弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件各控訴の趣意は、検察官菊池健一郎及び弁護人中沢守正同フランクリン、ウ
オーレンの各控訴趣意書に夫々記載するとおりであるから、ここにこれを引用する
が、これに対し当裁判所は次ぎのように判断する。
 中沢、ウオーレン両弁護人の法令違背の各論旨について。
 所論はまず第一に本件公訴のうち幇助については訴因の将定を欠き不適法である
というのであるが、本件起訴状における被告人の関税法違反の幇助の事実に関して
は、一個の幇助行為を形成している個々の行為のうちの主要な行為につき、日時、
場所を特定し具体的に記載されているから、起訴状における訴因の記載としてはこ
の程度で何等欠くところなきものというべく、またもとより所論の如く犯罪の実体
のないものでないことは言を俟たない。論旨はとうてい採用できない。
 所論は第二に原判決の第一事実については訴因の追加ないし変更の手続をへない
で、本件公訴の訴因と異る事実を認定したというのであつて、なるほど原判決には
起訴状に記載のない所論のような判示事実の記載があることは明であるが、原判決
は本件公訴の訴因の同一性を失わない範囲内において、起訴状に比してやや詳細な
事実を認定しているに過ぎないから、所論の如く訴因の追加、変更の手続を経る必
要のないことは疑をいれない。論旨も採用できない。
 所論の第三は要するに、原判決はAとB両名の大蔵事務官及び検察官に対する各
供述調書を証拠として引用しているが、駐留軍の協力によつて証人として出廷せし
めることが可能なる以上、右両名が国外にいるというだけでは右調書は証拠能力を
もちえないと<要旨>いうのである。記録によれば原審検察官は右各供述調書を原審
第二回の公判において取調の請求をしたが、被告人はこれに同意しなかつた
ため、原審は第三回公判において検察官の右申請を却下したところ、検察官は直ち
に右AとBの両名を証人として申請したので原審はこれを採用し、右両名の所属部
隊たる名古屋基地第六一〇一空軍連隊法務課を通し、駐留軍に証人の喚問を要請し
た。しかるに、原審は駐留軍から、右証人は両名ともすでに米国に帰還し所定の公
判期日に出頭させることは不可能である旨の回答に接したので、第九回公判で右の
証拠決定を取消した。そこで原審検察官はさきの右両名の供述調書について刑事訴
訟法第三百二十一条第一項第二号、第三号にいわゆる供述者が国外にいるため、公
判期日において供述することができないものとして再度これが取調の請求をなし、
原審はその申請を容れたものであることが明である。
 したがつて石各供述調書は前記第三百二十一条第一項第二、第三号の他の要件と
相まつて証拠能力を有するものといえる。いかにも日米安全保障条約第三条に基く
行政協定第十七条第九項の(c)によると被告人は自己に不利益な証人と対決する
権利を有し、同じくその(d)によれば証人を強制手続によつて求める権利を有し
ていることは所論のとおりであるが、右の条項はわが憲法第三十七条第二項と同趣
旨の規定と解すべきであつて、憲法の右条項が被告人に証人尋問の機会を求めうる
国家に対する受益権を認めたものであつて、刑事訴訟手続において証人尋問に直接
審理主義を採用すべきことを規定したものでないことは疑がないから、原審が前叙
の如く、外国に帰還した証人の採用決定を取消し、その者の前記検察官などに対す
る供述調書に証拠能力を認めても日米行政協定の右条項の趣旨に違背するものでは
ないといわねばならぬ。
 弁護人両名の控訴趣意中事実誤認の論旨について
 本件記録を精査し、原判決挙示の各証拠及び原裁判所が取調べたすべての証拠を
仔細に検討し、当審における事実取調の結果を総合すると、被告人の原判示各犯罪
事実は原判決挙示の各証拠によつて優にこれを認めることができ、その認定に誤認
ありとは認め難い。もつとも被告人は原判示第一の事実については原判示自動車C
の所有権を名実ともに取得したのであつて仮装したものではないと主張しているけ
れども、そもそもこの取引は当初D、Eの両名がBの操縦していたフォードの買受
方を同人に申入れたことに端を発しており、右D、E等は昭和三十一年四月十六日
手付金二十九万円を、さらに翌十七日残金百万円を売主たるBに支払い、同人等は
即日、右自動車の引渡を了していることが明である。したがつて被告人が右自動車
につきBーとの間に取交した売買契約書も虚偽仮装のものであつて、すなわちBは
同年九月頃帰国することになつており、それまでには所定の年限が来ないので合法
的に名義を移すことができないため、被告人に情をあかし右のように、被告人に売
つたことにしてその名義を変更し、その手数料として金百ドルを被告人に支払つて
いることが認められる。さらに被告人は原判示第二の事実につき、この取引に全く
関与していないと弁明しているが、被告人はAの依頼の下に、自ら電話でD、E等
を守山基地に呼びよせ、Aの原判示Fを示して三千五百ドルで買わないかと同人等
にすすめ、なおその際、Aには内密で二百ドルの世話料を貰い度いと申入れている
ことが明であつて、被告人の本件犯行におけるこのような積極的な行動などからい
つて、被告人は売主たるAと共同正犯の関係にあるものというべく、これと同趣旨
にいでた原認定は相当である。
 論旨は要するに、証拠の価値判断について独自の見解にたち、原審の適法になし
た事実認定を論難するものであつて採用しがたい。
 検察官の量刑不当の論旨について。
 記録を精査し原判決挙示の証拠その他原裁判所が取調べたすべての証拠の内容を
具さに検討し、当審における事実取調の結果を加味参酌すると、本件犯行の動機、
態様、被告人の経歴素行、その他諸般の情状に鑑みれば所論の各事情を参酌しても
被告人に対する原審の量刑が不当であつて、いまただちにこれを変更しなければな
らぬとするほどの事由を認め得ないから論旨は採用しがたい。
 よつて本件各控訴はいずれもその理由がないので刑事訴訟法第三百九十六条に則
り之を棄却すべく、当審における訴訟費用は同法第百八十一条第一項本文を適用し
て被告人に之を負担させることとし主文の通り判決する。
 (裁判長判事 小林登一 判事 中浜辰男 判事 成田薫)

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