があるとの主張のみを強調し始めていま
す。」との記載がある。
(イ)甲6文書の前記(ア)の記載中には,黒かびをはじめバクテリア
(バクテリア名ロードテリウム)が原因と思われる原告の汚染商品が
日本国内に出回ったことから,福岡の保健所から新宿区保健所に連絡
があり,原告は,それを理由に販売停止処分を受けたが,販売停止処
分の対象となったロット商品を回収せずに,顧客に対し,事実を告知
せず隠蔽したという事実が記載されており,かかる事実は原告の営業
上の信用を害するものである。
また,甲5文書の前記(ア)の記載は,甲6文書の前記(ア)の記載と
併せて読めば,原告は,黒かびをはじめバクテリア(バクテリア名ロ
ードテリウム)が原因と思われる汚染商品が出回ったことを理由に販
売停止処分を受けたが,その販売停止処分の対象となった汚染商品の
ロット商品番号を顧客に告知せず,隠蔽したという事実を述べたもの
であって,かかる事実は,原告の営業上の信用を害するものである。
なお,甲5文書の前記(ア)の記載には「(隠ぺい?)」というように
「隠ぺい」の後に疑問符の「?」が付されているが,甲6文書の前記
(ア)の記載と併せて読めば,単に疑問を呈したというにとどまらず,
隠蔽したという事実を断定的に述べたものといえる。
しかるところ,前記前提事実によれば,①平成15年5月に,原告
の販売する植物ミネラル水(ロット番号2185B)について,福岡
市城南区保健所に健康被害(下痢)の苦情が寄せられたことを端緒と
して,新宿区保健所が,調査を開始し,ロット番号2185Bの植物
ミネラル水と同日にロックランド社から輸入されたロット番号218
5Cの植物ミネラル水について成分規格及び細菌検査を実施した結
果,「カドミウム」が検出されたことから,同年6月20日,ロット
番号2185Cの商品について旧食品衛生法7条2項違反の認定を
し,原告に対し,その旨を伝え,上記商品の回収指示をしたこと,②
原告は,上記回収指示を受けて,原告の会員に対し,ロット番号21
85Cの商品について開封及び未開封の商品の本数を原告に連絡する
よう求め,さらには,同年7月16日付け「商品回収のお願い」と題
する書面(甲17の2)を送付し,同書面において,保健所から未開
封商品の回収指示があったこと,会員の手持ちの未開封商品について
は代替商品と交換し,既に開封してある商品については新たな「飲み
方のラベル」の記載に従って愛飲するようお願いする旨を述べている
こと,③原告が新宿区保健所長に提出した答申書(甲17の1)によ
れば,新たな「飲み方のラベル」には,原液を「10倍程度希釈」し
て飲む旨の注意書きが記載されていること,④原告が,同年10月こ
ろ,原告の会員から,原告の販売するロット番号3109Aの植物ミ
ネラル水の商品について,開封した後あまり時間が経過しないうち
に,黒い浮遊物や濁りが出てくるという問合せを受け,製造元に確認
し,それは酵母のようなものである旨の回答をし,また,原告による
原因調査の結果,かびが検出されたこともあったので,その旨を原告
の会員に伝えたこともあったが,この黒い浮遊物や濁りの問題につい
て,原告が保健所から行政指導や行政処分を受けたことはなかったこ
とが認められる。
上記①ないし④によれば,甲5文書及び甲6文書に記載された,原
告が黒かびをはじめバクテリアが原因と思われる汚染商品が出回った
ことを理由に販売停止処分を受けたが,販売停止処分の対象となった
汚染商品のロット商品番号を顧客に告知せず,隠蔽したという事実
は,真実に反するものであり,「虚偽の事実」(不正競争防止法2条
1項14号)に該当することが認められる。
(ウ)aこれに対し被告は,原告が,福岡市城南区保健所に健康被害の
苦情が寄せられたロット番号2185Bの商品については,回収も
検査もされていないこと,原告の会員に上記商品のロット番号が開
示されていないことは事実であるから,甲5文書における「ロット
番号を告示せずに隠蔽した」旨の記載は,虚偽の事実ではない旨主
張する。
しかしながら,甲5文書の前記(ア)の記載は,甲6文書の前記
(ア)の記載と併せて読めば,原告が販売停止処分を受けた黒かびを
はじめバクテリアが原因と思われる汚染商品のロット番号を告知せ
ずに,隠蔽した事実を述べたものであって(前記(イ)),福岡市城
南区保健所に健康被害の苦情が寄せられたロット番号2185Bの
商品のロット番号を原告の会員に開示しないことを捉えて,「ロッ
ト番号を告示せずに隠蔽した」旨の記載をしたものではないことは
明らかであり,また,原告がロット番号2185Bの商品について
保健所から回収指示その他の行政指導や行政処分を受けたことを認
めるに足りる証拠はないから,被告の上記主張は,その前提におい
て,失当である。
bまた,被告は,甲6文書の記載は,平成15年春ころに,原告の
商品に,黒い藻や白い浮遊物が混入していたり,ピンクに変色して
いたり,開封直後に異物が確認されたり,異臭がするなどの異変が
生じており,これに対して原告の会員から苦情が殺到しているにも
かかわらず,原告が適切な対応をしていないことを指摘したもの
で,その内容は真実である旨主張する。
しかしながら,甲6文書の前記(ア)の記載について原告が虚偽で
あると主張している事実は,原告が保健所から商品の回収命令があ
った事実を隠蔽したことであり,被告の上記主張は,それ自体原告
の主張する事実が真実に合致することを述べたものではない点にお
いて失当であり,また,原告は,平成15年10月ころ,原告の会
員から,原告の販売するロット番号3109Aの植物ミネラル水の
商品について,黒い浮遊物や濁りが出てくるという問合せを受けた
ことはあったが,この黒い浮遊物や濁りの問題について,原告が保
健所から行政指導や行政処分を受けたことはなかったのであるか
ら,この点においても,被告の上記主張は,失当である。
他に前記(イ)の認定を覆すに足りる証拠はない(なお,被告が原
告の商品(植物ミネラル水)にカビやバクテリアが混入しているこ
との立証のために提出したH博士作成の報告書(乙10)は,20
05年(平成17年)5月2日に作成されたものであって,平成1
5年当時に日本国内で販売されていた原告の商品を対象とするもの
ではないのであるから,その報告書の内容の真偽を検討するまでも
なく,前記(イ)の認定を左右するものではない。)。
(エ)以上によれば,甲5文書の前記(ア)の記載及び甲6文書の前記
(ア)の記載が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実に当たるとの請
求原因イ(イ)a(b)の事実が認められる。
イ「原告が通関書類を偽装したこと」に係る記載(請求原因イ(イ)b)
について
(ア)甲5文書の1枚目下段には,「国内販売」として,「ゼネシス社
(A)」,「※通関書類にロックランド鉱山から供給と表記(偽造/
違法?)」との記載がある。
また,甲6文書の2頁2行~7行には,「この時期にCとゼネシス
社との取引が始まりました。ゼネシス社が輸入の際に検疫所から許可
をいただくために製造工程表を提出したのですが,「ロックランド鉱
山よりヒューミックシェールを採鉱する」表記しました(資料5参
照)。しかしこの時点でゼネシス社には,「ロックランド鉱山ではな
くTRC鉱山から供給する」とCから説明を受けていました。ゼネシ
ス社が意図的に「ロックランド鉱山」と表記したかどうかは分かりま
せんが,事実とは異なり,Dは産地偽造の違法行為であると認識して
います。」との記載がある。
(イ)甲6文書の前記(ア)の記載は,原告が原告の商品を輸入する際に
検疫所に提出した「製造工程表」に「ロックランド鉱山よりヒューミ
ックシェールを採鉱する」と表記することによって,商品の原料を採
掘した鉱山の名称が「ロックランド鉱山」であることを示したが,実
際には,原告の商品の原料を採掘した鉱山の名称は「ロックランド鉱
山」ではなく,「TRC鉱山」であるという事実を述べるとともに,
その事実を前提として,原告が原料の産地偽装(産地偽造)の違法行
為を行っているという被告の意見ないし論評を表明したものであっ
て,原告の営業上の信用を害するものである。もっとも,甲6文書の
前記(ア)の記載中には,「Dは産地偽造の違法行為であると認識して
います」との記載があり,あたかも上記意見ないし論評はDの意見な
いし論評であるかのような表現をしているが,他方で,上記記載中
に,原告が「ロックランド鉱山ではなくTRC鉱山から供給する」と
Cから説明を受けていたことを明確に指摘する記載があることに照ら
すならば,上記意見ないし論評は,Dのみならず,被告自身の意見な
いし論評を述べたものといえる。
また,甲5文書の前記(ア)の記載は,甲6文書の前記(ア)の記載と
併せて読めば,原告が,原告の商品を輸入する際に通関書類(「製造
工程表」)に原告の商品の原料をロックランド鉱山から供給と表記す
ることによって,産地偽装の違法行為を行ったという被告の意見ない
し論評を表明したものであって,原告の営業上の信用を害するもので
ある。なお,甲5文書の前記(ア)の記載には「(偽造/違法?)」と
いうように「偽造/違法」の後に疑問符の「?」が付されているが,
甲6文書の前記(ア)の記載と併せて読めば,単に疑問を呈したという
にとどまらず,産地偽装の違法行為を行ったという被告の意見ないし
論評を断定的に述べたものといえる。
しかるところ,前記(1)ウ認定のとおり,原告がTRC社から植物ミ
ネラルを含有する商品を輸入するに当たり厚生労働省検疫所に提出し
た食品衛生法に基づく食品等輸入届出書に添付の「ユタ・プラント・
ディライブド・ミネラル製造工程」と題する書面(乙7)には,
「我々はアメリカ合衆国ユタ州エマリーにあるRockland鉱山よりヒュ
ーミックシェール…を採鉱する。」との記載があり,この記載は,上
記商品の原料を採掘した鉱山の名称が「ロックランド鉱山」であるこ
とを示すものといえる。また,乙7の1頁ないし3頁の各上部に,
「05-3-23:10:39AM:」,「横浜物流(株)」とのフ
ァックス送信情報の記載があることからすると,乙7は,平成17年
(2005年)3月23日ころ使用された書面であることがうかがわ
れる。
一方で,前記前提事実によれば,①原告がCが経営するTRC社
(ロックランド社)からその製造する植物ミネラルを含有する商品の
輸入を始めた平成14年当時において,TRC社は,MR社が採掘す
る「ロックランド鉱山」という名称の鉱山から原料の供給を受けてい
たものではないが,それとは別の「ロックランド鉱山」という同じ名
称の鉱山から原料を採掘していたこと,②TRC社は,MR社が平成
17年8月2日に米国で「THEROCKLANDMINE」の商標について商標権
の設定登録を受けた後,平成18年3月28日に,MR社との間で,
同年4月1日をもってTRC社が「THEROCKLANDMINE」と同一又は類
似する標章を使用しないこと等を内容とする和解をし,同社が採掘す
る鉱山の名称を「TRCMINE」(TRC鉱山)と変更したことが認めら
れる。
上記①及び②に照らすならば,原告がTRC社から植物ミネラルを
含有する商品の輸入を開始した平成14年からTRC社がMR社との
上記和解により「THEROCKLANDMINE」と同一又は類似する標章を使用
しないこととした平成18年4月1日の前日までの間において,上記
商品の原料を採掘する鉱山の名称は,「THEROCKLANDMINE」(ロック
ランド鉱山)であったといえるから,原告の商品の原料を採掘した鉱
山の名称は「ロックランド鉱山」ではなく,「TRC鉱山」であると
いう事実は真実に反するものであり,また,原告が,原告商品を輸入
する際に通関書類(「製造工程表」)に商品の原料をロックランド鉱
山から供給と表記することによって産地偽装の違法行為を行ったとの
点は,その前提となる事実が真実に反するものであって,乙7におけ
る「我々はアメリカ合衆国ユタ州エマリーにあるRockland鉱山よりヒ
ューミックシェール…を採鉱する。」との記載は,誤りとはいえず,
産地偽装の違法行為を構成するものではないというべきである。
したがって,甲5文書の前記(ア)の記載及び甲6文書の前記(ア)の
記載は,「虚偽の事実」(不正競争防止法2条1項14号)に該当す
ることが認められる。
(ウ)これに対し,被告は,MR社が米国で「THEROCKLANDMINE」(ロ
ックランド鉱山)を2005年(平成17年)8月に商標登録して,
TRC社がその名称を使用することができなくなり,同社が保有する
鉱山の名称が「TRC鉱山」に変更されたにもかかわらず,原告が,
2008年(平成20年)8月1日付けの通関書類(甲26)で鉱山
名の表記を訂正するまでの間,通関書類に「ロックランド鉱山」との
誤った記載をしていたことに違いはないのであるから,甲5文書の前
記(ア)の記載及び甲6文書の前記(ア)の記載は,虚偽の事実ではない
旨主張する。
しかしながら,甲6文書の前記(ア)の記載は,原告がTRC社を経
営するCとの間で取引を開始した当時から,原告が輸入する植物ミネ
ラルを含有する商品の原料がロックランド鉱山ではなくTRC鉱山か
ら採掘されたものであることを知りながら,通関書類に原料をロック
ランド鉱山から供給と表記したことが産地偽装に当たることを述べた
ものであって,MR社が米国で「THEROCKLANDMINE」の商標の商標登
録を受け,TRC社において同社が採掘する鉱山の名称を「TRC鉱
山」に変更した後における原告の行為を問題としていることをうかが
わせる記載は存在しない。また,甲5文書の前記(ア)の記載は,甲6
文書の前記(ア)の記載と併せて読めば,これと同様に,原告がTRC
社を経営するCとの間で取引を開始した当時から,通関書類に原料を
ロックランド鉱山から供給と表記したことが産地偽装に当たることを
述べたものといえる。
したがって,被告が主張するようにTRC社が採掘する鉱山の名称
が「TRC鉱山」に変更された後,原告が2008年(平成20年)
8月1日付け製造工程書(甲26)に採掘する鉱山名を「TRC鉱
山」と表記するまでの間の通関書類に「ロックランド鉱山」と記載さ
れていたからといって,甲5文書の前記(ア)の記載及び甲6文書の前
記(ア)の記載が「虚偽の事実」に該当しないということにはならない
から,被告の上記主張は,採用することができない(なお,①製造工
程書(「製造工程表」)は,商品が成分規格と製造基準を満たしてい
ることの審査のために用いられること(甲33),②そもそも単に鉱
山の名称が変更されただけで,TRC社が採掘する鉱山それ自体は何
ら変更されていないこと,③原告が「ロックランド鉱山」の名称を使
用することができなくなった事実を了知してから速やかに通関書類の
記載を変更するように対処していること(原告代表者A,弁論の全趣
旨)に照らすならば,原告が甲26を作成するまでの間の製造工程書
に「ロックランド鉱山」と記載していたことが産地偽装を目的とした
ものであると認めることはできない。)。
他に前記(イ)の認定を覆すに足りる証拠はない。
(エ)以上によれば,甲5文書の前記(ア)の記載及び甲6文書の前記
(ア)の記載が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実に当たるとの請
求原因イ(イ)b(b)の事実が認められる。
ウ「ユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山は無価値であること」に
係る記載(請求原因イ(イ)c)について
(ア)甲5文書の1枚目上段の「採掘特許」欄には,「20年前にミラ
クル・ロック・マイニング&リサーチ社が調査済(評価:価値無
し)」との記載がある。
また,甲6文書の3頁22行~27行には,「採掘権
(MiningClaim)は,ほとんどの場所で取得でき,重要鉱物の有無には
全く関係ありません。採掘確認権(ProvenClaim)も個人の主張のみ
で,その鉱石の有無の信ぴょう性はないのです。採掘特許権
(PatentedMiningClaim)は合衆国大統領宣誓証言による確かな有用鉱
石が存在する証です。ユナイテッド・ミネラル社(ゼネシス代表者代
表)は,採掘権を取得したのみです。有用鉱物の証明は何もなされて
いません。その土地は20年前にミラクル・ロック・マイニング&リ
サーチ社が調査しヒューミックシェールが存在しないため採掘権すら
取らなかった場所です(資料9参照DVD参照)。」との記載があ
る。
(イ)甲6文書の前記(ア)の記載は,甲5文書の前記(ア)の記載と併せ
て読めば,原告の商品の原料を採掘するユナイテッドミネラルズ社が
保有する鉱山については,「採掘権」を取得したのみで,有用鉱石が
存在する証である「採掘特許権」を取得していないので,その鉱山か
ら有用な鉱物が採掘されているとの証明がされておらず,価値がない
という事実を述べたものであって,かかる事実は,原告の商品が有用
な鉱物を含有していないことを間接的に表現するものであり,原告の
営業上の信用を害するものである。
また,甲5文書の前記(ア)の記載は,甲6文書の前記(ア)の記載と
併せて読めば,ユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山は,20年
前にミラクル・ロック・マイニング&リサーチ社(MR社)が調査し
た結果,ヒューミックシェールが存在しなかったものであり,しか
も,「採掘特許権」を取得していないので,その鉱山から有用な鉱物
が採掘されているとの証明がされておらず,価値がないという事実を
述べたものであって,かかる事実は,原告の商品が有用な鉱物を含有
していないことを間接的に表現するものであって,原告の営業上の信
用を害するものである。
しかるところ,米国政府の土地管理局が発行するパンフレット(甲
27の添付資料①)によれば,「採掘特許権(「PatentedMining
Claim」)」について,「PatentedMiningClaimもしくは,millsite
とは,アメリカ政府がその土地の権利を譲渡し,個人固有の私有地と
して認めることである。あなたは,土地の権利を譲渡されていなくて
も,MiningClaim(判決注・採掘権)があれば,鉱物を採掘し,移動
することが出来る。しかし,PatentedMiningClaimがあると,その土
地に存在するすべての鉱物に対する権利が与えられ,ほとんどの場
合,その土地の権利も与えられる。」との記載があるが,他方で,上
記パンフレットには,「採掘特許権(「PatentedMiningClaim」)」
が設定されていることがその土地に有用な鉱物が存在することの証で
あることを説明した記載はなく,また,採掘特許権が設定されていな
い土地には有用な鉱物が存在しないことを述べた記載もない。
そうすると,甲5文書及び甲6文書の上記記載は,米国の「採掘特
許権」が設定されていることが有用な鉱物が存在することの証ではな
いにもかかわらず,原告が販売する商品の原料を採掘する鉱山(ユナ
イテッドミネラルズ社が保有する鉱山)につき,米国の「採掘特許
権」が設定されていないがゆえに有用な鉱物を含んでいないため,価
値がない旨を述べる点で,真実に反するものであり,「虚偽の事実」
(不正競争防止法2条1項14号)に該当することが認められる。
(ウ)これに対し,被告は,①甲5文書は,MR社の主観的な評価を記
載したにすぎない,②甲6文書の原告が摘示する記載箇所は,原告の
商品の評価に直接関わらない記述であり,この部分が真実であるかど
うかは原告の社会的評価に何ら関係しない,③「採掘特許権」を設定
されていることが,有用な鉱物が存在する証であることは,
「PatentedMiningProperties」と題されたウェブサイト上の記述
(乙8の1,2)から明らかである旨を主張する。
しかしながら,前記(イ)認定のとおり,甲5文書の前記(ア)の記載
は,甲6文書の前記(ア)の記載と併せて読めば,「採掘特許権」を取
得していないので,その鉱山から有用な鉱物が採掘されているとの証
明がされておらず,価値がないという事実を述べたものであり,それ
が主観的な評価に基づくものであっても,上記認定を左右するもので
はない。
また,甲6文書記載の原告が販売する商品の原料を採掘する鉱山に
有用な鉱物を含んでいないという事実は,原告の商品が有用な鉱物を
含有していないことを間接的に表現するものであって,原告の営業上
の信用を害するものであることは,前記(イ)認定のとおりである。
さらに,「PatentedMiningProperties」と題されたウェブサイト
(乙8の1)には,「PatentedMiningClaim」(採掘特許権)を取得
するためには,価値ある鉱物がその土地に埋蔵されていることを証明
しなければならならない旨の記述があるが(訳文・乙8の2),上記
記述を客観的に裏付ける証拠の提出はされていないこと,米国政府の
土地管理局が発行するパンフレット(甲27の添付資料①)には,上
記記述に沿う記載がないことに照らすならば,上記記述は直ちに措信
することができない。また,上記記述は,そもそも「PatentedMining
Claim」が設定されていない土地に有用な鉱物が存在しないことを述べ
たものでもない。
したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
他に前記(イ)の認定を覆すに足りる証拠はない。
(エ)以上によれば,請求原因イ(イ)c(b)の事実は,甲5文書の前記
(ア)の記載及び甲6文書の前記(ア)の記載が,ユナイテッドミネラル
ズ社が保有する鉱山は米国の「採掘特許権」が設定されていないがゆ
えに有用な鉱物を含んでいないことを理由に無価値であることを述べ
ている点で原告の営業上の信用を害する虚偽の事実に当たる旨を主張
する限度において,認められる。
エ「ユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山は十数メートルしか採掘
されていないこと」に係る記載(請求原因イ(イ)d)について
(ア)甲5文書の1枚目上段の「採掘状況」欄には,「坑内掘り6年
で(高さ2m×幅3m×深さ10数m)程の穴が2つ6年で約20
0m3
」との記載がある。
また,甲6文書の4頁21行~23行には,「逆にTRC鉱山の採
掘量の状況を考えると,わずか10数メートル×2の坑内掘りで8年
間の間に,何をどれだけ供給したのでしょうか?」との記載がある。
(イ)甲6文書の前記(ア)の記載は,原告が販売する商品の原料を採掘
する鉱山(TRC鉱山)では,8年間で「10数メートル×2」の坑
内掘りしかされていないという事実を述べたものであって,かかる事
実は,原告の商品の原料を採掘する鉱山からの植物ミネラルの原料の
供給が十分ではなく,原告の商品に植物ミネラルが含有されていない
疑いがあることを暗示するものであり,原告の営業上の信用を害する
ものである。
また,甲5文書の前記(ア)の記載は,甲6文書の前記(ア)の記載と
併せて読めば,原告が販売する商品の原料を採掘する鉱山(TRC鉱
山)では,6年間で「高さ2m×幅3m×深さ10数m程の穴が2
つ」坑内掘りしかされておらず,その採掘量は約200m3
であるとい
う事実を述べたものであって,かかる事実は,原告の商品の原料を採
掘する鉱山からの植物ミネラルの原料の供給が十分ではなく,原告の
商品に植物ミネラルが含有されていない疑いがあることを暗示するも
のであり,原告の営業上の信用を害するものである。
しかるところ,①TRC社がユタ州に提出したミネラルの製造と収
入について申告した書面(甲14)によれば,TRC社は,2002
年(平成14年)5月1日から同年9月17日までの間に2310ト
ン,同月18日から平成15年1月21日までの間に1560トン,
同日から同年12月9日までの間に5235トン,同月10日から平
成16年7月26日までの間に3435トン,同日から同年12月3
1日までの間に3210トン,平成17年1月1日から同年6月30
日までの間に3825トン,同年7月1日から同年12月31日まで
の間に3435トン,平成18年1月1日から同年6月30日までの
間(判決注・同書面には,「From:July1,2005」,「To:December
31,2005」との記載があるが,「From:July1,2006」,「To:December
31,2006」の誤記と認める。)に3630トン,同年7月1日から同年
12月31日までの間に3306トン,平成19年1月1日から同年
6月30日までの間に2094トン,同年7月1日から同年12月3
1日までの間に1200トン(以上,合計3万3240トン)のヒュ
ーミックシェールを採掘及び販売したことが認められること,②平成
20年10月に原告の商品の原料を採掘するTRC鉱山の坑内の様子
を撮影した動画(甲34)によれば,同坑内の奥行きは少なくとも2
0メートル以上であることが目視で確認できるほか,採掘の進行状況
を記した地図が示されていることが認められる。
上記①及び②に照らすならば,TRC社は,原告の商品の原料を採
掘するTRC鉱山(旧名称・ロックランド鉱山)では,平成14年5
月1日から平成19年12月31日までの5年8か月の間に合計3万
3240トンが採掘されており,その坑内堀の状況は,「高さ2m×
幅3m×深さ10数m」よりもはるかに大規模であったというべきで
あるから,甲5文書の前記(ア)の記載及び甲6文書の前記(ア)の記載
は,真実に反するものであり,「虚偽の事実」(不正競争防止法2条
1項14号)に該当することが認められる。
(ウ)これに対し被告は,平成14年ころから,何回もTRC鉱山を訪
れていたが,採掘口は2箇所で,採掘状況は入り口からわずか十数メ
ートルの場所までしか目視できなかったのであるから(乙6),TR
C鉱山の採掘状況に関する甲5文書の前記(ア)の記載及び甲6文書の
前記(ア)の記載は,虚偽の事実ではない旨主張する。
しかしながら,前記(イ)①及び②に照らし,被告の上記主張は,採
用することができない。
他に前記(イ)の認定を覆すに足りる証拠はない。
(エ)以上によれば,甲5文書の前記(ア)の記載及び甲6文書の前記
(ア)の記載が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実に当たるとの請
求原因イ(イ)d(b)の事実が認められる。
オ「ユナイテッドミネラルズ社は冷水処理をしていないこと」に係る記
載(請求原因イ(イ)e)について
(ア)甲2文書の1枚目24行~25行には,「現在ではTRC鉱山の
採掘量から冷水処理が本当になされているのか不信を抱いていま
す。」との記載が,また,甲2文書の2枚目6行~8行には,「さら
に調べ,また最近の貴殿の様々な発言により,現在のゼネシス商品
は,いったい,いつ?どこで?何から作られた何なのか?何を混ぜて
いるのか?貴殿自体責任あるものとしてどこまで把握しているのか?
非常に不明瞭であり大きな不信になりました。」との記載がある。
甲5文書の1枚目下段には,「ロックランド鉱山」の「抽出方法」
欄に「冷水抽出方法」,「TRC鉱山」の「抽出方法」欄に「?」と
の記載がある。
甲6文書の3頁34行~4頁5行には,「本当にミネラルが冷水処
理で抽出できるのでしょうか?誰か確認しているのでしょうか?…本
当にTRC鉱山からとった素材で液体ミネラルは冷水で抽出できるの
でしょうか?謎は深まるばかりです。」との記載がある。
(イ)甲2文書の前記(ア)の記載は,ユナイテッドミネラルズ社が採掘
するTRC鉱山の採掘量からみて冷水処理がされていることに不信を
抱いていること,甲6文書の前記(ア)の記載は,TRC鉱山からとっ
た素材で植物ミネラルが冷水で抽出できるのか疑問であること,甲5
文書の前記(ア)の記載は,甲6文書の前記(ア)の記載及び甲2文書の
前記(ア)の記載と併せて読めば,TRC鉱山で冷水処理により植物ミ
ネラルが抽出されているのか疑問であることをそれぞれ述べたもので
ある。
しかるところ,本件各文書の前記(ア)の各記載は,これらを併せて
読んでも,具体的な根拠又は事実を指摘するなどしてユナイテッドミ
ネラルズ社がTRC鉱山で植物ミネラルの抽出に当たり冷水処理を行
っていないとの事実を述べたものとまではいえず,一般的な疑問を呈
したにとどまるものといえる。
この点に関し,原告は,本件各文書の前記(ア)の各記載は,原告の
商品の製造元(供給元)のロックランド社(TRC社)又はユナイテ
ッドミネラルズ社が保有する鉱山の採掘量が少ないという根拠のない
憶測をもとに,より少ないヒューミックシェールで多くのミネラルを
抽出するためには,原告において薬品を使用した抽出方法を用いたに
違いないという憶測を重ねた結果として,「冷水処理が本当になされ
ているのか」という誤った疑問を呈したものと考えられる旨を主張す
る。
しかしながら,本件各文書の前記(ア)の各記載中に,原告が主張す
るような原告において薬品を使用した抽出方法を用いたに違いないな
どといった具体的な憶測と結びつけた記述は存在しないし,また,
「冷水処理が本当になされているのか」といった一般的な疑問を表明
したからといって,冷水処理がされていないことを断定的に述べたも
のとまで認めることはできない。
したがって,本件各文書の前記(ア)の各記載が,ユナイテッドミネ
ラルズ社は冷水処理をしていないことを述べたものであることを前提
に,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実に当たるとの原告の主張
(請求原因イ(イ)e(b))は,その前提を欠くものとして,理由がな
い。
(3)まとめ
以上によれば,請求原因イ(イ)aないしdの事実が認められるが,同e
の事実は認められない。
そうすると,請求原因イ(イ)aないしdの事実との関係では,被告が甲
5文書及び甲6文書を併せて原告の会員に交付した行為は,原告の営業上
の信用を害する虚偽の事実の告知又は流布(不正競争防止法2条1項14
号の不正競争行為)に該当するというべきである。
2被告の損害賠償責任の有無(請求原因ウ関係)
(1)被告が請求原因イ(イ)aないしdに係る不正競争行為を行ったことは,
前記1(3)認定のとおりである。
しかるところ,①被告が,原告がTRC社から植物ミネラルを含有する
商品を輸入し,これを原告の会員に販売する連鎖販売取引を開始した平成
14年当時から原告の副社長に就任し,平成19年8月に退任するまでの
間,原告の営業責任者として,原告の会員の獲得,育成等のために,全国
各地で,原告の商品,報酬制度の説明などを行っていたこと(前記1(1)
イ,キ(ア))に照らすならば,被告においては,原告が保健所から商品の
販売停止処分又は回収命令(回収指示)があった事実を隠蔽した事実がな
かったことや,TRC社が採掘する鉱山の名称が「ロックランド鉱山」で
あったのが,TRC社とMR社との和解を経て,「TRC鉱山」に変更し
た経緯を知っていたとみるのが自然であること,②被告の供述によると,
甲5文書における「20年前にミラクル・ロック・マイニング&リサーチ
社が調査済(評価:価値無し)」との記載は,被告が,平成20年夏こ
ろ,植物ミネラルについての調査をするために渡米した際に,MR社のD
と面会し,Dから受けた説明を基に記載したというものであるが,被告に
おいては,上記記載に客観的な裏付けがあるかどうかについて調査確認し
ておらず,原告の商品の原料を採掘及び抽出していたTRC社と競争関係
にあるMR社のDから伝え聞いた話をそのまま鵜呑みにして記載している
といわざるを得ないこと,③被告の供述によると,被告自ら原告の商品の
原料を採掘する鉱山を何度も訪れて実際に現地を見ていたというのである
から,その採掘状況を,原告の副社長であった被告が,自ら確認したり,
現地の作業員に問い合わせるなどして確認することが容易であったという
べきであるにもかかわらず,そのような確認作業を行うことなく,ユナイ
テッドミネラルズ社が保有する鉱山は十数メートルしか坑内掘がされてい
ない旨を甲5文書及び甲6文書に記載していること,④被告は,原告の副
社長を退任し,原告と被告間のコンサルタント契約を解除した後も,原告
から,被告の下位会員の購入実績等に応じてボーナスの支給を受けていた
ところ,平成21年1月22日,原告代表者Aから,上記ボーナスの支給
を停止する旨の書簡の送付を受けた後に,本件各文書を作成し,数名の原
告の上位ランクの会員に配布し,説明しているが,その当時被告は,MR
社との間で同社から植物ミネラルを含有する商品を輸入し,これを日本国
内で販売をする取引を開始する交渉をしていたLEJの取締役に就任して
間もなかったこと(前記1(1)キ(ア),ク,ケ(ア)),⑤甲5文書及び甲6
文書の具体的な記載内容(前記1(2)ア(ア),イ(ア),ウ(ア),エ(ア))か
らすると,被告においては,原告の会員をLEJのために奪うことを意図
して,甲5文書及び甲6文書を作成し,これを数名の原告の上位ランクの
会員に配布したものとうかがわれること,以上①ないし⑤の事情に鑑みる
と,被告においては,上記不正競争行為について,故意又は少なくとも過
失があるものと認められる。
これに反する被告の主張は,採用することができない。
(2)そして,被告は,前記1の不正競争行為によって原告の信用を毀損し,
その営業上の利益を侵害したものといえるから,原告に対し,不正競争防
止法4条に基づく損害賠償義務を負うというべきである。
したがって,請求原因ウの事実が認められる。
3原告の損害(請求原因エ関係)について
(1)信用毀損による損害
①被告の不正競争行為の具体的な態様(前記1)及びその主観的な意図
(前記2),②被告が,かつて原告の副社長の立場にあったことから,そ
の言動が原告の会員に与える影響が大きかったこと(証人E,弁論の全趣
旨),③被告自身が,その本人尋問の際に,被告の勧誘行為によって,原
告からLEJへ移った会員が少なくとも「10人以上はいると思います。
…100人いるのかどうかという範疇内は,分からないですね。」と供述
しているとおり,被告の行為によって実際に原告の会員を辞めた者が相当
数存在すること,その他本件に現れた諸般の事情に鑑みると,被告の上記
不正競争行為により原告が被った信用毀損を慰謝するための慰謝料は,2
00万円と認めるのが相当である。
(2)弁護士費用
本件事案の性質・内容,本件訴訟に至る経過,本件審理の経過等諸般の
事情に鑑みれば,被告の不正競争行為と相当因果関係のある原告の弁護士
費用相当額の損害額は,20万円と認めるのが相当である。
(3)まとめ
以上によれば,原告は,被告に対し,不正競争防止法4条に基づく損害
賠償として220万円(前記(1)と(2)の合計額)及びこれに対する訴状送
達の日の翌日であることが記録上明らかな平成21年11月27日から支
払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めること
ができるものというべきである。
4結論
以上の次第であるから,原告の請求は,被告に対し,別紙目録記載の1な
いし4に係る事実(ただし,同目録記載の3については,「ユナイテッドミ
ネラルズ社が保有する鉱山は,米国の「採掘特許権(PatentedMining
Claim)」が設定されていないがゆえに有用な鉱物を含んでおらず,無価値で
ある」という事実)を文書,口頭又は通信により第三者に告知又は流布する
ことの差止め並びに220万円及びこれに対する平成21年11月27日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるか
ら,その限度で認容することとし,その余は理由がないから,いずれも棄却
することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官大鷹一郎
裁判官高橋彩
裁判官上田真史
(別紙)目録
1原告が保健所から商品の回収命令があった事実を隠蔽したこと
2原告が通関書類において商品の原料の産地を偽装したこと
3ユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山は無価値であること
4ユナイテッドミネラルズ社が保有する鉱山は十数メートルしか採掘されて
いないこと
5ユナイテッドミネラルズ社は冷水処理をしていないこと

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