弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
11審原告A及び1審被告の各控訴を棄却する。
21審原告Aの控訴にかかる控訴費用は同1審原告の,1審被告の控訴
にかかる控訴費用は1審被告の,それぞれ負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
11審原告A
()原判決を次のとおり変更する。1
()1審被告が平成13年12月20日付けで1審原告Aに対し,1審原告2
らの平成▲年▲月▲日相続開始に係る相続税についてした以下の各処分をい
ずれも取り消す。
ア更正処分(ただし,平成15年6月6日付け審査裁決により一部取り消
された後のもの)のうち,納付すべき税額3億0745万5100円を超
える部分
イ過少申告加算税賦課決定処分(ただし,平成15年6月6日付け審査裁
決により一部取り消された後のもの)のうち,納付すべき税額36万10
00円を超える部分
()訴訟費用は,第1,2審とも,1審被告の負担とする。3
21審被告
()原判決中,1審被告敗訴部分を取り消す。1
()1審原告らの請求をいずれも棄却する。2
()訴訟費用は,第1,2審とも,1審原告らの負担とする。3
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,平成▲年▲月▲日に死亡したBの相続人である1審原告らに対する
同日相続開始にかかる相続税について,1審被告が,1審原告Aに対し,平成
13年12月20日付けでした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分,1
審原告Cに対し,同日付けでした更正処分(以下「本件各処分」という)に。
つき1審原告らが原判決添付物件目録記載1から3までの各土地以下本,,(「
件土地」という。なお,同目録記載2の土地は,同土地が平成10年9月28
日に分筆された後の1147番1,同2及び同3の各土地を併せたものを含
む)の価額の評価を誤った違法があるなどと主張して,上記各処分のうち,。
1審原告Aについては更正処分については納付すべき税額3億0745万51
00円を超える部分,過少申告加算税賦課決定処分については納付すべき税額
36万1000円を超える部分の,1審原告Cについては,納付すべき税額2
,。737万5700円を超える部分につき各取消しを請求した抗告訴訟である
原審は,本件の争点が,本件各処分における本件土地の評価額が適正である
か否かであり,具体的には,①本件土地の自用地としての価格(争点①,②)
本件土地は,貸家建付地として,又はそれに準じ,自用地としての価格より減
額して評価すべきであるか否か(争点②,とした上で,争点①につき,本件)
土地の評価を,原判決添付物件目録記載15,16の両土地を除くその余の同
目録記載の各土地(本件単位土地)を利用の単位として1画地としてその評価
額を算出し,その評価額に本件単位土地に占める本件土地の面積の割合を乗じ
て算出するのが相当であるとして,これに本件単位土地の本件相続開始時にお
ける路線価方式による評価額を当てはめて算出した額をもって本件土地の本件
相続開始当時の時価の評価とし,争点②につき,原判決添付物件目録記載6な
いし9の土地(本件敷地)上にB及びDとE生活協同組合(E生協)とが共同
で建築することとされていた商業施設関連建物(本件建物)に借地権は設定さ
れていないことから,本件土地につき借地権等の目的となっている宅地として
自用地としての価額より減額して評価すべきであると認めることはできない
が,1審原告らの相続開始当時,B及びDとE生協との間で,本件建物の建築
()並びにその後の本件敷地及び本件建物の利用等につきなされた合意本件契約
の存在及びその履行により,経済的及び法律的に一定の制約を受ける状態にあ
ったというべきことから,貸家の目的に供されている宅地と同視すべき状態に
あったというべきであるとして,本件土地の価額が,自用地としての価額から
その10パーセントに相当する価額を控除した価額とするのが相当であるなど
と判断して,1審原告Aの請求を一部認容し,同Cの請求を認容した。
1審原告A及び1審被告は,いずれも敗訴部分を不服として控訴した。
2争いのない事実等,争点及び争点に関する当事者の主張については,原判決
「事実及び理由」中「第2事案の概要」の「1争いのない事実及び証拠,
によって容易に認定することのできる事実等「2争点(原判決3頁1行」,」
目∼16頁20行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
【以下,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」の部分(原判決16頁21
行目∼29頁13行目)の部分を引用した上で,当審において,内容的に付加訂正を加え
,,,た主要な箇所をゴシック体太字で記載しそれ以外の字句の訂正部分的加除については
特に指摘しない】。
第3当裁判所の判断
1()相続税法は,相続又は遺贈により財産を取得した者が,当該相続又は遺1
贈により取得した財産(その者が同法1条の3第3号の規定に該当する者で
,。),ある場合には同法の施行地にあるものに限るの価額の合計額をもって
相続税の課税価格とし(相続税法11条の2,各相続人らの相続税の課税)
価格を基礎にして,各相続人等の相続税額を算出するものとしている(同法
16条,17条参照。そして,同法22条は,同法3章で特別の定めのあ)
るものを除くほか,相続又は遺贈により取得した財産の価額は,当該財産の
取得の時における時価による旨規定するところ,上記の「時価」とは,相続
開始時における当該財産の客観的交換価値をいい,客観的交換価値とは,当
該財産の現況に応じ,不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる
場合に通常成立すると認められる価額をいうものと解するのが相当である。
()もっとも,課税実務上,相続財産の評価は,原則として,評価通達によ2
って定められた相続財産の統一的な評価方法によることとされている。この
点については,仮に相続財産の客観的交換価値を個別に評価することとする
と,その評価方式,選択された基礎資料等により異なった評価額になること
を避けられない上,課税庁の事務負担が重くなり,課税事務の迅速な処理が
困難となるおそれがあることなどに照らして,あらかじめ定められた評価方
法によって画一的に相続財産を評価することは,当該評価方法の内容が時価
の認識方法としてそれ自体一応合理的なものである限りにおいて,納税者間
の公平,納税者の便宜,徴税費用の節減という観点から合理的であるという
ことができ,相続税法22条は,このような課税実務をも許容する趣旨のも
のと解される。そして,評価通達の定める評価方法は,それ自体,一応合理
的であると認められるから,相続財産の評価に当たっては,特別の定めのあ
る場合を除き,原則として,同通達に定める評価方法によって算出された財
産の評価額をもって,当該財産の時価と認めるのが相当である。
もっとも,上記()のとおり,相続税法22条にいう時価とは,相続開始1
時における当該財産の客観的交換価値をいうのであって,評価通達によって
画一的に相続財産を評価する課税実務の根拠は上記のとおりであるから,同
通達に基づいて算出された評価額が相続開始時における当該財産の客観的交
換価値を上回り,同通達に基づいて当該財産の評価を行うことが納税者間の
公平等の見地に照らしても著しく不適当であるような特段の事情がある場合
には,1審原告らは,当該事情を主張,立証して,上記通達の定める方法に
よって算出された時価を前提とする相続税の課税処分の適法性を争うことが
できると解すべきである。
,,,()なお1審原告Aは上記判断は相続財産の時価を評価するにあたり
評価通達に列挙された類型以外の類型は許されないとの前提の下で,特段の
事情がある場合には,その事情を主張立証して,別異の算出方法によるべき
ことが許されるというものであり「財産評価基本通達及びこれに基づき各,
,,国税局長が定める評価基準は法規としての性格を有するものではないから
納税者は,これによらず,適正な時価を主張することができることは言うま
。」。でもないとの判決例及び学説一般に違反するものであると主張している
しかし,上記判断は,評価通達に法規としての性格を認めるものでも,法的
拘束力を認めるものでもないことは,その判示内容から明らかであるという
べきであるし,相続財産の時価の評価方法として,評価通達に定める類型以
外の類型を認めないというものでもないから,1審原告Aの主張は理由がな
い。
2争点①(本件土地の自用地としての価額)について
()評価単位について1
ア上記1()に説示したとおり,相続財産の評価に当たっては,特別の定2
めのある場合を除き,原則として,評価通達に定める評価方法によって算
出された財産の評価額をもって,当該財産の時価と認めるのが相当である
ところ,評価通達10は,宅地の価額は,1画地の宅地(利用の単位とな
っている1画地の宅地をいう。以下同じ)ごとに評価することとし,宅。
地の上に存する権利の価額についても,同様とすると規定するので,この
点について,まず検討する。
イ本件においては,前記第2の1記載のとおり,以下の各事実が認められ
る。
(ア)B及びDとE生協とは平成7年9月7日前記第2の1()ウ(ア),,1
から(サ)原判決4頁2行目∼6頁1行目までの内容の合意をした本()(
件契約。)
(イ)E生協は,平成9年3月26日,本件建物の建築着工が遅延したこ
とによってB及びDに迷惑を掛けたとして,同年4月からE生協による
開店に至るまで,毎月,Bに対して31万1431円を,Dに対して1
1万5129円をそれぞれ支払う旨約束し,同約束に従い同人らに上記
金員を支払った。
(ウ)B及びDとE生協とは,同年4月7日,本件契約における建築協力
金の合計を2億2500万円,B分を1億6427万2500円,D分
を6072万7500円と決定した上前記第2の1()オ(ア)から(エ),1
(原判決6頁11行目∼同19行目)までの内容の合意をした。
(エ)BとE生協とは,同年11月25日,前記第2の1()カ(ア)から1
(ウ)(原判決6頁25行目∼7頁2行目)までの内容で賃借料前払の合
意をし,E生協は,同年12月以後,Bに対し,賃借料の前払をしてい
た。
(オ)大阪府知事は,平成10年1月21日付けで,E生協に対し,本件
開発許可地に係る開発行為を許可した。
(カ)箕面市農業委員会は,同月23日,本件土地に係るB及びE生協に
よる農地法5条1項3号に基づく農地転用の届出を受理した。
,,,,,(キ)E生協B及びDは同年3月2日Fとの間で本件工事につき
請負代金を4億2768万4744円(消費税及び地方消費税額を含
む)とする請負契約を締結し,Bは,同日,Fに対し,上記工事代金。
のうち,3290万9500円を支払った。なお,本件契約における前
記第2の1()ウ(ク)bの合意(建築協力金の支払方法に係る合意(原1)
判決5頁3行目)に照らせば,上記支払に先立ち,Bは,E生協から,
同額の建築協力金の支払を受けたものと推認される。
(ク)Bは,同年▲月▲日,死亡し,本件相続が開始した。
(ケ)本件相続開始当時,本件工事は,既に宅地造成工事等が着手されて
おり,その時点での本件工事の出来高は,契約時に合意した代金額の約
2.9パーセントに相当する1180万円であった。
ウ(ア)以上に認定したとおり,本件契約は,本件建物の建築並びにその後
の本件敷地及び本件建物のE生協による専用使用についての合意に加
え,本件建物建築時においては,その建築費用の全額を実質的にE生協
が負担し,B及びDの負担部分は,後日,同人らからE生協に無利息で
返還されるという資金計画についての合意,本件建物を建築し,又はそ
こにおいて店舗経営をするために法律上,又は事実上必要な手続又は作
業をE生協が主となって行うという合意,本件契約が中途で解約され,
又はその期間が満了することにより終了する場合の精算方法についての
合意などを含むものであって,これらの合意内容に照らせば,本件契約
,,,は本件敷地上にE生協B及びDが本件建物を建築してこれを共有し
完成した本件建物においてE生協が本件店舗を開店し,経営するという
事業計画(以下「本件事業計画」という)全般にわたる総合的な契約。
であって,実質的には,共有者間における共有物(本件建物)の管理に
関する協議(民法252条。なお,同法249条参照,本件建物の賃。)
貸借契約,消費貸借契約及び準委任契約としての性格等を有する契約で
あるということができる。
(イ)そして,本件契約の合意内容に加え,上記本件契約の法的性格に照
らせば,本件事業計画全般にわたる総合的な契約としての本件契約の効
力は,その締結によって確定的に生じているというべきであって,本件
建物が完成して初めてその効力を生じるものということはできない。
この点については,確かに,前記認定のとおり,本件契約締結時にお
いて,本件建物は完成しておらず,また,本件契約において,契約書の
標題が「土地建物賃貸借契約書」とされた上,賃貸借期間がE生協によ
る店舗開店日より20年間とされ,E生協の賃料支払債務も同日から発
生するものとされているが,E生協は,Bに対し,本件店舗の開店後に
本件契約に基づきE生協が支払うべき賃借料の一部に充当することを合
意した上で,賃借料の前払をしていたこと,本件契約の締結後,E生協
,,,は本件建物建築に必要な開発行為の許可を申請してこれを受けまた
B及びE生協において本件土地に係る農地法5条1項3号に基づく農地
転用の届出をして受理され,さらに,E生協,B及びDにおいてFとの
間で本件工事に係る請負契約を締結し,BらにおいてFに対し工事代金
の一部を支払い,Fにおいて本件工事のうちの宅地造成工事等に着手し
たことなどが認められるのであって,これらの事実に照らせば,本件契
約の各当事者間においては,本件契約の締結後本件相続開始に至るまで
の間,本件建物を完成させることを当然の前提としていたということが
できる。そうとすれば,上記賃貸借期間に関する合意は,本件契約内容
のうち契約期間の終期を確定するための起算日及び賃借料名義の金員の
支払開始日を定めたものと解すべきであって,本件契約の効力発生日を
定めたものと解することはできない。
1審被告は,本件契約が事業契約全般にわたる総合的な契約であると
の見解を採ったとしても,本件契約締結時に,その契約条項のすべてに
ついて効力が発生していたとはいえず,本件建物の賃貸借契約に係る効
力発生時期は,E生協の開店日であるから,E生協が開店していない本
件相続開始時点でその効力が発生していないことは契約条項の文理甲,(
3の6条)から明らかであると主張している。しかし,甲3(土地建物
賃貸借契約書)の6条には「賃貸借期間と賃借料発生日」との表題,()
の下で,賃貸借期間及び賃借料の発生時期が定められているに過ぎない
ことは,その文理から明らかであるから,賃貸借契約の効力発生日を定
めたものではなく,本件契約内容のうち契約期間の終期を確定するため
の起算日及び賃借料名義の金員の支払開始日を定めたものと解すべきで
あることは上記判示のとおりであり,その解釈が文理に反するとの1審
被告の主張は採用できない。
なお,1審被告は,E生協が,Bに対し,本件店舗の開店後に本件契
約に基づきE生協が支払うべき賃借料の一部に充当することを合意した
上で,賃借料の前払をしていたことについて,その名目はどうあれ,そ
の法的性質は単なる貸付金の支払にほかならず,本件建物にかかる賃貸
借契約の効力が発生していたことの根拠とはなり得ないと主張してい
る。しかし,そもそも,本件契約は,上記のとおり,本件事業計画全般
にわたる総合的な契約であって,その一部のみを取り出して,その効力
発生の有無を問題とすることは,本件契約の上記のような性質にかんが
み失当であるといわざるを得ない。その点をおいたとしても,上記賃借
料(名義)の前払は,前記第2,1(1)カ(原判決6頁20行目∼7頁
3行目)のとおり,E生協の店舗開店が遅延して賃借料収入がないこと
から,Bの賃借料前払の要請をE生協が承諾し,E生協が支払うべき賃
借料の一部に充当することが合意されてなされたものであるから,単な
る貸付金ということはできないから,1審被告の主張は理由がない。
(ウ)以上のような本件事業計画の内容並びに本件契約の内容,法的性格
及び効力発生時期に加え,店舗という本件建物の使用目的,本件建物の
構造及び規模(前記認定のとおり,完成した本件建物の構造は,鉄骨造
亜鉛メッキ鋼板葺4階建てであり,その面積は,1階が506.90平
方メートル,2階が2175.58平方メートル,3階が2296.2
平方メートル,4階が589.8平方メートルである,本件工事に係。)
る請負代金額(前記認定のとおり,本件工事に係る請負契約において合
意された請負代金額は,消費税及び地方消費税額を含み4億2768万
4744円である,本件相続開始時において,本件工事のうち宅地造。)
,.成工事等が着手されその出来高金額は契約時に合意した代金額の約2
9パーセントに及んでいたこと,E生協がBに対して本件契約に基づく
賃借料の一部を前払していたことなどを併せ考えれば,本件相続開始時
において,本件建物が未完成で,本件店舗も開店していないこと,本件
単位土地がE生協,B及びDら数人の所有に係る土地14筆を併せたも
のであって,一人の者の所有権に属するものでないことなどをしんしゃ
くしてもなお,本件相続開始時において,社会通念に照らし客観的にみ
て本件単位土地の全体が前記認定のような構造及び規模を有する本件建
物等の敷地予定地として一体として利用されていたというべきである。
なお,本件単位土地のうち,原判決添付物件目録記載10から14ま
での各土地は本件建物の敷地でなく,また,原判決添付物件目録記載1
1から14までの各土地は,B,D又はE生協の所有に係るものでない
ものの,証拠(甲1,18,乙2,鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によ
れば,本件相続開始時において,E生協が原判決添付物件目録記載11
から14までの各土地の各所有者からこれらを賃借して専属的に使用す
る権利を取得していたことが認められる上,原判決添付物件目録記載1
0から14までの各土地には,現在,本件店舗に付属した施設が設置さ
れ,同施設は本件店舗の営業の用に供されていることが認められ,そう
すると,本件相続開始時においてもそのことが予定されていたと推認さ
れることなどに照らせば,原判決添付物件目録記載10から14までの
各土地を含めた本件単位土地全体が利用の単位となっていたということ
ができる。
他方,原判決添付物件目録記載15及び16の両土地は,本件開発許
可地の一部であるものの,証拠(甲1,17,18)及び弁論の全趣旨
によれば,E生協,B及びDは,本件相続開始時において,上記両土地
について,その所有権又はこれを専属的に使用する権利を有していなか
ったこと,上記両土地の現況は里道であることが認められるところ,こ
れらの事実に照らせば,上記両土地は,本件単位土地と一体として利用
されていたということはできない。
以上より,本件土地の評価額は,本件単位土地を利用の単位としての
1画地としてその評価額を算出し,その評価額に本件単位土地に占める
本件土地の面積の割合を乗じて算出するのが相当である。
()評価方式について2
評価通達11()は,市街地的形態を形成する地域にある宅地の評価は,1
原則として,路線価方式によって行う旨規定している。そして,弁論の全趣
旨によれば,本件単位土地は上記市街地的形態を形成する地域にある宅地で
あると認められ,かつ,本件において,本件単位土地の評価を路線価方式に
よって行うことが著しく不適当であると認めるに足りる特段の事情はうかが
われないから,本件単位土地の評価は,路線価方式によって行うのが相当で
ある。
()本件単位土地の時価3
本件単位土地の本件相続開始時における路線価方式による評価額は,甲第
1号証及び弁論の全趣旨によって,原判決添付別表2記載のとおり,12億
5395万8849円であるものと認められる。
なお,1審原告らは,上記評価額は,本件単位土地が,①造成中の宅地
であること,②不整形地であること,③一部を児童公園に指定されてい
ること,④広大地であること,がいずれも正当に考慮されておらず,時価
よりも高額になっているといった趣旨の主張をするしかしながら証拠甲。,(
1)及び弁論の全趣旨によれば,上記価額は,上記①,②及び④の各点を考
慮した上での適正な価額であることが認められる。また,本件においては,
上記③の事実を認めるに足りる証拠がないことに加え,公園等の公共公益的
施設用地が含まれていることは,広大地としての補正として評価されている
から(評価通達24−4参照,1審原告らの主張は採用することができな)
い。
()本件土地の自用地としての価額4
本件土地の自用地としての価額は,本件単位土地の自用地としての価額に
本件単位土地の面積に占める本件土地の面積の割合を乗じた価額であるか
ら,以下の計算式のとおり,5億1794万4802円である(なお,同価
額が本件土地の本件相続開始当時の時価の評価として相当性を欠くものでは
ないことは,証拠(乙2,鑑定の結果)によっても裏付けられているという
べきである。。)
(計算式)
1,253,958,8492,175.965268.06517,944,802×÷≒
3争点②(本件土地は,貸家建付地として,又はそれに準じ,自用地としての
価額より減額して評価すべきであるか否か)について
()評価通達25は,宅地の上に存する権利(借地権,定期借地権等,地上1
権,区分地上権及び区分地上権に準ずる地役権)の目的となっている宅地の
評価について,各権利ごとの区分に従い,自用地としての価額から調整して
評価するものとしている。
ところで,民法上,土地所有者自らは借地権者となることができないのが
原則であり(同法179条1項本文,同法520条本文,また,その例外)
としての自己借地権の設定要件を規定する借地借家法15条1項が,借地権
を設定する場合においては,他の者と共に有することとなるときに限り,借
地権設定者が自らその借地権を有することを妨げないと規定し,自己借地権
の設定を当事者の意思にゆだねることとしていることに照らせば,土地所有
者がその土地上に他の者と建物を共有する場合においても,その旨の明示の
合意がない限り,自己借地権は設定されていないものと解するのが相当であ
る。本件契約においては,前記第2の1()ウ(イ)(原判決4頁3行目∼71
行目)及び(オ)(同15行目∼18行目)のとおり,E生協,B及びDは本
件建物につき本件敷地の面積に占める各人の所有地の実測面積の比率と同じ
持分割合を有するものとされた上,本件敷地及び本件建物はE生協が専用使
用するものとし,B及びDが本件敷地及び本件建物の使用権を放棄する代償
として,E生協はB及びDに賃借料を支払うものとされているのみであり,
前記第2の1()ウ(コ)(原判決5頁21行目∼24行目)のとおり,B及1
びDが本件契約を中途解約する場合,E生協はB及びDの本件建物共有持分
を買い取り,B及びDは本件土地及びD所有地につき借地権を設定すること
とされていることと対比しても,上記明示の合意があるとは認められないか
ら,本件建物につき借地権は設定されていないものと認められる。
また,上記のとおり,本件契約において,E生協,B及びDの本件建物の
持分比率は,本件敷地に占める各人の所有地の実測面積の比率による旨定め
られていたところ,前記第2の1()オ(原判決6頁7行目∼19行目)の1
とおり,その後「建築協力金・保証金・敷金の追加契約書」において,上,
記三者は,本件建物の持分割合を上記三者のそれぞれが支払う本件建物の建
築費の金額の比率によるものとする旨の変更合意をするとともに,建築協力
金の額を具体的に決定し,本件建物の建築費のうち上記建築協力金相当額を
B及びDが負担してその余はE生協が負担するものとしているが,上記変更
合意において,建築協力金の金額は,本件建物が完成したときの本件建物の
持分割合が本件敷地に占める上記三者の所有地の実測面積の比率におおむね
等しくなるよう,上記変更合意をした平成9年4月7日当時に予定されてい
た本件建物の建築費の金額に本件敷地の面積に占める本件土地及びD所有地
の実測面積の比率を乗じて決定されたものと推認され,本件契約のその余の
約定は特に変更されていないことからすれば,上記合意をもって借地権設定
の合意をしたと認めることもできず,経済的な見地からして,本件建物につ
き借地権が設定された場合と同様の状況にあるということもできない。
したがって,本件土地につき,借地権等の目的となっている宅地として,
自用地としての価額より減額して評価すべきであると認めることはできな
い。
これに対し,1審原告Aは,土地建物賃貸借契約書(甲3)には「本件,
(),()敷地及び本件建物は丙E生協が専用使用するものとし甲と乙BとD
が本件敷地及び本件建物の使用権を放棄する代償として,丙は賃料総額3,
761,000円を[中略]毎月支払うものとする」旨規定されているの,。
であって,この契約により,本件土地につき借地権が設定されたことは明ら
かであるし,そうだとすると,敷地利用権が賃借権である場合,時価の減価
率が更地価格の50パーセントないし60パーセントが正当とされているこ
とは顕著な事実であるから,路線価地域につき大阪市中における住宅地区の
借地権割合は60パーセントであるので,本件土地の相続開始時の時価は,
更地価格の50パーセント以下と認められると主張している。
しかし,上記のとおり,B及びDが本件敷地及び本件建物の使用権を放棄
する代償として,E生協がB及びDに対し賃借料を支払うものとされていた
のであるから,ここにいう賃借料は,本件土地の使用,収益の対価として支
払われるものとはいえないし,また,B及びDが本件契約を中途解約する場
合における借地権の設定が明示的に合意されていることと対比しても,本件
契約において,本件土地につき借地権を設定することについて明示の合意が
なされていたものとは言い難い。なお,本件契約締結後,本件契約において
定められた本件建物の持分比率につき,E生協,B及びDの間で変更合意が
なされているが,この変更合意によっても,本件土地につき借地権設定の合
意をしたと認めることができないことについては,上記のとおりである。
よって,本件土地に借地権は設定されていないものと認められるから,こ
れが認められることを前提とする1審原告Aの主張はその余を判断するまで
もなく理由がない。
()評価通達26は,借家の目的に供されている宅地(貸家建付地)の価額2
は,その宅地の自用地としての価額から,その自用地としての価額に評価通
達27(借地権の評価)の定めによるその宅地に係る借地権割合と評価通達
94(借家権の評価)の定めによるその貸家に係る借家権割合との相乗積を
乗じて計算した価額を控除した価額によって評価するものとしている。
そこで,本件土地を,貸家建付地として,又はそれに準じ,自用地として
の価額より減額して評価すべきであるか否かについて検討する。
,,ア本件相続開始に至るまでの本件土地の利用等に係る経緯は以上に認定
説示したとおりであるところ,E生協,B及びDの三者がそれぞれその所
有地を敷地として提供し,当該敷地(本件敷地)上に上記三者が本件建物
を建築してこれを共有し,完成した本件建物において,E生協が本件店舗
を開店し,経営するという本件事業計画の内容,前記認定のような本件契
約の内容及び法的性格,本件相続開始時において本件契約の効力は確定的
,,に生じており本件契約に基づいて諸手続が進められていたことに加えて
本件建物がE生協が店舗として専用使用することを予定した鉄骨造4階建
て,完成後の各階の床面積が最大2296.2平方メートル(3階)の規
模及び構造を有する大型商業施設であること,本件相続開始時において既
に開発許可及び農地転用届がされてFとの間で本件建物の建築等の工事
(本件工事)につき,請負代金を4億2768万4744円とする請負契
約が締結された上,宅地造成工事等が着手され,その出来高金額が契約時
に合意した代金額の約2.9パーセントに及んでいたこと,E生協がBに
対して本件契約に基づく賃借料の一部を前払していたことなどの各事実に
照らせば,本件相続開始時において,社会通念に照らし,客観的にみて,
本件土地は,E生協が本件契約に基づいて専用使用することとなる本件建
物の敷地に供されることが確定していたものというべきである。換言すれ
ば,前記のような事実関係の下においては,本件相続開始時において,B
を含む関係当事者が本件契約関係から離脱することは極めて困難であっ
て,本件事業計画は,社会通念に照らし,客観的にみて,既に不可逆的な
状態にあったということができるのであり,本件相続開始後に,本件建物
が完成せず,又は本件契約が何らかの事情によって解約されるなど,本件
事業計画が頓挫するという事態が生ずるであろうことをうかがわせるよう
な具体的な事情は,証拠上認められない。
本件契約によれば,本件敷地及び本件建物は,E生協が専用使用して本
件店舗における営業の用に供するものとされ,Bは,本件土地を専属的に
使用する権利及び本件建物を自己の持分に応じて使用する権利(民法24
9条参照)を放棄する対価として,E生協から賃借料名義の一定額の金員
の支払を受けることとされていたのであるから,本件建物は,上記の限度
で借家権の目的となっているのと同視すべき状態にあったということがで
きる。
そして,前記のとおり,本件相続開始時において,本件土地は,本件建
物の敷地の用に供されることが確定していたというべきであるから,所有
者であるBによる本件土地の利用は,本件相続開始当時,本件契約の存在
及びその履行により,経済的及び法律的に一定の制約を受ける状態にあっ
たというべきであり,したがって,貸家の目的に供されている宅地と同視
すべき状態にあったというべきである。
そうであるとすれば,本件土地の価額の評価においては,評価通達26
の貸家建付地に準じ,その自用地としての価額から本件契約の存在及びそ
の履行による本件土地の利用に対する制約の内容,態様,程度等に相応す
る一定の価額を控除した価額とするのが相当というべきである。
イこの点について,1審被告は,評価通達26にいう貸家建付地とは,相
続開始時において,当該土地上の建物が現実に貸し付けられている場合を
,,,いうと解すべきであるところ本件においては本件相続開始時において
本件建物は存在しておらず,本件建物がE生協に現実に貸し付けられてい
たということはできないから,本件土地は,貸家建付地に該当しないとい
った趣旨の主張をする。
確かに,評価通達26が,貸家建付地の価額をその宅地の自用地として
の価額から一定の価額を控除した価額によって評価するとしている趣旨
は,土地上の建物が借家権の目的となっている場合,賃貸人は,自己使用
の必要性などの正当の事由がある場合を除き,賃貸借契約の更新を拒絶し
たり,解約の申入れをしたりすることができない(借地借家法28条)か
ら,借家権を消滅させるために立退料の支払を要することになること,借
家人は,賃貸借の登記がなくても,建物の引渡しがあったときは,その後
その建物について物権を取得した者に対し借家権の効力を対抗することが
できる(同法31条1項)から,建物に借家権を付着させたままで当該建
物及びその敷地を譲渡する場合には,その譲受人は,当該建物に加え,そ
の敷地の利用についても制約を受けることなどから,その敷地の経済的価
値が借家権の目的となっていない建物の敷地に比べて低くなることなどに
よるものと解される。そして,建物の賃貸借については,その性質上,一
般的に,当該建物が賃借人に対しその賃貸借契約に基づいて引き渡される
までは,賃貸人と賃借人との間の権利関係はなお流動的であるということ
ができるから,建物が現実に貸し付けられて初めて敷地の利用に対する制
約が確定的に生じ,その結果としてその敷地の価額が低下するのが通常で
あるということができる。
しかしながら,本件については,上記アに認定,説示したとおり,所有
者であるBによる本件土地の利用は,本件相続開始当時,本件契約の存在
及びこれに基づく諸手続の履践により,E生協が専用使用する本件建物の
敷地の用に供されることが確定した土地として,経済的及び法律的に一定
の制約を受ける状態にあったと認められるのであり,その限りにおいて,
上記通常の場合における地上家屋が現実に貸し付けられた貸家建付地と同
視すべき状態にあったというべきであるから,本件建物が現実に貸し付け
られていないとして,本件土地を自用地として評価することは著しく不適
当であり,自用地として算出された評価額は本件相続開始時における本件
土地の客観的交換価値を上回るというべきである。
ウ1審被告は,評価通達26(貸家建付地の評価)が,貸家建付地の価額
をその宅地の自用地としての価額から一定の価額を控除した価額によって
評価するとしている趣旨は,建物の賃貸借契約により,その賃貸人は,当
該建物及びその敷地の使用について,借地借家法による制約を受けること
となることを考慮したもの,つまり,土地上の建物が借家権の目的となっ
ている場合,賃貸人が,自己使用の必要性などの正当事由がある場合を除
き,賃貸借契約の更新を拒絶したり,解約の申入れをすることができない
こと(借地借家法28条)から,借家権を消滅させるためには,立退料の
支払を要することとなることや借家人は借家権の登記がなくても建物の引
渡しを受けた場合には,その後その建物について物権を取得した第三者に
対し,借家権の効力を対抗することができ(借地借家法31条,建物に)
借家権を付着させたままで当該建物及びその敷地を譲渡する場合には,そ
の譲受人は,当該建物に加え,その敷地の利用についても,借地借家法上
の法的制約,すなわち,物権ないしこれに準じた制約を受けることなどか
ら,その敷地の経済的価値が,借家権の目的となっていない建物や土地に
比べて低くなることなどによるものである。そして,敷地利用について,
このような借地借家法上の法的制約を受けるのは,建物については借家権
,,の第三者対抗要件である引渡しがあったときでありこのような場合には
敷地の譲受人は,敷地利用について,物権的制約ないしこれに準じた制約
を受けるとして,引渡し等の第三者対抗要件がなければ,借地借家法上の
法的制約は受けないのであるから,敷地の譲受人の敷地利用権は何ら害さ
れないのであって,敷地の経済的価値が下がる理由は見当たらず,相続人
のみが拘束されるような債権的制約を理由にして減価するのは不相当であ
ると主張している。
しかし,評価通達26が,貸家建付地の価額をその宅地の自用地として
の価額から一定の価額を控除した価額によって評価するとしている趣旨
は,建物に対する賃借権に第三者対抗要件が備わり,当該利用につき物権
的制約ないしこれに準じた制約を受けるからだけではなく,一定の事由が
ない限り,解約の申入れをすることができないことにより,当該敷地利用
につき制約を受けることをも理由とするものであるところ,建物につき賃
貸借契約を締結した以上,その引渡し等第三者対抗要件を備えていなくて
も,契約当事者間においては,当該賃貸借契約に拘束されることはいうま
でもないところであり,賃貸借契約締結後,何ら理由なく,賃貸人におい
て,当該賃貸借契約を解除することはできないのであるから,当該建物に
ついて賃貸借契約を締結していない場合に比して,当該建物の敷地の経済
的価値は低くなることは明らかであるというべきである(本件契約におい
て,中途解約する場合について定められているが,この場合でも,B及び
Dは,本件土地及びD所有地につきそれぞれ賃借権を設定することとされ
ていることについては,前記のとおりであり,そうだとすると,中途解約
したところで,本件土地を使用,収益することのできる状態となるもので
はない。1審被告は,建物の賃貸借契約により,借地借家法による制約。)
を受けるのは,その賃借権につき第三者対抗要件を備えた場合のみである
かのような主張をするが,借地借家法による制約は,借地権につき第三者
対抗要件を備えた場合に限られるわけでないことは明らかである(借地借
家法1条参照。。)
よって,1審被告の主張は理由がない。
()減額率と土地の評価額3
ア前記のとおり,本件契約において賃貸借期間がE生協による店舗開店日
より20年間とされ,当事者間の合意によりこれを更新することができる
ものとされていること,本件建物がE生協,B及びDの共有とされ,その
持分割合が本件敷地に占める上記三者の所有地の実測面積の比率におおむ
ね等しくなるようにされていること,前記第2の1()ウ(ク)(原判決41
頁末行∼5頁9行目)のとおり,B及びDが負担すべき本件建物の建築費
は,E生協において建築協力金としてB及びDに支払った上,B及びDに
おいて,これを本件建物の保証金及び敷金として,無利息で賃料発生日後
11年目から割賦償還の方法により返還すれば足りるものとされているこ
と,前記第2の1()ウ(コ)(原判決5頁21行目∼24行目)及び(サ)1
(同25行目∼6頁1行目)のとおり,本件契約において,いずれの契約
当事者も中途解約することが認められているが,B及びDが本件契約を中
途解約する場合には,E生協はB及びDの本件建物共有持分を買い取り,
B及びDはE生協に対し本件土地及びD所有地につきそれぞれ借地権を設
定するものとされていること,その他証拠上認められる本件契約の存在及
びその履行による本件土地の利用に対する制約の内容,態様,程度等を総
合考慮すれば,本件土地の価額は,その自用地としての価額5億1794
万4802円からその10パーセントに相当する価額を控除した価額とす
るのが相当というべきである。そうすると,本件土地の評価額は,以下の
計算式により,4億6615万0322円である。
(計算式)
517,944,802517,944,8020.1466,150,322−×≒
1審原告Aは,本件相続開始当時,本件土地には,借地権もしくはこれイ
と同等に法的制約のある権利が設定されていたと解すべきであるから,評
価通達27(借地権の評価)により,本件土地の減価率は60∼50パー
セントと認められ,仮に,本件土地をもって,貸家建付地類型に属し,評
価通達26によって算定すべきものとすれば,その減価率は24パーセン
トとなると主張し,減価率を10パーセントにとどめたのは違法,不当で
あると主張している。
しかし,前記のとおり,本件土地には,借地権が設定されていたとはい
えないから,評価通達27によることはできないし,また,本件相続開始
当時,本件建物は存在しなかったのであるから,評価通達26をそのまま
適用することもできない。しかし,上記のとおり,本件土地には,経済的
及び法律的に一定の制約を受けていたものであるから,その程度を上記の
とおりと認めて減価することは,相当ということができる。よって,1審
原告Aの主張は理由がない。
()なお,1審被告は,路線価は,地価公示法2条1項に基づいて公示され4
る正常な価格の80パーセント以内の水準をめどとして,いわゆる控えめな
金額として設定されているところ,仮に本件土地に何らかの権利の負担があ
ったとしても,その負担を2割以上に評価する必要があるとは考えられない
から,本件土地の時価が路線価による自用地としての評価額を下回ることは
ない旨主張する。
しかしながら,前記のとおり,相続財産の評価に当たっては,特別の定め
のある場合を除き,原則として,評価通達に定める評価方法によって算出さ
れた財産の評価額をもって,当該財産の時価と認めるのが相当であるという
べきところ,本件事実関係の下においては,本件土地は,評価通達26にい
う貸家建付地と同視すべき状態にあったというべきであるから,同通達26
に準じてその価額を評価するのが納税者間の公平の観点からしても相当とい
。,。うべきであるしたがって上記1審被告の主張は採用することができない
1審被告は,課税実務においては,課税の公平性等の観点から,画一的基
準で評価することが求められており,明確な基準によって画一的に評価する
ことが納税者にとって公平性を担保することになるところ,上記判断は,こ
の点の重要性を全く看過しているといわざるを得ない,すなわち,本件土地
については貸家建付地に準じた評価をすべきとしながら,準用の基礎を明ら
かにしていないし,経済的法律的制約がどのようなものであるかも不明確極
まりないし,評価額の減額程度・方法も不明確である,と主張している。
確かに,評価通達によって画一的に相続財産を評価することは,納税者間
の公平,便宜,徴税費用の節減という観点から合理的であるということはで
きるが,評価通達は法規ではなくこれに法的拘束力はないのであるから,本
件のように,評価通達の評価方式に基づいて算定すると,かえって納税者の
公平等の見地に照らし,著しく不適当な結果となるような場合においては,
上記通達の趣旨に則った合理的な時価の評価方式を採ることも許されると考
えられる。その場合において,画一的基準による評価の要請が後退したとし
てもやむを得ないものであるといわざるを得ない。また,評価通達による画
一的基準による評価の例外を認める場合,どのような場合に,どの程度認め
るかについては,具体的事案により異なるものであるから,その基準を明ら
かにし,設定する必要もないというべきであり,適切な算定方法によって時
価を算定することで足りるというべきである。
よって,1審被告の主張は理由がない。
4結論
()そこで,本件土地の価額を4億6615万0322円として,1審原告1
らが納付すべき相続税の税額を算出する。
弁論の全趣旨によれば,1審原告らが納付すべき相続税額算出の基礎とな
る事実は,上記本件土地の価額を除き,原判決添付別表4及び5に各記載の
とおりであることが認められ,また,原判決添付別表4及び5の相続税額算
,,出の計算方法は法令の規定するところに従っているものと認められるから
上記各別表を本件土地の価額の点について補正すると原判決添付別表7課,「
税価格及び相続税の総額の計算明細表(裁判所認定,及び同8「課税価格)」
の明細表(裁判所認定」のとおりとなる。)
()以上によれば,1審原告Aが納付すべき相続税の税額は,3億44772
万4400円であり,これによると,1審原告Aが納付すべき過少申告加算
税の税額は,原判決添付別表9記載のとおり,373万1000円となる。
また,1審原告Cが納付すべき相続税の税額は,2699万0500円であ
る。
したがって,1審原告Aに係る本件各処分のうちの上記金額を超える部分
及び1審原告Cに係る本件処分は,いずれも違法である。
()以上の次第で,1審原告Aの請求は,上記の範囲で理由があるからその3
範囲でこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却し,1審原
告Cの請求は理由があるから認容すべきところ,これと結論を同じくする原
判決は相当であり,1審原告A及び1審被告の各控訴は,いずれも理由がな
いから棄却することとして,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官松山恒昭
裁判官小原卓雄
裁判官吉岡真一

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